自主的「サバティカル休暇」で人生のリフレッシュ!

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もし、1ヶ月の休みがあったらどんなことをしますか?これまで行ってみたかったところへ旅行に行ったり、スキルアップや視野拡大を狙った活動をする人もいるでしょう。欧米では普及していますが、近年では国内でも「サバティカル休暇」という長期休暇取得制度を設ける企業も増えてきました。「サバティカル休暇」に限らず、ワークライフバランスを充実し、自らのキャリアアップを目指すための時間の使い方について考えてみましょう。

「サバティカル休暇」とは?

「サバティカル休暇」とは、使途に制限のないまとまった休暇のことです。一定の勤続年数に達した方に付与され、短くて一ヶ月、長い場合は一年の休暇となる場合もあります。

「サバティカル」という言葉は、ラテン語で「安息日」を指す"sabbaticus"が語源です。旧約聖書において、6日間働いたのち7日目には何も行ってはならないと定めた「安息日」にちなんで名付けられたと言われています。もともとはヨーロッパの大学教員から始まった風習でしたが、小説家やスポーツ選手など特定の職業に広まり、スウェーデン、フィンランド、フランスなどでは一般企業にまで浸透するようになりました。

ベルギーの「タイムクレジット制度」は特徴的

海外の事例では、ベルギーのキャリアブレイク制度とタイムクレジット制度が有名です。
中でもタイムクレジット制度は企業規模10人以上の民間企業に適用されており、以下の3つの権利が労働者へ与えられています。

(1)完全休業(3ヶ月~1年)が職業生涯において5回まで申請が可能
(2)4/5労働時間への短縮(労働時間の1/5を短縮)が5年間まで可能
(3)50歳以上の高齢労働者に対する労働時間の短縮

このタイムクレジット制度の特徴は、ライフサイクルが非制度化されている点です。


これまでの時代は、どの国においても「若年期 (学校教育)→中年期(仕事)→高齢期(引退)」という具合に、人生のイベントが特定の年齢に組み込まれることが前提とされていました。しかし、「若年期にボランティア活動、中年期に一時的な引退(キャリアの中断)、高齢期に学校教育や職業訓練の機会がある」というライフコースが選択できれば、いくつになっても新たなことに取り組める生き方が実現できます。

このようなライフコースを整えることができれば、従来からの典型的に人々に共有されてきたライフサイクルから離脱し、柔軟な労働時間の配分を行うことが期待できます。そのため、多様な人生イベントが発生する「人生100年時代」にも適しているのでは、と期待されている労働制度の一つです。

長期の休暇を導入するメリットは?

日本においても土日や祝日を絡めることで、一週間程度の短期間の休みを取得することは可能です。しかし、そういった短期の休暇だと、疲れをとることだけに用途が限定されがちであり、日常の延長にとどまってしまう場合がほとんどです。

しかし、まとまった休みを取れるのであれば、海外旅行・留学、ボランティアといった、働きながらではできない経験を積むことができます。そこで人間的な成長も期待できるでしょう。社内に残された人員に対しても、休暇に入っている人の担当職務を行うことで、スキルの幅が広がるメリットが考えられます。

さらに、休暇中に得た経験から視野が広がり、これまで以上に柔軟な発想ができるようになることもメリットです。特に、商品開発やデザイン分野など発想力が重要な仕事に対する貢献が期待され、会社にとっての利益を生むことにも繋がります。

その他のメリットは、病気や介護といったまとまった期間を必要とする事情にも対応しやすくなって、人材の安定につながることです。介護疲れを予防して社員のメンタルヘルスをサポートするといった意味でも、長期休暇制度の導入は期待したいところです。

国内でサバティカル休暇を導入している企業は?

