パートの掛け持ち、所得税の注意点は?

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パートで働く人の中には、さらなる収入を稼ぐため複数の職場を掛け持ちしている人もいるのではないでしょうか。頑張った分だけ収入は上がりますが、気になるのが所得税を始めとする税金関連です。パートを掛け持ちする場合に、気に留めておきたいポイントについてまとめました。

パートの掛け持ち、注意点は?

収入を増やすために2~3カ所の職場で働いたり、定期的なパートのほか単発のバイトを組み合わせる人も多いようです。しかし、収入が一定のラインを超えると、夫の扶養から外れたり、所得税を納税しなければならなくなります。どんな点に注意したらいいのでしょうか。

所得税の仕組みを知ろう!



所得税とは、個人の所得(収入から必要経費を差し引いた利益のこと)に対し、課される税金のことを指します。とはいっても、収入を得たすべての人に税金が課せられるわけではありません。年収が103万円以下の場合は、給与所得控除65万円と基礎控除38万円という2つの所得控除が合計で103万円あるため、課税所得が0円になって所得税がかからないのです。

年収が103万円を超えると所得税を納付する必要が出てきますが、その納付額は所得に応じて段階的に税率が上がります。例えば、年収195万円以下の場合は税率が5%、195万円~330万円以下の場合は税率が10%、330万円~695万円以下の場合は20%といった具合です。(2018年8月時点の税率)

複数職場での収入を合算した金額が課税の対象

1カ所の職場での所得が年収103万円以下でも、複数の職場の収入を合算した場合、103万円を超えてしまうこともあるでしょう。その場合は、確定申告で1年間の課税対象となる所得を計算し、支払うべき税金の額を確定する必要があります。

こちらの記事も参考になります。
「パート勤務を始めるなら――覚えておきたい所得税の知識と扶養の範囲」

また、年収が多くなると、配偶者控除を受けられなくなるということも。配偶者控除とは、家族を扶養している人の税金が軽減される仕組みのことで、配偶者控除でいくら引かれるかは、配偶者の年収によって変わります。

2017年までは、38万円の配偶者控除を受けられるパートの上限年収は103万円でした。しかし29年度税制改正により、2018年1月からは、上限年収が150万円(配偶者特別控除最大限)に拡大されています。

また、配偶者特別控除も、給与年収上限が141万円から201万円へ拡大されました。「配偶者特別控除」とは、配偶者の収入が103万円を超え、配偶者控除の適用が受けられなくても、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除が受けられる制度のことです。配偶者が扶養内から外れても、急に税負担が増えないよう緩やかに税額が増えるよう工夫されています。

配偶者控除の控除対象配偶者となる人の範囲

配偶者特別控除を受けるための要件

掛け持ちした場合の注意点とは?

パートを掛け持ちした場合、気に留めておいた方がいいこととして「確定申告」が挙げられます。扶養内で働いていて確定申告の義務があるのは、「2カ所以上の勤務先から収入があり、年末調整をしない職場の給料と他の所得の合計が、20万円を超える」ケースです。

パート先が1カ所だけで、収入が103万円以下であれば、通常は年末調整をした場合、所得税はかかりません。しかし、適用されるには「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」という書類を職場に提出する必要があります。

この書類は毎年1カ所にしか出せません。パートを掛け持ちすると、2カ所目以降には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が出せないため、要件を満たさず、2カ所目以降の勤務先では給料が少なくても、所得税が天引き(源泉徴収)されてしまうのです。

ここで大切になってくるのが「確定申告」です。2カ所以降の勤務先で源泉徴収された所得税は、確定申告をすることによって還付ができます。「よくわからない」「時間がない」と確定申告をしない人もいるかもしれませんが、収めすぎた税金が返金される大切な機会。わからない点は税務署に行けば相談にのってくれるため、面倒がらずに確定申告をしてみましょう。

扶養控除の概要はこちら

確定申告をする場合に使用する申告書の種類

平成30年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書ダウンロード

注意するのは税金だけではなく、社会保険も!

