パートの時給アップは可能?交渉術と注意点を紹介

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社会の流れでは年明けの時期から春闘が始まり、正社員の労働条件に関する労働運動が行われます。それに伴い、非正規雇用の時給が上がる可能性もあるでしょう。今回はパート先の時給アップを望む人に向けて、ポイントや交渉のコツなどをご紹介。また、パートの時給に関する法律や最低賃金についても解説します。

パートの時給をアップさせるためのポイント

パートとして働いていると、時給は気になるポイントの1つです。長く働いていると、時給アップの話も出てくるでしょう。今回は、時給アップの際に自身の希望の額に近づけるためのポイントを3つご紹介します。

職場の上司や周囲の人との信頼関係を作る

時給をアップさせるためには、普段の勤務態度や周囲の人との関係が大切です。遅刻や欠勤が多く、周囲の人への悪い影響が多いと、勤務態度は良くないと判断されるでしょう。また、周囲の人やお客様とトラブルが多いと、高い賃金を支払う理由はないとされます。

上司との信頼関係も、同様です。周囲との協力関係を作れているのか、普段から仕事をしっかりと行っているかといった内容が、時給アップにつながります。

周囲や上司からの評価は、簡単に上がるわけではありません。まずは、少しでも自分に対して仕事を任せても問題ないと思ってもらえる状況を作る必要があります。職場の中で信頼される関係を作り、時給アップを目指しましょう。

スキルアップの状況や売上貢献の実績を伝える

働き始めてすぐは、仕事に必要なスキルが身についておらず、できる仕事の範囲は限られています。しかし、時間が経てば少しずつできる内容が増え、売り上げに貢献したなどの実績が目に見えてくるでしょう。具体的に、自身の行動がどのように貢献しているのかを交えて、時給アップを伝えてみましょう。

また、スキルアップも時給アップの交渉材料になります。資格を持っていると有利になる仕事の場合は、資格取得も有効です。取得をしておくと将来的にもキャリアアップになるため、必要な資格は積極的に取得を目指してみましょう。

勤務期間が長くなってから交渉する

信頼関係の構築などの面からも、勤務開始直後の時給交渉は難しいと考えましょう。どのような仕事ができるのかがわからない、勤務態度の判断ができないなど、短期間では見えない部分が多いためです。

入社して1ヶ月で交渉をするよりは、半年や1年など長期間の勤務期間がある方が、昇給する可能性が高くなります。また、単純に長期間勤務をしているだけで、必ず昇給するわけではありません。以下のようなポイントを意識すると、少しでも昇給に近づく可能性があります。

• 無遅刻・無欠勤
• 残業への協力的な姿勢
• 与えられた仕事をしっかりと行う
• 新しい仕事に積極的に取り組む
• 正確かつスピーディーに仕事ができる

基本的な内容ですが、着実に仕事に取り組む姿勢が昇給へとつながります。

時給アップの交渉をするコツ

時給アップの交渉をするには、単純に時給を上げてほしいと伝えるだけでは成功しないでしょう。同じような職種や近くの他店での時給はどうなっているのか、まずは情報収集が必要です。

その後、自身の持っているスキルや実績などを、わかりやすい形でデータや数字をまとめましょう。伝える際には感情的に話さず、冷静にどうして時給を上げてほしいのか、データなどを活用して伝えて交渉しましょう。

全国の最低賃金とは

自身の職場で決められている時給が、問題ない金額であるかも気になる点です。最低賃金とは最低賃金法という法律に基づき、雇用する側が労働者に対して最低限支払う必要のある金額です。

都道府県ごとに金額が異なるため、自身が働いている場所での金額を把握しておく必要があります。最低賃金は毎年10月に改訂されるため、そのタイミングでも最低賃金を超えた時給であるかを確認しましょう。

以下は、東京などの首都圏の最低賃金です。首都圏や大きな県では、最低賃金が1,000円を超えている場合が多いです。

都道府県名 最低賃金
東京都 1,113円
神奈川県 1,112円
埼玉県 1,028円
千葉県 1,026円
大阪府 1,064円
京都府 1,008円
福岡県 941円

全国の最低賃金はこちら:令和5年度地域別最低賃金改定状況

エリア毎の平均時給

次にエリアごとの平均時給についても、確認しましょう。首都圏・東海・関西の三大首都圏での平均時給は、以下のようになっています。

エリア 時給
首都圏 1,222円
東海 1,099円
関西 1,143円

いずれの場所でも飲食系の仕事や、製造・物流・清掃系などの仕事で時給が増加しています。すべての地域に該当するわけではありませんが、仕事探しや時給アップの交渉としてご活用ください。

引用元:アルバイト・パート募集時平均時給調査(2024年1月度)リクルートジョブズリサーチセンター

パートの時給に関する法律を確認する

パートの時給に関する法律についても、確認しましょう。今回はパートタイム労働法や、労働法の中で時給に関する内容をご紹介します。

パートタイム・有期雇用労働法

パートタイム・有期雇用労働法とは、正社員とパートタイムなどの有期雇用労働者との不合理な待遇差を禁止するものです。不合理な待遇差には、正社員と非正社員との間で特に理由もなく、給与やボーナスなどの賃金に差があるなどが挙げられます。こういった事態の解消を目的としており、能力が向上した場合はその分を昇給させる必要があると定めています。

