50代男性 営業の転職体験談 | 人生は一度きり。早期退職の募集を機に、若い頃の夢を追ったその結末は

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50代男性 営業の転職体験談 | 人生は一度きり。早期退職の募集を機に、若い頃の夢を追ったその結末は

奥様とお二人で暮らす澤部さん(仮名)57歳。誰もが知る大手メーカーで営業職として勤務。社内のビッグプロジェクトを主導するなど順調にキャリアを重ねてきました。しかし、50歳のときに早期退職を選択。それからのキャリアと転職活動についてお話を伺いました。

この記事の目次

    大手メーカーで営業。社内でも最大級の契約を受注するなど順調な日々

    東京で生まれ育った私。幼少期からピアノをやっていたこともあり、音大への進学も考えたのですが、文系大学に進学しました。

    学生時代は音楽系のサークルに属し、積極的に音楽活動に勤しむ毎日。僅かではありましたが、ギャラもいただけるようになり、音楽で食べていくことも検討していました。

    しかし、そんなときに父が他界。残された母のことを考えると、長男である私は会社勤めをするべきか、と考え就職活動をすることに。金融などの堅い印象の業界は避け、メーカーや商社などに応募。とあるメーカーに就職を決めました。

    商社よりもメーカーを選択した理由は、自分の時間を確保できそうだから。その時間で音楽活動をしたい、という気持ちがあったためです。

    そして就職したメーカーでは営業を担当。IT機器全般を商材としたソリューション型の営業です。そうして、最初の7年ほどは流通業界、その後商社関連を10年に渡って担当。

    徐々に大きな規模の仕事を任されるようになり、40歳になった頃。当時会社でもっとも大きな取引であった通信業界の営業を担当することになったのです。

    営業部長としてチームをマネジメント。そうして総額1千億近い大プロジェクトを受注。何ヶ月も家に帰れないほど多忙を極めましたが、会社の中で最大規模の契約であったこともあり、社長賞を受賞するなど会社からも大きな評価を受けました。

    仕事は順調。評価にも満足。きっと順調なキャリアと呼ぶにふさわしい状況だったと思います。ですが、その時期から退職することを考え始めたのです。50歳のときでした。

    早期退職をチャンスと捉え、昔からの夢を実現するため行動

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    きっかけは社内で早期退職の募集が行われたことでした。会社から発表された大幅な人員削減計画。主な対象となったのは人事総務などのスタッフ部門だったこともあり、私のような営業は対象ではありませんでした。

    しかし、その時に感じたことは、これは「音楽で食べていく」という気持ちを実現するきっかけになるのでは、ということ。就職を選び、音楽の道を断念したこと。それはずっと気持ちのしこりとして残っていました。

    大きなプロジェクトを成功させたことで、達成感を味わった。そして、「この会社でできることはやりきった」という気持ちも醸成したのです。

    当時、50歳。役職定年が55歳。定年が60歳。結局5年後には給与は減り、ポジションも変わる。どこかで人生のリスタートを切るのであれば、早いうちがよいのでは。そう考えたのです。

    妻にこの考えを話したところ、以前から音楽への思いを知っていたため、「あなたの好きにしたら」との返事が。そうして、早期退職を選ぶことを会社に伝えました。

    一度しかない人生。やりたいことをやろう。そう決めたのです。

    繁華街にピアノバーを出店。しかし、3年で閉店の憂き目に

    退職後、計画を練った上で起業。決めたのは繁華街にピアノバーを出すことでした。物件を借り、内装を整え、店をオープン。開店してから半年ほどは想定を上回る来客があり、経営は順調に見えました。

    しかし、新規の来店が落ち着いた頃から、経営は曇り模様に。新規の顧客が常連として定着しないことが原因でした。それからは、新規の集客施策を考え、実行。常連にするべく様々なアプローチを行いましたが、それらはなかなかうまくはいきませんでした。

    好きで、やりたくて始めた事業。もちろん楽しさはありましたが、それ以上に苦しみを感じていました。利益は出せず、負債が増える日々。結局3年が経った頃、店を畳むことを決めました。

    ピアノバーを経営して感じたことは、売上にとらわれるのではなく、文化を守るという意識でなければやっていけない、ということ。しかし、素封家のパトロンなどスポンサーがいなければそのような経営はできません。

