40代以降の転職で考慮するべき4つのポイント|「ミドルシニアのためのキャリアの教科書」vol.09

  • 木村勝のキャリアの教科書
40代以降の転職で考慮するべき4つのポイント|「ミドルシニアのためのキャリアの教科書」vol.09

中高年専門ライフデザインアドバイザーの木村です。前号では、ミドルシニアの皆さんが今後取りうる選択肢のうち、「今の会社に勤め続ける」シナリオの留意点、ポイントについて考えてみました。今回のコラムでは、「転職する」シナリオについて、「ミドルシニアの視点から押さえておかなければならないポイント」について考えていきたいと思います。

この記事の目次

    報道される好況よりも、自分の感覚を信用すること

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    2017年平均の有効求人倍率が1.50倍となり、1973年以来44年ぶりの水準になったことが1月30日に厚生労働省から発表されました。総務省が同日発表した2017年平均の完全失業率も同0.3ポイント低下の2.8%となっており、労働市場が活況を呈し売り手市場であることを示しています。

    注意しなければならないのは、上記水準は全年齢・全職種の平均値であることです。年齢・職種によって数字は異なりますので、ミドルシニアの皆様は、報道された丸まった数字で一喜一憂することなく、目の前にある具体的な案件について自ら立てたキャリア戦略に照らし合わせて世間体や見かけの労働条件に捉われることなく、ご自身の視点で納得して選択していくことがポイントです。

    それでは、「転職する」ことを選択する際のポイントについてお伝えしていきます。

    事前に十分なキャリアの棚卸を行い、在職中に「次」を決める

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    ミドルシニア世代においては、事前の準備なしに転職というシナリオを選ぶことは、極力避けなければなりません。第4回連載で解説させて頂いた「家族キャリアマップ」「ライフカーブ」などのツールを活用し、ご家族との十分なコミュニケーションを取りながら転職を検討することがポイントです。「退職して失業保険をもらいながらのんびり考えよう」というスタンスでは、求職活動も長期化しがちです。

    「働けるうちは働く」ことを目指して「細く・長く」をコンセプトとする

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    バルブ世代が50代に入り、ある一定年齢で役職から外れる「役職定年の怖さ」が話題になっています。私も昨年、別媒体にて「役職定年」についてコメントをしたことがありますが、一社奉公を尽くしてきたビジネスパーソンにとっては、この宣告はモチベーションを大きく下げるきっかけになっています。

    しかしながら、この役職定年制度は大企業中心の制度であり、中小企業での採用率はそれほど高くありません。大企業では、毎年大量の新入社員を採用するところが多く、どんどんポストを回していかないと組織がうまく機能しません。しかしながら、中小企業では毎年大量に新卒を確保できるわけではなく、文字通り「働けるうちは、役職も外れることなく給与も下がらない」会社も実は多いです。

    ミドルシニアからの転職は、新卒者の就職活動のように会社の規模やネームバリュー、見かけの労働条件に拘るのは禁物です。転職当初は、一時的に給与は下がっても「細く・長く」のコンセプトにより「面積」で稼ぐ戦略も「大いにあり」です。早めに65歳以降もエイジレスで(年齢にかかわらず)働ける会社に移っておくことは優れたキャリアの選択肢の一つです。

    人生100年時代を見据えて「職住接近」を意識する

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    (言葉は悪いですが)「出世」というインセンティブが目の前に見えていた若手時代は、どんなに通勤に時間がかかっても、あるいはどんな遠隔地に単身赴任しようとも、将来のリターンを考えるとそれほど苦にはなりませんでした。しかしながら、ミドルシニア世代からは、通勤時間という要素も考慮に入れる必要があります。

    筆者が元勤めていた会社は、以前中央区に会社がありましたが、途中で神奈川県に会社が移転になりました。定年再雇用となった先輩も埼玉高速鉄道沿線の駅から通われていましたが、想定外の本社移転で通勤時間が片道2時間超と倍以上になり、毎日の長時間乗車が一因で腰を痛め、会社を途中で退社されました(腰痛だけの理由ではありませんでしたが)。
    お話をうかがうと車両によってシートの硬さ、高さが異なるとのこと、退社間際には車両に関しては鉄道マニアのような詳しさでした。現在は、ご自宅の近くで定年再雇用後の水準と変わらない給与待遇でお仕事をされています。

    前号でも取り上げましたが、定年再雇用後の給与は現役時点の5割前後まで下がるのが一般的です。給与水準が下がることがわかっているのであれば「近場で同水準の給与の仕事」に就くことで、体力的な負荷も減り自分の時間を確保することができるのです。長時間通勤を行っているミドルシニアの方は、「大雪の際に半日かけて会社に駆けつける」そんな生活からの卒業もそろそろ考えてもいいかもしれません。

    「働く」とは会社に勤めることだけではない

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    当方も「働けるうちは働く」ことをキャリアの基本方針として仕事をしておりますが、この「働く」には企業から収入を得て働くことだけを想定しているわけではなく、ボランティアも含めた地域活動も想定しています。

    「人生100年時代」において「地域活動」は大きなポイントです。そのためにも高齢になる前から少しずつ、自分の活動範囲を会社から自分の住む場所へシフトしていく必要があります。当方も現在、地元からほど近い三鷹にてシニアの自主的な勉強会(月1回)に参加させて頂いておりますが、これも職住接近のなせる業です。地域活動への参画という面でも、通勤時間の短縮はプラスに働きます。

    また、今後の誰もがその役割を担う可能性のある介護対応などでも職住接近は大きなアドバンテージになります。もちろん、介護休暇制度の導入により以前より休みは取りやすくなりましたが、ケアマネージャーや地域包括支援センターとの打合せなどが発生するなかで、通勤片道が2時間なのか30分なのかでは、その負担は段違いです。

    まとめ:体を壊してまでやる仕事はないと心得る

    いずれのシナリオを選択する場合でも絶対原則とも言える大原則があります。それは、「無理して体を壊してまでやる仕事はない」ということです。

    よく、俳優さんや歌舞伎役者の方が、「舞台の上で死ねるなら本望」などとおっしゃいますが、それは、キャリアでいう「WILL(やりたいこと)、CAN(できること)、MUST(やらなければならないこと)」が完全に一致しているからです。この3者が完全に合致しているレアケースを除いて(合致していてもダメですが)体を壊すようなシナリオは選択してはいけません。

    また、「今は我慢、65歳になって会社を引退したらゆっくり温泉でも行こう」という考え方もリスクです。当方は35歳の時、子供が生まれる1カ月前に急性心筋梗塞で倒れ死にかけたことがありますが、やりたいことがその時に出来るかどうかはわかりません。

    今まで会社の敷いたレールに何の疑問も持たずに乗り続けてきたビジネスパーソンも会社キャリアの最後は、「自分自身で自信を持って決める」ことが必要です。自分で決めたという納得感が後々の行動にも大きな自信を与えるでしょう。

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