うつ病からの復職後もずっと働くために必要な3つのステップと注意点
- キャリアを考える
- 公開日:2017年10月16日
うつ病を始めとする気分性障害の患者数は年々増えており、多くは中高年層という事実もあります。治療のために休職をした人が、復職をすることは難しいともいわれますが、慎重にステップを踏んでいけば復職も不可能ではありません。そこで、うつ病から復職するための手順と注意点について説明します。
復職は難しい?うつ病からの職場復帰は準備が大切
2014年の厚生労働省のデータでは、日本でのうつ病を含む気分性障害の患者数は111万人を超えており、85%を35歳以上が占めていることから、ミドルシニア層に多い病気とも言えます。
総数116万6千人 | 年齢別の割合 |
---|---|
15歳未満 | 0.1% |
15-24歳 | 3% |
25-34歳 | 11% |
35-44歳 | 21% |
45-54歳 | 18% |
55-64歳 | 16% |
65歳以上 | 30% |
そのため、職場においても家庭においても多くの責任を背負う方が多いことから、うつ病の治療が進んで病状が回復してくると、仕事に戻りたいと思う人も多いでしょう。ただ、あまり焦って職場復帰をすると、うつ病が再発して結果的に再休職となってしまう場合もあります。
実際、2017年に厚生労働省の研究班が発表した調査結果では、うつ病になって病気休暇を取得した後に職場復帰した人の約半数が、復帰後5年以内に再度病気休暇を取得しているというデータもあります。
これは、うつ病が再発しやすい病気だからということだけではありません。職場に戻った後に再度休職を余儀なくされてしまうのは、病気そのものよりも、復職前の準備不足に大きな原因がある可能性が高いからです。
治療や休養によってうつ病が回復期に入り、日常的な生活には支障がなくなっていたとしても、職場で仕事をしていくのにはまだ回復が足りないかもしれません。
職場は休養している自宅の環境などとは大きく違うため、急に出ていくと病気に強い影響が出てしまう可能性もあります。そのようなことにならないために、職場復帰に向けた具体的なプロセスを、ひとつずつステップを踏んで慎重に進めていくことが大切です。
「もう大丈夫」と自分自身でも思っても、すぐに復帰するのではなく、職場に戻るまでの間に準備段階をいくつか設けましょう。これを着実に進めることで、結果的に復職を成功させることにつながります。
復職に進む準備段階は3つのステップで
職場復帰への最初のステップは、体と心を完全に休めてエネルギーを回復させることに専念することです。
急性期を過ぎて病状が安定してくると、何かしなければという気持ちになって、無理をしてしまうこともあるでしょう。特に責任感の強い人の場合は早くも職場復帰に向けて調べ物をする人や勉強をする人もいます。また家族に対して負い目を感じ、無理に家事に精を出してしまうこともあるでしょう。
しかし、うつ病の治療で最も大切なことは「休養を取ること」です。回復期に入っても、きちんと休むこと自体が病気を治す近道、ということを忘れないようにしましょう。そのことが、復帰に向けたエネルギーを蓄えることにもつながるのです。
もう少し回復してきたら、職場復帰を意識して心や体を鍛えることを考えましょう。鍛えるといっても、特に難しいことをする必要はありません。
最初は生活リズムを整えることから始めます。うつ病の急性期には薬物治療などの影響もあり、生活リズムが安定しません。このリズムを、職場に通っていたころと同じようなリズムに戻すのです。出勤時間に合わせて目覚めるようにすることだけでも良いでしょう。
これができてきたら、今度は外出して歩いてみましょう。適度な距離にある公園や図書館、あるいはショッピングセンターなどに出かければ、歩くことによる体力増進だけでなく、人が集まる場所に出ていくことに慣れる心の準備にもなります。
最初はすぐに疲れてしまうかもしれませんが、その場合は無理をせず、少しずつ距離を伸ばしたり、出かける場所を変えたりしていきましょう。
昼間の活動に慣れてきたら職場復帰に向けたシミュレーションをしてみましょう。仕事着に着替え、実際に電車に乗って会社の近くに行ってみるのです。
最初は以前の出勤時間に出かける必要はありません。朝のラッシュを避けて混雑していない電車で行ってみることから始めても良いのです。慣れてきたら少しずつ以前の通勤列車に乗ることを試してみることも考えてみましょう。
これらの3つのステップを確実に踏んでいけば職場での仕事に対応できる心や体の準備が進むでしょう。くれぐれも性急にならないようにし、1つクリアしたら次のステップといった慎重で段階的な準備が大事です。
いざ復職となっても注意しておきたい3つのこと
復職に向けて心と体の準備が整ったら、いよいよ復職です。ただ次の3つの点については良く注意しましょう。
まず復職のタイミングについては主治医とよく相談して決めること。その際、改めて復帰する仕事の内容を医師によく理解してもらうようにしましょう。仕事といってもそれぞれの会社、業種や職種によって大きく異なります。
医師が「これなら復帰しても大丈夫です」と判断しても、職場の現実に照らすと、まだまだということもありえるのです。復帰して実際にする仕事をわかってもらうように努めましょう。
次に、復職する職場の直属の上司と、事前に復職について相談をしましょう。あまりネガティブなことを話すことは不安かもしれませんが、無理をして装っても後々になってお互いに「こんなはずじゃなかった」ということになってしまいます。率直に自分の現状を上司に伝え、不安な点についても伝えておいた方が良いでしょう。
ある程度の期間、出退勤の時間や出勤日について配慮がもらえるのであれば、しばらくの間それを利用するのも良い方法です。職場復帰への不安が軽減されて、かえって通常勤務に移行できる時期が早まることもありえます。
また具体的な仕事内容の詳細をきちんと話し合うことができれば、安心して職場復帰できるでしょう。また職場復帰に向けた気持ちの持ち方にも気をつけましょう。
休職期間を経て職場に復帰するのはうれしいものです。これまでの遅れを取り戻したい気持ちもあるでしょう。うつ病になる人はまじめな人が多いため、このような気持ちからついつい張り切ってしまう人も多くいます。
しかし自分でも気づかないストレスがたまっていって、うつ病が再発してしまうのは避けたいところです。がんばろうという発想ではなく、自分にできることを確実にやればいいという考え方で、無理なく仕事をするように心がけましょう。
自分のペースで焦らずゆっくり行こう
うつ病での休職から職場復帰するには、心と体を慣らしていくステップが必要です。また実際に復職となる場合にも、再発につながらない無理のない働き方をしましょう。
そのためには、常に自分のペースで各段階をじっくりと進むことが最も大切なことだと言えるでしょう。また、これらの段階をうまくクリアできない場合は無理に復職する必要はないのです。とにかく休む時期だと考えて心身を整えましょう。
元の職場に戻らずに転職という道もあります。とにかく焦らずゆっくりいきましょう。