営業職を定年後も続けたい!自身の棚卸で道を拓く|人生100年時代のライフシフト

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営業職を定年後も続けたい!自身の棚卸で道を拓く|人生100年時代のライフシフト

新卒で飛び込み営業に挑んだ若き日々から、ソリューション営業への転機、そして定年後に「営業サプリ」と出会い、シニアコーチとして若手育成に情熱を注ぐ現在まで。中野 聡さんが語るのは、営業の本質と人とのつながりの力。経験を言語化し、次世代に伝える使命感に満ちたインタビューです。

この記事の目次

    PROFILE

    中野 聡
    1978年、関西大学法学部卒業。同年松下電送入社、後に松下電器産業(現パナソニック)に転籍。一貫して大手法人企業を中心にほぼ全業種を営業担当、顧客の状況や課題に応じて柔軟かつ戦略的な提案営業を行い新規契約の獲得に貢献。地方営業責任者を歴任後、社内IT専門会社に移り営業執行役員として社内外のビジネス拡大に従事した。 60歳で定年退職後、自身の棚卸の成果でAJS株式会社(旧旭化成情報システム)への転職に成功。68歳で2度目の定年退職後株式会社サプリにて、営業部門リーダー兼営業サプリコーチ(業務委託)として活躍中。

    営業の仕事に没頭した若き日々

    私が新卒で入社したのは、昭和53年のことでした。就職氷河期真っ只中で、大手電機メーカーの松下電送(現パナソニック)に滑り込むことができた時、心底ホッとしました。最初の10年間はFAXの直販営業、いわゆる飛び込み営業に明け暮れる日々でした。

    入社当時の私はまだ若く未熟で、会社の看板を借りて営業するしかありませんでした。先輩方が大企業を担当する中、私は東京・大田区や江東区の町工場をひたすら飛び込みで回っていました。正直、最初は「なんで自分だけこんな地味なことを...」と不満に思うことも。しかしある時、その地道な営業に、大きな喜びを見出したのです。

    足しげく足を運んでいたある町工場の社長は、ある商談で技術的な話に私が正面から本気で踏み込むと、目を輝かせて「おい、中野。お前面白いな!わかった、1台持ってこい!」と即決してくれたんです。その瞬間、私の胸にはこれまでの苦労が報われたような、言葉にできない高揚感がこみ上げてきました。

    その後、松下電送の営業部門は松下電器に吸収合併され、私はファックス以外の情報機器、IT関連システム、設備機器など多様な商材を扱えるようになりました。この変化は、私の営業人生を大きく変えることになりました。お客様のところに行けば、必ず何か顧客の課題が見つかる。それを解決するための商品やノウハウが、会社の中に必ずある。

    この事実に気づいた時、私はまるで宝の地図を手に入れたようなワクワク感に包まれました。これまでの「モノ売り」ではない、お客様の課題に徹底的に向き合う"ソリューション営業"の醍醐味を味わうことができたのです。

    ソリューション営業に軸足を移した頃、私はコールセンター向けの新規の営業に挑戦しました。当時はまだ「お客様相談センター」は企業の中では隅に追いやられがちで、クレーム対応や商品問い合わせを受けるだけの、どちらかといえば地味な部署でした。しかし、私は「お客様の声こそがビジネスのヒントだ」と信じ、この部署に大きな可能性を感じていました。

    とはいえ、私一人でできることには限界があります。パナソニックは事業部ごとに縦割りになっており、電話機やパソコン、ソフトウェアの部門がそれぞれ独立していました。私は、各部門の技術者や担当者に頭を下げ、コールセンターの課題を解決するためのシステムを一緒に作ってほしいと訴えました。

    初めは誰もが「なんでそんな面倒なことを...」と冷たい反応でした。それでも、私は諦めませんでした。彼らの部署に通い、技術の話に耳を傾け、時には一緒に酒を酌み交わしながら、信頼関係を築いていきました。そして、お客様の課題を熱心に語り、「このシステムを作れば、お客様はこんなに喜んでくれる」と、彼らと共にワクワクするような未来を共有したのです。

