65歳以上の就業者が過去最多に!シニア層の就労のリアルな理由や人気の仕事、役立つ制度を紹介

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現代では、65歳を過ぎても働き続けるシニアが増加中。その背景には、年金だけでは生活が難しい現実や、働くことで得られる生きがいや健康維持など、さまざまな理由があります。そこで今回は、シニアの就労実態から人気の職種、役立つ制度まで幅広く紹介します。これからの働き方を考える参考にしてみてください。

65歳を過ぎても働く時代へ!広がるシニア雇用の今

65歳を過ぎても働く人が増えている今、その背景にはどのような変化があるのでしょうか?まずは、増え続けるシニア就業者の実態を紹介します。

65歳以上の就業者が過去最多を記録

総務省の「労働力調査(2024年)」によると、日本の65歳以上の人口は3,625万人。総人口の29.3%を占め、過去最多を記録したことがわかりました。高齢者人口の増加に伴って就業者数も増加しており、この10年でシニアの就業者は約300万人も増加し、こちらも過去最多を記録に。

2023年の65歳以上の就業者数は914万人で、就業者総数に占める高齢就業者の割合は全体の13.5%、つまり約7人に1人がシニアという計算です。また、年齢階級別に見ると、特に65~69歳では、就業率が半数を超えており、働くことが特別ではなく、当たり前の時代になりつつあるのです。

年齢 割合
65~69歳 52.0%
70~74歳 34.0%
75歳以上 11.4%

参照元:総務省「統計からみた我が国の高齢者」

法改正でシニア雇用の拡大も加速

シニアの就労が一般化した背景には、法律の後押しもあります。高年齢者雇用安定法の改正によって、2025年4月からは継続雇用制度の対象が拡大。企業は希望するすべての労働者に、65歳まで働ける環境を整える義務を負うことになりました。具体的には、以下のいずれかの対応が求められています。

・定年制の廃止
・定年年齢の65歳への引き上げ
・希望者全員を対象とした65歳までの継続雇用制度の導入

企業にとっては対応が迫られる一方で、シニア世代にとっては大きなチャンスでもあります。加えて、人手不足が深刻化する今、経験豊富なシニア人材は貴重な戦力。今後も活躍の場はさらに広がっていきそうです。

シニアに聞いた!定年後に働くリアルな理由

年々シニア層の就業者が増え、働くことが当たり前になりつつあることはわかりましたが、気になるのは、シニアたちが働き続けるリアルな理由です。総合人材コンサルティング企業が定年退職後に働く65~74歳の男女1,000名を対象に実施した「シニアの仕事観とキャリアに関する実態調査2025」を参考に理由をみていきましょう。

第1位:生活費を得るため

一番多かった理由は、やはり「生活費を得るため」。年金だけでは日々の生活費をまかなえないと感じる人が増えています。実際に、厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢基礎年金(国民年金)の平均年金月額は約57,584円。さらに、厚生年金保険受給者の平均年金月額は、約146,429円(老齢基礎年金分を含む)となっています。

こうした数字からわかるように、年金だけで暮らしていくのは現実的に厳しいと言えるでしょう。家賃や食費、光熱費、医療費などをまかなうには、どうしても足りないと感じる人が多く、たくさんのシニアが生活費を得るために働く道を選択しています。

第2位:社会とのつながりを保つため

次に多かったのが「社会とのつながりを保つため」です。退職後は職場という居場所を失うことで、社会とのつながりがなくなってしまったように感じることも。

趣味・習い事・ボランティアといったコミュニティに属さなければ閉鎖的な人間関係になり、孤立感を覚える人も少なくありません。働くことで人と関わり、イキイキと生活するために働き続ける選択をしている人も多いようです。

第3位:身体的健康を維持するため

「健康のために働いている」という声も多数あがっています。労働時間に合わせて規則正しい生活が送れるほか、通勤や軽作業で体を動かすことが習慣になり、健康の維持につながります。

さらに、仕事を通じて人と会話する機会があることで、気分転換やメンタルケアにも効果的です。企業に所属していれば、定期的に健康診断を受けられるため、病気の予防や早期発見にもつながります。

