パートの休憩時間、ルールや注意点【社労士監修】
- ちょっと得する知識
- 公開日:2018年10月10日
社員であれば、ランチタイムは楽しい休憩の時間。でも、この休憩時間は、パートやアルバイトでも取得できるものでしょうか? 時給で働くパートの場合、休憩している時間は時給に含まれるのかも気になりますね。ここでは労働基準法に定められた休憩時間のルールや注意点についてまとめました。
覚えておきたい休憩時間の基本的なルール
勤務時間が長時間になると、どこかで食事をとったり、休憩する時間がほしいものですね。しかし、この休憩時間は、どれくらい勤務した場合に適用されるのでしょうか? 基本的なルールを知っておくと、休憩時間や労働時間のことで労務担当者に相談するようなことになったときも、スムーズに話が進みますよ。
6時間以上労働する場合は休憩は義務
労働基準法では、労働者の休憩時間について、
・労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分の休憩をとらせる必要がある
・労働時間が8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩をとらせる必要がある
と規定されています。
朝から昼をはさみ、夕方まで通しで働く場合や、昼すぎから出勤して夜まで働く場合はもちろん、1日単発バイトでも、労働時間が1日6時間~8時間を超える場合もありますね。こういった6時間を超す労働時間の時には、労働者に休憩時間を取らせることが、雇用する側に義務付けられているのです。
労働基準法は原則として強行法規です。そのため、どんなに忙しくても、人手が足りなくても、1日6時間以上働く労働者に休憩をとらせない会社は法律違反となります。
休憩時間は給料にカウントされない?
朝から夕方まで、もしくは昼過ぎから夜までと、長時間通しで働く場合、食事をとる時間も必要ですね。では、その食事のための休憩時間にも、時給は発生するのでしょうか。食事するためとはいえ、拘束されているのだから時給は発生するのではと考える人もいるかもしれませんが、休憩時間は給料(時給)には反映されません。
しかし、これはあくまでも「労働から完全に離れた休憩時間」のこと。中には「昼休みでも電話があったら対応してほしい」「休憩中にササッとやっちゃって」などと仕事を頼まれる場合もあるかもしれませんが、休憩中にわずか数分でも労働する場合は、休憩時間とはみなされず、時給が発生します。
また、「せっかくの昼休みが電話応対でつぶれた」などという話を聞くこともありますが、この場合は休憩中も労働していたことになるので、電話応対に充てた時間を労働時間 として取ることもできるのです。
長時間働いている人の中には、「休憩時間は時給にカウントされないので時間のムダ。休憩取らずに働いて、終業時間を早くしたい」という人もいるかもしれません。しかし、労働者が望んだとしても、労働基準法は先にも説明したように強行法規で、45分ないし60分の休憩が義務付けられています。労働者本人の同意があっても、その規定内容に反する措置を採る事は、会社はできません。
待機時間は休憩時間としてみなされない
仕事をする中で、こちらはすぐに動ける体制が整っているにもかかわらず、待機を余儀なくされることもあります。「準備ができるまで、休憩して待っていて」などと言われる場合があるかもしれませんが、この待機時間などの手持ち時間は、休憩には含まれません。
パートの休憩時間におけるポイント
労働基準法では、働く人のための休憩時間がきちんと定められていますが、社員ではなくパートやアルバイトにも当てはまるのでしょうか。長時間働くパートタイマーにとっては気になるポイントについてまとめました。
6時間を超えて8時間未満の場合は45分の休憩
労基法では、正社員・派遣社員・パート・アルバイト(アルバイトをする大学生なども)もすべて「労働者」と定義しています。そのため、前項で説明したのと同様に、パートでも6時間を超えて、8時間未満の労働の場合は45分間の休憩をとることができます。
ここで注意したいのは、「6時間ちょうど」の労働の場合は、法律的には休憩はなしでもよいということ。45分の休憩をとることができるのは、「6時間を超えて8時間以下 の労働」となります。長時間のパート主婦に多い「9時~17時」の勤務の場合は7時間労働になるので、45分の休憩を取得できます。
8時間を超える場合は1時間の休憩が必要
労働時間が8時間を超えると、1時間の休憩を取ることができます。時間は1時間と定められていますが、これを「休憩30分と30分に分ける」と2回に分けてとったり、1時間まとめて一気にとるのも、労働者の自由です。
パートやアルバイトの場合、繁忙期であったりシフトを組む都合などで、労働時間が6時間未満になったり、8時間を超えるなど、勤務日ごとに変わる場合もあるかもしれません。その場合、1日の労働時間に則って、その日ごとに休憩時間の長さが変わります。
パートで休憩がいらないケースとは?
