パートの所得税と住民税を詳しく解説!
- ちょっと得する知識
- 公開日:2018年8月29日
- 最終更新日:2019年2月19日
正社員として働いていたときは、あらかじめ天引きされていた「所得税」「住民税」。でも結婚して主婦となり、パートとして勤務する場合はどうなるのでしょうか? パートで得た収入に税金はどうかかってくるのか、その仕組みについて解説します。
パートの収入、税金はどうかかる?
正社員とは異なり、パートで働いているときにはなかなか意識しにくい税金。そのため、パートで働いている人の中には、「パート収入には所得税や住民税などはかからないのでは?」と思っている人もいるかもしれません。そんな方のために、パートの収入と、所得税・住民税の関係をまとめました。
所得税について知っておこう!
所得税とは、個人の所得に対して課税される税金のこと。パートで得た所得にも、この所得税は課税されます。パートでも、「所得税」が天引きされている場合もあるので、給与明細が手元にあれば、ぜひチェックしてみてください。
ただし、パートで働くすべての人に所得税がかかるというわけではありません。パートで得る収入は、通常「給与所得」です。給与所得の金額は、年収から給与所得控除額を差し引いた残額のこと。
給与所得控除額は最低65万円なので、パートの収入金額が合計103万円以下(65万円プラス所得税の基礎控除額38万円)であれば、所得税はかかりません。
配偶者控除が受けられる条件
「配偶者控除」とは、対象となる配偶者(妻)がいる場合、世帯主(夫)が一定金額の所得控除が受けられる制度のこと。これまで、配偶者控除を受けられる条件を満たしていれば、世帯主の所得控除額は38万円となっていましたが、2018年の改正後には所得金額によって控除される額が変わりました。
所得合計が900万円以下なら38万円、900万円を超え950万円以下の場合は26万円、950万円を超え1,000万円以下の場合は13万円となり、1,000万円を超える場合は控除はされません。
配偶者控除を受けるためには、いくつかの条件があります。妻のパートの収入が103万円以下であれば、夫は所得税の配偶者控除を受けることができます。
つまり、妻の収入がパート収入だけで、その収入が103万円以下であれば、給与所得控除額の65万円を差し引くと所得金額は38万円以下となるため、配偶者控除が受けることができるという仕組みです。
配偶者特別控除が受けられる条件
2018年からは、配偶者特別控除も給与年収上限が141万円から201万円へ拡大されました。
この控除は、103万円を超える収入があり、配偶者控除の適用が受けられなくても、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除が受けられる制度によるもの。
パート収入が増え、もしも扶養を抜けることなった場合でも、いきなり税金の負担が増えたら大変ですよね。そうならないよう、緩やかに税額が増えるように工夫されているのです。
収入によって変わる住民税とは?
所得税と同様に、住民税にも「課税」「非課税」の壁があります。いくらを超えると課税となるのでしょうか。
住民税は、都道府県に納める道府県民税(東京都は都民税)と、市町村に納める市町村民税(東京都は特別区民税)の2種類です。
住民税の場合、給与所得控除は所得税と同様に65万円ですが、基礎控除は33万円です。
住民税所得割の課税基準は、総所得金額が35万円(居住している地域によって変わる)を超えなかった場合は課税されないため、給与所得控除の65万円に、住民税所得割の課税基準35万円を足した100万円が、「課税・非課税の壁」となります。
さらに、所得割とは別に、均等割もかかります。基本的には一律で「県民税(都民税)1,000円+市町村民税(特別区民税)3,000円=4,000円」ですが、平成26年課税分より(平成35年まで)、災害からの復興の理念に基づいた防災のための施策の財源として県民税・市民税各500円(合計1,000円)アップされています。
ただし、自治体によっては標準課税金額ではない、独自の税額や税率を導入しているところもあります。
この均等割にも非課税・課税の壁があり、年収93万円~年収100万円の範囲内(所得が28万円~35万円の範囲内)が非課税になるラインです。
完全シミューレション。収入別所得税と住民税
パートでもある一定以上の収入があると所得税・住民税を納付することはわかりましたが、具体的にどのくらいの納税額になるのでしょうか。年収75万円、103万円、150万円別にシミュレーションしてみましょう。
