年金は将来もらえなくなる?現役世代への意識調査から今後の対策まで紹介

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年金は将来もらえなくなる?現役世代への意識調査から今後の対策まで紹介

将来、年金を受け取れないのではないか、と不安を感じている方もいるでしょう。今回は年金に対する調査レポートから、年金制度の概要、将来年金を受け取れなくなる可能性について解説します。また、65歳以降の生活に備えるための方法も紹介していますので、老後の生活資金や年金に不安がある人はぜひご一読ください。

現役世代が年金に抱えている不安とは

明治安田総合研究所が行った、年金に関する調査レポートによると、若い世代ほど年金に対して不安を抱えている人が多いことがわかりました。現役世代が年金に対して抱えている不安は、主に以下のようなものです。

• 年金がもらえない、減るかもしれないことが不安
• 保険料負担が今後増えるかもしれないことが不安

保険料が上がっている点や、社会保険料の支払い対象者が拡大したことで、今後も保険料を支払っていけるのか、支払った分が確実に年金として戻ってくるのかに不安を感じている人が多くいます。

また、制度が複雑で理解ができず漠然とした不安を抱えている人や、ライフスタイルや働き方に対して、中立的ではないといった意見を持っている人がいます。そのため、若い世代は特に年金をアテにしていない人が多い傾向といえるでしょう。

厚生労働省が実施した、老後の生活設計のなかでの公的年金の位置付けを尋ねる調査では、「全面的に公的年金を頼る」「公的年金を中心とし、これに個人年金や貯蓄などを組み合わせる」の回答をした割合は、以下のように年齢が若いほど低くなっています。

①全面的に公的年金を頼る
➁公的年金を中心とし、これに個人年金や貯蓄などを組み合わせる

年代 合計
18〜29歳 8.2% 47.3% 55.5%
30〜39歳 10.4% 54.7% 65.1%
40〜49歳 16.3% 60.3% 76.6%
50〜59歳 24.7% 58.4% 83.1%
60〜69歳 28.5% 59.1% 87.6%
70歳以上 43.2% 46.2% 89.4%

特に公的年金に全面的に頼ると考えている人は少なく、年金を受給しつつ将来に備える人が多いことがわかります。

年金制度の仕組みを解説

年金は老後の生活のために支給されるお金で、支給元や貯蓄元が分かれています。3階建て構造となっており、1階と2階が公的年金で、3階が私的年金です。

1階:国民年金
国民年金は満20歳〜60歳未満の人に、加入が義務付けられている年金制度です。自営業者の人などは、1階部分の国民年金に加入します。

2階:厚生年金
2階部分の厚生年金は、会社員や公務員が加入できる年金制度です。

3階:私的年金
3階部分はiDeCoや企業年金が該当し、自身で加入できる年金となります。

日本の年金制度では、1階部分の国民年金のみの人よりも、3階部分の私的年金まで全てに加入している人の方が、将来受け取れる年金額は増える仕組みです。

3階建て構造になっている年金には、3つの財源があります。普段支払っている保険料のほかに、国庫負担と年金積立金です。保険料は毎月国民年金が17,000円、厚生年金は18.3%を負担します。ただし、厚生年金は企業と折半になるため、実質の負担は9.15%分です。支払った保険料が、年金として支給されます。

そのほか年金給付額の半分を国庫から、残りの1割を年金積立金から捻出しています。財源を分散させているため、安定した年金制度の運営ができているといえるでしょう。

年金を将来受け取れない不安はなぜ起きた?

年金を将来受け取れないかもしれない、減額されるかもしれないといった不安は、2004年の政治家の年金未納問題がきっかけです。納付義務がある国民年金に、政治家が納付していなかったことで年金制度への不信感が高まり、それが現在まで続いていることが1つの原因です。

少子高齢化による、労働人口の減少も年金に対する不安を感じる要因となっています。年金制度は現役世代が支払った保険料を、その時点の高齢者へ年金として支給する仕組みです。そのため、労働人口が減り保険料の負担が増加している現在では、自分たちが高齢者になった時に、十分な額をもらえない可能性があるのではないかという不安につながっています。

そのほか年金制度を正しく理解していないために、もしかしたら年金を受け取れないのではないかと、不安を抱く人がいます。

本当に将来年金は受け取れない?

現時点では年金制度が破綻し、支給されない可能性は低い状態でしょう。年金の財源が3つに分散されているほか、財政検証によって年金の財政状況に問題がないか定期的に確認しているためです。しかし、受け取れる年金額が減少する可能性はあります。将来に備えておくためには、年金以外に資産形成を行うなどの対策が必要です。

現役世代の年金受給額シミュレーション

現役世代が将来、どのくらい年金額を受け取れるのかについて確認しましょう。令和6年に実施された財政検証の、モデル世帯の年金は以下の通りです。

▼成長型経済移行・継続ケース(実質賃金上昇率1.5%)の場合

2024年
(1959年生まれ)
2039年
(1974年生まれ)
2049年
(1984年生まれ)
2059年
(1994年生まれ)
男性  14.9万円 15.6万円 18.0万円 21.6万円
女性 9.3万円 10.9万円 13.2万円 16.4万円



▼過去30年投影ケース(実質賃金上昇率0.5%)の場合

2024年
(1959年生まれ)
2039年
(1974年生まれ)
2049年
(1984年生まれ)
2059年
(1994年生まれ)
男性  14.9万円 14.1万円 14.1万円 14.7万円
女性 9.3万円 9.8万円 9.9万円 10.7万円

