長く働く100年人生時代。定年延長後でも給与の下げ幅が少ない業界は?

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「60歳で定年退職!」と考えていた方にとっては耳が痛い話ですが、定年延長が社会的な流れ。多くの人が65歳まで働く時代は、もうすぐそこまで来ています。定年延長に伴う待遇の変化、収入の減少に対応すべくどのような準備をしていけばいいのか考えてみましょう。

定年延長が広まっている背景とは?

官民問わず定年延長の動きは広まりを見せていて、すべての企業にお勤めの方にとって真剣に考えるべきテーマになりつつあります。定年退職年齢を引き上げる動きが広まった背景には、大きく2つの理由が関係しています。

それはまず、老齢厚生年金の支給開始年齢が引き上げ傾向にあるためです。年金支給が60歳開始から65歳開始へと段階的に引き上げていく方針が決まって以降、年金支給開始が遅くなるのに定年延長措置をとらないままでは、労働者の生活が立ち行かなくなるケースも増えるはずです。

蓄えを切り崩す暮らしに不安を感じるのは当然のこと。そのため、雇用継続措置をとるように政府主体で検討した結果、定年退職を迎えてから支給開始までの収入源を確保する取組みが企業側に求められた結果と言えます。

そして、2013年からはじまった高年齢者雇用安定法が起爆剤となりました。同法は2004年にも改正されており、その内容は

①定年年齢を引き上げること
②継続雇用制度を導入すること(ただし、労使協定により基準を定めた場合、希望者全員を対象としない制度も可)
③定年の定めの廃止
上記の内容でしたが、2013年の改正によって②の但し書きが撤廃され、希望者全員を雇用する義務が企業へ課されたことが大きな変更点です。

義務化に反してしかるべき処置を行わなかった企業は名前が公表されるなど具体的な罰則があることから、早急な対策をはじめる企業が増えています。

高年齢者雇用安定法の改正について更に詳しく知りたい方はこちら

定年延長の主なスタイルは「雇用延長」と「再雇用」

若年層が高年齢層を支えることを前提とし構築されていた年金制度に、大きな期待ができないこの人生100年時代。

公務員定年が65歳になる動きも民間企業の決断を後押し、65歳まで働くことが当たり前になる時代も目前となりつつあります。待遇面など検討の余地がある内容は残っていても、何らかの形で60歳以降も雇用を継続する企業が増えていく流れを理解しましょう。

定年延長のスタイルとしては大きく分けて「雇用延長」「再雇用」がありますが、両者の違いはあるのでしょうか。退職年齢を控えた方に理解してほしいポイントと違いについて、簡単にまとめていきます。

雇用延長
定年退職の年齢が先延ばしになるイメージで、退職金の支給も後ろにずれると考えてください。雇用延長した場合の役職は正社員というイメージを持つ方もいるはずですが、同じ雇用形態を保証する義務はありません。会社の就業規則に明記があれば、雇用形態を含めた雇用契約内容を変更することは認められているため、待遇が大きく変わらないか、事前に確認することが重要です。

再雇用
定年退職したあとに改めて雇用契約を結ぶ扱いになるため、退職時に退職金の支給を受けます。その後、嘱託社員、契約社員など雇用契約内容が変わる可能性があるのは、雇用延長の場合と同様です。新しい雇用契約に沿って社会保険関係を再計算されることになって、再雇用後の賃金に沿った源泉徴収額に変更されます。

どちらの場合も賃金水準は下がって、有期雇用契約を結ぶことが多いようです。延長された期間については以前と同じ待遇にて雇用関係を継続できるわけではないことを、覚えておきましょう。

高年齢者雇用に関するQ&Aはこちら

60歳を越えても給与が下がりにくい業界はここ!

ほとんどの場合で賃金ベースは大きく下がりますが、収入と引き換えに得られるメリットはあるものです。役職について会社の中核を担っていた時代と比較すれば責任が随分と軽くなって、気負わずに仕事に打ち込めることが良い例です。

60歳を過ぎたあたりから体力の衰えを感じる方も多いため、無理なく仕事を継続できるところも魅力でしょう。65歳で本当の定年退職を迎える前に徐々に現場の最前線から離れていく準備期間と考えれば、悪いことばかりではありません。

ただ、家庭の事情や老後の資金調達を考えた時に「そうはいっても、大黒柱として一定の収入を確保したい」と考える方もいることでしょう。まだまだ貯蓄を増やしていきたいタイミングで年収が下がってしまうことで生活が不安定になると、老後の不安が募ります。そんな方は、一定年齢になっても給与が下がりにくい業界を探したい場合は、以下を参考にすると良いでしょう。

こちらの図は、平成28年に厚生労働省より発表された資料の抜粋です。20-24歳での収入を100として、それぞれの年代での賃金格差を示したものです。

もともと高収入の「製造業」「情報通信業」「金融・保険業」ですが、年収の下げ幅としては大きくなる傾向が否めません。50代後半から60代前半にかけて4割程度の賃金ダウンが余儀なくされて、収入が半減するリスクがあります。

特に、もっとも収入幅の高い「金融業、保険業」においては、50~54歳で平均月額「62万7900円」の給与を得ていますが、60~64歳では平均月額「30万6500円」までダウン。ピーク時の半分以下まで下がってしまいます。

反面で「運輸業・郵便業」「宿泊業・飲食サービス業」「教育・学習支援業」「医療・福祉」を見るとどうでしょう。60歳になった時の賃金落差が少なく、生活が一変するほどのギャップが起こりにくい業界と判断できます。

もっとも賃金格差の小さい「教育、学習支援業」に着目すると、55~59歳で平均月額「54万300円」の給与を得ていますが、60~64歳でも平均月額は「50万100円」とほぼ同水準が保たれます。

また、人材不足が懸念される「宿泊業・飲食サービス業」は定年制度自体を廃止する動きも出ていて、生涯現役の働き方を希望する方にとっては魅力的な業種と言えます。元気なうちはスキルを活かして働きたいと考えている場合には、若いうちから該当業種へのキャリアチェンジを考えていく選択もできるでしょう。

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まとめ

少子高齢化社会は歯止めを見せず、年金破綻も懸念される状況が継続する限り、定年延長制度が当たり前のものとして扱われる時代がもう間近に迫っています。「ひと昔前までは、60歳で定年だったのに」と懐かしく振り返る未来が、そう遠くない話になっているのかもしれません。

中小企業勤務・大企業勤務、定年まであと何年残っているかなど抱えている状況は人それぞれ異なっても、60歳になった時にどんな働き方をしたいのか、真剣に考えておく必要があります。

節目の年を気にせずに変わりなく仕事に邁進するキャリアを望むのか、家庭重視のあり方にシフトして身体をいたわりながら働きたいのか。なるべく早い段階から明確な将来設計を作ることが理想的な働き方につながって、明るい老後と生き甲斐をサポートする手段と理解しましょう。

出典元:平成28年 賃金構造基本統計調査の概況(厚生労働省調べ)

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