日本での実施事例はまだ少ないのが現状ですが、一部の企業ではすでに取り組みを始める動きがあります。その企業のうち数社を抜粋して、実施事例を見てみましょう。

・ヤフー株式会社

自らのキャリアや経験、働き方を見つめなおし、考える機会をつくることで、本人のさらなる成長につなげることを目的とした休暇制度です。勤続10年以上の正社員を対象に、2~3カ月の範囲で取得可能です。なお、休暇期間中、一定期間は会社が支援金を支給します。

https://about.yahoo.co.jp/hr/workplace/welfare/#anchor03

・ワヴデザイン株式会社

ワヴデザインでは2012年より、
11ヶ月働いて1ヶ月休む、という試みをスタートしました。

旅行に行ってもいい
語学留学をしてもいい
習い事をしてもいい
趣味に費やしてもいい

希望であれば、他の企業で働くこともできます。
1ヶ月もあれば、普段はできないことに思い切って挑戦できます。

ワヴデザインは小さな会社なので、メンバーが1ヶ月も休んでしまうことは正直大変です。
しかしそれでも挑戦したのは、メンバーにはさまざまな経験をしてほしいから。

より多くの経験(インプット)をして、より良いデザイン(アウトプット)をする。
そしてより良い仕事をして、充実した人生を送る。

メンバーが得た経験は、そのまま会社の成長に繋がります。
そのために会社としてできることには、出来る限り挑戦していきたいと考えています。
http://www.wab.cc/project/01_one_month_holiday/

・株式会社リクルートテクノロジーズ

勤続3年以上の社員を対象に、3年ごとに最大連続28日間取得できる長期休暇制度です。心身のリフレッシュや、自己の成長機会のための学びに充てるなど、目的は自由です。加えて、それを応援する手当として一律30万円が支給されます。
https://recruit-tech.co.jp/recruitment/vacation.html

とはいえ、日本で取得するのは現実的ではないのでは?

サバティカル休暇など長期休暇を導入する企業が出始めているとはいっても、多くはデザインやマーケティングなど、先進的な事柄に対して敏感な企業に限定されており、事例数から言っても決して一般的とは言えないのが日本の現状です。

そして、制度が導入されたとしても、実際に取得することを考えると気後れする方が多いことも想定されており、事実、世界レベルで有給取得率を眺めた時、日本人の取得水準は最下位とも言われています。

厚生労働省公表の資料によると、労働者の約3分の2は有給取得に抵抗を感じており、思うように活用できていない状況があるようです。

ためらいを感じる理由としては「みんなに迷惑がかかると感じるから」が74.2%になっていて、周囲に対する配慮が読み取れます。

日本人は「みんな同じ時期」「みんな同じ期間」という横並びで休暇を取得するのが好ましいと考える傾向があり、社内全体の雰囲気として個人プレーを歓迎しない環境があることも要因でしょう。今後は、会社をあげて有給取得を推奨するなど積極的な取り組みを広めていくことにより、個人の考え方も変化し、休むことに対する心理的な障壁が低くなっていくことが望まれます。

自主的なサバティカル期間を設けることができるのがミドルシニア層の強み!?

とはいえ、いざその場になると尻込みするとはいえ、まとまった休みに対して魅力を感じている方は多いのではないでしょうか。年齢を重ねれば体力、健康面への不安が増していく一方で、好きなことをできる時間というのは思うよりずっと短いのかもしれません。仕事だけが生活の中心ではなく、元気に動ける間に悔いがない生き方をする人生も一つの選択肢です。

ある程度の年齢になると長年働いてきた蓄えができて、数ヶ月程度であれば収入がなくても暮らしていける余裕がある方もいることでしょう。そこで、転職を機に自主的なサバティカル休暇の期間を設けるのも一案です。

企業にもよりますが、3ヶ月程度のブランクであれば、そこまで転職に不利と言われることはありません。むしろ、ブランク期間に行った取り組みの目的と成果を伝えることができれば、理想通りの転職も可能でしょう。

人材紹介を活用している方では、エージェントに勤務開始日を交渉してもらうことで、次の転職先を決めながら長期の休暇に入ることも不可能ではありません。

まとめ

ブランクが短いうちに転職活動をはじめて、有利にことを進める気持ちは大切ですが、ご自身の人生を大事にする価値観を今一度見直して、やりたくても我慢してきたこと、挑戦してみたい活動に取り組む時間を持つ選択肢を検討してみるのはいかがでしょうか。

一度きりの人生です。「まだ若い」と感じられる年齢から自分のやりたいことを、なりたい自分を目指してみませんか?

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