多様な価値観が重視される今。これからの働き方を考える

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働き方改革やコロナ禍を経て、日本でも個人の幸福やライフワークとしての仕事に焦点が当たるようになりました。しかし、日本ではまだ独立して働くことや、先進的な働き方が一般的ではないことも多いでしょう。今回は様々な“働く視点”を紹介します。

週4勤務、週休3日制度が広まる現代

ウェルビーイング(well-being)という言葉を聞いたことはありますか?ウェルビーイングとは世界的にも提唱されている、個人の権利が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを示す言葉です。ワークライフバランスが重要視されるようになってきたのと同様、このウェルビーイングという概念を大切にする企業も増えてきました。

そんな心身ともに幸福である生き方に注目が集まっている今、大企業を中心にベンチャー企業などでも週4日勤務の導入が広がっているのをご存じでしょうか。これも流動的な働き方が認められてきた現代だからこその働き方の一つです。週4日勤務の導入はIT企業や運送業、そして皆さんがよく利用する衣料品店などで採用されています。

さらに、こういった取り組みは「経済財政運営と改革の基本方針2021」の中で「選択的週休3日制」が盛り込まれたことでも一気に広がりをみせました。実際、今年(2024年)に入ってからも千葉県では全職員に対し、フレックスタイム制を導入する方針を固めたという報道がありました。これにより、仕事には支障をきたさずに週休3日も可能になるとされ、早ければ6月からでも新体制の働き方がスタートするといいます。

このように週休3日制の導入によって、働き手はワークライフバランスをしっかり取れるだけではなく、育児や介護といった家庭事情を加味しながら働くことも可能に。また、時間に余裕が生まれたことで学びの時間をとったり、旅行などのイベントを楽しんだりと、人生をより豊かに生きる時間を持とうという人が増えました。

まさにワークライフバランスが大切にされる昨今では、多様で柔軟な働き方により生き方の選択肢を増やせるようになったのです。ただし、厚生労働省の調査では完全週休2日以上の休みを取り入れている会社は企業全体のおよそ9%とまだまだ導入数が少ないのが現状です。

世界でも広がる、流動的な働き方!

日本でも徐々に週休3日制を取り入れている企業が増えていますが、その動きは世界でも同じです。例えば、ベルギーでは2022年2月に「労働者に対する、減給なしで週4勤務を選択する権利」が認められました。週休3日制度を推進する制度として、多くのベルギー企業で採用されています。

また、アイスランドでは、2015年から2019年の間に週4勤務の労働実験を実施し、健康とワークライフバランスの面に相関関係があるかを調査しました。結果として、対象となった労働者の幸福度が向上したと裏付けられました。このように、数字でも幸福度が証明されはじめ、世界的にも"働き方"に注目が集まった結果、週4日勤務を採用する国が増えています。

週4日勤務のメリットとは?

週4日の勤務体制にすることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。

幸福度が上がる
先ほどのアイスランドの実験でも言えたことですが、働き手の幸福度が上がることが大きなメリットの一つです。週5日勤務をしていると平日は仕事に忙殺され、週末は家事など家のことをする時間に取られ、気がつけばあっという間に休日が終わってしまうという経験は誰しもありますよね。

特に子育て世代とっては、自分の時間もないほど忙しい人がほとんど。その中で、週休3日になれば今よりも自分の時間を確保することができるでしょう。好きなことをしたり、友人たちと語らったり、子どもとの時間を過ごしたりと、そういった時間ができることで幸福度が上がるのだと考えられています。

生産性が向上する
週休3日にしてしまうと生産性が下がってしまうのでは、と多くの企業は懸念を持つかもしれません。生産性が落ちるなら休みを増やしたくないという企業が大半でしょう。しかし、週休3日にすることで逆に能率が上がった、という報告が週4日勤務制度を採り入れている会社から次々と報告されているのです。

休みが増えたことで余裕が生まれてアイデアが湧いたり、インプットをする時間ができたことでクリエイティブな職種では発想力が増えたりしたとの報告も。よく、"休むことも仕事のうち"と言われますが、まさにその通りなのです。

経費削減に繋がる
週休3日になることで、オフィスは電気代等のコストを削減することができます。また、これまでは大きなオフィスを借りていた企業も縮小してオフィスを構えられたりと、オフィスそのもののコストを下げることもできるのです。社員の交通費や無駄な残業を減らすこともできるため、週休3日にすることによって会社の経費を削減することができるでしょう。

こんな働き方もある! ワーケーションとは?

ここまでは週休3日制度という企業内の働き方をみてきました。では、現代ならではのユニークな働き方も見ていきましょう。

近年、【ワーケーション】という働き方が注目を浴びているのをご存じでしょうか。ワーケーションとは「ワーク」と「バケーション」が組み合わされて作られた言葉です。リモートワークの浸透により、観光地やリゾート地で休暇を取りながらテレワークできるようになったことを起因にして生まれた働き方です。

ワーケーションは、自宅ではなく好きな場所で仕事をすることで、通勤や職場のストレスを感じることなく働くことができます。日常的な仕事に、非日常的な休暇の感覚を合わせたワーケーションは「新たな働き方」として注目されています。

ワーケーションの種類とは?

