役職定年で年収はどれくらい下がる?モチベーションはどう保つ?

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大企業を中心に導入されている「役職定年」制度。存在自体は知っているけど、どれくらい給与が下がるのか、ご存知ではない方も多いのでは。その時になって「こんなはずでは...」とならないように、役職定年に関するデータを通じて平均的な役職定年制度の実態と、制度詳細と年収の変化、モチベーション維持の方法をご紹介します。

役職定年とは?

役職定年とは一般的に「特定年齢に達した社員が管理職を外れ、一般職や専門職などで処遇される制度」を指します。

主に、人件費の抑制を狙いとするケースと、高齢化した組織の新陳代謝やポスト不足の解消を狙いとするケースに分かれ、大企業ほど導入する比率が高い傾向にあります。

細かくは後述しますが、役職定年が開始される年齢は最も多いのは55歳。8割近くのケースで年収は低下し、年収水準は2割程度下がる企業が多いです。

そのため役職定年制度を導入している企業に勤めている方は、「規定の年齢に達したら、年収が下がる」ということを織り込んだうえで、今後のキャリアプランや老後のライフプランを検討する必要があると言えるでしょう。

民間企業における役職定年制・役職任期制の実態(人事院)

60歳定年制となったのは、実は最近?役職定年制の成り立ちとその背景について

「長くマネージャーとして活躍してきた営業部長が、55歳を迎えた途端に役職から外れ、一営業として働く」といった役職定年制度。この制度はいつから始まったのでしょうか。

この制度が始まった背景には、1986年に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が改正され、60歳定年が努力義務になったことがきっかけとなっています。

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

意外かもしれませんが、30年ほど前までは定年年齢は55歳が一般的でした。しかし、1994年に行われたさらなる改正で60歳未満定年制が禁止(1998年施行)され、60歳定年制が始まったのです。

役職定年制度とは、55歳定年から60歳定年への移行を調整するためのもの

そこで困ったのが各企業です。これまでは55歳までを定年と考え人件費や退職金、福利厚生費などを計算していましたが、法的に5年間雇用を延長することが義務化されたため、会社の経営を圧迫することになりました。

高止まりした年収層の従業員を同等の給与水準で5年間延長雇用する余裕はなかったため、「雇用は続けるが、年収を削る」ための方策を検討。それが「役職定年」という制度として残っていった、というのが過去の流れです。

つまり、「55歳定年」から「60歳定年」へと移り変わる過渡期に生み出された人事制度が「役職定年」であるといえるでしょう。

そして、何よりの問題は「55歳定年から60歳定年に移り変わる」ために生み出されたこの制度が、「65歳定年時代」においても多くの企業で形を変えずに継続されていることにあるのです。

役職定年制を実施することのメリットデメリットについて

役職定年が導入された背景については前述の通りですが、普及の流れは急速に広がりました。

少し古い調査データになりますが、厚生労働省「平成21年賃金事情等総合調査(退職金、年金及び定年制事情調査)」によると、慣行による運用含め47.7%の企業が役職定年制を就業規則に導入。従業員 1,000 人規模以上の企業においては、約半数が役職定年制を導入していることがわかります。

なぜ、これだけ多くの企業がこの制度を規則として導入したか。その理由は「50代の人件費の圧縮」だけではなく、そのほかにも組織に対し好影響を与える効果が期待されたためです。

【メリット:組織の新陳代謝が生まれる】

終身雇用をベースとするピラミッド型の組織構造では、管理職のポストに限りがあります。優秀な人ほど早期に管理職へと昇進しますが、よくも悪くも日本企業の多くは「降格」を行うことが少ないため、限られたポストを同じ人が長く独占してしまうことになります。

しかし、いくらその人物が優秀だとしても、結果的に若手が昇進するチャンスを阻害することになってしまいます。すると「いくら活躍しても上のポストは詰まってるからなぁ...」と若手のモチベーションは上がらないうえに、組織の新陳代謝が活性されません。

そのような固定化した組織とならないためにも、「強制的な人員の若返りを行える」。それこそが企業側が感じる役職定年制度のメリットといえます。

従業員側からみても、事前にこのような制度が設けられていることを把握しておくことによって、自身のキャリアの計画を立てやすいという側面もあります。

とはいえ、もちろんいいことばかりではありません。

【デメリット:役割変更後の意欲低下】

会社によっても異なりますが、役職定年を迎えた社員の処遇は、専門職への転換、もしくは単に役職が外れて一般社員としての待遇となります。

定年前に管理職のプレッシャーから開放されてホッと胸をなでおろす人もいるかもしれませんが、それまで会社に貢献してきたという自負を持つ人であればあるほど、役職定年は働く意欲を低下させる大きな要因となります。

