老後の生活を支える年金から天引きされるものって何?具体的な手取り金額や生活費を紹介

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老後の生活を支える年金について考えた際、支給額から税金や保険料が天引きされることを忘れていませんか?額面だけを見て生活費の資産をしていると、実際の支給額が足りずに困ることになる可能性もあります。今回は、年金から天引きされるお金の種類と計算や実際に必要な生活費などを解説します。具体的な老後生活を考え始めている人や、将来の年金額について気になる人は、ぜひご一読ください。

年金支給額の平均

老後の生活を支える年金がどのくらい支給されるのか、平均額を見ていきましょう。厚生年金と国民年金の平均額は、以下の通りです。

厚生年金 国民年金
全体平均 14万6,429円 5万7,584円
男性平均 16万6,606円 5万9,965円
女性平均 10万7,200円 5万5,777円

参照元:「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」

国民年金の場合は全体平均や男女ごとの平均に大きな差はなく、5万5,000円〜6万円以内が平均額となっています。一方、厚生年金の場合は男女の差が約6万円開いています。厚生年金の全体平均額を夫婦2人とも受け取っていた場合、月の受給額は約29万円です。

年金から天引きされるものと計算方法

年金の月額平均は約14万円ですが、全額をすべて受け取れるわけではありません。年金からは、以下の5つの税金や保険料が天引きされます。知らずに年金受給開始年齢を迎える前に、どの程度引かれるのか知っておきましょう。

所得税・復興特別所得税

年金受給者も、所得税や復興特別所得税の支払いが発生します。給与収入の場合は給与所得ですが、老齢年金は雑所得として課税対象となっています。老齢年金の所得税を計算する時には、控除の利用が可能です。

公的年金等控除額では65歳未満が60万円・65歳以上は110万円が控除されます。そのうえ、合計所得2,400万円以下は48万円が控除される、基礎控除も適用されます。受け取っている年金額が、年間158万円(公的年金等控除110万円+基礎控除48万円)未満なら、税金の支払いは発生しません。

月に14万6,429円の年金を受給していた場合、年間受け取り額は約175万円です。そこから控除を引くと残りは約17万円、ここから社会保険料などがさらに引かれるため、課税所得金額は数万円となり、税額はさほど大きな金額にはならないでしょう。

住民税

住民税も年金から天引きされます。住民税が課税されるのは、以下の条件を全て満たしている人です。

• 4月1日時点で65歳以上
• 年間18万円以上の老齢年金を受け取っている人
• 前年中の公的年金等所得に住民税が課税されている

控除対象の配偶者や扶養親族がおらず、年金収入が155万円の場合は、住民税は発生しません。控除対象の配偶者や扶養親族がいる場合は、155万円以上の年金収入があっても非課税になる可能性があります。

住民税は前年の所得を元に計算をする所得割と、一定の所得がある人が定額で負担する均等割の2つの計算方法があります。どちらを採用しているかは、住んでいる自治体によって異なるため、事前に確認が必要です。所得割の場合は都道府県民税4%、市町村民税6%で10%の税率、均等割は年間5,000円が徴収されます。

国民健康保険

年金を受給していても、75歳未満の人は国民健康保険の保険料を支払う必要があります。国民健康保険の場合は世帯主と同時に、妻や子どもの分も合算して支払います。

世帯主の年金の受給額が年間18万円以上かつ、国民健康保険の加入者全員が65歳以上75歳未満の場合は、原則年金から天引きされるため、自分で支払い手続きを行う必要はありません。ただし、国民健康保険料と介護保険料の合計金額が、年金受給額の2分の1を超える際は特別徴収の対象とはなりません。

東京都新宿区の場合は、基礎賦課額(医療分)・後期高齢者支援均等賦課額(支援金分)・介護納付金賦課額(介護分)があり、3つともに均等割額と所得割額が存在します。また、均等割額に軽減措置が用意されており、それら全てを含めた金額が国民健康保険料額となります。

介護保険

介護保険料も年金から引かれるお金の1つです。65歳以上で年間の年金受給額が18万円以上の人は、支払う必要があります。会社員の場合は労使折半での支払いでしたが、退職後は全額自己負担になります。

介護保険料も自治体によって計算方法が異なるため、詳しい内容は自治体へ問い合わせしてみてください。2021年〜2023年の65歳以上の介護保険料は、月平均が6,014円でした。

参考:厚生労働省 「第8期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について」

後期高齢者医療保険

年金受給者が75歳以上になると、後期高齢者医療保険料の支払いが発生します。保険料は都道府県の条例によって決まっているため、住んでいる地域によって異なります。支払いが発生するのは、年間の年金受給額が18万円以上の人です。

条件が整えば、国民健康保険と同様に年金から天引きされます。こちらも所得割と均等割が用意されており、軽減措置なども含めた金額が年金から引かれます。

厚生労働省のデータでは、令和6年度の被保険者一人当たりの平均保険料額は年間8万4,988円、月額7,082円の見込み予定としています。また、令和7年度の平均保険料額は年間8万6,306円、月額7,192円の見込みです。

年金生活で確定申告は必要か

税金や保険料が引かれることがわかったら、確定申告が必要なのではないかと、心配になっている人もいるでしょう。収入状況によって異なるため、毎年自分の経済状況を見直して確認してみてください。以下の条件に該当する人は、申告不要です。

• 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下かつ、公的年金等の全てが源泉徴収の対象となる場合
• 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下

