介護と両立しながら働きやすい会社を見つけるポイント
- キャリアを考える
- 公開日:2023年2月22日
親や配偶者の介護のため勤めていた会社を辞める、いわゆる「介護離職」を防止するため、厚生労働省では、介護休業法に基づいた介護休業制度などの周知徹底を行い、介護を行っている労働者の継続就業を促進しています。そこで今回は、介護をしながらでも会社で働き続けることができる制度と、介護と両立しやすい働き方についてもご紹介していきます。
介護と両立できないからといって仕事を辞めないほうがいい理由
介護と仕事の両立は難しそうと思い仕事を辞めよう、と考える方もいらっしゃることでしょう。しかし、介護離職はさまざまな理由でおすすめはできません。
収入源がなくなる
継続的に介護を行うためには、経済的な負担がかかります。介護サービスの料金はもちろん、ご自身の生活費も必要になります。また、介護が終了した後の生活を視野に入れて考えても、経済的基盤は重要です。
介護に直面しても、すぐに退職することなく、仕事と介護を両立するための制度を活用して、仕事と介護を両立できる方法を模索してみるのが良いでしょう。
再就職が難しくなる
介護は終わりというものが明確に見えるものではありません。何十年と続くこともありため、自身の生活の一部に組み込んで付き合って行く必要があります。
施設に入所するまで仕事を辞めようという方もいらっしゃると思いますが、現在の日本は超高齢社会です。令和2年10月時点で、日本の65歳以上の人口は全人口の28.8%。令和18年には33.3%と、日本人の3人に1人が65歳になると推測されています。健康寿命の延伸も見られているものの、75歳以上になるとおよそ4人に1人は介護サービスを受給しており、サービスを探すこと自体が難しい場合もあります。
いつ再就職できるかもわからない状態で離職してしまった場合、やっと施設をみつけた時にはブランクが空いていて再就職が難しい場合もあります。
そのことも考慮して、ぜひ今の会社で働き続けられるかどうかチェックしておきましょう。
関係性が絶たれる
介護中心の生活になると、元々培っていた人間関係が希薄になり、余計に孤立してしまうこともあります。特に親族の介護というのは、身近な人だからこそのストレスや、上手くいかないと感じるケースも多々あります。
介護以外の関係性を持つことは、ご自身のメンタルを安定させるためにも非常に重要だということは覚えておいてください。
介護休業給付金を取得できなくなる
介護休業給付金とは、介護休業を取得した際に支給される給付金のことです。原則として休業開始時の賃金月額の67%が支給されます。退職してしまえば「介護休業」を取得したことにはならないので、この給付金を取得することはできません。
このように、介護と仕事を両立するための制度はたくさんあります。介護離職する前に、他にもどのような制度があるかぜひ一度チェックしてみてください。
現職は介護と両立しながら働きやすい会社か
そもそも会社に理解があるかどうかによって、働き続けられるかどうかも変わってくることでしょう。
就業規則を確認しよう
まずは会社の就業規則を確認し、介護と仕事の両立のための制度があるか確認しましょう。ちなみに「就業規則」とは、10人以上の従業員がいる事業所に設定が義務づけられているものです。
その中でも、介護と仕事の両立のため作られた法律「育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)」は、企業や事業所の規模や業種を問わず適用され、「育児・介護休業」「子の看護休暇」「介護休暇」「時間外労働の制限」「深夜業の制限」「所定外労働の制限」「所定労働時間の短縮措置(短時間勤務制度)」について、就業規則等に制度を定めておく必要があるとしています。
ただ、その制度は一概ではなく、会社や労使交渉によっては設定も幅広くことなりますので、詳細は就業規則を確認しましょう。
紛争解決援助制度を活用しよう
就業規則に記載はあるのに、それを申し出た際に退職を勧告されたなどの場合は、各都道府県の労働局に問い合わせを行い「紛争解決援助制度」を活用しましょう。
この制度は労働者と事業所のハラスメント的なトラブルについて、都道府県労働局長が、公正・中立な立場から当事者双方の意見を聴き、双方の意見を尊重しつつ、問題解決に必要な具体策を提示することにより解決を図る制度です。
そもそも育児・介護休業法には「不利益取扱いの禁止」といって、介護休業などの制度の申出や取得を理由として、解雇などの不利益な取扱いをしてはいけないと定めています。事業者相手に難しいところもあるとは思いますが、労働者の当然の権利ですので、堂々と主張していきましょう。
転職も検討しよう
今の会社で勤め続けるより新たな場所に就職し直してより自身にあった条件で介護休業を取得した方が良い場合もあります。
令和4年より介護休業の取得要件も緩和されて「入社1年以上であること」が撤廃されました。もちろん就業規則によってはさまざまなケースがあるほか、労使交渉によっては設定も変わってくるので詳しくは就業規則を確認しましょう。
しかし、この要件が緩和されたことにより、会社によっては転職後1年待たずとも介護休業を取得できる可能性もあります。また、介護休業を取得しながらの勤務OKの求人もあるので、その点も踏まえて再就職先を探していきましょう。
介護と両立しながら働きやすい会社を見つけるポイント