どちらの場合でも年金制度は維持され、一定水準以上の金額が支給される見通しがあります。特に、女性は年金額が上昇する見込みがあります。現在30歳の1994年生まれは、過去30年投影ケースでも、受給額が10万円を超える見込みです。

これは従来のサラリーマンと専業主婦の家庭から、共働きとなる家庭が増加しているためです。女性の経済的な自立が増えている世代では、将来受け取れる年金額も増える可能性があります。これらのことから、将来年金がもらえない状況は起こらないと考えられるでしょう。

年金を少しでも多く受け取るための対策

将来受け取る年金額を少しでも多くしたい場合は、以下の3つの方法をご検討ください。受け取れる年金額が増えれば、老後の生活にゆとりが持てるでしょう。

任意加入する

年金の受給資格を満たしていない場合や、年金額を増やしたい場合は、任意加入を利用しましょう。任意加入は、以下の条件に該当する人が利用できます。加入する場合は、年金事務所へ申し込みを行います。

• 日本国内に住所がある60歳以上65歳未満の人
• 日本国内に住所がない20歳以上65歳未満の日本人
• 受給資格を満たしていない1965年4月1日以前に生まれた65歳から70歳未満の人
• 老齢基礎年金の繰り上げ受給をしていない人

付加年金に加入する

国民年金の第1号被保険者(自営業者など)と、任意加入被保険者は付加年金への加入が可能です。国民年金に月額400円を上乗せすると、「200円×付加保険料納付月数」の付加年金が支給されます。付加年金の納付額は一定のため、増額や減額は起こりません。また、以下の条件に当てはまる場合は、付加年金に加入できません。

• 国民年金保険料の納付を免除されている人
• 国民年金基金の加入員の人

法定免除や全額免除、学生納付特例の人などは付加年金には加入できないため、事前に国民年金の加入状況を調べておきましょう。

繰り下げ受給をする

年金は原則65歳から受給できますが、繰り下げ受給を選択すると受け取れる年金額を増やすことができます。1ヶ月受給開始を遅らせると、受給額は0.7%増加します。もし1年繰り下げた場合は8.4%、75歳まで繰り下げると84.0%の増加です。

〈66歳で受給を開始した場合の受け取り額例〉
男性:14.9万円×108.4%=16.1万円
女性:9.3万円×108.4%=10.0万円

〈75歳で受給を開始した場合の受け取り額例〉
男性:14.9万円×184%=27.4万円
女性:9.3万円×184%=17.1万円

年金以外に貯蓄や投資で余裕がある人、少しでも年金額を増やしたい人は、繰り下げ受給も検討しましょう。

年金以外に将来に備える方法

年金が将来受け取れなくなる可能性は低いですが、受給額が減る可能性はあります。少しでも老後の生活に余裕を持つためには、年金以外の方法で生活資金を備えておく必要があります。

iDeCoやNISAなどの投資をする

老後の生活資金を作るためには、iDeCoやNISA、個人年金保険などの投資を活用しましょう。iDeCoは個人型確定拠出年金で、年金制度の3階部分に該当する制度です。自身で掛金を拠出し、運用商品を選定、運用によって得た利益を非課税で受け取れる仕組みです。引き出せるのは原則60歳になってからのため、老後に向けた資金を作りたい人に向いています。

NISAは少額投資非課税制度で、つみたて投資枠と成長投資枠を活用しながら年間360万円まで投資ができる制度です。長期の積立や分散投資に適した商品などもあり、コツコツと資産形成をしたい人に向いています。運用や受け取り時に発生する税金が、非課税となるのも魅力です。

個人年金保険も国民年金制度の3階部分に該当する、個人で用意をする年金制度です。保険会社が用意している個人年金保険に、契約時に決めた年齢まで保険料を払い込むと給付が受け取れる貯蓄型の保険です。老後資金のために活用できる投資商品は、他にも多数あります。自身の目標に応じて、組み合わせながら活用してみましょう。

老後の生活資金の試算

老後の生活資金がどのくらい必要となるのか、早い段階で試算を行っておきましょう。毎月の生活費の目安、定年後も予定している大きな出費などを洗い出しておきます。具体的に考えておきたいのは、以下のようなお金です。

• 生活費
• 住宅ローン・住宅のリフォーム費用
• 医療・介護費用
• 保険料
• 車のローンや子供の結婚資金など
• 受け取り予定の退職金
• 年金受取予定額

出費はもちろん入ってくる予定のお金も合わせて計算をし、どのくらい足りないのか余裕はありそうかを確認します。また、老後の生活を考えるのと同時に、現在のライフスタイルの見直しも行ってみましょう。

現在の家計や、老後までに予想される支出をあらかじめ計算します。老後までにどのくらいの資産が必要なのかがわかると、今後どうすればいいのかが明確になっていきます。

長く働けるように備える

老後の生活資金が足りない場合、投資や貯蓄で備えるのはもちろん、少しでも長く働くことも視野に入れてみましょう。60歳以降も会社で働いた場合は、70歳まで厚生年金に加入できます。60歳以降も年金に加入できれば、将来の年金受給額は増加します。さらに毎月給与も受け取れるため、安定した生活を送れるでしょう。

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まとめ

年金制度に関する不安や、将来なくなる可能性があるのかなどをご紹介しました。若い世代ほど年金制度に不安を感じており、将来年金を受け取れなくなると考えている人も多くいます。しかし、年金制度が破綻する可能性は低く、現在の現役世代でも将来は年金を受け取れるでしょう。

年金制度がなくなる可能性は低いですが、支給額が毎月の生活費には足りない可能性は大いにあります。少しでも老後の生活資金を確保するためには、年金の受給額を増やすのはもちろん、年金以外の資産も増やしておきましょう。

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