ただし、医療費控除や寄附金控除などの各種控除を適用する場合は、上記の条件に該当している人でも確定申告が必要です。各種控除の適用を申請すると税額が安くなるほか、場合によっては還付金が得られる可能性もあります。ふるさと納税をした際や、災害の被害に遭った時なども忘れずに確定申告を行いましょう。

老後の生活に必要な費用とは

定年退職を迎えて年金を受給し始める65歳以降、どの程度の生活費が必要なのでしょうか。また、生活費以外に発生する費用も解説します。

生活費の平均

生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」では、老後の生活に必要な最低日常生活費は、夫婦2人で月平均23.2万円。ゆとりのある生活には、月平均37.9万円必要です。厚生年金の月平均受給額は14万円、老齢基礎年金の月平均受給額は5.7万円です。

厚生年金を夫婦2人で受給する場合は最低限の生活は可能ですが、2人ともが老齢基礎年金のみの場合は毎月赤字になります。老後の生活を年金収入だけに頼ろうとすると、食費・住宅ローン・光熱費などのほか、通信費や交通費などの生活費だけで手いっぱいになる可能性があるでしょう。

生活費以外にかかるお金

老後の生活は日々の生活費だけではなかく、レジャー費や子どもへの支援費用などのお金も発生します。生活費以外に必要となるのは、以下のようなお金です。

• 介護費用
• リフォーム費
• 子どもや孫への支援代
• 葬儀代
• 入院や手術費用
• 保険料
• 娯楽費

老後の生活では介護が必要となるため、施設の利用料やバリアフリー住宅へのリフォームなどの出費が発生します。また、子どもや孫への教育費やお祝いなどのお金も必要となるでしょう。これらの費用も全て年金で賄うのは厳しいため、定年退職前から老後の生活を見据えた対策が重要となります。

年金額を増やしたい場合の対処法

老後の毎月の生活費を年金で賄いたい人、老齢基礎年金の金額を少しでも増やしたいという人は、以下の3つの方法を検討してみてください。

繰り下げ受給

年金は原則65歳から受給開始となりますが、本人の希望によって60歳から繰り上げ受給と66歳以降の繰り下げ受給が可能です。年金の受給を繰り下げるとその分、将来受け取れる年金額が増額されます。

増額率は繰り下げた月数×0.7%で、最大84%が増額されます。毎月の年金受給額が14万円だった場合、1年遅らせると19万8,800円に金額が増えます。年金以外の資産に余裕がある際は、繰り下げ受給を検討してみてください。

任意加入

国民年金保険は満20〜60歳までが加入期間ですが、猶予制度を利用していたり、未納の期間があったりすると、その期間分受け取れる年金額から差し引かれます。

しかし、未納期間があり国民年金の加入期間が40年に達していない場合は、60歳以降も任意加入をして追納が可能です。満額まで納付すれば、年金額は当初の予定よりも増えるので、未納期間がある人は任意加入もご検討ください。

60歳以降も厚生年金に加入

定年退職後も再雇用などで働く場合は、厚生年金に加入して年金額を増やすこともできます。厚生年金は70歳まで加入ができるので、働きながら将来の資金を積み立てられます。年金受給が始まるまでの期間、生活費の用意が難しい際は、60歳以降に働きながら年金に加入する方法も検討してください。

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年金以外で老後の生活費を用意するには

年金だけでは老後の生活費が足りないため、別途生活費や介護費用などを準備する必要があります。以下では、老後の生活費を用意するための方法を3つご紹介いたします。

定期預金

年金以外で生活費を用意するなら、定期預金による貯蓄を検討してください。定期預金はあらかじめ預ける期間が決まっているので、普通預金でお金を貯めるよりも高い金利が設定されており、お金を貯めやすくなっています。

期間は1ヶ月・1年・5年とさまざまなので、自分の都合に合わせて選択できます。どうしても期間の途中でお金が必要になった場合は、中途解約も可能です。中途解約をすると本来の定期預金よりも低い金利が適用されるため、受け取れる利息分が少なくなる点は知っておきましょう。

投資

貯蓄以外の余剰資金を使って、投資でお金を積み立てるのも老後資金の形成には有効な手段です。長期・分散・積立に適した商品であれば、複利の力で貯蓄をする以上のお金を用意できるでしょう。投資信託・株式・国債など、自分の目的に応じた商品を組み合わせて、取り組んでみてください。

退職金

老後生活が始まる前の大きな収入は退職金です。数百万〜数千万円というお金が手元に入るため、老後のための特別費や切り崩して生活費に充てるという使い方ができます。一部を投資に回せば、より将来の生活に余裕を持てる可能性も出てきます。退職金はもらう前から使い道を家族で相談して決めておきましょう。

まとめ

年金から天引きされる税金や保険料の種類と計算方法、老後の生活費などについてご紹介しました。年金は受給が始まっても、金額によっては所得税や住民税が引かれるほか、国民健康保険・介護保険・後期高齢者医療保険と、各種保険料も天引きされます。

年金の月平均受給額は14万円、老後の最低生活費は23.2万円ですので、各種保険料などを天引きされた後では、年金だけでの生活は苦しくなります。少しでも余裕のある生活を送るためには、年金の受給額を増やしたり、年金以外で蓄えを作っておいたりと対策が必要です。年金額や引かれるお金の種類などを知って、改めて自分の将来に必要な費用を確認しましょう。

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