    その熱意が伝わったのでしょう、次第に技術者たちが私の話を聞いてくれるようになり、最終的には部門の壁を越えたプロジェクトチームが立ち上がりました。そして、完成したのが、電話・パソコン・ウェブを統合した、当時としては画期的なコールセンターシステムです。このプロジェクトは社内でも大きな反響を呼び、私自身も社内で一定の評価をいただけるようになりました。

    この経験から、営業職にとって「社内を巻き込む力」がいかに重要かを痛感しました。お客様を動かす前に、まず社内の仲間を動かす。それができなければ、真のソリューション営業は実現しないのだと学んだのです。

    自分は何者?自身の棚卸により「道を拓く!」

    50代後半になり、役職定年が近づくにつれて、将来への漠然とした不安が頭をよぎるようになりました。長年、会社という大きな看板のもとで、営業として走り続けてきた。しかし、この看板が外れた時、自分には何が残るのだろうか?「自分は一体何者なのか?」この問いが、私を深く悩ませました。会社の組織図から外れた時、自分を証明するものは何もないのではないか。

    そんな焦燥感から、私は今後の人生をかけて自己分析を始めました。これまでの営業人生を振り返り、何ができて、何が強みなのかを徹底的に棚卸しました。その中で気づいたのは、私が培ってきたのは単なる営業スキルではなく、「人とのつながり」と、「社内を巻き込む力」だということでした。

    若い頃、町工場の社長と膝を突き合わせて話した経験も、コールセンターのシステム提案で部門の壁を越えた経験も、すべては人との信頼関係を築き、周りを動かしてきた賜物だと確信しました。そして、その棚卸しを通じて、私は一つの結論にたどり着きました。「このまま辞めてしまうのはもったいない。これまでの経験を、別の形で社会に活かしたい」。

    そう決意し、私は現役最後の1年間を再就職活動に費やしました。幸いにも、パナソニック時代にお付き合いのあった方々が声をかけてくださり、とある情報システム会社にシニアマネージャーとして入社することができました。そこでは、グループ企業の製造現場のDX化に向けた業務改革の提案営業と、時代に即したマーケティングの推進を担当しました。

    IT事業は最先端の技術(ハイテク)が先行しがちでしたが、顧客の現場の課題に寄り添い、顧客と歩む営業(ハイタッチ営業)の観点から、社内外関係者とのヒューマンインテグレーションを最重視し、組織を超えた付加価値を高めながら人材の育成、組織形成の推進に汗をかき続ける日々を送りました。

    営業サプリとの運命的な出会い

    そうして走り続けて68歳で2度目の定年を迎えた時、正直、これで自分の営業人生は終わりかな、と思っていました。これからの人生は、夫婦でゆっくり旅行でもして過ごそうか。そんな風に考えていたんです。ところがそんな折、前職のお客様だった営業サプリの酒井社長から連絡が来たのです。「中野さん、辞めるんだって?うちを手伝ってくれないか」この一言が、私の人生を再び大きく動かすことになりました。

    久々にお会いする前にHPを拝見し、この会社が営業マンの教育に特化した事業だと知った時、私は大きな衝撃を受けました。私の長く厳しい営業経験が、次の世代に活かせるかもしれない。そう思った時、胸の奥から熱いものがこみ上げてきました。「私のやるべきことはこれだ!」。迷いは一切ありませんでした。

    私の「経験の引き出しが、人の役に立つ!」その瞬間が喜び

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    現在、私は営業サプリで、営業活動とシニアコーチを兼務しています。業務委託契約で自身のミッションに徹することができるのも大きな魅力です。雇用により何かとストレスになる組織内のやりとりから解放され、思い切りやりたい"営業"の仕事をやらせていただいています。

    特にやりがいを感じるのは、シニアコーチの仕事です。私たちが担当するのは、営業経験が浅い若手営業マン。彼らは、どうすれば売れるのか、どうすればお客様の心をつかめるのかが分からず、日々苦労しています。私は、彼らの話に徹底的に耳を傾けます。

