自分が充実するポイントを発見できる「ライフライン」の作り方|「ミドルシニアのためのキャリアの教科書」vol.05

  • 木村勝のキャリアの教科書

中高年専門ライフデザインアドバイザーの木村です。前号では、キャリアを「鳥の目」で俯瞰する「家族キャリアマップ」の作成方法について説明させて頂きました。皆様、実際に作成されてみましたでしょうか?

「自分が定年の年齢でも、まだ子供は大学生か」、「父親は、今の自分の年齢の時には単身生活か。苦労していたんだな」など普段意識しない見えていない事実が家族の年表という座標軸から浮かび上がってきます。今後のキャリアの方向性を考えるために非常に強力な武器になりますので、ぜひ作成されることおススメします。

キャリア整理の活躍ツール「ライフライン」の作り方

さて、今までのキャリアを振り返り、今後のご自身のキャリアの方向性を見極めるためのもう一つのツール「ライフライン」(ライフカーブ、ライフチャート、モチベーション曲線とも呼ばれます)について説明させて頂きます。「ライフライン」は、横軸に時間を取り、縦軸の真ん中を平均として主観的な満足度・充実度を1本のラインで表したグラフです。

描き方は非常に簡単です。これまでの人生の流れを1本の曲線で表現します。
「残念だったこと」「やる気がなくなりかけたとき」をマイナス領域に描きます。

すべての記録を残すのではなく「代表的な出来事」について表現すればOKです。自分が行動を起こした結果としての「感情を表現」し、自分が関わっていないことは表現しません。

客観的な出来事と、主観でキャリアを見つめ直す

この「ライフライン」はシンプルですが、自分のキャリアを冷静に見つめるための強力なツールになります。ラインはあくまでも主観的満足度ですので、それほど厳密に考える必要はありませんが、「家族キャリアマップ」を作成するときに主な出来事ごとに数値化しておくとラインを描くときにスムーズかもしれません。イメージをつかむために、私のライフラインをご紹介したいと思います。

私の場合、満足度が高いところは社外のいろいろな方々と接触して仕事をしていた出向時代になります。逆に満足度が低かったのが、企業内で同じメンバーで固定的に仕事をしていた時代でした。

ライフラインをしみじみ眺めているうちに、会社内で決まったメンバーで固定的に仕事をするより、社外の方々と新たな出会いを繰り返しながら仕事をするほうが自分には向いていることがわかりました。

ターニングポイントに着目すると「充実する要素」が見えてくる

ライフラインを見るときには、高い部分、低い部分の理由を見ることももちろん大事ですが、満足度の低い状態から反転して上昇に向かったターニングポイント(あるいは高い状態から低い状態に反転したポイント)もそれ以上に重要です。私の場合には、出向や独立など大きなキャリアチェンジを果たしたタイミングで満足度が高い方向に反転しています。

また、例えば充実していた時期に関しては、人事、経理などといったそのときに従事していた職種に注目するだけでなく、なぜそのときに充実していたのか、充実を感じる「要素」についても目を向けることがポイントです。

例えば、テニスが好きという場合にも、錦織選手のようにプレーヤーとして活躍することに充実を覚えるのか、それともテニススクール運営などテニスに関わる事業に携わることに充実感を覚えるのか、人それぞれ違います。私の場合、人事という職種は長年担当してきましたので決して嫌いではありませんが、人事という仕事を通じて「多くの人と対面で話をし、新たな出会いがある」ことに充実感を覚えることにライフラインを眺めていて気がつきました。

また、私のライフラインを見て気づくことは、会社における昇格や昇給が満足度に必ずしも連動していないことです。自分ではそれなりに会社での出世など気にしていたつもりですが、本質的なところでは、あまり出世にモチベートされない性向なのかもしれません。

このように「家族キャリアマップ」を眺めながらライフラインを描いてみると、自分では意識していない意外な顔が見えてきます。

目指す方向性を具体的な言葉で表現する

次は、具体的に浮かんできた「目指すべき方向性」をさらに具体的な文章にしてみます。私の場合には、このような内容になりました。

「一か所に所属して固定的に働くのではなく、自分の今まで培ってきた専門性をベースに複数の相手とパラレルに仕事をしていく」

これは私がインディペンデント・コントラクター(独立業務請負人)として働いているまさに今の姿です。

こうして作成した「棚卸でわかった現在の自分のスペック」=この差が「今後計画的に獲得すべきスペック」です。「ライフライン」は、ポピュラーで単純なツールですが、「家族キャリアマップ」と連動させると非常に効果的にツールとなることを保証致します。

まとめ:自分として納得のできる基準を持ち、選択していく

皆様のライフラインは、いかがでしょうか。もちろん、私とは反対に同じメンバーと固定的に仕事をしていたときの方が満足度も高いという方もいらっしゃると思います。いずれにしても、過去を振り返って浮かび上がってきた仕事のスタイルや志向の要素は、ミドルシニアからのキャリアチェンジを考える際には一般的に考える職種、業種、そして単なる労働条件よりも重要なポイントになります。

すでに社会人として十分な経験をお持ちのミドルシニアにとって、(新卒学生ではありませんので)会社の知名度や規模、みかけだけの月給水準などでキャリアを選択する必要はもはやありません。重要なのは、過去を十分振り返った上で自分として納得のできる基準を軸として、自分自身で仕事を選択していくことです。

人生100年時代には、定年60歳、定年再雇用義務年限である65歳といった限られた期間のみでキャリアを考えるのではなく、その先も見据えて働けるうちは働き続けるという観点からキャリアを考えることが必要です。

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