年金生活者支援給付金制度とは?対象者や支給要件、申請方法などを紹介

  • ちょっと得する知識

2019年にスタートした「年金生活者支援給付金制度」は、年金の受給額が少ない人の生活支援を目的とした制度です。しかし、比較的新しい制度のために、詳しく知らないという人も多いでしょう。今回は年金生活者支援給付金制度の概要から支給額、申請方法をご紹介します。日本年金機構から封書が届いた人、利用できる可能性があるか知りたい人は、ぜひご一読ください。

年金生活者支援給付金制度の概要

年金生活者支援給付金制度とは、低所得の年金受給者に向けて、生活支援を目的に2019年に設置された制度です。

老齢年金生活者支援給付金制度・障害年金生活者支援給付金制度・遺族年金生活者支援給付金制度の3つの種類があります。それぞれ支給要件や対象者、支給額が異なるため、事前に確認しましょう。

老齢年金生活者支援給付金制度について

現在、老齢年金を受給している人で、受給額が少ない人は老齢年金生活者支援給付金制度を利用できます。自分は対象となっているか、いくらもらえるのか確認しましょう。

老齢年金生活者支援給付金制度の対象者

老齢年金生活者支援給付金制度は、以下の条件にすべて該当している人が対象です。

1. 65歳以上の老齢基礎年金の受給者である。
2. 同一世帯の全員が市町村民税非課税である。
3. 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの人は889,300円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた人は887,700円以下である

前年の公的年金等の収入金額に、障害年金や遺族年金などの非課税収入は含まれません。65歳以上で老齢基礎年金を受給している人は、前年度の合計所得を計算し、条件に該当しているか確認しましょう。

計算には、給与や投資から得た利益なども含めて計算します。利用前に注意すべきは、家族の市町村民税が非課税でないと利用できない点です。家族の税の支払い状況も、事前に確認しておきましょう。

老齢年金生活者支援給付金制度の給付額

老齢年金生活者支援給付金制度は、月額5,450円を基準に保険料納付済期間等に応じて算出されます。具体的には、以下の2つの計算式の合計額が給付額になります。

1. 保険料納付済期間に基づく額(月額)=5,450円×保険料納付済期間/被保険者月数480月
2. 保険料免除期間に基づく額(月額)=11,551円×保険料免除期間/被保険者月数480月

計算式で利用する月の基準額は、毎年変更されます。2024年度は月額5,310円を基準に計算していました。また、免除期間の金額も毎年変動しています。2025年度の場合、昭和31年4月2日以降に生まれており、全額免除・4分の3免除・半額免除該当者は11,551円です。

保険料4分の1免除の場合は、5,775円になります。昭和31年4月1日以前生まれの場合は、全額免除・4分の3免除・半額免除該当者は11,518円、4分の1免除の場合は、5,759円です。さらに、大正〜昭和16年4月1日までに生まれた人は、被保険者月数が変わります。

参考:年金生活者支援給付金制度について 厚生労働省

補足的老齢年金生活者支援給付金とは

補足的老齢年金生活者支援給付金は、老齢年金生活者支援給付金の受給要件よりも少し所得が多い人に向けて給付されるお金です。老齢年金生活者支援給付金は、所得金額が条件額を超えると受給できません。

一円でも超えると受給できなくなるため、場合によっては老齢年金生活者支援給付金を受給している人よりも、総所得が少なくなる場合があります。逆転現象を改善するために、補足的老齢年金生活支援給付金が用意されています。受給できるのは、下記の所得金額に該当している人です。

• 昭和31年4月2日以後に生まれた人:前年の年金収入額とその他の所得額の合計が789,300円を超え889,300円以下である
• 昭和31年4月1日以前に生まれた人:前年の年金収入額とその他の所得額の合計が787,700円を超え887,700円以下である

