扶養内で働く方必見! ボーナスを受け取ったら、扶養から外れてしまう?
- ちょっと得する知識
- 公開日:2023年12月18日
扶養内で働こうと考えている方の中には、ボーナスを受け取ると扶養内から外れてしまうかも…と不安に思う方も多いかもしれません。本日は、そんな扶養とボーナスの関係についてみていきましょう。
扶養の現状とは?
日本では、男女雇用参画社会が提唱されてから女性の社会進出が増えました。ただ、女性のライフイベントには妊娠や子育てなどもあるため、男性のように仕事優先にはしづらいのも実情です。
内閣府の資料によれば、妻がフルタイム労働(週35時間以上就業)の世帯数は、1985年以降400~500万世帯と横ばいで推移している一方、妻がパートタイム労働(週35時間未満就業)の世帯数は、1985年以降約200万世帯から約700万世帯へ増加しています。
この状況を踏まえると、夫の扶養内で家計を支える女性の割合は年々高まっていると言えるのです。さらに、収入を一定金額以下に抑えるために、就業時間や日数を調整する就業調整をしている妻の割合は全体のおよそ半数。扶養内で働くために敢えて出勤日を減らしている方が数多く存在していることが分かります。
家計を支える扶養側としては、パートナーが扶養内で働いてくれると税金を抑えながら家計の所得を増やすことができる点が大きなメリットでしょう。扶養される側としても、年金保険料や健康保険料などの社会保険の負担がない恩恵に預かることができます。
データ元:内閣府「令和4年版 男女共同参画白書」
扶養の種類とは?
扶養には、「社会保険上の扶養」と「税制上の扶養」の2つの種類が存在するため、扶養の種類の違いについて知っておくことが大切です。
「社会保険上の扶養」
扶養者の会社から健康保険証が発行されている場合、扶養される側はその扶養内に入っているということになります。また、扶養者が厚生年金保険に入っていれば、扶養される側は国民年金保険料を全額免除された状態で、年金を受け取る権利があります。
これを健康保険・厚生年金保険の扶養といい、扶養者側の負担を変えることなく、扶養される側は国民年金や健康保険の保険料を支払う必要がありません。
「税制上の扶養」
税制上の扶養には、配偶者控除・配偶者特別控除があります。こちらは、扶養者が会社員でも自営業でも条件があえば適用され、扶養者の所得税と住民税が控除されます。
ただし、扶養される側の年収が103万円を超えると、所得税の扶養からは外れることになってしまいます。税制上の年収とは、その年の1月から12月の合計の金額のことです。掛け持ちで働いた場合や、年の途中で退職した際などでも、そのパート代や前職の給与も合算されるので、注意しておきましょう。
「年収の壁」に注意する必要がある!
そして、扶養内で働くために考えなくてはならないのが「年収の壁」です。「年収の壁」にはそれぞれ決められたボーダーラインがありますので、扶養内で働こうと考えている方はしっかりと理解しましょう。
・103万円の壁
「103万円の壁」とは一言でいうと、自身の所得税がかかる金額になります。収入が年間103万円を超えてしまうと、超えた分に対して所得税がかかってきます。
また、住民税は地域によって違いますが、目安はおよそ年収100万円から発生します。年収100万円以上となる場合、住民税も負担する必要があるということです。住民税も所得税も払いたくない場合は、住む地域の住民税の課税基準額がいくらになるのかを確認してみましょう。
・106万円の壁
「106万円の壁」とは、パート先の社会保険へ加入が義務付けられるボーダーラインです。
「106万円の壁」の対象となる要件は、2022年10月以降に会社の人数上限が引き下げられて101人以上の会社となりました。勤務先が該当する場合は、年収が106万円以上になると勤務先の社会保険への加入義務が発生します。(※1)
その他の社会保険への加入要件は以下の通りです。
・週所定労働時間20時間以上
・月額賃金8.8万円以上(年額約106万円)
・雇用期間が2ヵ月を超えて見込まれること
保険料は年収106万円で年間15万円前後です。保険料は天引きされるため、手取りは減ります。しかし、健康保険や厚生年金に自ら加入することで、病気やケガでの手当があったり、将来もらえる年金が増えたりするなどのメリットもあります。
※1 2024年10月から、勤務先の従業員が51人以上の企業が対象に含まれます。今は対象外でも、2024年10月以降に扶養から外れる可能性もあるため、事前に確認しておきましょう。
・130万円の壁
「130万円の壁」とは、すべての人が社会保険の扶養を外れるボーダーラインです。
勤務先が106万円の壁に該当しなかった人でも、年収が130万円を超えると社会保険への加入義務が発生します。こちらは掛け持ちも含めた収入で判断され、毎月の収入が常時年間130万円以上かどうかで判断されます。
扶養から外れると、社会保険料は自ら支払うことになります。また、年金も国民年金保険料を支払うか、勤め先の厚生年金への加入が義務付けられるでしょう。
・150万円の壁
「150万円の壁」とは、配偶者特別控除の満額上限のボーダーラインです。
配偶者がいる場合の税制上の扶養控除には、配偶者控除と配偶者特別控除があります。パートなど給与収入のある配偶者がいれば年収103万円以下までは配偶者控除、103万円を超えると配偶者特別控除を受けられます。
配偶者控除も配偶者特別控除も扶養側の年収150万円までは控除額は変わらずに税金控除を満額受けられます。しかし、150万円を超えると段階的に扶養側の控除額が減り、201.6万円を超えると扶養側の控除額は0となります。
配偶者控除や配偶者特別控除には、扶養側の年収にも上限があり1220万円を超えると控除対象外となりますので、こちらも合わせて覚えておきましょう。
ボーナスを受け取ると、扶養からはずれてしまう?
