年金制度改正法で、2022年10月から社会保険の適用範囲はこう変わった!
- ちょっと得する知識
- 公開日:2022年11月30日
2022年10月からパートなどの短時間で働く人に対して、社会保険の適用範囲が広がったのを皆さんはご存じでしょうか。今回は、こちらの制度について触れていきます。
パートやアルバイトの社会保険適用拡大とは?
2020年5月に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立しました。その中で、特に注目されたのが社会保険の適用拡大についてです。
これまでは従業員数500人超(501人以上)の企業に対して社会保険の適用義務がありましたが、今回の改正ではその範囲が拡大し、2022年10月においては従業員数100人超(101人以上)の企業が対象となりました。さらに、2024年には50人超(51人以上)の企業を対象とした枠に拡大していきます。
パート・アルバイトとして扶養内で働く場合には、改正での変更点を押さえながら、今後の働き方ついて考えるタイミングだと言えるでしょう。
しかし、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によれば、社会保険適用拡大によって手取り額が減ったとしても、将来のことを考えて社会保険に加入するといったアルバイトやパートの方は増加傾向にあるといいます。
「106万円の壁」に関する社会保険の適用範囲変更
今回の2022年10月からの被保険者の変更点は以下の通りです。
〈変更点〉
➀週の所定労働時間が20時間以上あること
➁雇用期間が2か月超見込まれること
③賃金月額が8.8万円以上(年収106万円以上)であること
④学生でないこと
(※正規従業員の所定労働時間および所定労働日数が4分の3未満であっても、上記の4つの要件をすべて満たす従業員は、被保険者扱い)
それぞれを項目別に詳しくみていきましょう。
➀週の所定労働時間が20時間以上あること
週の所定労働時間について、基本的に契約上の所定労働時間によって判定されるため、急な残業や休日出勤等は含まれません。
実労働時間が2か月連続で週20時間以上になり、なおかつ今後も引き続き20時間を超えると見込まれる場合には、3か月目から対象となります。
➁雇用期間が2か月以上見込まれること
これまでの被保険者対象者は、勤務期間が1年以上でしたが、今後は雇用契約期間が2か月以上であるとみなされた場合に適用となります。
ただし、契約期間が1年未満の場合で、書類等に更新のする旨や期間が示されておらず、更新の前例がない場合は適用除外に。
③賃金月額が8.8万円以上(年収106万円以上)であること
基本給や手当によって計算され、残業代やボーナスなどの臨時賃金は含まれません。
臨時賃金には、時間外労働や深夜残業に対して支払われる割増賃金や通勤手当、家族手当などが該当し、これらは月額8.8万円には含まれません。
④学生でないこと
学生は適用対象外になりますが、休学中であったり、夜間学部に通ったりしている方は、加入対象になります。
※データ元:
・厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」
・独立行政法人労働政策研究・研修機構「社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査」及び「社会保険の適用拡大に伴う働き方の変化等に関する調査 結果」
社会保険に加入するメリットとは?
扶養内で社会保険料を払わずに働いてきた場合、106万円の壁を超え、上記の条件を満たすと社会保険料を負担することになります。その結果、手取りの収入は減ってしまうことも。しかしながら、社会保険に加入することは多くのメリットがあることも知っておくことが大切です。
健康保険による補償範囲が広がる
病気やけが、出産などで休まなければならない場合にも社会保険に加入することで、傷病手当金や出産手当金として賃金の3分の2程度の給付が受けられるようになります。
また、障害を患ってしまった場合にも障害厚生年金がもらえますし、万が一死亡してしまった際には遺族へ遺族年金が支給されることになります。
これらは国民健康保険でも受けられますが、社会保険に加入することによってより一層手厚く保障してもえらえるのです。
年金受給額が増える
厚生年金に加入することにより、基礎年金に上乗せされた年金額が支払われます。保険料を会社と自身で折半するので、今の時点で国民年金や国民健康保険に加入している一部の人は、年収が約300万円未満の場合であれば、市町村によっては社会保険に加入した方が保険料が安くなることも。
短い視点で考えれば、現在の手取りは減ってしまうかもしれませんが、将来的に見れば保障は増えたといえるのです。
まとめ
パートやアルバイトで社会保険に加入することで手取り額が減ってしまうことは、一見すればデメリットに感じてしまうかもしれません。
しかし、社会保険に加入すれば老後の年金額が増えたり、手厚い保障を受けられたりするなど、メリットも大きいのです。これを踏まえた上で、ご自身の働き方を見つめ直してみるのはいかがでしょうか。