「ぶら下がり社員」が40代で増加中?そのリスクと脱却法とは?
- キャリアを考える
- 公開日:2018年2月23日
能力はあるのにやる気がない。上司の指示には従うけれど最低限のパフォーマンスしか出さない…。こんな「ぶら下がり」と言われる社員が、40代を中心に増えていると言われています。この状態を続けることのリスクや、ぶら下がり状態から抜け出す方法をご紹介します。
40代に目立つぶら下がり社員とはどのような存在?
与えられた仕事はしっかりこなす反面、必要以上の努力を避ける働き方をする社員を指します。多くの場合、自分のタスクは確実にこなすため、「仕事ができない人」ではありません。そして、会社に対する帰属意識が強いため一部からは「真面目な人」と捉えられているケースも多くあります。さらに、自分を取り巻く環境の変化を好まないため現状維持を最優先し、自己成長に繋がるスキルの習得などは遠回しに避ける傾向があります。
このようないわば消極的な働き方を実践していますが、このような働き方をしても給与が下がらないことを経験してきたため、自身から働き方を改めることはほとんどありません。
40代といえば一定の役職について組織をまとめる仕事を任される年代ですが、責任を負うことで居心地がよい現状が変わってしまうことを厭うあまり、管理職への昇進を断るケースさえあります。
つまり心情としては、「やるべきことをきちんとやって妥当な水準の給与がもらえたら、それでよし」とする考えが最優先。そのため、貪欲にキャリアアップを図るわけでもなく、かといってスキルアップ目的で新しい挑戦をするわけでもなく、会社が指示することにただ従って漫然と仕事をこなしていく......そんな存在こそ「ぶら下がり社員」なのです。
プライベートを大切にする傾向もあり、ワークライフバランスという名の下に休日出勤や残業を積極的に避けることも特徴でしょう。必要なら残業を行うこともありますが、周囲と足並みをそろえるためだけのもので、仕事への責任感や成果に対する執着からとっている行動ではありません。
組織にはどんなデメリットが起きるか
「プライベートを最優先する」「与えられた仕事だけをきっちりこなす」という働き方は、必ずしも非難されるものではなく、一つの働き方ともいえます。しかし、若手社員であればそれは許されるかもしれませんが、ミドルシニア層ともなると事情が異なります。
企業の期待に応えない
企業としては従業員に対し「積み重ねてきた経験を元に事業を推進してもらいたい」という思いを持つからこそ、働く人材に対して福利厚生制度などのインセンティブを用意し、収入以上の高いパフォーマンスを期待しています。
しかし、用意された待遇だけを享受する社員が存在する。しかも、それは年収水準の高いミドルシニア層...。企業としては頭の痛い話です。
管理職人材が生まれない
中堅ポジションであるにも関わらず管理職にならない、なろうとしないため、組織の中核を担う人材が育ちません。組織としては「であれば下の世代から一足飛びに...」とも考えますが、年功序列を基本とする組織の場合はなかなかその選択に踏み出せません。
新人が入ったとしても指導を行う存在がいないため、早期の戦力化を行うことができないため、組織を活性化させることが難しい状況が生まれてしまいます。
やる気のなさが伝染する
自分よりもはるか年上の社員が、消極的な働き方でも高い収入を得ている。周りは不満を持ちながらも、その社員のフォローを行い疲弊している...。そこではやはり不満が生まれ、雰囲気も悪化してしまいます。
そんな組織の姿を目にすれば、若手社員も「ああいう働き方をしても給料下がらないんだったら俺もそれなりに働くか...」という思いを抱きがちとなり、組織にやる気のなさが伝染してしまいます。
どのような心理がぶら下がりを生むのか
ぶら下がり社員になってしまう人材の特徴として、自分・会社・社会に対するネガティブな感情があげられます。
自分に対するあきらめ
「どれだけ頑張ってもあと10年で役職定年。給料は半分になる」などの状況が見えてしまうと、「この会社で努力すること自体が無駄なことなのでは」という意識が働き、「自分の頑張りなど何の足しにもならない」と目的を見失ってしまうことが原因です。