第4位:余剰資金をつくるため

「生活に困っているわけではないけど、将来に備えてお金を確保しておきたい」そんな思いから、余剰資金を得るために働くシニアも増えています。シニア世代になれば、住み慣れた家の老朽化や、将来のためのバリアフリー対応など住宅に関する修繕・リフォーム費用や医療費など、まとまった出費がいつ必要になるか予想が付きません。

また、旅行や趣味、孫へのプレゼントなど、自分や家族との時間も思いきり楽しみたいと考える人は多いもの。安心して今を楽しみ、将来にも備えるために、働く選択をする人もいます。

第5位:やりがい・達成感を感じるため

金銭的な理由だけでなく、やりがいや達成感を求めて働くという人も少なくありません。自分の経験やスキルが誰かの役に立っているという実感が、日々の原動力につながります。「ありがとう」のひと言がうれしかったり、目標を達成する喜びを味わえたり。働くことは、人生にハリと誇りをもたらしてくれる大切な時間になっているようです。

シニアに人気の仕事5選

ここでは、実際にシニア層から人気を集めている職種を特徴とともに紹介します。

自分の健康にもよい「介護・医療・福祉の仕事」

65歳以上の就業者数が過去最多となる中で、特に伸びているのが「医療・福祉」分野です。10年前と比べて、なんと約2.4倍にまで増加しています。内訳を見てみると、介護・福祉分野が72万人、医療分野が33万人と、特に介護の現場でシニアが多く活躍しているのがわかります。

人気の理由は、働き方が柔軟なところ。アルバイトやパート、派遣などの短時間勤務から、資格を活かして正社員として再就職するケースまで、選択肢が幅広くあります。

加えて介護の仕事は、自分の健康にもつながるところが魅力と言えるでしょう。体を動かし、利用者さんとの会話を楽しむことで脳が活性化され、自身の介護予防にもつながるという声も多く聞かれます。

介護・医療・福祉の仕事を探す

求人数も多い「清掃スタッフ」

清掃業は、シニアに根強い人気のある仕事のひとつです。近年の観光需要の回復やホテルの新設、大型商業施設の増加により、清掃スタッフのニーズは年々上昇しています。年齢や経験を問わない求人も多く、チャレンジしやすいのも魅力です。

また、短時間勤務や曜日が選べる柔軟なシフトも豊富で、自分のペースに合わせて働けるのがうれしいポイントと言えるでしょう。「空いた時間を活かしたい」「体を動かして健康を保ちたい」そんなシニアの希望にしっかり応えてくれる職種です。

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運転スキルが活かせる「ドライバー職」

ECの普及や多様化する消費者ニーズにより、小口配送や高頻度の配送サービスへの需要が拡大しています。さらに、2024年4月に施行された労働時間の上限規制の影響で、ドライバー不足はますます深刻に。こうした背景から、業界全体で人材確保の動きが加速し、シニア層の採用にも力が注がれています。

普通免許があれば未経験でも始められる仕事が多く、賃金の見直しや勤務時間の柔軟化など、働きやすい環境がアップデートされているのも特長です。そのため、ドライバー職は今やシニアからも高い支持を集める人気の職種になっています。

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社会貢献の実感が得られる「警備業」

人の安全を守るという社会的意義の高さから、警備の仕事もシニアに人気のある職種のひとつです。年齢に関係なく働ける点が大きな魅力で、体力に自信があれば未経験やブランクがあってもスタートしやすいのも特徴でしょう。

特に施設警備や巡回業務などは、座って監視する時間も多く、体への負担も少ない傾向があります。「誰かの役に立ちたい」「社会とつながっていたい」と考えるシニアにとって、やりがいを実感しやすい仕事といえるでしょう。

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落ち着いた働き方ができる「事務職」

立ち仕事がなく、比較的身体への負担が少ないことから、事務職を希望するシニアも多くいます。とはいえ、事務職は若年層にも人気が高いため、採用競争が激しい職種でもあります。企業が応募者に求めるのは、やはりこれまでの経験やスキル。