老齢年金生活支援給付金の条件額よりも所得が多い人でも、給付金を受け取れる可能性があるため、ぜひ一度確認しましょう。

障害年金生活者支援給付金制度について

障害年金生活者支援給付金制度は、障害年金を受け取っている人が利用できる給付金です。支給の対象者と、給付額は以下でご紹介します。

障害年金生活者支援給付金制度の対象者

障害年金生活者支援給付金制度は、以下の条件を満たしている人が利用できます。

• 障害基礎年金の受給者である
• 前年の所得が4,721,000円以下である

ただし、前年の所得については扶養親族の数に応じて、増額する場合もあります。また、所得には課税所得にみなされない障害年金などは含まれません。

障害年金生活者支援給付金制度の給付額

障害年金生活者支援給付金制度の給付額は、障害等級によって異なります。

• 障害等級2級:月額5,450円
• 障害等級1級:月額6,813円

この給付額は2025年のものであり、毎年状況に応じて変化します。

遺族年金生活者支援給付金制度について

遺族年金生活者支援給付金制度は、遺族年金を受け取っている人が利用できる給付金です。対象者や給付額は、以下でご紹介します。

遺族年金生活者支援給付金制度の対象者

遺族年金生活者支援給付金制度を利用できるのは、以下の条件に該当している人です。

• 遺族基礎年金の受給者である
• 前年の所得が4,721,000円以下である

遺族年金などの非課税収入は、前年の所得金額には含みません。また、所得額は扶養親族等の人数で変化します。

遺族年金生活者支援給付金制度の給付額

遺族年金生活者支援給付金制度の給付額は、月額5,450円です。ただし、2人以上の子が遺族基礎年金を受給している場合は、5,450円を子の数で割った額が、それぞれ支払いされます。例えば、4人の子が受給している場合は、一人当たりの金額、5,450円÷4=1363円がそれぞれに支給される形です。

年金生活者支援給付金制度の申し込み手順

65歳になって新たに老齢基礎年金を申し込む人が、年金生活者支援給付金制度の申し込みをする場合の手順は、以下の通りです。

1. 65 歳になる3ヵ月前に老齢基礎年金の請求書と、同給付金請求書が入った封筒が届く
2. 給付金請求書に必要事項を記入
3. 老齢基礎年金の請求書と一緒に年金事務所へ提出

障害年金や遺族年金の場合でも、基本の流れは同じです。提出をするのは年金事務所から届いた年金請求書と給付金請求書のみで、その他の書類は必要ありません。もし、受給者本人による申請が難しい場合は、代理人による代筆での請求手続きが可能です。

年金生活者支援給付金制度の注意点

年金生活者支援給付金制度を利用する際に、知っておきたいポイントについてご紹介します。申請前に一度ご確認ください。

給付額は毎年変わる

年金生活者支援給付金制度の給付額は、毎年変わります。利用する制度の種類によって変わるのはもちろん、基準月額が賃金や物価に応じて変動するためです。令和6年度から令和7年度の給付額は、2.7%増額改定されています。詳細は、以下の通りです。

令和6年度 令和7年度
老齢年金生活者支援給付金 5,310円 5,450円
障害年金生活者支援給付金 1級:6,638円
2級:5,310円
1級:6,813円
2級:5,450円
遺族年金生活者支援給付金 5,310円 5,450円

金額の改定は、毎年4月に行われています。

条件に該当していれば毎年もらえる

一度、年金生活者支援給付金制度の申請をした後は、条件に該当し続けている限り、翌年以降の手続きは不要です。ただし、支給条件を満たせず、一度給付金を受け取れなくなった後にもう一度受け取れるようになった場合は、再度請求手続きを行う必要があります。

受給できなくなる場合がある

年金生活者支援給付金制度が受給できなくなるのは、以下の条件に該当している場合です。

1. 日本国内に住所がないとき
2. 年金が全額支給停止のとき
3. 刑事施設等に拘禁されているとき

1〜3に該当した場合は、年金事務所へ届出が必要になります。年金機構から封筒が届いている場合でも利用できない可能性があるため、しっかりと確認しましょう。

確定申告は不要

年金生活者支援給付金制度は、所得税や復興特別所得税の課税対象とはなっていないため、確定申告は不要です。源泉徴収票も発行されません。

詐欺に気を付ける

日本年金機構や厚生労働省の委託業者を名乗って、個人情報の確認や金銭を受け取るなどの詐欺が発生しています。電話や訪問によって、口座番号や暗証番号を確認することはありません。

また、日本年金機構の委託業者が訪問することはなく、職員が訪問してお金を預かる際は、必ず領収書が発行されます。年金生活者支援給付金制度の手続きで、手数料を求める連絡などはありません。詐欺事件が発生していることを知り、少しでも不審に感じたら警察や日本年金機構へ相談しましょう。

まとめ

年金生活者支援給付金制度についてご紹介しました。老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金を受給している人で、条件に該当する人は給付金が受け取れる仕組みです。支払いは、通常の年金と同じように2ヶ月に一度行われます。申請は簡単にできるため、日本年金機構から封書が届いたらガイドに沿って記入し、提出しましょう。

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