そのため、「及第点さえ取っていれば問題ない」というネガティブな考えが頭を占め、積極的に行動しない自分を正当化し、惰性で仕事をするようになってしまいます。
会社に対するあきらめ
「新商品の提案なんてしても、会社に取り上げられないよ」、「顧客の新規開拓なんてしても、数字になんなきゃ評価されないよ」などこれまでの経験が悪い方に働き、「自分が何かの取り組みをしても組織が変わることはない」という気持が強まっている心理です。「時間と労力を費やしても無駄になってしまうならば、元からやらないほうがまし」という思考回路になってしまっています。
社会に対するあきらめ
先行き不透明な時代において一生懸命働く意味を見失っていることが原因です。「年収が上がってもたくさん税金で持って行かれる」そんな社会は大きく変わることはないと考えると、何となく馬鹿げた気持ちになるものです。頑張っても報われない社会なら、そこそこの生活を維持できれば問題ないとする気持ちが出てきます。転職や独立といった挑戦をする気持ちも薄れてしまって、夢や希望を失った状態といえるでしょう。
これらの例を見ればわかるように、失敗体験をネガティブに捉えすぎたため、次の失敗を避けるための思考が定着してしまったのが「ぶら下がり社員」だといえます。始まりはただ単に「これ以上傷つきたくない」という自己防衛だったにも関わらず、習慣化され、その環境を形成してしまったことから、自身が抜け出せない状態とも言えるかもしれません。
実は大きなリスクが潜んでいる
そこそこの働きでも変わらない収入がもらえる。そんな働き方に対しては一部のネット上で「勝ち組」のような言われ方をすることもあります。しかし、消極的な働き方がこれからも続けられる保証はありません。
ぶら下がり社員はリストラの潜在候補?
ぶら下がり社員がいると、頑張っている人材にしわ寄せがくるため、組織全体のモチベーションが低下することは多くの企業が認識しています。それを防ぐために企業側が対策を講じるとなれば、ぶら下がり社員がリストラの対象になる可能性も生まれてくるでしょう。つまり、ぶら下がりを続けることは自身にとってリスクであることを理解する必要があります。
近年では、業績が好調のうちに人材を整理しようとする企業の動きも出てきています。40代や50代となればある程度の年収を受け取っているケースも多く、人件費削減と組織改革を考えるにあたって、対象にされやすい層と言えるでしょう。
そのため、ぶら下がり社員でいることのリスクを自覚し、働き方を変えていくことが安定したキャリアを守る近道です。波風立てずに定年を迎えられたら勝ち、という考え方は通用しにくくなっている時代とも考えられます。モチベーションが上がらないことを会社や社会のせいにしたところで、状況は変わりません。国内企業の多くが年功序列式の雇用体系からの脱却を検討している今、働く側としても変化に対応していく責任があることを自覚しましょう。
そんな働き方から抜け出すには?
「このままではいけない」と思ったところで、どんなことから始めたらよいのか迷う人も多いはずです。
指示待ちの働き方ではなく、自発的に動く習慣をつける
そんな時には、社内の仕事で関心が持てる分野や内容を探して、自発的に挑戦しましょう。指示待ちの働き方では何も変わらないことを自覚し、自ら動く習慣を付けます。すると、仕事に対するモチベーションにつながって、新しい目標や身に付けたいスキルが見えてくるでしょう。
あえて自分を追い込むために、異なる仕事を担当している部署、チームへの配置転換を打診するのも一案です。会社の中にはいろいろな仕事がありますから、より高い成果や高度なスキルが求められる環境に身をおくことにより、可能性が広がっていきます。
そもそも、どんなことに関心があるのかわからず、漠然と将来への不安を抱えている状況なら、異なる部署の人との交流機会を作り、仕事内容や日々の過ごし方を聞いてみるのもよいでしょう。社内だけにとらわれず、いろいろな会社の人材が集まる異業種交流会やセミナーに参加する方法もあります。
まとめ
これまでの考え方や発想にとらわれずに新しい可能性に挑戦していくことにより、見つかるチャンスもあるものです。自分にはできない・向かないと決めつけるのではなく、広い視野で物事をとらえて、前向きに行動するきっかけ作りを始めてみましょう。