介護と両立しながら働きやすい会社を見つけるためには、介護休業法が設定しているものについてきちんと知ることが重要です。再就職先の就業規則をきちんと見て、どの程度まで介護休業法を取り入れているのか把握し、より自分にあった会社を見つけていただけたらと思います。
介護休業
従業員は要介護状態にある家族を介護するために、通算93日まで、3回を上限に分割して休業をすることができます。
「従業員」の対象範囲は「介護休業開始予定日から 93 日経過する日から6か月を経過する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと」。つまり、介護休業を取得して9か月後に辞める予定がない方は取得ができるということになります。会社の就業規則をよく確認し、いつから介護休業を取得できるようにしているか把握するようにしましょう。
「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいいます。さらに「対象家族」とは、配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)、父母及び子、配偶者の父母です。
これらが違えば介護休業は取得できませんので、注意しましょう。
介護休暇
要介護状態にある対象家族の介護、その他の世話を行う労働者は、年5日(2人以上の場合は年10日)の1日又は時間単位での介護休暇の取得が可能となります。
平日などの休みが難しい方は、この制度で介護休暇を取り、ケアマネジャーや公的機関との話し合いを行いましょう。
短時間勤務やフレックス、費用の助成措置など
介護休業法は要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者について、利用開始の日から3年以上の期間で、2回以上利用可能な次のいずれかの措置を講じることを事業主に義務付けています。
それが「短時間勤務制度」「フレックスタイム制度」「始業時刻・終業時刻の繰上げ・繰下げ」「介護費用の助成措置」であり、代表的な物は「短時間勤務」ですが、会社によって措置は異なります。自分の欲しい措置がきちん行使されているか、しっかりチェックしましょう。
時間外労働の制限
要介護状態にある対象家族を介護する労働者が希望した場合、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働を制限することができます。
特に残業が多い場合、介護もしながらではご自身の身体が休まる暇が無く、結果共倒れ、という結末になりかねません。例え体力に自信があったとしても、疲労は蓄積していくものです。
深夜業務の制限
要介護状態にある対象家族を介護する労働者が請求した場合、午後10時から午前5時までの労働を制限することができます。
夜勤に従事する職種であった場合は、こちらの記載もチェックしておきましょう。
転勤の配慮
事業主は、従業員に就業場所の変更を伴う配置の変更を行おうとする場合に、その就業場所の変更によって介護が困難になる従業員がいるときは、当該従業員の介護の状況に配慮しなければならないと定められています。
介護と両立しながら働きやすい「派遣」という選択肢も
ここまで就業規則などをご説明してきましたが、正社員で介護休業を取得しながら働くことになれば、現場への負担や人間関係など、さまざまなことに気を使いながら働くことになるでしょう。その場合、再就職として「派遣」という働き方も選択肢のひとつです。
勤務時間や勤務日数などに融通が利きやすい
まず介護休業を取得しなくとも、勤務時間や日数などの融通か聞きやすいのは派遣会社のメリットと言えるでしょう。
現在はオフィスワークなども派遣業務が多く、身体的な負担がなくチャレンジ出来るほか、リモートワークなどの求人も目立ちます。通勤時間を考慮すれば、リモートワークができてシフトに融通が利く「派遣」という働き方は、メリットのある選択肢のひとつです。
「介護をしている」などを伝えれば、オススメの求人をピックアップして紹介してくれるのも派遣ならではの働き方です。自分に合った働き口を紹介してくれる方が性に合っている、という方は派遣の方が自分らしく働けることでしょう。
高時給のところが多い
アルバイトやパートに比べて高時給のところも多く、経済的に安定しやすいのも派遣会社の大きなメリットと言えるでしょう。特に介護はいつ終わるかも分からないものであり、時に思いも寄らぬ出費が必要となることもあります。
ご自身の生活費はもちろん、老後のことも考えれば、やはり高時給な派遣の方が安心できる面もあります。ぜひさまざまなことも考慮して、働き方を決定してください。
派遣会社がサポートしてくれる
ただ、派遣といえば「派遣切り」というイメージが付き、すぐ辞めさせられてしまうのでは、と心配になる方も多いことでしょう。
実際、派遣切りがあるかどうかは会社都合ですが、その場合すぐに派遣会社が次の求人を紹介してくれます。慣れたところでじっくりこつこつやりたい、という方には向いていませんが、高時給でなるべく稼ぎたい、融通の利く働き方をしたい、という方にはおすすめな働き方のひとつです。
まとめ
今回は介護をしながらでも会社で働き続けることができる制度と、介護と両立しやすい働き方についてもご紹介してきました。派遣という働き方はパートやアルバイトに比べて次の勤務先が見つかりやすく、融通の利きやすく、自分に合った働き方が探しやすい業務形態とも言えます。
マイナビミドルシニアではそのようなライフスタイルの変化に合わせた求人も数多く取りそろえているほか、スキルに合わせた求人もご紹介しておりますので、そちらもぜひ参考にしていただけたらと思います。