また、掛け持ちで年収が上がることにより「社会保険」にも影響が出る場合もあります。社会保険の被扶養者認定から外れないようにするためには、給料を年収130万円未満(条件によっては106万円)に抑えることが必要です。

「年収130万円」は、1カ月あたりどのくらいの額かという目安ですが、直近の月収が108,333円以下であれば扶養の範囲内の目安とされています。パートをかけもちしている場合は、合算の月額給料が108,333円以下になるかがポイントといえそうです。

こちらの記事も参考になります。
「社会保険の基本!扶養の条件と社会保険に加入するメリット・デメリット【社労士監修】」

掛け持ちでパートをすることが多いジャンルは?

一つの職場で働くのも大変なことなのに、家事や育児をこなしつつ、仕事内容や職種も違う職場を掛け持ちするのはなかなかハードなこと。それでも掛け持ちしている人は、どのような職場で働くことが多いのかご紹介します。

・ポスティング

単発でできる時給制のポスティングもありますが、空いた時間を使って出来高制でできるポスティングは、隙間時間を活かせるとして人気です。慣れてくると、自分の頑張り次第で収入アップも期待できます。ただし、配布するチラシは時期によって量にムラがあるので、月によって収入が大きく変動することもあるようです。

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・コールセンターのオペレーター

企業のお客様センターや通信販売の受付、テレフォンアポインターなど電話応対を行う仕事です。多くの企業では、大人数で対応しているため、子どもの急な病気などで突然休むことになっても、柔軟に対応してくれることが多いようです。「休日のみ」「午前中のみ」といった選択もできるため、他の仕事をしながらでもうまくシフトを組むことができます。

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・受付や事務職

「事務の仕事はフルタイムが基本じゃないの?」と思う方は多いかもしれませんが、月末月初に業務が集中する経理の仕事などは、繁忙期だけ働く求人も存在します。月末最終営業日から月初第3営業日までのみ出勤するなどルーティンで決められれば、メインのパートとあわせてうまく働くことができそうです。

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・軽作業

工場などで、商品のパッキングや検査、シール貼りなどを行う軽作業。1日の拘束時間が7~8時間と、長い職場が多いようですが、事前に登録しておけば休日や空いている日などに単発で働くことができます。

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・内職

自宅でできる内職も、空いた時間にできる仕事として人気です。単価は比較的低いことが多いようですが、やればやっただけ収入が増えるのはうれしいですね。その他、パソコンのスキルを活かせるデータ入力やテープ起こしといった在宅ワークも、メインのパートの合間にこなせそうです。

・単発のアルバイト

メインのパートに加え、月に数日、サンプリングスタッフやラウンダー、各種検定の試験監督など、1日限りの単発のアルバイトをするケースも多いようです。

掛け持ちに適したジャンルの職種をいろいろと紹介してきましたが、子どもが保育園・幼稚園・学校に行っている間に働くことが多い主婦の場合、家庭とうまくバランスを取りながら、効率よく働けるかが、掛け持ちのポイントとなっているようです。

どう見分ける?掛け持ちOKなパート

社員として働く場合、「副業不可」「ダブルワーク不可」となっていることも多いのですが、中にはパートに対しても、掛け持ちに対していい印象を持たないケースもあるようです。掛け持ちをしていると、急なシフトの変更などに対応できない、残業を頼みづらいといったことも理由かもしれません。後々のトラブルを防ぐためにも、前もって掛け持ち勤務は可能か知っておきたいものですね。

掛け持ちOKか見分けるポイントとしては、求人情報などに「ダブルワーク可能」「ダブルワーク歓迎」などと書かれていることが挙げられます。掛け持ちを受け入れ、歓迎しているように見えますが、もしかしたら「(もう一つの勤務先は)副業程度の給与の見込み」という意味で、そのように表現していることもあります。

働き始める前に、どちらをメインに働きたいのか、もう一つの勤務先には週にどの程度入るのかなど、明確にしておくと安心ですね。「ダブルワーク可能」と求人票に書かれていない場合は、応募の電話の時にあらかじめ確認しておくようにしましょう。

働き損しないよう、計算しながら掛け持ちを

パートを掛け持ちすれば収入が増えますが、頑張りすぎると、かえって手取り収入が減ってしまうという場合があります。せっかく頑張ったのに、働き損になってしまうのは悲しいもの。事前にしっかりと年収の見込みなどを計算しておき、どれだけ仕事をすればいいか考えつつ、うまく掛け持ちしたいものですね。

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