    店を閉める決断をして感じたことは、やはり仕事は仕事として、好きなことは別で活動することが良いのだな、ということ。営業最終日、閉店後の店の中で一人感じたのは少しの寂しさと、苦しさから逃れられるという開放感でした。

    50社以上応募してようやく見つけた仕事。わずか半年で、介護のため退職

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    店を畳んだ後、転職活動を開始しました。複数の求人サイトに登録を行い、IT業界を中心に求人を検索。気になる企業を見つけては、応募することを繰り返しました。

    しかし、書類がなかなか通過しない。都合50社近く応募しましたが、書類が通過したのは3社ほど。中高年からの転職活動が厳しいとは聞いていましたが、ここまでとは思いませんでした。

    ところがある日、スカウトメールが届きました。不特定多数を対象に送られたものではなく、自分がサイト上に登録した経歴をしっかりと理解したうえでのスカウト内容だったことは嬉しかったですね。

    スカウトのあった求人は、人材紹介会社の営業職。さっそくコンタクトを取り、面接へ。そうして内定を獲得することができました。給与水準は高くはありませんでしたが、正社員としての採用であったため、「これでようやく一息つける」と安堵しました。

    しかし、勤めてみたところ、なかなか数字が上がらない。メーカーの頃は自分が努力すればその分数字が上がりましたが、人材紹介の場合は自分の活動だけでは数字が上がらない。しかし、数字を上げなければ給与のインセンティブが獲得できない。

    仕事なので我慢をしていましたが、フラストレーションは溜まりましたね。そんなときでした、妻が倒れたのは。

    倒れた理由は、義父母の介護疲れのためでした。義母がガンに罹患。義父にも認知症の症状が現れたため、妻は通いで介護をしていたのですが、体力的に限界。そのような状況であったため、妻とともに介護を行うことを決めました。

    会社に介護休暇制度はありましたが、しがみつく気持ちもなかったため退職することを申し出。勤めて半年ほどのことでした。

    退職してからは、派遣社員としてコールセンターで働きながら介護に時間を費やしました。そうして義母を看取った後、介護のプランについてケアワーカーに相談した結果、義父を施設に入居させることに。

    そうして身辺が整理された状態で、再度の仕事探しを行ったのです。

    ようやく出会った経験が活かせる仕事。必要としてくれたことが嬉しかった

    それからも求人サイトを中心に仕事探しを続ける毎日。やはり厳しい状況は変わらず、数十社へ応募は行いました。

    しかし、人材紹介会社に勤めたこともあり、経歴の記載がわかりやすくなったのかもしれません。前回活動していたときよりも、スカウトをいただくことが増加。そうして接触した会社へ連絡してみました。

    その会社はエンジニアを様々な企業へ派遣する、いわば特定技術派遣のような業態です。これまでのITの知識と、人材の知識のそれぞれを直接的に活かせる仕事でした。社長と面接。その翌日電話があり、さらにコミュニケーションを深めた結果、入社を決めました。

    入社を決めた理由は、人手不足の状況が続く市場で成長性を感じたこと。そして、なんと言っても自分を必要としてくれたことが嬉しかったからです。統括部長のポストを用意してくれ、社長をサポートする役割を担っています。

    まとめ:やりたいことならば、やったほうがいい。だけど、計画は慎重に

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    年齢で判断されるのは仕方ないよな、と半ば割り切りつつも、「人生100年時代ならまだ半ばの年齢なのだから、年齢だけで判断するなよ」という気持ちはありましたね。

    50代になってからの転職活動は、思っていた以上に厳しいもの。世の中は甘くないな、ということを改めて感じました。

    仮に同年代の人から転職に関する相談を受けたならば、まずはその理由について聞きますね。理由が「会社への不満や不安」なのであれば、会社に残った方がいいよ、とアドバイスするかもしれません。環境を変えたところで同じことになる可能性があるからです。

    だけど、会社を辞める理由が「やりたいことがある」ということならば、自分の話を伝えます。そして、慎重に計画を練るようアドバイスしますね。

    人生は一度しかないんだから、やりたいことがあったらやればいい。今でもそう思っています。起業してからのやり方にはもっと考える余地がありましたが、音楽と共に生きていくために会社を辞めたことには後悔はありません。

    紆余曲折して出会ったこの会社の良いところは、定年がないこと。会社からはいつまでも働いていいよと言われています。

    これからも長く働き、仕事を通じて多くの刺激を味わっていきたいですね。
    ※年齢は2019年6月取材当時のものです

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