<所得税と住民税の計算>
所得税の計算
課税所得の額によって税率や控除率が変わってきますが、今回シュミレーションするのはいずれも195万円未満となるため、税率5%で控除額0円での計算となります。
住民税の計算
所得割と均等割が非課税対象となります。2017年度の東京都品川区在住を基準として計算しています。
<年収75万円の場合>
■所得税:0円
所得195万円未満の場合、税率は5%で控除額は0円。
年収103万円以下であれば、所得税はかからないので0円となります。
■住民税合計:0円/年(東京都民税0円、品川区民税0円)
総所得金額10万円(75万円-給与所得控除65万円)-33万円(所得控除額)とマイナスになるため、課税されません。
<年収103万円の場合>
■所得税:0円
年収103万円以下であれば、所得税はかからないので0円となります。
■住民税合計:7,500円/年(東京都民税2,500円、品川区民税5,000円)
総所得金額38万円(103万円-給与所得控除65万円)-33万円(所得控除額)=5万円(課税される金額)
東京都民税2,500円/年(均等割年間1,500円と所得割年間1,000円の計)
品川区民税5,000円/年(均等割年間3,500円と所得割年間1.500円の計)
<年収150万円の場合>
■所得税:2万3,500円
所得195万円未満の場合、税率は5%で控除額は0円です。
年収103万円を超えたので、所得税が発生。150万から給与所得控除65万、基礎控除38万を引いた額(47万円)の5%。つまり2万3,500円となります。
※平成25年~平成49年までの間は復興特別所得税(所得税額×2.1%)が別途掛りますが、ここでは割愛して計算しています。
■住民税合計:5万4,500円/年(東京都民税2万1,300円、品川区民税3万3,200円)
総所得金額85万円(150万円-給与所得控除65万円)-33万円(所得控除額)=52万円(課税される金額)
東京都民税2万1,300円/年(均等割年間1,500円と所得割年間1万9,800円の計)
品川区民税3万3,200円/年(均等割年間3,500円と所得割年間2万9,700円の計)
年収75万円、年収103万円と比較すると、年収150万円で発生する住民税・所得税を合わせた税金は大きなもの。さらに社会保険料が発生することを考えると、「103万円の壁」を意識し、扶養の範囲で働こうと考える人が多いのも頷けますね。
扶養調整可能な求人・転職情報
こちらの記事も参考になります。
「パートは扶養内で働くのが賢いの? 知っておきたい扶養の基本ルール」
住民税をうまく調整する方法
今年の働き方によって、翌年の納付額に影響が出る住民税。その仕組みや節税方法について解説します。
住民税の金額は前年度の所得によって決まる
「住民税」は、前年の1月~12月までの所得に対して決まった金額を、翌年の6月から納税します。
そのため、前年度の所得が少なければ翌年に天引きされる住民税は少なく、反対に前年の収入が多ければ、翌年の住民税の金額は増える仕組みです。
翌年、たとえ収入が少なくなったとしても、住民税の金額は前年度分が反映されているため、少ない収入の中で高い住民税を納税することになります。
「とにかく稼ごう」と、所得税納税や社会保険料の負担を覚悟で扶養を抜けるのもいいのですが、翌年の住民税のこともしっかりと考えておくようにしましょう。
住民税を節税する方法
住民税の額が高く、「もっと節税したい」と思う人もいるのではないでしょうか。そのような時にチェックしたいのが、「ふるさと納税」や「iDeCo」(イデコ:個人型確定拠出年金)などです。これらは節税対策が高いものとして、多くの人が活用している制度です。
住民税の金額(所得割の部分)は、「所得控除」の金額によって増減します。「ふるさと納税」は、住民税の「税額控除額」として、iDeCoは、「小規模企業共済等掛金控除」という項目に反映され、翌年の住民税から税額が控除されます。なお、ふるさと納税で住民税の控除を受ける為には一定の条件のもとワンストップ特例制度を利用する事が出来ます。
まとめ:今年の所得を計算しておくことが重要
パートでも年収103万円以上だと発生する所得税と住民税。特に住民税は前年の所得の額によって、翌年の納付額が変わってくるので、余計にわかりにくく、戸惑うことも多いのではないでしょうか。仕組みを理解し、うまく働く時間や日程を調節して収入を計算しておきましょう。翌年の納付額に慌てることが少なくなるはずですよ!