未経験者が事務職に就くのは簡単ではありませんが、逆に言えばパソコンスキルや実務経験があれば採用のチャンスも十分にあるということです。これから事務職を目指す人は、WordやExcelの基本操作、メール対応、電話応対などのスキルを身につけておくことがポイントです。

事務の仕事を探す

シニア世代におすすめの仕事探しの方法

働きたいという気持ちがあっても「どこで探せばいいのかわからない」「自分に合う仕事が見つかるか不安」などと感じる人も多いはず。ここでは、シニア世代にぴったりの仕事探しの方法を3つ紹介します。

ハローワークを活用して求人を探す

ハローワークは、厚生労働省が運営する公的な職業紹介機関です。地元の中小企業など地域密着型の求人が多く、シニア向けの相談体制も整っています。

一部の地域では「シニア応援コーナー」や「生涯現役支援窓口」が設けられており、年齢に合った働き方や職種の相談ができるでしょう。一人で仕事を探すのが不安な人にも、丁寧なサポートがあるので安心です。

シルバー人材センターで紹介してもらう

シルバー人材センターは、60歳以上を対象とした地域密着型の就業支援組織です。都道府県知事が指定する公益法人で、登録をしておけば自分に合った仕事を紹介してもらえます。

清掃や軽作業をはじめ、事務補助・講習会の講師などさまざまな種類の仕事が揃っているのが特徴です。週2〜3日、短時間勤務など無理のない働き方ができるため、体力に不安がある人でも安心して始められるでしょう。

求人サイト・アプリを活用して求人を探す

求人サイト・アプリは一気に複数の求人が見られるため、希望業界・職種の企業比較が簡単にできます。マイナビミドルシニアは40代・50代・60代向けの求人サイトです。業種や職種で検索できることはもちろん、働く時間やエリア、活かせるスキルなど細かく検索できます。自分にぴったりな企業が見つかるでしょう。

マイナビミドルシニア公式アプリは、日本初となるミドル・シニア向けに特化した仕事探しアプリです。お役立ち情報やイベント情報もアプリでサクサクみられるので、一度ダウンロードしておけばミドルシニアのお仕事探しの強い味方になってくれるでしょう。

シニアが働くために知っておきたい制度・給付金

最後に紹介するのは、シニア世代が活用できる代表的な給付金制度です。支援や手当のことまで押さえておくと、より安心して新たに働くことができるでしょう。

高年齢求職者給付金

「高年齢求職者給付金」とは、65歳以上の求職者を対象とした雇用保険の給付金です。通常の失業保険(雇用保険の基本手当)は、20歳以上65歳未満が対象のため、65歳以上になると原則受給できません。その代わりとなるのが、この高年齢求職者給付金です。

通常の失業保険と同様、退職後にハローワークで申請し、条件を満たしていれば一括で給付金が支給されます。ただし、給付を受けるには以下のような要件があります。

・65歳以上で離職し、再就職を希望していること
・雇用保険の被保険者期間が6ヶ月以上あること
・ハローワークに求職の申込みをしていること

支給額は、離職前の賃金日額に基づき計算され、一括で支給されます。申請期限は、離職後1年以内です。期限を過ぎてしまうと受給できなくなるので、注意しましょう。

高年齢雇用継続給付金

「高年齢雇用継続給付金」は、60歳以上65歳未満の従業員が引き続き働く際に活用できる雇用保険の制度です。「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2種類に分かれています。

「高年齢雇用継続基本給付金」は、定年後も同じ職場で働き続け、60歳時点より賃金が75%未満に下がった場合に支給されます。一方で「高年齢再就職給付金」は、一度離職して雇用保険の基本手当を受給した後、再就職し賃金が下がった場合に支給される制度です。

どちらも、雇用保険の加入期間が原則5年以上であることなど、いくつかの条件がありますが、給与の減少をカバーしながらシニアの安定した就労を後押ししてくれる心強い制度です。手続きは基本的に勤務先の会社が行います。

まとめ

今や、定年イコール引退ではなく、定年後も自分らしく働く時代です。年齢を重ねても求められる場があり、サポート制度も整いつつあります。働く理由も、生活のためだけではなく、やりがいや健康維持といった前向きなものも多数。無理のないペースで、あなたらしい働き方を見つけてみませんか?

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