働く意欲が低下する理由は、仕事上の役割が変化することだけではありません。決定的なのは、「これまでと同じ働き方なのに、給料が低くなる」ことです。役職定年により給料が減ることが事前に分かっていても、これまでよりも少なくなった給与明細を見たときにはやはりショックは大きなもの。「年収が30%下がったんだから、仕事の量も30%落とそ...」となる気持が自然と生まれてしまう場合も。

働く理由の全てが収入のためではありませんが、やはり給与が下がることは大きくモチベーション低下に関わってくることは否めません。

役職定年はいつから?どれくらい収入は減る?データから確認

役員定年制を迎えるにあたっての処遇は、会社によって異なります。具体的な年齢や年収の扱いについて調査を行った、人事院の「民間企業における役職定年制・役職任期制の実態」を紐解いていきましょう。

もっとも多いのはやはり55歳からの導入

人事院の資料によると、部長級の役職定年年齢は「55歳」とする企業の割合が最も高く38.3%、「57歳」とする企業の割合が次いで高く24.8%となっています。また、課長級の役職定年年齢は「55歳」とする企業の割合が最も高く45.3%、「57歳」とする企業の割合は16.1%となっているようです。
企業規模による大きな差は見られません。

8割近くのケースで年収は下がり、年収水準は2割程度下がるケースが多い

一部の会社では給与を維持する取組みもなされていますが、1割以下の水準に過ぎません。「8割以上の会社で年収が下がる」という厳しい現実をふまえて、前向きな準備を進めることが求められます。

課長級以下の社員についても「下がる」としている会社が多くて、役員定年前の75%〜99%くらいの年収に落ち着く状況が考えられます。年収600万円だった方なら年収450万円程度になることも想定されるため、老後の生活プランに対して心づもりをしておく必要があるでしょう。

管理職手当と賞与に大きな影響が発生するケースが多い

減額する項目については、基本給・賞与・管理職手当などが該当します。中でも大きいのが「管理職手当」を廃止する企業が全体の37.7%に上っていることです。このため、ベース給与が低めに設定されていて役職手当で一定の年収を維持していた方だと、年収が激減する可能性があります。

なお、前項のデータにおいて、「500人以上の企業」においては若干給与の低下率が低い傾向がありましたが、これは基本給が高いことに由来しています。「管理職手当」と「賞与」が減額になった場合でも、基本給が高いために給与の下がり幅が低いのです。

こちらの記事も参考になります。
「長く働く100年人生時代。定年延長後でも給与の下げ幅が少ない業界は?」

役職定年以降のモチベーションを保つ方法

年収が下がること、役職を外れることなどを理由として、定年退職を前に仕事に対するモチベーションが下がってしまう方もいます。役職定年後もイキイキと前向きに仕事を継続するには、どんな工夫ができるでしょうか。

まず、新しく与えられた仕事に意欲的にチャレンジする気持ちを持ち、着実にこなしていくことです。

管理職だった時のようにアシスタントをしてくれる部下がいない中ではあらゆることを自分で処理する必要があって、覚えるべきことはたくさんあります。

どうして自分が、という気持ちで仕事を続けても良い結果にはつながらず、モチベーションが下がる一方でしょう。つらいと思う気持ちを新たに切り替えて、初心に戻ったつもりで仕事を覚えていく取組みが大切です。

もう1つできる工夫として、会社の主役としてのあり方から陰で支える存在になったことへの自覚です。組織の中で評価を得てキャリアアップしてきたあり方を卒業し、次の世代が引っ張っていく体制を後ろから支える気持ちを持ちましょう。

組織を育てる試みは、もともと年長者が担ってきた役割です。自分が退職した後も会社がうまくまわるように、培ってきたノウハウを次の世代に引き継ぎましょう。

現在働き盛りのあなたがするべきことは?

役職定年を迎えた後の働き方を具体的にイメージするため、まずは会社の規則を調べてみましょう。何歳で役職から外れてどのくらい年収に影響が出るのか知っておくだけでも、将来的なリスクに対する備えができます。

役職定年制を取り入れている会社の約8割は、具体的な基準や進め方を明示している状況です。雇用条件、待遇を細かく記載している書類に目を通すと、大まかな内容が分かります。

詳細を知ったうえで「定年退職直前までキャリアを追求したい」と判断する場合は、なるべく早い段階から転職を含めた新しい働き方を検討するのも1つの道です。転職事例などに目を通しておくのもよいでしょう。

まとめ

培ったスキルや経験を活かしてイキイキと働ける職場を検討し、いつまでも新鮮な気持を持ちながら社会の一員として活躍を続けられる将来を考えてみましょう。

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