50代女性 ビルメンテナンスの転職体験談 | 負けず嫌いがモチベーションの源。人生を楽しむためにも、働き続けていたい。

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50代女性 ビルメンテナンスの転職体験談 | 負けず嫌いがモチベーションの源。人生を楽しむためにも、働き続けていたい。

自宅で愛犬と暮らす草刈さん(仮名)53歳。様々な仕事を経験した後にビルメンテナンスの業界へ。監査役まで勤めますが、経営方針の違いから退職。その後、50代での転職活動を経験しました。これまでの経歴、そして仕事探しについてお話を伺いました。

この記事の目次

    経済的に不自由なく育った学生時代を経て、アパレル会社で営業に

    千葉で生まれた私。父はアパレルブランドの経営者。家事はお手伝いさんが行う家庭で育ちました。都内の中高一貫校を卒業後は英会話の専門学校へ進学。その後、サンディエゴの語学学校へ通い、毎日楽しく過ごしていました。

    帰国し、このまま楽しく遊んで過ごしていくものと思っていたところ、周りの友人たちはみんな就職。じゃあ、私も働こうかしら、と父の紹介でアパレルの商社に入社しました。

    その会社が取り扱っていたのは服の裏地やボタンといった服装資材。男性の営業を補佐する営業事務として働くことになりました。

    学生時代に小遣い欲しさで父の会社のアルバイトしたこともあり、仕事の流れは入社前から理解していました。すると入社3ヶ月ほどで事務ではなく営業を担当。突然有名ブランドの営業を一人で担当することになりました。

    当時社内に女性の営業は一人もいない時代。「20歳の娘にムチャ振りやー」とも思いましたが、生まれ持っての負けず嫌い。ならばやってやろうと取り組むことに。

    仕事を発注してくれるのはブランドの生産部。仲良くなるには業界動向や新商品情報など相手にとって有益な情報を提供すること、と気づいてからは、足繁く通い関係構築を行うように。すると徐々に売上が伸び、社内で認められたことで大手の顧客も担当するようになりました。

    しかし、25歳のときに社内の男性と結婚。今では考えられないことですが「同じ会社に夫婦でいるわけにはいかない」という会社の方針もあり、寿退社となりました。

    派遣で入社した会社にて社員登用。その後、仕事に夢中になる。

    退職してからは、子供もいないため暇を持て余し、時間があればゴルフばかり。父が実家のそばに家を建ててはくれましたが、そんな暮らしを続けていればお金がなくなって当たり前。家計をやりくりするといった経済観念はほぼゼロでした。

    そんな暮らしを続けるよりも働いた方がよいかと考え、派遣会社に登録。そうして名古屋に本拠地を置く、産業設備を扱う商社の東京事務所で就業することになりました。人数は10人程度で、女性の事務員が庶務を切り盛りする小規模な事務所でした。

    当時は派遣会社がパソコンスキルをスタッフに習得させたうえで企業へ派遣されることが主流。私も覚えたてのワードやエクセルを駆使し、伝票作成や見積作成など行っていました。すると、半年ほど経った契約更新のタイミングで「うちで社員として働かないか」というお誘いが。せっかくなので正社員として採用してもらうことにしました。

    すると、これまで優しかった女性の事務員が、一転してお局化。パワハラ的な振る舞いを見せるようになりました。とはいえ泣き寝入りする気もありませんので、対策を考えました。

    東京事務所でもっとも売上を上げていたのは60代の理事。「この人にとって必要な存在になれば、守ってもらえる!」と考えた私は、徹底的に理事の仕事を吸収。スケジュールやアポイントの調整、事務処理の対応など、秘書的な役割を率先して行うようにしたところ、狙い通りお局からの被害も受けないようになりました。

    想定と違ったのは仕事がどんどん面白く感じるようになったこと。理事が持っていた人脈の多くは大企業のトップ層ばかり。高いレベルの環境でビジネスを行うことの面白みを感じるようになったのです。理事も私のことを使える、と思ったのか、パートナーして認めてくれた感がありました。

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    そんな二人三脚体制を続けて5年ほど経ったころ、高齢だったこともあり理事が病気で入院。ガンが発見され、ほどなくして亡くなってしまいました。すると社内を見回してみると、理事の仕事を引き継げるのは私だけ。世話になった理事の跡を汚すわけにはいかないと、ひたすら仕事に打ち込む毎日を送りました。

