あなたの「変わるチカラ」を知ってネクストステージへ 主婦からのライフシフト講座【入門編】を開催しました

  • 100年時代のライフデザイン

2022年9月、女性活躍アンバサダー Well-Pass(ウェルパス)主催のオンラインセミナーを開催し、「女性×働く」をテーマにキャリアを築かれてきた、ライフシフト・ジャパン取締役CMOの河野純子さまにご登壇いただきました。人生100年時代を見据え、男性よりも寿命が長い女性だからこそより真剣に“ライフシフト”について考えていくべきだと感じた、今回のセミナーの様子をお届けいたします。

【講師】河野純子(かわのじゅんこ) ライフシフト・ジャパン取締役CMO

1986年、リクルート入社。「週刊住宅情報」(現SUUMO)副編集長を経て、女性のための転職情報誌「とらばーゆ」の編集長を10年間務める。44歳で住友商事に転職、「英語で学ぶ学童保育事業」など働く女性を応援する新規事業開発に携わる。53歳で退職後、人生100年時代のライフデザインを提案するライフシフト・ジャパンに参加。共著に「実践!50歳からのライフシフト術」(NHK出版)がある。

もう50歳ではなく、まだ50歳!

皆さんこんにちは、河野です。
本日は「ライフシフト講座」の基礎編ということで、少し長いスパンでこれからの人生を考えるヒントをお持ち帰りいただきたいと思っています。

本題に入る前に、少しだけ自己紹介をさせていただきます。私のキャリアのスタートはリクルートという会社でした。「週刊住宅情報(現「SUUMO」)」の編集に携わり、その後、働く女性のための転職情報誌「とらばーゆ」の編集長を10年ほど務めました。

そののちに、縁あって住友商事に転職し、英語で学ぶ学童保育事業や、働く女性を応援する新規事業の開発に携わりました。

そして、53歳になったときに「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略」(著:リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット 著/池村 千秋 訳 東洋経済新報社)という本を読んで、とても刺激を受けたんですね。

それまでは「もう50歳か」と思っていましたが、「まだ50歳なんだ!」と思考が変化しました。そしてそれまで忙しく働いてきたので、インプットの時間を取りたいと思い、会社を退職し、セブ島やアメリカに語学留学をして、大学院にも通うことにしたんです。

その後、ライフシフト・ジャパンに参画することになり、5人のコアメンバーと共に"ひとりでも多くの人が「人生100年時代」をワクワク楽しく生きていける、日本発の「ライフシフト社会」を創造する"というビジョンを掲げて活動を始めました。具体的には、「ライフシフトの法則」という独自のフレームをベースにした、個人向けのワークショップや企業向けの研修、書籍の出版などを行っています。

Part1:「ライフシフト」ってどういうこと?

では本題に入っていきましょう。まず、皆さんはライフシフトという言葉を聞いてどんなイメージを持たれますか?
セカンドキャリアのこと、人生を変えていくこと、専業主婦であれば再就職すること.....など、頭の中で皆さんがイメージされたこと、そのどれもが正解です。
なぜなら、ライフシフトという言葉に明確な定義がないからです。

ライフシフトという言葉が日本で知られるようになったのは、さきほど私が紹介した「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略」という本がきっかけです。

この本には、≪これからの私たちの人生はどんどん長くなって100年にも及ぶ≫こと、そしてそれだけ人生が長くなるということは≪人生設計を変えていかざるを得えない≫ということが書かれています。

本の最初の方に、世界各国でも寿命は年々延びているというデータがあります。
日本に限って言えば、2007年に生まれた子供たちのおよそ半数は107歳に到達するのだといいます。寿命は10年単位で2,3年延びるそうですので、例えば現在35歳の方は103歳まで、45歳の方は100歳までとおおよその寿命が計算できます。

こうして考えていくと、まさに人生100年時代が到来していることがお分かりいただけるかと思います。さらに、人生100年時代は、まず寿命の長い女性にやってきます。つまり、私たち女性が人生100年時代の豊かな生き方を開発していく必要があるということです。

