定年後の再雇用で、待遇はどのように変わる?
- キャリアを考える
- 公開日:2024年1月 9日
人生100年時代を迎え、元気なうちはなるべく働きたいと考える方も増えました。その中で、定年後の再雇用で待遇はどのように変わるのか、不安に思う方も多いでしょう。本日は、そんな定年後の再雇用での待遇について詳しくお伝えしていきます。
定年後の再雇用制度とは?
多くの会社では、定年年齢は60歳と決められています。しかし、日本では少子高齢化や年金問題を背景に、高齢者雇用安定法などが施行され再雇用制度が整えられました。そのため、本人が希望すれば一度退職した後でも60歳を超えて働き続けられるようになったのです。
厚生労働省の発表では、日本社会はなんと2055年に全人口は9000万人を割り込んでしまうだけではなく、高齢化率は40%を超えると推計されています。そんな中、定年後再雇用制度を利用することで、意欲のある従業員は定年後もスキルや経験を活かして働くことができます。
企業側にとっても、これまで会社に貢献してくれていた社員のノウハウをそのままに働いてもらうことができるので、効率的な企業運営が可能となります。まさに、定年後の再雇用制度は、現在の日本社会に沿った制度だと言えるのです。
定年後の再雇用制度とは?
そもそも定年後の再雇用とは、従業員が定年退職後に同じ企業と再び雇用契約を結ぶ雇用継続制度のことを言います。
多くの会社では退職金制度があり、定年時に退職金が支給されます。そうして退職の手続きをした後に、再雇用される場合が多くなっています。しかし、中には「延長した雇用期間が終了した退職時に退職金を支給する」と決められている会社もあります。
また、定年後の再雇用はパート・アルバイトや嘱託社員となる場合が多いです。これまで正社員として雇用期間の定めがない契約であったとしても、再雇用契約では期間が定められていることもあります。このようなことを踏まえて、自身の会社がどういった体制を取っているのかを予め確認しておく必要があるでしょう。
再雇用・再就職・勤務延長制度の違いとは?
定年後再雇用再度と類似するものに、再就職や勤務延長制度があります。
再就職
再就職とは一度会社を退職し、ハローワークや転職サイトなどを利用して定年後に自分で就職先を見つけることをいいます。そのため、定年退職した会社とは別の会社で働くということになります。
勤務延長制度
勤務延長制度は定年を迎えた従業員が退職をせずに、そのままの雇用形態で勤務を継続できる制度のことを指します。勤務延長制度と定年再雇用制度は一見同じようにも見えるので混同している方も多いですが、待遇が変化する定年後再雇用とは異なり、勤務延長制度では待遇面が変わらない点が大きな特徴と言えるでしょう。
再雇用で給料や待遇はどうなるのか?
定年後の再雇用で気になるのが給料などの待遇面でしょう。
再雇用時の雇用形態
多くの企業において、65歳以上の社員はパートやアルバイトとして雇っている場合が多く、続いて嘱託社員や契約社員の割合が高いです。ただし、正社員としての登用も全体の3割近くに上り、企業間で再雇用に対する雇用形態の選択は異なる結果となっています。
再雇用後の給与
給与の相場は定年時のおよそ7~8割に減る会社が多いのが実情です。つまり、定年後に再雇用される場合は給料面では下がってしまう傾向にあります。
例えば数字で表してみると、男性の場合には50代後半の平均給与は約700万円。そして60代前半ではおよそ570万円と言われています。その差は約130万円以上。1か月あたり10万円以上給与が減ると考えてみると、その数字が大きいことが頷けるでしょう。
ただし、日本では同一労働同一賃金の導入が行われています。これは、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者とパートタイム労働者や派遣労働者などの非正規雇用労働者との間での不合理な待遇差の解消を目指す取り決めです。
この取り決めがされているため、企業側は定年後再雇用制度を導入した場合においても、対象の従業員は同一労働同一賃金の原則に基づいて、ほかの従業員と業務内容が同じであれば同等の報酬を支払う必要があります。つまり、定年後再雇用で待遇を引き下げると検討する場合、労使双方の納得を得てから雇用契約の締結が必要になります。
再雇用後のボーナス
元々ボーナス(賞与)のない会社は、定年後再雇用となってもボーナスは支給されないことが多いようです。ただし、会社によっては非正規雇用の嘱託社員にもボーナスを支給しているところもあるため、一概に定年後の再雇用でボーナスはもらうことができないとは言えないでしょう。
また、再雇用後の収入減を補うために、高年齢雇用継続給付という制度が設けられています。これは、給与が定年前の75%未満に低下した場合、雇用保険から差額の一部が支給されるというものです。高年齢雇用継続給付は会社を通じて申請する必要があるため、手続きについては会社に相談しましょう。
さらに、再雇用後も健康保険加入の条件を満たしていれば、引き続き会社の健康保険に加入できます。扶養している家族がいる場合には、家族も扶養に入れます。再雇用後に短時間勤務等で健康保険の加入条件を満たさない場合でも、任意継続制度により2年間は会社の健康保険に継続加入が可能となります。
再雇用後の有給休暇
有給休暇は労働基準法により、勤続年数に応じた日数が付与されることになっています。再雇用の場合、定年前からの勤続年数を通算して有給休暇が付与されます。既に付与された有給休暇の未消化分も繰り越しが可能です。
なお、再雇用後に正社員に支給されている手当を正当な理由なしに再雇用の社員に支給しないのは違法と定められています。ですから、住宅手当や住宅手当などが支給されている場合には、これらの手当は引き続き受けることができるでしょう。
※データ元:厚生労働省「今後の高年齢者雇用の 現状と課題について」
定年後再雇用のメリットは?