    気づいたときには事務所の売上の大半は私が占め、全国でもトップに近い売上を持つ課長となっていました。そんな私に降り掛かったのは、社内からの反発の数々。思い上がっているなどの批判はまだしも、身に覚えのない噂を立てられる始末。さすがにカチンときましたね。

    「でしたら、皆さんでご自由に進めてください」と伝え、ボーナスももらわず退職。その夏、気づけば入社して14年が経過し、私は40歳になっていました。

    エレベーターのメンテナンス会社で、契約社員ながら大きな裁量を持つことに

    仕事に打ち込んでいた時期に夫とは離婚。そんな独り身の私が退職後に決めたのは「ひたすら遊ぶ」ということ。まずはハワイで数カ月。帰国してからは軽井沢でテニスにゴルフ。ひたすら遊び倒した頃、さすがにお金も減ってきたので、冬が近づいたころにはそろそろ働こうかな、という気分になってきました。

    そんなとき、知り合いから急ぎで事務員を探している会社があると聞き、受けてみることに。そこはエレベーターの保守メンテナンスを行う会社。社長は中国人の女性でしたが、年が近いことや英語でコミュニケーションが取れることが気に入られたのか、契約社員として採用されました。

    入社してみると、総務的な役割だけではなく、売上管理や資金繰りの計画などかなりの範囲を担当し、社長の補佐を任されるように。なんでこんなに裁量を渡されるんだろう、と思いましたが、理由はすぐに判明。社長は出産を予定しており、その間会社を切り盛りしてくれる人を求めていたのです。

    契約社員でありながら、社長の不在時は入札に参加したり、現場に立ち会ったり、様々な役割を果たしました。そうして社長が帰ってきたとき、感謝を述べられるとともに社員にならないか、と誘われたのです。

    ですが、社員になるのはお断りしました。理由は、会社が提供するサービスの質に疑問があったことと、社長に全幅の信頼がおけなかったこと。忙しいことが原因ながら、何度か約束をすっぽかされることもあり、人としてルーズな印象が拭いきれませんでした。

    理由を率直に社長に伝えたところ、残念だけどと納得を得て、半年ほど勤めたタイミングで退職を選びました。

    二つのビルメンテナンス会社の監査役につくも、方針の違いで退職を選択

    ビルメンテナンスの業界は狭いもの。他社と顔を合わせる機会も多く、私が退職したことを知った何社かが「うちに来ないか」と声をかけてくれました。その中で営業と人の採用と指導を行うマネージャーを任せたいという会社があり、そこに入社を決めました。

    ビルメンテナンスの仕事は、お客様と保守契約を交わし進めるもの。そのため、交わした契約の人員が足りない場合は、マネージャーが現場に出て欠員を埋めなければなりませんが、入社したその会社は常に人不足。現場で清掃を行うことも頻繁にありました。

    当初は「お手伝いさんがお掃除してくれた環境で育った私が、なぜ他人の施設の掃除をするの!」と思うこともありましたが、現場の経験を積むほど指導に活かせること。そして、営業の提案にも活かせるというメリットもあったため、ブツブツ言いながらもマネジメントと現場の両方を担当していました。

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    そんなある日、まさかのことが。社長がトラブルを起こし、夜逃げしたのです。社長はいない、取引先の契約は残っている。「なんで私がこんな目に!」と嘆きましたが、スタッフに給料を払わなければ路頭に迷ってしまう。

    そのとき、別の会社から会社ごと引き取ろうかというお話が。背に腹は代えられない思いで、仕事とスタッフごとその会社にお引越し。会社の屋号は代わりましたが、同じスタッフたちとこれまでの現場に仕事へ向かう仕組みを残すことができました。

    私は経営側に入って欲しいと依頼され、監査役に就任。新たな社長は他にも管理会社を経営しており、そちらでもと請われたため、5年間ほど二つの会社を掛け持ちで監査役を担いました。

    社長とはうまくやっていたつもりでしたが、経営を拡大したい社長と、サービス品質を重視したい私の方針が徐々にズレが生じるように。ならば身を退きます、と退職することにしました。

    退職後は、英気を養うために日本各地に旅行。気づくと40代も終わりを迎える時期がそこまで来ていました。

    大手のビルメン会社へ入社するも、契約は守られず。転職を選択

    休んだあとは、新たな仕事探し。このとき初めて転職サイトを利用しました。50歳の自分に仕事が見つかるんだろうか、という不安もありましたが、経歴を登録したところ複数のメンテナンスの会社からスカウトが。2社受けて、中堅と大手のそれぞれで、正社員として内定をいただくことができました。