人生100年時代で変わりゆく、ライフデザインの形 ~3つのキーワード~

少し前までは、人生はおおよそ80年時代でした。仕事や子育てを頑張ったのち、60歳で引退(定年)を迎えて、そのあと20年くらいは年金で悠々自適に...というライフデザインが通用しました。しかし、これが100年時代で考えると「定年してから40年もある」「お金はどうしよう」「生きがいはどうしたらいいの?」という心配が生まれてくるわけです。

つまり、これまでのライフデザインでは到底カバーできず、考え方を根本から変えていかなくてはならなくなりました。ではどのように変えていけばいいのか。皆さんに3つのキーワードをご紹介したいと思います。

キーワード① "Live Longer,Work Longer"(長く生き、長く働く)

人生100年時代では、私たちは長く働かざるを得ません。これは、世界的にも常識となっています。「ライフ・シフト」の本の中でも「85歳くらいまでは働くことを覚悟するように」と書かれています。

皆さんの中には、「そんなに長く働きたくないし、働く自信もない」という方もいらっしゃるかもしれません。けれども、まずは今の私たちが考える85歳のイメージと、これからの85歳は違うということを心得ていただきたいと思います。健康寿命もどんどん延びている現代では、健康で溌剌とした姿で85歳を迎えられるのです。

そして大事なことは、"働くことはつらいことではなくて、楽しいこと"だということです。だって、考えてみてください。働くことは人の役に立ち、感謝され、仲間もできて、なおかつお金もいただけることなんです。そんな楽しい時間が長く続くと思えば、気を重くする必要なんて全然ありません。

もちろん、それだけ長く付き合っていくわけですから、できれば自分の好きなことややりがいを持って働ける仕事を選ぶこと、自分なりに仕事を楽しむ方法を開発していく必要があると思います。

キーワード② "Learning&Transitioning"(学び続け、変わり続ける)

これからの私たちが生きていく人生は、ただ長いだけではなくて、先の見えない激動の時代となります。オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン博士は、今ある仕事の半数はこの10~20年のうちにAIに置き換わり、なくなってしまうという論文を発表し、世界に衝撃を与えました。

そんな変化の激しい時代において、自分らしく生きていくためには、自分自身も柔軟に変わり続けることが大切です。そして、変わり続けるために必要になるのが"学び続ける"ことなんです。

逆に言えば、何も学びもせずにずっと同じ仕事を続けていくことは不可能である、そんな時代を私たちは生きていくんだと認識する必要があります。

キーワード③ "Self-Employment"(自分で自分を雇う)

今の日本には「70歳就業法」があり、国は企業に対して義務ではないものの、70歳までは何らかの形で従業員の就労を支援することを求めています。
ただ、雇用延長をしてもお給料が半分になってしまったり、たとえ70歳まで雇用されたとしても、そのあとに残された30年の年月を生きていかなくてはなりません。

再就職をしようにも、年齢の壁を感じてしまうことも少なくないと思います。
そこで、自分の得意な分野で、好きな仕事を立ち上げ、自営の働き方に挑戦しよう、というのが"Self-Employment"(自分で自分を雇う)という考え方です。自営業には定年もありませんから、生涯現役で働くという点ではベストなんです。

けれども、ここで「自分で事業を始めるって簡単に言われても、ムリムリ!」と、しり込みしてしまう方も多いと思います。
そこで皆さんにお伝えしたいのは、実はそんな多くの額を稼ぐ必要はないということです。

「老後資金が2,000万円不足する」という試算が金融庁から出たのは記憶にも新しいことでしょう。これは年金だけでは生活費が月々5万円の赤字になるという試算がベースになっています。

逆に言えば世帯で5万円稼げれば、生活していけるということです。夫婦で5万円、つまり一人2万5千円の収入が見込めれば問題ないという考えに至るわけです。

たくさん稼がなくてはいけないとなると、リスクや不安も大きく感じるかもしれませんが、5万円なら気が楽になりませんか?そして今すぐ起業しようという話でもありません。何か自分が得意な分野で、将来月々5万円を稼ぐことをイメージして、まずはその準備としてできることから始めてみればいいのです。そう考えれば、これからの仕事の選び方も変わってくるのではないでしょうか。