パートでも休憩がとれることがわかりましたが、反対に休憩時間がとれないケースはあるのでしょうか?集中を要する仕事や肉体労働は休憩がとても大事です。どのような場合に休憩がとれないのか解説します。
宿直の仕事をしている場合
労働基準法の施行規則23条では「宿直又は日直の勤務で断続的な業務(断続的な宿日直勤務」について労働基準監督署長の許可を受けた場合には,当該労働者について労働時間・休憩時間・休日の規定の適用が除外される」ことが示されています。医療施設や介護施設などで、パートでも宿直がある場合、労働時間規定等の適用が除外されます。
6時間以下の場合
前項でも説明したように、休憩時間を取得できるのは、正社員でもパートでも短期・長期バイトでも、「6時間を超えた」労働時間の場合です。6時間以下の 1日4時間~5時間の労働時間の時や、6時間ちょうどの労働時間の場合は、「休憩なし」となります。
ただし、シフト上では「5時間」となっていた場合でも、残業でその日の労働時間が6時間を超えてしまったときは、休憩をとることができます。
業務委託契約を結んでいる場合
業務委託で、1日6時間を超える長時間、業務に携わっている人もいるでしょう。休憩時間についても気になるところですが、業務委託契約の場合は、個別の契約内容によって変わることが多いようです。
業務委託として契約を結んでいたとしても、実態として発注元と従属関係があり、その労働の対価として賃金が支払われる場合があるかもしれません。その場合、法律(労働基準法)が適用され、「労働者」と見なされるケースが多いようです。労働者として6時間を超えて業務に携わっているのであれば、休憩時間を取ることができます。
時短パートを上手く活用して、家事や育児と両立しながら働こう
長時間働く上で、休憩は体力の回復や気分転換のために重要ですが、忙しい主婦にとっては「休憩時間がもったいない」と感じる人もいるかもしれません。そのような方におすすめなのが、休憩時間をカットする時短パートです。家事や育児との両立もしやすい時短パートのメリットについてご紹介します。
実はフルタイムよりも6時間勤務の方が効率的?
労働基準法で定められている休憩時間は、「(労働時間が)6時間を超える場合においては45分以上」「8時間を超える場合においては1時間以上」となっています。その45分ないし1時間の休憩時間をカットして効率的に働くのが「時短パート」です。
始業時間が9時からだとして、「8時間を越えて働く場合」「7時間働く場合」「6時間働く場合」で、どのくらい効率的になるのか、すべて時給1,000円の場合として、それぞれ具体的に見てみましょう。
<8時間を越えて働く場合:休憩1時間>
・9時~12時(3時間勤務)
12時~13時(休憩)
13時~17時5分(4時間5分勤務)
拘束時間:8時間5分
労働時間:7時間5分
支払給与:7,083円
<7時間働く場合:休憩45分>
・9時~12時(3時間勤務)
12時~12時45分(休憩)
12時45分~16時00分(3時間15分勤務)
拘束時間:7時間
労働時間:6時間15分
支払給与:6,250円
<6時間働く場合:休憩なし>
・9時~15時(6時間勤務)
拘束時間:6時間
労働時間:6時間
支払給与:6,000円
特に注目したいのは、終業時間が7時間拘束のときは16時であるのに対し、6時間勤務のときは15時。その労働時間の差はわずか15分なのに、終業時間には1時間も差が出ます。つまり、労働時間を休憩時間不要の6時間にして働けば、休憩時間の分だけ拘束時間を減らすことができるのです。
では、給料はどのくらい差が付くのでしょうか。
7時間拘束と6時間勤務の場合を見てみると、日給ベースでの差は250円。1日250円収入は多くなりますが、その分、終業時間が1時間遅くなることになります。この金額や時間の差をどう思うかは人それぞれ違うと思いますが、主婦にとって、夕方の1~2時間はとても貴重なもの。帰宅時間を早めた分、通院や自宅でのリフレッシュの時間に充てるのも、時間の有効な使い方かもしれません。
上手くやりくりすれば雇用保険、社会保険にも加入できる
平成28年から社会保険の加入対象が広がり、従業員が501人以上などの要件を満たした場合、パートやアルバイトでも1週間の所定労働時間が20時間以上で、1カ月あたりの収入が8万8,000円以上であることを満たしていれば、社会保険に加入できるようになりました。また、1週間の所定労働時間が20時間以上あり、31日以上の雇用見込みがある場合、雇用保険に加入することもできます(昼間の学生は除く。休学中や卒業見込証明書がある、もしくは定時制課程の学生であれば加入義務がある)。
なお、雇用保険には「扶養」という概念がないため、扶養範囲で働いても雇用保険に加入することが可能です。雇用保険に加入後は、毎月、いくらかの雇用保険料が天引きされますが、その分、失業手当や教育訓練給付金、育児休業給付金、介護休業給付金といった手当や給付金をもらうことができるので、検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
疲れた身体を休めたり、気分転換になるだけでなく、同僚とのコミュニケーションにも役立つ休憩時間。労働者の権利なので、長時間働くことを想定しているのであれば、しっかりと押さえておきましょう。早く帰宅して自分や家族のための時間に充てたい場合は、休憩時間が不要な6時間未満の「時短パート」がおすすめですよ。
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