老後の備えにはお金だけでなく、健康貯金を!
- ライフプラン・人生設計
- 公開日:2024年2月13日
NISAやiDeCoなど老後の資金の備えについては現在、多くの制度があります。ただ、老後に向けて備えが必要なのはお金の貯金だけではありません、“健康貯金”も重要です。本日はそんな、健康の大切さについて考えてみましょう。
老後はお金だけあっても意味がない⁉
厚生労働省によると、令和4年における日本人の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳でした。世界的に見ても、日本の平均寿命は高水準だと言えます。医療や食文化が発達した現代において、人生100年時代はより現実のものとなりました。
そして、巷では「老後資金2,000万円」など、定年退職後の費用を準備しておかなければと、様々な注意喚起がされています。老後に備えた資金確保に、NISAやiDeCoといった制度を利用している人も少なくないでしょう。
しかし、ここで考えておかなくてはならないのが、お金以上に大切な健康寿命です。たとえ老後の資金が潤沢にあったとしても、健康でなければ楽しいセカンドライフを送ることができません。最近では、健康的な生活を送るためにも、健康寿命に着目した生き方が推奨されるようになりました。
また、身体だけが健康であればいいとも限りません。リタイア後にうつ病を発症する人の割合が増えていることをご存じでしょうか。会社を退職する前は日々の仕事に向き合う時間が多く、あっという間に一日が過ぎてしまったという方も、リタイア後は時間に余裕が生まれます。
趣味を持ったり、新たな仕事に邁進したり、語らう友人がいたりと充実した生活が送れればいいのですが、やることがなく、心にぽっかりと隙間ができてしまうなんてことも...。老後を健康的に過ごすためには、お金だけでは十分とはいえません。自身の健康やパートナーとの仲、そして心の健康も大切な要素です。
そんな健康で溌剌とした老後を送るためには、貯金と同じく健康も毎日積み重ねていく必要があります。老後、健康でいるためにもミドルシニアのうちから日々の健康貯金に気を付けて生活するべきでしょう。
※データ元:厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況」
どうしたら健康貯金ができるのか
お金を貯める貯金と違い、目に見えない健康貯金。ローマは一日にして成らずの格言と同様、健康も積み重ねが大切になります。健康でいるためには、ミドルシニアのうちから健康でいる努力を怠ってはいけません。では、普段から健康に対してできることとは、どのようなことがあるのでしょうか。
・規則正しい生活を心がける
健康で長生きができる人たちは、長年に渡り規則正しい生活を送っていることが明らかになってきました。夜更かしや暴飲暴食などの不規則な生活は、若いうちは無理をすれば何となく過ごせたでしょう。しかし、その時は大丈夫でも次第に年齢を重ねると、無理をした分だけ健康は蝕まれていくのです。
長時間のゲームで睡眠を削るような生活スタイルを送ってしまう人や、働き方改革が進んでいるとはいえ未だにワーカホリック気味な生活を営んでいる人も多く、気づかぬうちに身体のどこかに不調をきたすようになっていることも。つまり、規則正しい生活を送るという何気ないことが意外と難しく、できる人が少ないのです。
・バランスのよい食事をする
食生活は、健康寿命を考える上で最も気をつけなくてはならない問題でしょう。口から入る食べ物は直接的に健康に作用します。そのため、日々の食事は健康貯金と言い換えていいほど大切なものになってきます。
とはいえ、社会人になれば付き合いで接待や会食などもあり、お酒や脂ものを食べる機会も多いはずです。そこで、まずできることは食事量を意識することです。食べ過ぎないことはもちろん、年齢を重ねると食べなさすぎてしまうこともあります。痩せてしまうと免疫力が下がり病気のリスクも高まります。適量をしっかり食べることを心がけましょう。
また、食塩や加工食品、甘味飲料は控えるようにすることが大切です。年齢を重ねると筋肉の量が減ることで身体機能が低下し、転倒したり骨折したりするケースも。そのため、肉や魚、卵や乳製品など、動物性タンパク質が多く含まれる食品をバランスよく摂取しましょう。
そして、骨をつくる機能があるカルシウムは、ビタミンDを一緒に摂ると吸収がよくなると言われています。ビタミンDは魚やキノコなどに含まれているほか、日中に15分ほど日光にあたるだけで体内に生成されるといいますから、日光を浴びる生活を送るようにしましょう。
・健康診断は定期的に受ける
会社員なら定期的に会社が主導した健康診断があるかもしれませんが、個人経営の方にとっては定期的な健康診断は忘れがちになることも。しかし、健康を守るためには、未病対策や健康診断、人間ドックを受けることが大切になります。
たとえ病気に罹ってしまったとしても、早期発見ができるだけで生存率を上げることができます。定期的に健康診断や人間ドックを受けて、自分の健康状態をしっかりと把握することが重要です。
どんなに健康的な生活を送っても、病気を完全に防ぐことはできません。健康診断を受け、早期発見・早期治療をすることで、健康寿命を延ばすことができます。今は症状が出ていないから大丈夫と思わずに、定期的に検査をするようにしましょう。
・適度な運動を習慣化する
習慣的に運動を行っている人とそうでない人では、生活習慣病になるリスクがかなり違うと言われています。健康づくりのための運動量の目安は、息がはずみ、汗をかく程度の運動を週合計60分間、毎週続けることだとされています。(対象:18~64歳)