Part2:主婦からの「ライフシフト」事例紹介

では続いて、実際に素敵なライフシフトを果たされた、お二方の事例をご紹介したいと思います。お二人とも、ライフシフト・ジャパンのHPの連載「ライフシフター・インタビュー」にご登場いただいた方です。

渡邊智子さんの場合

渡邊さんは、44歳からコーヒーの焙煎を学び、51歳で自宅でコーヒー焙煎の工房を始められました。
現在は、コーヒー豆を喫茶店などに販売するお仕事をされていらっしゃいます。

そんな渡邊さんですが、実は36歳までは専業主婦でした。
次男の「大人って楽しそうじゃない。だから大人になりたくない」との一言で、このままの自分ではダメだと一念発起し、レストランでパートを始めました。しかし、体を壊してしまって退職。その後、介護ヘルパーのお仕事を始めるもまた病気を患ってしまうなど、順風満帆な再就職ができたわけではありませんでした。

そんなとき、コーヒー焙煎を学べる講座が開かれるということを耳にしました。
その当時、渡邊さんは「主婦の私が自分のためにお金と時間を使っていいのだろうか」と悩み、やりたい気持ちはあったにも関わらず、申し込みができなかったといいます。
それでも気持ちを奮い立たせて申し込んでみると、反対されるかと思ったご家族からは良い反応が返ってきたのです。

そして、一年間の勉強ののち、介護ヘルパー時代の上司から「うちの施設でコーヒー教室やってみない?」と誘いを受けました。当初は「自分には無理」と断っていたそうですが、それではいつまで経ってもプロになれないよ、と背中を押してもらい、思い切ってやってみるとこれが大好評だったといいます。

そこから仕事が舞い込むようになり、今では夜になると、工房で旦那さんや息子さんと自身の淹れたコーヒーを飲みながら語らう時間を持てるまでになりました。

佐藤惠理さんの場合

パートの事務職から、51歳でチュニジアの伝統的な織物であるキリムを輸入する事業を立ち上げた方です。

佐藤さんもここに至るまでの日々は楽ではありませんでした。
子育ての大変さから34歳でうつ病を患い、体調不良の日々を過ごします。その後、パートの事務職をするも51歳の時には癌を発症してしまいました。

そのとき、佐藤さんは病院の天井を見上げながらこう思ったそうです。「ああ、死ぬときは一人なんだ」と。そこで、人生を後悔なく生きていきたいと思うようになったといいます。
手術が終わった3か月後には、かねてから訪れたいと思っていた、チュニジアの地へ旅をします。そして美しいキリムに出合って心を奪われたのでした。

帰国後、何かチャンスがつかめればと思い、チュニジアの雑貨店を訪れたところ、オーナーの方と出会いました。
佐藤さんが「チュニジアキリムを広める仕事がしたい」と告げたところ、「一緒にやりましょう!」とすぐに返事があったのだそうです。

そこからパソコンを買い、ネットショップを立ち上げた佐藤さんの行動力は凄まじいものでした。そして、今ではキリムの織り手であるチュニジアの女性たちを支援し、産業振興までを手掛けられています。
そうしてお元気になられ、ご活躍される佐藤さんを旦那さんもお子さんも誇りに思っているそうです。

いかがでしたか?お二方とも、素敵なライフシフトをされましたよね。
こういったライフシフトを実現した人に共通する点をまとめたのが、「ライフシフトの法則」なのです。Part3で具体的に紹介していきましょう。

Part3:人生100年時代をワクワク生きるための「ライフシフトの法則」

ライフシフトの法則① 5つのステージを通る

まずご紹介するのは、ライフシフトのプロセスです。ライフシフトを実現した人は、みなさん、この図の通り"5つのステージ"を通っていました。

1.心が騒ぐ
最初のステップは、「このままじゃいけない」、「何か変わらなくては」と心がざわつくステージです。
渡邊さんでいえば、息子さんの言葉をきっかけに、佐藤さんでしたら癌になって天井を見つめていたときが、心が騒いだ瞬間です。