実際に働き始めると、扶養内で自身が働けているのか不安に思う方も多いと思います。まず、働いている場合、勤め先からボーナスが出る場合がありますが「これは扶養の計算に含まれるものか?」という疑問が出てくるでしょう。
結果から言うと、NOです。
社会保険加入判定に用いられる所定内賃金の月額とは、労働契約などで定められた基本給と、毎月決まって支給される諸手当を指します。そのため、基本給とは別に臨時的に支給されるボーナスは含まれません。
また、残業手当や休日出勤手当、交通費なども含まれず、通勤手当も除外されます。そのため、これらの手当を含めると総支給額が月に88,000円以上となってしまった場合でも、賃金が88,000円未満であれば社会保険加入の適用外となるのです。
では、ここでわかりやすくケース別に見ていきましょう!
【Aさんの場合】
・時給1,000円で週20時間勤務(月額:80,000円)
・月に20,000円の通勤手当が支給
→Aさんは月額賃金80,000円と合わせて100,000円の手取りとなりますが、月額賃金は88,000円に満たないため社会保険の加入義務は発生しません。扶養範囲内であるということです。
【Bさんの場合】
・時給1,100円で週20時間勤務(月額88,000円)
・通勤手当はなし
→Bさんは月額賃金が88,000円となり、社会保険の加入対象です。保険料は給料から天引きされることになります。
AさんとBさんのケースでは、Bさんの方が時給は高いのに社会保険の加入対象であるため、手取り額は少なくなります。このように、「年収の壁」を意識しないで働いていると働き損になる可能性もあるのです。
まとめると、所定の月額賃金が88,000円未満であれば、繁忙期の残業や休日出勤などで時間外手当が多くなった場合や、賞与・報奨金、精皆勤手当などの一時的な収入も月額賃金には含まれません。月額賃金内で働いていれば、ボーナスをもらったからといって扶養から外れることはないということです。
ボーナスを受け取る場合の注意点!
ただし、注意しなくてはならない点もあります。ボーナスを受け取った場合、月額88,000円の判定には含まれませんが、被扶養者の収入基準130万円の判定時には算入されてしまいます。また、通勤手当や家族手当、その他の臨時手当も130万円に含まれることを理解しておきましょう。
例えば、月8万円のパートの所定内賃金は96万円です。通勤手当を2万円受け取り、さらにボーナスを10万円×2回受け取ると年収は140万円となるため、130万円の壁を超えて社会保険の加入義務が発生します。
つまり、「106万円の壁」はボーナスを考えなくても良いのに対し、「130万円の壁」にはボーナスについてもしっかり計算しなくてはならないということです。混同しやすいですが、きちんと把握しなくては「こんなはずではなかった」ということになりかねません。
扶養内で働くときの注意点とは?
扶養内で働きたい場合、他にも注意しなくてはならない点がいくつかあります。
・年収の壁を超えると社会保険を支払う必要がある
年収が130万円を超えると、扶養主の社会保険上の扶養から外れてしまい、自身で保険料や年金を負担しなくてはなりません。その結果、年収が130万円以下の時よりも手取り額が減ってしまうことも。
ただし、社会保険の扶養から外れてしまうからといって、マイナスな面ばかりではありません。自分で社会保険に加入すれば、傷病手当金や出産手当金などの保障や給付が充実します。さらに、厚生年金に加入すると受け取る基礎年金を上乗せできるため、将来の安心材料につながります。
さきほど示したように、ボーナスをもらうことによって130万円の上限額を超える可能性がある人は、扶養範囲内で働くために労働時間や収入額を常に気にしなければなりません。一方で、扶養から外れれば時間や賃金を気にせずに存分に働くことができるものの、これまでよりも手取り額が少なくなってしまう可能性も考えられます。家計に必要な収入やライフステージに合わせて、働き方を選択しましょう。
・勤務先の従業員数に注意する
社会保険上の扶養の適用範囲を決めるのは、年収130万円だけではありません。勤務先の従業員の数によっては、年収が106万円を超えた時点で社会保険に加入しなければならない可能性があります。
以前は従業員数が501人以上の企業が対象でしたが、2022年10月からは従業員数101人以上の企業が対象。また、2024年10月にはさらに条件が変更され、従業員数51人以上の企業が対象となります。そのため、これまでは除外されていた方も社会保険は自身で加入する必要が出てくるでしょう。
・労働時間に留意する
年収や勤務先の従業員数に加えて、労働時間も社会保険の加入に関わる重要なポイントです。従業員数が対象となる職場(※現在は従業員101人以上)で、1週間の所定労働時間が20時間以上ある人は、社会保険への加入が必須となります。
残業などの規定時間外の労働は、社会保険の加入の対象となる労働時間には含まれません。しかし、2か月連続で週20時間以上の実働があり、3か月目もそのくらいの実働時間がある場合、3か月目から社会保険加入の対象者となるので注意が必要です。
まとめ
いかかでしたでしょうか?扶養内の働き方といっても「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」では年収の壁や算出される数値に違いがあります。扶養内で働きたいという方は、社会保険上の扶養では年収に加算されるボーナスについても留意しておく必要があるでしょう。