106万円・130万以外にもある年収の壁。自分に最適な損しない働き方を見つけよう
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- 公開日:2024年11月 5日
106万円や130万円の壁などの“年収の壁”は、パートやアルバイトで働く人なら、よく耳にするワードでしょう。年収の壁にはいくつか種類があり、分かりづらい点も。今回は社会保険と税金に関係する年収の壁や、それぞれのメリット・デメリットについてご紹介します。年収の壁について詳しく知りたい人は、ぜひご一読ください。
年収の壁は、税金や保険料の支払いが発生する収入のボーダーライン
年収の壁とは、一定の金額までなら税金がかからない、社会保険に加入しなくて良いといったボーダーラインになる金額を指します。年収額によって段階的に変化するため、年収の壁と呼ばれています。壁を超えずに働くことで、経済的な負担を抑えられるでしょう。
収入と所得の違い
年収の壁や税金などの話で出てくる、収入と所得の違いについて知っておくと、より理解しやすくなります。
収入とは
入ってくるお金や、物品を指します。会社に勤めている場合は、税金や社会保険料などを差し引く前の総支給額が収入です。賞与などを抜きにした金額が収入で、1年間で稼いだすべての金額を年収と呼びます。
つまり、年収の壁の金額は1年間に会社から支払われた総支給額が関係してきます。
所得とは
収入から、経費や所得控除を引いて残った金額のことです。会社員の場合は、年収ごとに決まっている給与所得控除を引いた後の金額を指します。個人事業主の場合は、事業に関する必要経費を引いた金額です。
所得は税金の金額を計算する時に用いられ、経費が多いほど所得が下がるため、支払う税金が少なくなります。
年収の壁は"税金"と"社会保険"の2種類がある
年収の壁には2つの種類があります。以下では2つの壁と、それに対応する金額について解説します。
税金の壁
まずは、100万円・103万円・150万円・201万円の4つの税金の壁です。それぞれの違いは、以下の通りです。
100万円の壁
100万円の壁は住民税の課税基準である、93〜100万円を指しており、100万円を超えなければ住民税は課税されません。ただし、市区町村によっては、100万円以下でも住民税が課税される場合があります。
参考:「家族と税」国税庁
103万円の壁
103万円は所得税が課税されるラインで、103万円未満である場合は課税の対象外です。また、配偶者控除や扶養控除が適用されなくなるため、配偶者の税金が増加します。例えば、年収が110万円だった場合は、以下の金額を支払う必要があります。
(110万円-103万円)×所得税率5%=3,500円
この場合は、3,500円が所得税額です。
150万円の壁
150万円は、配偶者特別控除の金額が徐々に減少していく境目の金額です。年収が103万円を超えると、配偶者控除から配偶者特別控除に切り替わります。年収150万円までは配偶者特別控除の満額、38万円分が適用されます。しかし、もし年収が160万円となれば控除の額は31万円、年収170万円なら21万円と減少します。
201万円
年収201万円を超えると、150万円以降で減少していた配偶者特別控除が0円になります。配偶者の年収に関係なく控除が受けられなくなる金額のため、201万円の壁と呼ばれています。
社会保険の壁
社会保険の壁は、106万円と130万円の2つです。どのような違いがあるのか、以下で解説します。
106万円の壁
年収が106万円を超えて、かつ以下の条件を満たした場合は、社会保険の加入が必要になります。月額賃金は、時給や日給などで働いた金額が対象となるため、通勤手当やボーナスは含まれません。
• 従業員が51人以上
• 週の所定労働時間が20時間以上
• 月額賃金が88,000円以上
• 2ヶ月を超える雇用の見込み
• 学生ではない
130万円の壁
130万円を超えた場合は、社会保険に加入する必要があります。社会保険への加入が必須となるため、130万円の壁と呼ばれています。
年収の壁を超えて働くと何に影響する?
年収の壁の種類と金額がわかったところで、具体的に何に影響があるのかについてもご紹介します。年収によって大きく変化するのは、社会保険と住民税、配偶者控除・配偶者特別控除の3つです。
社会保険
社会保険には、健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険などが含まれます。それぞれが給与から控除されるため、加入すると手取り額が減少します。もし、年収を106万円以内に抑えた場合は、自身で支払う必要はありません。
社会保険に加入すると手取りは下がりますが、将来の介護や年金に関する保障を充実させられるというメリットもあります。どうしても手取りの金額を減らしたくない場合は、社会保険が適用されない範囲で働きましょう。
住民税や所得税
住民税とは一律で支払う均等割と、給与所得に応じて支払う所得割の合計金額のことです。年収が100万円以下の場合は、住民税は課税されません。しかし、100万円を超えて働いている場合は、住民税が発生します。
所得税は、収入に対して発生する税金で、年収が103万円以内であれば発生しません。つまり、収入が100万円以内に収まっている場合は、住民税も所得税も発生しないことになります。
配偶者控除・配偶者特別控除
年収によって配偶者控除と配偶者特別控除の金額が変わる点も、知っておきましょう。配偶者控除は所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に、納税者が受けられる所得控除の1つです。
例えば夫の方が収入が高く、妻の収入が一定金額以下の場合に、年末調整や確定申告で控除が受けられます。配偶者控除では配偶者の年収が103万円以下の場合、納税者の住民税と、所得税が減額されます。また、配偶者側は自身で社会保険料を支払わなくても、健康保険や厚生年金などに加入ができます。