1度に時間が取れなくても、1回20分程度を週3回や1回30分程度を週2回など、分けて行う習慣をつけると良いでしょう。大切なのは無理な運動ではなく"汗をかく程度"の軽い運動を習慣化することです。過度な運動は腰痛や合併症などを引き起こしてしまう危険性もありますから注意しましょう。
・適切な体重管理を行う
体重過多になると、糖尿病などになりやすいほか、身体自体が重いゆえに運動を行うのが億劫になってしまうため、健康のためには悪循環です。BMI指数があるので、こちらを参考にご自身の適切な体重をキープするように日々を過ごしましょう。
BMI:体重(kg)÷身長(m)の2乗
(※50歳~69歳の方は20.0~24.9、70歳以上の方は21.5~24.9が目標値とされています)
体重が少なすぎても健康は維持できません。年齢を重ねてから体重が大幅に減ってしまうと、免疫力が下がったり、筋力が低下したりといった健康を損なうリスクが増大します。また、筋力が衰えてしまうと転倒しやすくなり、さらなる怪我の原因にもなりかねません。食べすぎ・食べなさすぎには注意し、適正な体重を維持するようにしましょう。
・しっかりと睡眠をとる
睡眠は、健康と非常に重大な関係性があると言われています。睡眠の質が悪化したり、睡眠時間が不足したりすると、健康リスクが高まるだけでなく、心にも支障をきたしてしまうという研究もあるほど。それくらい我々人間の健康と睡眠の関係は切っても切り離せないものなのです。
良い睡眠をとるためには、朝起きたらまずはカーテンを開けて日光を浴びるようにしましょう。太陽の光には体内時計を正確にリセットする役目があると言われています。また、寝る前のコーヒーや紅茶といったカフェインを含む飲料は控えるようにし、部屋の温度や照度を適切に保つようにしておくのも良質な睡眠を取るためには必要です。
・喫煙や飲酒習慣を見直す
喫煙習慣がある場合は、喉頭がんや肺がんの罹患リスクが高いと言われています。そのため、喫煙者は喫煙習慣を見直しましょう。いきなり喫煙を始めてもかえってストレスを溜めて余計に喫煙が増えてしまうことも。そうならないためにも無理なく喫煙習慣を改めるようにするのが重要です。
飲酒は適度なものならいいですが、過剰にアルコールを摂取することで、癌や高血圧、糖尿病などの病気に罹患するリスクが高くなります。また、習慣的な飲酒により、アルコール依存症になることも考えられます。飲酒の場合も喫煙と同様、いきなり「禁酒」と決めるのではなく平日だけに限定して飲む、休肝日を決めるなど、メリハリを付けた飲み方をしましょう。
・生きがいのある生活を送る
これまでは身体にまつわる健康面を述べてきましたが、意外と重要なのが心の健康です。趣味を持ったり、ボランティア活動に専念したり、自分が「楽しい!」と思える時間や"生きがい"を持つようにしましょう。趣味などを楽しむ場合、仲間たちと繋がればさらに楽しみも増えるはずです。
ある調査によれば、生きがいのある人は生きがいがない人に比べ、脳血管疾患などの死亡リスクが低くなることがわかりました。旅行や読書、園芸などガーデニングなど、楽しめる趣味を持つことで健康にいいだけでなく、人生もより密度の高いものとなるでしょう。健康寿命を延ばすためには、このように社会的な繋がりや生きがいを持つことが大切なのです。
・ストレスを感じすぎない
満員電車や日々の人間関係など...私たちの生活は小さなストレスで溢れています。しかし、そんなストレスを多く抱えてしまうとうつ病といった精神的な病を患ってしまうことも考えられます。さらに、ストレスは眠りの質が低下させ、疲れを取れにくくしてしまいます。
ストレスを抱えたまま休んでも、翌日にまた疲れを感じよりストレスを感じるという悪循環に陥ってしまうことでしょう。ストレスを溜めないためにも気分転換や軽い運動、友人たちやパートナーとの語らう時間を取るようにしてください。
※データ元:東京都保健医療局「習慣的に運動しよう」
健康でいることが最大の節約!
病気やケガになってしまった場合、高額な医療費がかかることもあります。厚生労働省によると生涯医療費額は、およそ2,700万円。入院医療費は、約12万円で85歳以降が最も増えるそうです。
例えば、癌の入院医療費は罹患する場所にもよりますがおよそ100万円、脳梗塞では170万円、脳出血は約250万円だと言われています。つまり、健康でいることは将来的な医療費や介護費を抑え、人生を豊かにするための投資だといえます。
日本人は欧米諸国の人々に比べ、歯に問題を抱える人が多いとも言われています。歯を悪くすることで歯を失うだけでなく、組織の腐敗によって細菌が全身へ巡り、心筋梗塞や脳梗塞、認知症といった疾患のリスクも高める可能性があるため、歯を健康に保つ重要性も明らかでしょう。
また、そんな国民の歯の健康状態を危惧して政府でも2022年に「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針2022)」の閣議決定を行いました。ここには、国民の歯科健診を義務化する「国民皆歯科健診」制度の導入を検討することが明記されているのです。
歯を失ってしまうと食べる楽しみが減ってしまうため、楽しく豊かな老後を送るためには定期的に歯科検診に通う必要性がお分かりいただけると思います。これまでの研究でも自歯が少ない人の方が医療費は高額になるとわかってきたことから、なるべく長く自分の歯を健康に保ちたいものですね。
※データ元:公益社団法人全日本病院協会『臨床指標「疾患別入院医療費平均」2020年度(急性期グループの対象病院における調査データ)』
まとめ
人生100年時代を考える上でお金を貯めることはもちろんのこと、豊かで溌剌とした人生を送るためには健康への投資を行っていく必要があります。定期検診はもちろんのこと、規則正しい生活を送ることで、日々の健康貯金を増やすことができるでしょう。