定年後再雇用になる場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。
・安定した収入を得られる
根本的なことになりますが、再雇用制度を活用すれば定年後も収入が得られるため、年金支給が始まる歳までの生活をより安定させることができます。パートやアルバイトとして仕事を持つ場合、再雇用制度で得られる賃金より少なくなってしまう傾向にあります。そのため、再雇用制度で収入を安定させることは生活の基盤や将来の暮らしへの安心感になるでしょう。
・張り合いや生きがいに繋がる
新しい職場に移るとなると、新しく仕事を覚えたり職場の環境に馴染んだりしなくてはなりません。しかし、再雇用であれば気の置けない同僚たちと一緒に仕事ができますし、仕事内容もこれまでと変わらない可能性も。収入面だけではなく、仕事を通して社会と繋がることによって張り合いや生きがいが生まれ、精神的な部分も良好に保つことができます。
・手間なく福利厚生の恩恵を得られる
再雇用制度で定年後も働く場合、労災保険と雇用保険などは定年後の再雇用後も特段必要な手続きをせずに引き継ぐことができます。また、有給休暇も付与されます。突発的な体調不良でも、給料をもらいながら休むこともできる点において、歳を重ねてからの働き方には合っていると言えるでしょう。
定年後再雇用の注意点とは?
定年後も働ける再雇用制度は一見メリットばかりに思えるかもしれませんが定年後再雇用制度で働く場合に、いくつか注意点があります。
・年金が減額される恐れがある
在職老齢年金制度は、月給や賞与に応じて年金の一部が減額されたり、全額支給停止となってしまうことがあります。再雇用制度を活用して働くのであれば、再雇用後の収入や年金額を事前に確認するようにしましょう。
・再雇用後の転職は難しい場合も
定年後再雇用制度を活用すれば、65歳まで働くことはできます。しかし、現状では多くの会社は65歳以降の雇用継続は行っていません。そのため、65歳以降も働きたいと考える場合は、65歳を過ぎてから転職活動を行う必要があります。高齢になればなるほど転職できる職種は限定される恐れがあるため、再就職したいタイミングでできないこともあるでしょう。
・ストレスが増える可能性がある
定年前と同じ役職や立場で働くことができないことも多い、再雇用制度。今まで部下だった社員が上司になることも考えられます。そうした状況下でストレスを感じてしまい、仕事のモチベーションが下がってしまったり、働くこと自体が辛くなってしまうことも。
自身でも気づかないうちに気持ちが打ちひしがれてしまい、鬱になってしまう場合もあるので、ストレスを感じたら職場に相談するなど一人で抱え込まないことが大切です。
・雇用形態が限られてしまうこともある
定年後再雇用制度には正社員や契約社員、パートタイムや派遣社員といった雇用形態があります。定年前が正社員雇用であったからといって同じように正社員として働ける訳ではありません。さらに、雇用形態によって福利厚生も違ってくる可能性があるため、再雇用制度を利用する場合は、事前に雇用形態について確認するようにしてください。
・給与が下がることが多い
定年後再雇用制度における給与は、原則同一労働同一賃金が適用されます。しかし、年金受給や業務変更によって、定年退職時よりも給与が下げられたり、待遇が悪くなることも。ただし、大幅な給与水準を下げることは認められませんので、雇用側とトラブルにならないためにも事前に給与の把握をしておくことをおすすめします。
定年後再雇用制度でみる、流れと保険関係の手続き
定年後の再雇用制度はどのような流れで進んでいくのでしょうか。再雇用までの手続きは、おおよそ次のような流れを汲みます。
1.企業側からの意思確認
定年退職の対象者に対して、企業側から個別面談を行ったり再雇用制度の概要を説明したりするなどの働きかけが行われます。そこで雇用されている側は、雇用を希望するか否かを決めます。
2.雇用条件の説明
再雇用希望者は企業側が後日設けた面談に出席し、業務内容や賃金などの雇用条件の説明を受けます。この面談は後に「聞いた、聞いていない」などといった双方のトラブルを防ぐ役目があります。
3.再雇用への手続きを行う
退職金が支給されるなど、再雇用への手続きの前には定年退職の手続きが優先されます。
そして、雇用保険は週の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがあれば、継続して被保険者となります。健康保険は週の所定労働時間および月の所定労働日数が常時4分の3以上であれば、引き続き74歳まで継続できます。ただし、勤務時間の短縮など雇用条件が変更された場合は、加入対象から外れることもあるので注意しておきましょう。
厚生年金についても70歳の誕生日前日までは引き続き加入します。なお、健康保険の加入対象から外れた場合は、厚生年金保険の資格も失いますので注意しておいてください。また、介護保険料については65歳の誕生日の前日までは給与からの天引きが行われます。
まとめ
人生100年時代となった今、シニア層も健康なうちはなるべく働いて欲しいと思っている企業は多くあります。しかし、定年後の再雇用制度を利用する場合は、メリットとデメリットを予め知っておくことが大切です。条件や待遇を事前に確認することで、定年後の再雇用後も気持ちよく働くことができるでしょう。