    迷ったのはどちらの会社に行くかということ。同業者に相談したところ、大手の方が待遇いいのでは、とのこと。中堅へお断りの連絡をしたところ「お心変わりすることがあれば、当社はお待ちしております」と丁寧なお言葉が。「正解はこっちだったかも」という思いはよぎりましたね。

    そして、やはり正解は中堅だったようです。

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    営業や人の指導を行うマネージャーとして採用されたにもかかわらず、欠員があるという理由で現場のサポートばかり行う日々が続きました。正社員という条件で人を釣り、現場仕事をしてもらうのが目的だったのでしょう。

    それを理解したとき「会社にも事情があるでしょうから、あと1年はこの状況を受け入れます。ですが、その後も改善されなければ退職します」と、入社して1年が経つタイミングで伝えました。しかし、その後も状況は変わらず。

    「退職するとは言っているけど、あの年齢のおばさんを正社員で雇ってくれるところなんてそうそうない。このまま働き続けるよ」と足元を見られている感じ。屈辱を感じました。何か行動しなければならない、そう感じました。

    そんなある日、久しぶりに転職サイトを開いたところ、スカウトが届いているのを発見。送ってきたのは大手企業グループの子会社であるビルメンテナンス会社。スカウトには40代50代の人員が足りず、経験のある人を求めていることが記載されていました。

    すぐに応募し、面接を受けたところ、「いつから入社できますか?」と内定前提の話になりました。ですが、今の会社には1年は待つと伝えている状況。そんな話をしたことを忘れ、この会社に転職することも考えました。

    しかし、自分を無下に扱う会社であれ、約束は約束。正直に「今の会社に3ヶ月後までは在籍する約束をしている」と伝え、その後であれば入社できるし、入社したいと伝えました。

    少しの沈黙が訪れました。その後、担当者から出たのは「では、それまで席を空けておきます」という言葉。嬉しかったですね。正直に振る舞ったことが報われた気がしました。

    やはり約束の1年が経っても、待遇は改善されなかったため宣言どおり会社を退職。53歳にして新たな会社への転職が決まったのです。

    仕事を通じて、いくつになっても満足感を味わっていきたい。

    今の会社では現場スタッフのサービスを向上させる役割を担当。どうすれば行き届いた清掃が行えるか、技術面と精神面の双方から指導を行っています。

    ときに抜き打ちで客先での働きぶりを観察にも行きますが、厳しいチェックは行いません。厳しくすれば人は辞めるだけ。フレンドリーに接して、工夫で改善できるポイントがあれば指摘を行い、基本的に褒めることでモチベーションを上げています。

    「やってみせ、言って聞かせて...」ではありませんが、一番スタッフを納得させられるのは自分でやって見せること。これまでの現場経験を活かすことができる、自分に一番フィットした仕事だと感じています。

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    正直、年齢を重ねての転職活動は大変です。とはいえ、私がやりたいのはマネジメント側。これからずっと掃除だけをする自分ではいたくない。だから行動を起こしました。

    中高年世代で新たな仕事に就く際、大事なことは見栄を張らないこと。同僚、上司は自分より若い人ばかり。わからないことは素直にわからないと伝え、謙虚な姿勢で働くことが大切です。

    清掃は決して難しい仕事ではありませんが、手を抜くとすぐにバレてしまう仕事でもあります。大切なのは心の持ちよう。担当する施設で働くお客様のことを思いやり仕事ができる人ならば、きっと楽しく働くことができるでしょう。

    まとめ

    人生は楽しむためにあるものだと、私は思っています。それなのに、経済面だけみれば働く必要性のない私がどうしてこれまで働き続けてきたのか。それは、働かずに遊びばかりし続けることのつまらなさ。そのことに気づいてしまったからかもしれません。

    どんな仕事でも、働くことは満足につながる。それは自己満足かもしれませんが、誰かと喜びを分かち合える瞬間が必ずある。それを味わえるだけでも、仕事に就き続ける意味はあるのではないでしょうか。

    ようやく安定を手に入れたこの職場。自分のペースで仕事ができるうえに、60歳の定年を迎えた後に延長することも可能です。人を育て、自分も楽しみながら、これから長く勤めていこうと思います。

    ※年齢は2019年7月取材当時のものです

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