    そして、私の40年以上の営業経験の中から、彼らの悩みに応じた引き出しを開けてあげます。「俺だったらこういう時、こうやってきたよ」。そう語りかけると、彼らの目が輝くのが分かります。そして、「アドバイスのおかげでうまくいきました!」と報告してくれる瞬間は、本当に嬉しいものです。

    ある時、あるSI会社の若手営業マンを指導していた時のことです。彼は「上司から何も教えてもらえない」と悩んでいました。私は彼の話を聞き、「上司に言われたことを実行するだけでなく、自分ならどうするか、自ら考える。という視点を持つこと」を教えました。その後彼は、徹底的に顧客の理解を深め、顧客が真に抱える課題を掴めるまでに顧客との信頼を積み上げていきました。

    そしていよいよ迎えた提案機会。彼は深い顧客理解に基づく、お客様の課題に深く踏み込んだ提案をするまでに至りました。結果、見事に競合に勝つことができ、大きな成果を出したのです。その時、彼は心底嬉しそうに「今までこんなに上司から踏み込んだアドバイスをもらったことがなかった」と言ってくれました。その言葉を聞いて、私は心の底からこの仕事の重要性を再認識しました。

    倍ほども年の差のある彼らに、私のアドバイスが届くのか?本当に役に立てるのか?正直当初不安もありました。多くの悩める若手営業マンとの接点を通じて、その手ごたえを実感しています。

    コーチに必要な事は"徹底的に寄添うこと"と"経験の言語化"

    私が心がけていることは大きくは2点あります。
    1つ目は"徹底的に彼らに寄り添い、彼らの悩みに向き合うこと"です。今回のサプリコーチを通じて、若手営業マンの多くが本当に抱えている悩みを打ち明ける相手が居ないこと、「何」を悩んでいるのか?の整理が自分自身でもできていないことを改めて認識しました。しっかりと彼らと向き合い、まずは受け止めてあげることで年齢差を超えて関係構築ができると実感しています。

    2つ目は"経験を言語化する事を磨くこと"。伝えたい内容を整理して伝えることの重要性を実感したためです。我々が長年培ってきた経験は、実はそれだけで貴重な財産だと思っています。その宝を、若い世代に惜しみなく伝えることは我々世代の使命です。しかし、ただ経験を語るだけでは伝わりません。

    なぜその時うまくいったのか、その根拠は何だったのか、論理的に説明できるまで自分の経験を深く掘り下げ、筋道を通した言語化をする努力が必要です。解決すべき課題ごとに引き出しを整理整頓し、相手の営業キャリアに応じて目線を合わせて彼らの心に届ける。きちんと届いて彼らの表情が変わる瞬間も、私の仕事の喜びの一つかもしれません。

    これが私が"サプリコーチ"として心掛けていることですが、これはこれからの人生100年時代に、我々シニア全体が現役世代の皆さんと共に協働するうえで必要な姿勢なのかもしれないですね。

    ワークもワイフも大切に

    私は、これからも営業サプリの仕事を通じて、営業という仕事の素晴らしさを多くの人に伝えていきたいと思っています。日本の企業の多くは、営業組織の強化が課題です。新人教育だけでなく、マネージャー育成や組織全体の風土改革にも関わり、私たちが「営業部隊のインフラ」と呼ばれるような存在になることが目標です。

    個人的には、体力の続く限りこの仕事を続けたいと思っています。そして、これまでの人生で仕事ばかりに打ち込み、家事や家族を顧みなかった分、妻への感謝の気持ちを大切にしていきます。彼女の仕事が休みの時は私が家事を担当し、夫婦で旅行に出かける時間を増やしていきたいとも考えています。ワークもワイフとの生活も、どちらも充実させることが、これからの私のライフプランです。

    定年後のキャリアに悩む皆さんに伝えたいのは、実は皆さんが長期にわたり積み重ねた経験は、現状の現場においても、大変貴重なものであるということです。会社での立場や肩書きを失っても、あなたが培ってきた「経験を分解し、言語化する力」と「新たな人との出会いを大切にする行動力」があれば、必ず次の道は開けます。勇気を持って一歩を踏み出してください。是非一緒に仕事ができることを楽しみにしています。

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