家族プランとセットで考えるのが成功の秘訣|「ミドルシニアのためのキャリアの教科書」vol.04
- 木村勝のキャリアの教科書
- 公開日:2018年1月11日
前回コラムにてキャリアの棚卸の必要性について説明させて頂きました。キャリアに関する一切の資料を一か所にまとめ、あなた独自のキャリアに関するデータベースを作成していくイメージです。今回は、実際に集めた資料の具体的な活用法について話を進めていきたいと思います。
この記事の目次
自身の人生を振り返る「家族キャリアマップ」
資料を集めるとすぐに履歴書や職務経歴書に落とし込んでいきたくなりますが、その前に「鳥の目」で今までの歩んできたご自身の人生を振り返ることが重要です。そのためのツールが「家族キャリアマップ」です。
「家族キャリアマップ」とはどのようなものでしょうか。特別なものではありません。あなただけではなく、家族全員の時間軸と家族イベントが入った年表です(両親まで入れるとかなり年代幅が広がりますが、要介護の時期なども見通せますのでよりリアルなプラン作成が可能です)。
自分のキャリアイベント(定年退職など)だけでなく、子どもの大学入学・卒業の時期、銀婚式の時期など家族に関する主なイベントも書き込みますので、あなたを含めた過去&将来の家族イベントが一目瞭然になります。
作成する効果と活用方法
「家族キャリアマップ」を作成する効果は次の通りです。
①家族のイベントを入れ込むことによって、独りよがりではない現実的なキャリアプランが作成できる
②作成の過程で家族とともに過去の振り返り、将来プランの共有化ができる
③あらためて「同じ船に乗る仲間」という意識が湧きあがり、責任を持ったキャリアプランを推進しようというモチベーションにつながる
また、「家族キャリアマップ」を作成したら、ぜひその年度中にご家族みんなで商売をする体験イベントを組み込んでみてください。地域で開催されるフリーマーケットがおススメです。別に儲けるために行うのではありません。
家族一緒に直接マーケットに向き合い、自分の活動をマネタイズ(収益化)する経験が重要なのです。もちろん売上げは微々たるものですが、家族全員が得られる「商人マインド」は貴重です。
今後キャリアをチェンジする際には(突き詰めて考えると)労働市場と直接に向き合い、自分の市場価値を冷静に見極めていくプロセスを経験していく必要があります。その意味でも家族全員で直接市場と対面する経験は重要です。
当日汗水流して稼いだお金を夜の回転寿司の軍資金に回せば、かけがいのない思い出のパーティになります。「家族キャリアマップ」に息を吹き込む方法として、ぜひ今年の実行計画として組み込むことをおススメします。
自分と家族と世間を整理することで、今後のキャリアが見えてくる
「家族キャリアマップ」には、もう一つの情報を入れ込みます。それは「社会の出来事」です。
「家族キャリアマップ」にその当時の出来事・ニュース・ヒットソングなど「時代の風」を感じさせる情報を入れ込むことによって、世の中の動きとは関係なく動いてきたように見える自分のキャリアが、実はその時代の流れ、日本・世界の政治経済動向など大きな流れと連動していることがわかります。
「社会の出来事」を記入する際には、生きていた時代の流れがわかる市販の年表も役に立ちます。『年表 昭和・平成史 1926~2011』(岩波ブックレット)などは、値段も安くおススメです。
こうした資料とあわせて、自分・家族にとって節目の日の新聞などを準備することもキャリアの振り返りに役立ちます。今やコンビニ(全国のローソン、ファミリーマート、サークルK、サンクス)に設置してあるマルチ複合機から、24時間365日いつでも特定の日の新聞の一面がプリントできます。
例えば、子どもが生まれた日の新聞を手に取るとその時代の様子が走馬灯のように思い起こされます。こうしたことが、今後新たなキャリアを推進していこうという強いモチベーションになります。
こうして、客観的な「時間軸」と「世間の出来事」と「家族の出来事」と「ご自身のキャリアイベント」を1枚に集約した資料が出来上がります。自分の人生を「鳥の目」で俯瞰する「家族キャリアマップ」の完成です。
個人だけではなく、家族のプランも考えることが成功の秘訣
ここまで説明をさせて頂きましたが、自分のキャリアチェンジなのに、なぜ家族の情報を入れ込むのか?といぶかしく思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ミドルシニアからのキャリアチェンジの場合、家族を考慮せずに独断で進めたプランはなかなかうまくいきません。ミドルシニアになると家族との日頃のコミュニケーションは少なくなりがちですが、配偶者、家族もそれぞれ独自にライフプランを描いています。
それゆえに、こうした家族のライフプランを考慮に入れた上であなたのキャリアプランも作成する必要があるのです。
私は、長年企業内で中高年管理職の「出向」業務に携わってきました。ご本人も、初めは「賃金が下がる」、「知名度がない」、「規模が小さい」などという理由で難色を示していたケースでも、様々な転職案件に遭遇しご自身で様々な角度から条件を検討していくプロセスを経ることによって納得して出向先を決める場合がほとんどです。
しかしながら、一方でご本人と配偶者・家族間で十分にコミュニケーションを取らずに独断で検討を進め、最後の最後で配偶者・家族に報告、結果として家族からの猛反対を受け、案件が不成立となった事例を何件も見てきました。
転職するご本人としては、「家族に心配をかけたくない」、「すべて決まってから報告しよう」という考えになりがちですが、ご本人が経てきた「納得のプロセス」を配偶者・家族は経てきていません(寝耳に水状態!)。
リストラされたことを家族に言えずに、「毎日今まで通り朝7時に家を出て日比谷公園でひとり昼間を過ごし、会社に行ってきたかのように夕方6時に家に帰る人」になってはいけません。
例え、そのような状況になったとしても、人生100年時代、60歳、65歳から先の第二のキャリア実現に向け舵が切れたことをラッキーと考えて、家族とともにその実現に向かって進むという前向きのマインドセットがミドルシニアからのキャリアチェンジでは重要です。キャリアプランにご家族の情報を入れ込む必要性はここにもあります。