2.旅に出る
これは比喩で、実際には行動することを指します。
渡邊さんでしたらレストランのパートを始めたことやコーヒーの焙煎を学ぶ講座に申し込んだこと、佐藤さんならチュニジアに旅行をすることが当てはまります。

3.自分と出会う
行動をすることで、人に出会い、新たな経験をし、様々なことを感じることができます。
自分が好きなこと、嫌いなことが明確になり、やがてやりたいことがわかってきます。それが「自分と出会う」というステージです。

4.学びつくす
やりたいことに出会ったあとは、それを実現するために「学ぶ」というステージにいきます。
佐藤さんのように現地に通ったり、パソコンを学んだりと、どんどん前に進んでいくことができます。

5.主人公になる
そういう学びを通して「これが自分の人生だな」と思えるようになる。それが「主人公になる」というステージです。

ただし、いったん主人公になれたとしても、そこで終わりではありません。
100年という長い人生の間には、こうしたライフシフトのサイクルが何回も回っていきます。またあるとき心が騒いで、新しい自分に出会っていくのです。

みなさんはいまどのステージにいますか?

ライフシフトの法則② 旅の仲間と交わる

ライフシフトの旅は決して一人旅ではありません。この図にあるように、様々な役割の人が登場します。

きっかけをくれる"使者"
前に進もうとする理由を問うてくる"門番"
未来の姿を解き明かしてくれる"預言者"
目的にたどり着くまでのアイデアをもたらしてくれる"寄贈者"
一緒に目的地を目指してくれる"ともだち"
前に進むための力を貸してくれる"支援者"
ものの考えた方やあるべき姿を説いてくれる"師"

そして、前に進むボトルネックとなる役割の"門番"でさえ、ライフシフトにおいては大事な役目を果たします。「本当にそれがやりたいのか?」と自身の気持ちを確かめるきっかけにできるからです。
渡邊さんは「主婦の私なんかがこんなことやっちゃいけないんだ」と自分自身が門番となっていました。

この7人は必ず登場するわけではないですが、ライフシフトとはさまざまな人が関わってくれて進むのだと覚えておいてください。

ライフシフトの法則③ 自分の価値軸に気付く

ライフシフトというのは、"自分が大切にしたい価値軸がシフトすること"でもあります。

渡邊さんも佐藤さんも、専業主婦時代は「家族とともに」という価値軸を大切にしていましたが、「このままじゃいけない、自分らしく生きていきたい、夢中になれることが欲しい!」という価値軸を大切にして、人生をシフトしていきました。また、佐藤さんの場合は「チュニジアの社会をよくしたい!」という社会に貢献する思いも芽生えていらっしゃいました。

ここに3つの視点、18の価値軸をまとめています。みなさんはこれからどんな価値軸を大切にしていきたいでしょうか?

ライフシフトの法則④ 変身資産を活かす

ライフシフトの法則、4つめは「変身資産を活かす」です。
変身資産とは、変わるチカラと言い換えることができます。私たちはこれまでの人生の中で知らず知らずのうちに変わるチカラを自分に蓄積しています。

具体的には、この図にあるように"変化を進めようとする心のアクセル10項目"と"変化を止めようとしてしまう心のブレーキ10項目"に体系化できます。

ライフシフトは、この心のアクセルを活かし、心のブレーキを緩めることで進んでいくのです。みなさんはどんなアクセルとブレーキをもっているでしょうか。それを知ることは、ライフシフトを前に進める知恵と勇気につながります。

以上が「ライフシフトの法則」になります。ぜひこの4つの法則を覚えていただき、みなさんのライフシフトに活かしていただければと思います。

「ライフシフトの法則」について、より詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
https://lifeshiftjapan.jp/law/

*セミナー当日はこのあと、「変わるチカラ」の詳細の解説と、自身の「変わるチカラ」を探るためのワークシートが紹介されました。

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