ワーケーションと一言にいっても、様々な働き方が存在します。では、ワーケーションの種類をみていきましょう。

福利厚生型
主な目的を休暇に定め、その中でテレワークなどを利用しながら業務を行うスタイルです。休暇がメインとなるため、業務を行う地はリゾート地や観光地などです。

地域課題解決型
地域貢献や地域の課題解決を目的として行われるものです。特定の地域の人々や関係者と交流をしながら業務を行うため、企業の事業が展開可能な地域がワーケーションの地として選ばれます。種類も2泊3日などのショートステイのものから、1ヶ月程度滞在するロングステイのプログラムなど様々なスタイルがあります。

合宿型
同僚たちと一緒に、ある地域や場所へ出向き業務を行うスタイルのことを指します。地域課題解決型のように必ずしも現地の方々と交流する必要はなく、仕事環境に新しい風を吹き込み、社員にリフレッシュしてもらうために取り入れる企業が主です。

サテライトオフィス型
企業の所有しているサテライトオフィスやシェアオフィスで業務を行うスタイルのことをいいます。合宿型と同様に、働く場所や環境を変えることで業務効率を上げることを目的としています。この場合、業務内容は通常通りであることが多いです。

ワーケーションのメリットとデメリットとは?

観光地のような自然豊かな土地で仕事をするなんて幸せですよね。そんなワーケーションのメリットとデメリットを見ていきたいと思います。

ワーケーションのメリット

生産性の向上
ワーケーションは新たな環境で業務にあたるため、意欲が向上することが見込めます。その結果、集中力も増し、インスピレーションが生まれる確率が高まるでしょう。社員たちがのびのびと働くことで生産性が上がり、業務効率も上がります。このように、社員のパフォーマンスが上がることは、ワーケーションを取り入れる大きなメリットです。

多様な働き方ができる
ワーケーションは場所や時間に縛られない働き方です。そのため、ワークライフバランスを重視する人にとっては、もってこいの働き方でしょう。また、企業にとっても長く活躍する人材を育てることができるので、ワーケーションを売りにして柔軟性のある企業として人を集めることも可能に。多様性を重視した現代だからこそ、働き方の一つとして企業戦略的に社会にアピールできるポイントとなります。

ワーケーションのデメリット

コストがかかる
ワーケーションの導入には一定のコストがかかります。業務遂行に必要な環境の確保をはじめ、システム面も整えなければなりません。ワーケーションは自由な働き方ができる一方、コスト面がかかることも企業側は覚えておきましょう。

合わない人もいる
新たな働き方にストレスを感じる人にとっては、苦痛なものとなってしまう恐れがあります。自分で勤怠管理やスケジュール設定が苦手な人にとっても向いていません。また、ワーケーションは観光地などで行われることが多いため、仕事感覚よりも休みモードなってしまい、仕事に身が入らないという人も。普段と違う環境で集中するのが難しい人やプライベートと仕事を分けるが苦手な人にとっては向かない働き方になってしまうでしょう。

ワーケーションに向いている職業とは?

ワーケーションでは、インターネット環境があれば対応できる職種が向いています。具体的には、以下のような職種はワーケーションの導入がしやすいでしょう。

・ITエンジニア
・プログラマー
・画クリエイター
・デザイナー
・イラストレーター
・編集者
・コンサルタント
・ライター

また、現在観光庁が主導してワーケーションの導入についてのセミナーやSNSでの情報発信などを行っているので、興味のある方は一度チェックしてみてください。

※データ元:国土交通省 観光庁『「新たな旅のスタイル」ワーケーション&ブレジャー』

アクティブシニアを求めている地方

地方ではアクティブシニア層を求める動きが近年活発化しています。総務省は、退職後のアクティブシニア層に観光や住民との交流ができる「ふるさとワーキングホリデー(ふるさとワーホリ)」制度について、今年(2024年)から10の自治体モデル事業を行うと発表しています。ふるさとワーホリとは、各自治体と地元企業などが連携して、参加者の就労先を用意するとともに、観光や地元住民との交流イベントの機会を提供する仕組みのことです。

「旅行以上移住未満」の体験ができるのが魅力で、期間は2週間~1カ月程度です。アクティブシニア層は時間に余裕があるため、多くの地域を訪問しやすく、政府でも積極的に地域と関わりを持ってもらいたいと考えているのだといいます。プログラムの内容としては観光を楽しみながら農作業の手伝いなどが想定されているのだとか。このように、過疎化の進む地方こそアクティブシニア層の働きが求められているのです。

まとめ

昔は一生会社員として過ごすことも多かったですが、現代では働き方は人それぞれになりました。幸福度と人生観の狭間で、私たちはどのようにして生きていけばいいのか考える必要があるかもしれません。そんな働き方を見直す時間は、シニア世代に突入する前のミドルシニア世代うちから考えておきましょう。そうすることで、私たちは有意義なシニア時代を過ごせるのではないでしょうか。

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