50代男性 エンジニアの転職体験談|これからも技術者としてのやりがいを保ち続けるために

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50代男性 エンジニアの転職体験談|これからも技術者としてのやりがいを保ち続けるために

大手メーカーからキャリアをスタートさせ、二度の転職を挟みながら、一貫して技術畑を歩んできた坂口さん。三人のお子様を持ち、末子はまだ就学中というなかで、57歳の転職を決意したその背景と理由についてお話を伺いました。

この記事の目次

    一貫してエンジニアとして歩み続けてきたこれまでのキャリア

    地元の高専を卒業し、東京の大手メーカーへ就職。自社製品に搭載されるマイコンの設計などを担当し、技術者としての着実な歩みを積み重ねていました。

    転機が訪れたのは入社15年の勤続表彰をされた頃。会社が設立した新工場へと異動になったのがきっかけでした。会社としては、自身の技術力に対する期待などを見込んでのポジティブな異動ではありましたが、通勤距離が長くなったことや、これまでの専門分野とは畑が違うことなどもあり、ストレス要因は重なっていきました。

    折しも、その頃は「人材バンク」というサービスが一般化してきた頃。興味を感じて登録を行ったところエージェントより魅力的なオファーがあり、転職を決めました。1997年頃のことです。

    転職した会社は技術者の請負を行う大手企業。様々なプロジェクトに参加し、経験・スキルを蓄積していきました。しかし、当時は決して好景気とはいえない状況。プロジェクトの間に隙間期間が生まれることもあり、実入りが安定しないことも。加えて、営業事情を最優先するあまり、ときに会社から「技術者はコマ」と扱われる感覚もありました。

    そうして再度の転職を思いたち、エージェントへ相談したのです。

    配置転換から芽生えた転職への思い

    そうしてエージェントから紹介された東京のとあるメーカーより魅力的なオファーをいただき、転職を決めたのが2006年のことでした。

    そこが手がける製品はニッチな分野ながらも、高い技術力が評価されており、企業規模以上の大きなプロジェクトを抱えていることが魅力の一つでした。そして、私も社内の様々なプロジェクトに参加。これまでの技術を活かしつつも、新たな知識を学んでいく毎日に充実感を覚えていました。

    しかしながら、会社というのは変わっていくもの。会社規模の拡大を行うために、徐々に技術者が「技術営業」という名目で営業へ配置転換されるように。「技術営業」という名目ではあるものの、内実は営業活動が主なもの。エンジニアとしての業務からは離れた毎日を送るようになりました。

    とはいえ、その会社は役職定年もなく、給与待遇も不満がない水準。「サラリーマンというものは多かれ少なかれ、不満はあるもの」と達観さえしてしまえば、我慢してやり過ごすという選択肢ももちろんありました。

    しかし、キャリアの最晩年。気乗りしない思いに蓋をして働き続けるよりも、やりがいを感じながら毎日を過ごしたい。その思いを妻に伝えたところ、家庭の経済状況をあわせて検討したうえで、理解を示してくれました。背中を押してくれた妻には感謝の気持ちでいっぱいですね。

    そうして、営業へ異動して1年が経とうとしていた頃、「再度転職しよう」という気持ちを固め、人材紹介会社への登録を行ったのです。

    転職の軸は「待遇の維持」と、「技術者目線を持った会社」であること

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    とはいえ、年齢は56歳。これまでのように転職がうまくいくとは思ってはいませんでした。そのため、希望条件は以下の4つに整理しました。

    ①地方の工場や、海外への転勤がないこと
    ②正社員雇用で、年収・待遇は現状維持ができること
    ③60歳以降でも一定水準で働き続けられること
    ④営業数字最優先ではなく、技術者視点を持った会社であること

    ①は体力的な課題と家族と暮らすため。②③はこれからも家計を支えていくため。しかし、今回の転職で大切にしたかったのは④の条件でした。

    これまで様々な企業で働いてきましたし、営業も経験してきました。そのため、営利企業である以上、売上、そして利益を優先することは理解しています。しかし、その姿勢が行き過ぎたため、その尻ぬぐいを技術者が行うというケースを何度も体験してきました。

    キャリアの最晩年を過ごす。ならば、そのような憂いを可能な限り排除したうえで、技術者としてのパフォーマンスを最大限に発揮したい。そんな思いをエージェントには伝えました。

    とはいえ、自分としても「この年令で、こんな条件を提示している」そんな人材を採用してくれる企業があるのだろうか、という不安はありました。しかし、それは採用側の企業が決めること。そう割り切って登録を行い、企業からのオファーを待つことにしました。

    人から必要とされる自分であり続けたい

    ところが、覚悟していた通り、なかなか希望にあった求人の紹介はありませんでした。40代のときの転職と比較しても、興味を持ってくれる企業は圧倒的に少なく、正直焦りを感じる気持ちはありました。

    その他の職種ならば採用されるのかと考え、マンション管理の仕事を受けてみたこともあります。身体的な負荷も思ったよりも低いことや、電気機械関連の知識が活かせることもあり、心動かされる要因もありました。

    しかし、待遇が折り合わないことと、やはりこれまでの経験を直接的に活かした仕事に就きたいという思いを優先し、お断りすることとしました。オファーがあるかわからない、希望の仕事を待つことにしたのです。

    そうして不安な気持ちを抱えながら営業の仕事を続けていたある日、エージェントから連絡が。「技術派遣の会社で、希望に近い求人が出てきました」と。

    詳細を聞いてみると、概ね希望に沿った内容。年収こそ1割程度下がるものの、正社員としての雇用であり、60歳以降も納得できる待遇水準で働き続けることができるというもの。

    応募したい意思を伝え選考に進んだところ、自分を必要としている理由やアサイン予定のプロジェクトの説明を受けました。プロジェクトの進め方や業務を請け負う顧客との付き合い方の説明を受ける中で、技術者に対する配慮などが感じられたことも好印象でした。

    そうして、現在の会社へ転職することを決めたのです。

    悩みの無い中高年世代なんていない。解決のためにやるべきことは優先順位の整理

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    入社してからは研修を受けた後、とある企業へ常駐し設計業務を担当しています。この企業は新規で請負の取引が始まった会社。そのため、私のパフォーマンスが会社の評価に直結するという緊張感を持ちながら、モチベーション高く働くことができています。

    以前所属した請負の会社では、客先に技術者が行ってから営業が定期訪問にこないということもしばしば。しかし、今の会社では折を見て営業が訪れるため、技術者を軽んじるような雰囲気は感じません。

    今度から私の下に若手が配属されるので、教育していくという役割も担うことに。非常にやりがいを感じますね。

    私くらいの年齢でサラリーマンをやっている人の場合、これからのキャリアに対して悩みを持っていない人のほうが少ないのではないでしょうか。

    そういった場合、「どうしても転職したい」のか、「生活を維持」するためには残るという選択もあるのか。優先順位を明確にしたうえで、「どうしても転職したい」のであれば、エージェントに相談するなどで市場価値を図る、という行動しかないのではと思います。

    まとめ

    今後の生活、人生をどのように送っていきたいのか。それを真剣に考え、家族がいれば相談し、そのうえで行動に移すことがやはり大切です。

    うまくいくという保証はありませんが、それは誰でも同じ。若い世代だって同じです。自分にどんな可能性があるかは、動き出してみないとわからないですからね。

    ※年齢は2019年2月取材当時のものです

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