パートが雇用保険に加入するメリットとは?【社労士監修】

  • ちょっと得する知識

パートの場合、雇用保険に入らなくていいんだよね?――実はこの考え、間違いなのです。パートであっても、労働時間などの条件を満たせば、雇用保険に加入する義務が発生します。「雇用保険に入るのなら、掛け金が引かれるんでしょ?だったら働く時間を制限したほうがいいのかな?」などの疑問が湧く方もいるのでは。そんな方のため、パートが雇用保険に加入するメリット・デメリットについてご紹介します。

パートでも雇用保険に入れるの?

雇用保険は、条件を満たした人は必ず加入する「強制適用保険制度」

「雇用保険」は国の社会保険制度の一つで、「労働者の生活及び雇用の安定と就職の促進」を目的に、さまざまな保障を受けることができます。最もよく知られているのは失業時に給付される「基本手当」で、「失業保険」という通称で呼ばれています。

パートが雇用保険に加入する条件は、以下の3つあります。

・1週間あたり20時間以上働いている
・勤務開始から31日以上働く見込みがある
・学生ではない ※ただし、休学中などの例外あり

雇用保険は「強制適用保険制度」なので、これらの条件を満たした人は、雇用保険に入ることが義務づけられています。加えて、2017年1月1月施行の法改正により、65歳以上の労働者も条件を満たした場合、雇用保険の適用対象となります。

パートが雇用保険に入るメリットは?

失業保険などのほか、高年齢雇用継続給付金が支給される

雇用保険に加入すると、毎月の給料から雇用保険料が天引きされてしまうため、1週間あたりの勤務時間を抑えて、雇用保険に加入しない選択をするパートの方もいます。しかし、天引きされる金額はさほど大きくはないため、雇用保険に入ることで得られる保障を考えて、雇用保険に入る選択もする方も少なくありません。

加入の一番のメリットは、前述の「失業保険」が受けられること。申請後、以下の条件を満たして失業保険の認定を受ければ、再就職までの一定期間、失業保険を受給することができます。

・離職後、ハローワークに来所して求職申し込みを行い、働く意思と能力があるが、「失業状態」である
・離職前の2年間で、1か月あたり11日以上働いた月が通算12か月以上ある

失業保険の給付額は、過去6か月間の給与や年齢、勤続年数などから算出されます。なお、給付時期や日数は、退職理由が自己都合であるか会社都合であるかによって異なります。

このほか、失業保険を受給している人が再就職をした時に支給される「就職促進給付」や、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講・終了した時に支給される「教育訓練給付金」もあります。さらに、育児休業や介護休業で仕事を休んだ際に、「雇用継続給付」を受け取ることもできます。

就職促進給付について

教育訓練給付制度

そしてもう一つ。60歳以上65歳未満の加入者を対象とした「高年齢雇用継続給付金」もあります。賃金が60歳到達時と比較して75%未満となった場合、手取額の低下を抑えることを目的に給付金が支給されます。

高年齢雇用継続給付金についてのQ&A

パートが雇用保険に入るデメリットは?

給与の0.3%が、雇用保険料として天引きされる

冒頭で説明した通り、雇用保険は国の社会保険制度です。失業や育児、介護等で働けなくなった時などに保障を受けるものであり、加入により不利益が生じるようなことは一切ありません。

ただし、社会保険料を支払うことになるため、金銭的負担をデメリットと感じる方も中にはいらっしゃるかもしれません。

2018年度の雇用保険料率は0.9%(一般の事業の場合)。そのうち、0.6%を事業主が負担し、労働者負担額は0.3%となります。月の給与が10万円の場合、雇用保険料として給与から差し引かれるのは、10万円×0.3%=300円となります。

どうすれば、雇用保険に加入することができるの?

希望勤務時間と想定年収に応じて、加入を検討しよう

パートで働いている方の多くが、家族構成や生活の状況などに応じて勤務時間を調整し、希望の年収を得ていることと思います。「子どもが小さいので、今は週に15~16時間程度働ければいいかな」と判断し、扶養の範囲内におさめるケースもあります。

しかし、これまでご紹介したとおり、雇用保険には多くの加入メリットがあります。子育てなどで忙しい人も、労働時間の調整などは必要ですが、「とにかく雇用保険には入らない!」と考えるのではなく、雇用保険加入も検討してみましょう。時給との兼ね合いにもよりますが、扶養範囲内で雇用保険に加入するという選択肢も生まれるはずです。

パートで働く際、所定労働時間を必ずチェックする

現在、パートの仕事を探していて、雇用保険加入を考えているのなら、「所定労働時間」を必ずチェックすることをおすすめします。所定労働時間とは契約上の労働時間のことで、1週間の所定労働時間が20時間以上であることが、雇用保険の加入条件として定められているからです。週の所定労働時間が20時間を下回っている場合、雇用保険の加入はできないので注意してください。

加入手続きは、会社が行ってくれる

では、雇用保険に入るには、どのような手続きが必要なのでしょうか。

雇用主である会社が手続きを行ってくれるので、労働者であるあなたが手続きをする必要はありません。雇用保険法によって、従業員を一人でも雇っている会社は「雇用保険適用事業所」になることが定められています。パートとして働き始める場合も、雇用保険の加入条件を満たしていれば、企業は雇用保険の加入手続きを行わなければならないのです。

雇用保険の加入でよくある疑問

もしも、会社が雇用保険に加入してくれなかったら?

もしも、加入条件を満たしているのに、会社が雇用保険の加入手続きをしてくれない場合は、うっかり忘れている可能性も考えられます。まずは、企業の人事担当者などに問い合わせてみましょう。それでも加入手続きをしてくれない場合は、意図的に雇用保険に加入していない可能性があります。会社に相談しづらいと感じた場合は、最寄りのハローワークに相談してみましょう。

過去に、雇用保険に加入していた場合は?

過去に別の企業に勤務し、雇用保険に加入していた場合、加入期間を合算することができます。たとえば、パートで働く前に、A社に1年、B社に3年勤務していたとします。この場合、4年間を合算した期間が加入期間となります。

ただし、失業保険の手続きをしたことがある場合は、それ以前の加入期間を合算することができません。また、前職からブランクが1年以上ある場合も、合算はできません。

まとめ:月額わずか数百円。安心感が得られるのが加入のメリット!

一定の条件を満たしていれば加入できる雇用保険は、パートなどの短時間労働者はもちろん、正社員や契約社員など、あらゆる従業員にとってメリットの大きな制度です。

特にミドルシニア世代の方にとって、「高年齢雇用継続給付金」は非常にありがたいもの。しかも、月額わずか数百円の負担で済みます。万が一の状態に保障が得られるという「安心感」も雇用保険加入の大きなメリットと言えるでしょう。

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