配偶者特別控除は配偶者の年収が103万円を超えても、受けられる控除です。控除を利用するには、納税者本人の年収が1,000万円以下であることや、配偶者が青色申告者の事業専従者としての給与支払いを受けていないことなどが条件になります。
配偶者特別控除では、配偶者の年収が103万円〜201万円まで段階的に控除が受けられ、特に150万円までは満額で受けられます。
年収の壁に関する制度変更
年収の壁を受けて、手取りを減らさないように働き控えをする人が増えないよう、制度の変更が行われています。
106万円の壁について
社会保険に加入する必要がある106万円を超えた場合に、労働者の手取りが減らないような取り組みをした企業に政府が支援を用意しています。具体的には手当等支給メニューと、労働時間延長メニューの2つが用意されており、労働者1人あたり最大50万円の支援がされる制度です。
また、社会保険の適用条件も拡大しています。従来は従業員数が101人以上でしたが、2024年10月から106万円を超えて働いた場合に、適用条件に該当すると社会保険の加入が必要となりました。年収106万円を超えていても、条件に該当していなければ社会保険に加入する必要はありません。
130万円の壁について
130万円を超えた場合は扶養から外れる必要がありますが、一時的な収入増であると事業主が証明できれば扶養に入ったままでいられる制度があります。
一時的な収入増とは、人手不足や繁忙期などを指します。2箇所以上の事業所で勤務していた場合も対象となるため、130万円を超えてしまいそうな時は、勤務先へ相談しましょう。
参照元:「年種の壁・支援強化パッケージ」厚生労働省
各年収のメリット・デメリット
各年収の壁にはメリット・デメリットがあります。以下では、それぞれのメリット・デメリットや、どんな人に向いているかをご紹介します。
100万円の壁
極力税金の支払い額を抑えたい人や、扶養の範囲内で余裕を持って働きたい人は年収100万円以内になるように調整しましょう。
年収100万円で働くメリット
住民税や所得税が発生しない点です。働いて得た収入を、そのまま全部受け取れます。
年収100万円で働くデメリット
100万円以下でも市区町村によっては、住民税が発生する可能性がある点は考慮しておきましょう。
103万円の壁
住民税の支払いは問題ない人や、配偶者控除を利用したいと考えている人は、年収103万円以内を目指しましょう。
年収103万円で働くメリット
所得税の支払いがない点や配偶者控除を利用できる点です。
年収103万円で働くデメリット
住民税の支払いが必要な点はデメリットと言えますが、税額は少ないため大きな負担にはならないでしょう。また、どうしても103万円以内に収めるために、年末近くで働き控えをする必要が出てくる可能性があります。
106万円の壁
ここからは、年収の金額を超えた場合について、ご紹介します。社会保険に早めに自分で加入して、バリバリ働きたい人は年収106万円を超えても問題ありません。
年収106万円の壁を超えて働くメリット
社会保険に加入できるほか、130万円の壁を気にする必要がなくなります。
年収106万円の壁を超えて働くデメリット
住民税・所得税・社会保険の加入で手取りが減る、元々の健康保険よりも付加給付が少なくなる可能性があります。
130万円の壁
社会保険に自分で加入したい人はもちろん、100〜130万円までの年収の壁を気にせずに働きたい人には向いています。
年収130万円の壁を超えて働くメリット
社会保険の加入適用条件などに関係なく、社会保険に加入できます。社会保険の扶養を外れるため、金額を気にせずに働けることは大きなメリットです。
年収130万円の壁を超えて働くデメリット
106万円の壁と同様に、手取り額の減少や保険の付加給付の内容が変わる点です。
150万円の壁
年収の壁や控除などを気にせずに、収入を増やしていきたい人は、150万円を超えても問題ないでしょう。
年収150万円の壁を超えて働くメリット
働き控えなどをあまり気にせずに働くことができます。住民税や所得税などは発生しますが、年収が増えている分、手取り額も少しずつ増加する可能性があります。
年収150万円の壁を超えて働くデメリット
配偶者特別控除の金額が少なくなる点は、納税者にとってデメリットです。
201万円の壁
150万円の壁と同様に、年収の壁や控除を気にせずに働きたい人は、年収201万円以上を目指しましょう。
年収201万円の壁を超えて働くメリット
全ての年収の壁に左右されずに働ける点です。201万円を超えると、それ以上の壁は発生しないため、金額を気にしながら働く必要はありません。
年収201万円の壁を超えて働くデメリット
配偶者特別控除の控除が0円になる点は、納税者にとってデメリットとなります。
自分に合った働き方を考える
パート・アルバイトで働いている人で、自分にはどのような働き方が合っているか悩んでいる人もいるでしょう。
もし税金の支払いを抑えて、扶養の範囲内で受けられる保障のみで問題ない場合は、100万円や103万円以内で働く。社会保険に加入して保障を充実させたい人や、年収の壁を気にせずに働きたい人は106万円以上を目指して働く、などの考え方ができます。
年収の壁は自身だけではなく、配偶者にも影響が出てくるため、どの金額までなら問題がないのか事前に話し合って決めておくと、年末にバタバタすることもないでしょう。
まとめ
106万円や130万円を含めた年収の壁や、年収の壁を超えて働くメリット・デメリットについてご紹介しました。年収の壁には税金に関する壁と、社会保険に関する壁があり、それぞれの金額によって手取り額が変動します。
また、配偶者が受けられる控除の金額も変わるため、家庭によって最適な働き方は異なります。自身の希望はもちろん、配偶者の希望も踏まえて、どの金額以内で働くのが最適か決定しましょう。
社会保険に早めに自分で加入して、バリバリ働きたい人は年収106万円を超えても問題ありません。