キャリアの棚卸しを行えば、職務経歴書に抜かりなし!|「ミドルシニアのためのキャリアの教科書」vol.06
- 木村勝のキャリアの教科書
- 公開日:2018年1月31日
中高年専門ライフデザインアドバイザーの木村です。連載5回目では、今までのキャリアを振り返り「目指すべき方向性」を見極めるためのツールである「ライフライン」について。また、連載4回目ではキャリアを鳥の目で俯瞰する「家族キャリアマップ」の作成方法について説明させて頂きました。
今回は、キャリアの棚卸を行うためのもう一つのツールである「キャリア棚卸シート」について説明させて頂きます。「キャリア棚卸シート」は、「家族キャリアマップ」と「ライフライン」で行ったキャリアの振返り結果を受けとめる「キャリアのプラットホーム」ともいえるツールです。
職務経歴書を作成する前に行うべきこと
キャリアを棚卸するためのフォームとしては、最もポピュラーなものとして「職務経歴書」があります。転職はもちろん、独立してから、例えば契約講師としてエントリーする際にも「職務経歴書」は必須のアイテムであり、いわば、「キャリアのパスポート」とも言える存在です。パスポート無しでは海外旅行に行けないように、職務経歴書無しでは新しいキャリアを創造することができないと言っていいくらい重要なアイテムです。
そのように重要なフォームですので、今まで行ってきたキャリアの振り返り結果もまずは直接職務経歴書に書き込みたくなりますが、ちょっと待って下さい!
その前に今までの棚卸結果全てをご自身独自にデータベースに落とし込んでおく必要があります。それが「キャリア棚卸シート」です。「家族キャリアマップ」と「ライフライン」と「キャリア棚卸シート」3つのツールの関係は以下のイメージになります。
「キャリア棚卸シート」は、特別なものではありません。エクセルシート上にご自分で時系列の区分を作り、今まで行ってきたキャリア情報をどんどん入れ込んでいくだけです。キャリア振返りのためのツールにも様々なものがありますが、経験的に使いやすいのは自分で自由にスペースを挿入削除したり、列幅を変えることができるエクセルシートです。私も過去にはいろいろなツールを使ってみましたが、シンプルで汎用性が高いエクセルシートに最終的に落ち着きました。
「キャリア棚卸しシート」への情報の落とし込み方
それでは、「キャリア棚卸シート」にあなたのキャリアに関する情報を落とし込んでいきましょう。大まかなステップは以下の通りです。
①今までのキャリアの歴史を逆時系列(現在から過去へ)で整理する
②その時々の具体的なタスクと成果を可能な限り実績数字で表現する
③棚卸する項目は、会社・仕事に限らず幅広く考える(身に付いた「スキル・ノウハウ・経験」や、仕事を通じての企業活動・受賞・発表・報告など)
あなたのキャリアのデータベースとして、ここにあなたのキャリアデータ全てを集約します。いわば、自分の強みと会社の関係を俯瞰した上で作る自己分析シートです。誰かに見せるものではありませんので、形式にこだわる必要はありません。キャリアデータに関する箱(入れ物)を作るイメージです。もちろん行数・列幅なども自由に設定して構いません。
シートのフォーマットの作り方
それでは、箱(入れ物)の作り方を具体的に説明させて頂きます。
まずは、事前準備として入れ物(キャリア棚卸シートフォーマット)を作成します。「キャリア棚卸シート」のイメージは以下の図のようなものです。
手順は以下の通りです。
①「家族キャリアマップ」を参照しながら、仕事の大きな変わり目を確認する。
②仕事の変わり目ごとにキャリア区分を設定する
③キャリア区分ごとに年月、在籍年月数を記入する
④キャリア区分ごとに必須項目「所属・役職・職種・仕事の内容・部下の数(部下がいる場合)・仕事の成果のポイント」を記入する
↑ここが後に職務経歴書のキモとなる部分です
⑤必至項目以外の棚卸アイテムを記入するエリアをつくる(どのようなアイテムを記入するかは自分で設定してOKです)
必須項目以外のエリアは以下のような分類であれば記載がしやすいのでオススメです。
【エリアA】
当時の専門分野に関する経験/担当職種において発揮した専門性とその成果/身につけた専門スキル・知識・ノウハウ
【エリアB】
取得資格、表彰受賞歴(社内外問わず)、自分が関わった企業活動、社内外活動(サークル・自己啓発・趣味)
【エリアC】
当時苦労したこと、充実していたこと(この部分は、「ライフライン」を参照)
自身の資産を入力するときのポイント
次は、作成した「キャリア棚卸シート」へ自分に身についた資産をすべて棚卸していきますが、キャリア棚卸を行う上でのポイント&コツをご紹介します。
①連載3回目で解説した通り、集めたアーカイブ資料を手元に集結させてから作業を開始します。
②棚卸シートの各エリアに自己資産を振り分けて記載していきます。ここでのポイントは書き方にこだわらず、思い出したまま、ひたすら追記していきます。「良い悪い」の評価は一切せずにひたすら記入していくイメージです。同じ区切りの期間内であれば、順番も気にせずに思いついた順にどんどん書いていきます。
③棚卸の際に特に重要な期間は、最近10年~15年間です。この期間は特に重点的に棚卸を行います。
④棚卸にあたっては、「家族キャリアマップ」(vol.4で解説)、「ライフライン」(vol.5で解説)を眺めながら、またアルバムの写真なども活用して楽しみながら時間をかけて行います。特に数字で表せるものは、この機会に徹底的に数値化してみてください。
⑤集めたアーカイブ資料(表彰状、辞令など)は、厚めのクリアファイルに集約していつでも参照できるようにしておくこともポイントです。
これであなたのキャリアに関する情報資産すべて落とし込んだ独自のデータベースが完成しました。あとは、このデータベース(プラットフォーム)から情報を引き出して、必要に応じて履歴書や職務経歴書に落とし込むだけです。
独立起業を考える場合には、事務所パンフレットの材料として活用することもできますし、人材紹介を通じて転職を考えるときにはコンサルタントへ自身の強みや価値を伝えるための資料ともなります。また、キャリアの棚卸は一度だけでなく、定期的に行うことも重要です。
まとめ
「キャリア棚卸シート」と「家族キャリアマップ」と「ライフライン」の3つのツールは、ミドルシニアからのキャリアチェンジを考える際には、必須かつ強力な武器となります。ぜひ、作成されることをおススメ致します。