また、第14条では「通常の労働者との間で待遇に違いがある場合は、その内容や理由についての説明義務が発生する」とされています。もし、パートであっても正社員と同様の勤務をしている場合は、時給アップなど待遇の改善につながる可能性があります。

一方的な時給の引き下げはできない

反対に時給の引き下げとなる可能性も、0ではありません。しかし、労働契約法の第3条では、「労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする」とされています。そのため、企業側が一方的な理由で従業員の時給を下げるのは、違法となる可能性もあるでしょう。

ただし、双方が合意となった場合は、時給が引き下げられるケースもあります。なお、懲戒処分となった場合は注意などの軽い処分から始まり、状況次第では減給といった処分となるでしょう。

パートの時給が上がる企業側の背景

パートの方の時給が上がる時、企業側にはどのような背景があるのでしょうか。考えられる2つの理由を解説します。

人手不足による時給アップ

企業側が時給を上げる要因として、人手不足が考えられます。
2023年、非正規従業員の人手不足を感じている企業は30.9%です。非正規従業員は2023年10月〜12月には、2,160万人になっているにも関わらず、企業と求人によってミスマッチが起こっているとわかります。

賃金が従業員の労働力や能力に見合っていない場合、従業員は離職する可能性が高いでしょう。少しでも賃金を上げて、従業員が離れてしまう可能性を減らす必要があります。賃上げができず、賃金が低いままでは優秀な人材を新たに確保するのは難しい現状もあると言えます。

物価高騰の影響による時給アップ

近年では物価高騰が問題となっており、水道や電気・ガスのほか食品などのライフラインも値上げが起こっています。2023年1月の企業物価指数では、2022年と比較しても、物価が9.5%も上昇しています。生活自体に大きな影響が出ているため、企業では賃上げを検討しているでしょう。

パートの時給が上がるメリットは企業側にもある

パートの時給アップにメリットがあるのは、従業員だけではありません。企業側にもメリットがあるということを把握しておきましょう。

従業員のモチベーションアップ

時給アップは、従業員のモチベーションアップにつながります。時給アップは、毎日の働きがしっかりと周囲に見られており、貢献しているという評価とも受け取ることができます。

自身を高く評価してくれる会社や店などに対し、「ここで働き続けたい」と感じる人は多いでしょう。パートであっても、仕事に対する責任感が増えるため、結果として会社全体の売り上げ増加や成長へとつながります。

離職率の低下

パートの時給アップは、離職率の低下にもつながります。近年では正規雇用はもちろん、非正規雇用の人手不足も深刻となっています。そのため、従業員が退職しようとすれば、引き止めるでしょう。

退職理由の中に給与への不満がある場合は、時給のアップなどによって離職を防げるようになります。少しでも同じ場所で働き続けるための理由として、時給のアップは欠かせない要素の1つです。

パートの時給アップによって出る影響

パートの時給アップは、自身の働きが認められた証拠となり、嬉しい出来事の1つです。ただし、時給アップは必ずしも、良い影響のみというわけではありません。特に扶養の範囲内で働いている人は、時給アップによる影響が大きい点を理解しましょう。

年収の壁を超える可能性がある

扶養の範囲内で働いている人には、年収の壁に気をつけなければなりません。103万円・106万円・130万円、それぞれ3つの壁についてご紹介します。

103万円の壁
パートやアルバイトなどの収入が、103万円を超えると所得税が発生します。
もし、支払う税金を減らしたいといった場合は、年収103万円を超えないように気を付ける必要があります。そのため、今までの収入では問題なくても、時給アップによって壁を超える可能性があるでしょう。

106万円の壁
2022年10月の法改正によって、従業員数が101人以上500人未満の事業所では、年収が106万円を超えた場合に社会保険への加入が必要になりました。具体的な社会保険の加入条件は、以下の通りです。

• 勤務先の従業員数が101人以上
• 週の所定労働時間が20時間以上
• 月額賃金が88,000円以上
• 2ヶ月を超える勤務の見込み
• 学生ではない

所定労働時間は勤務先と書面などで取り決めた時間のため、実際の勤務時間とは異なります。なお、2024年10月以降には社会保険加入の条件は、従業員数が51人以上の事業所まで拡大の予定です。

106万円の壁に対しては、手取りを減らさない取り組みを実施する企業に対して、労働者1人当たりに最大50万円の支援をする仕組みがあります。もし、106万円を超えて働く予定がある場合は、会社側にて企業支援を受けているかなどを確認しましょう。

130万円の壁
年収130万円を超えると、家族の扶養から外れて自分で社会保険や国民健康保険に加入する必要があります。130万円を超える目安としては、月の収入が10万8,333円を超えるかどうかです。家族を扶養に入れられる要件は、健康保険組合によって異なるため、どのような条件で扶養から外れるのか確認しましょう。

なお、年収が130万円を超えた場合でも、一時的な収入の増加であると証明できれば扶養認定を受けられる可能性があります。繁忙期による労働時間の延長や、一時的な人手不足によるものであると証明できる必要があります。一時的な収入増についての説明は、事業主から行う必要があるため、従業員側で行う必要はありません。

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まとめ

パート従業員が、時給を上げるための交渉の実施は可能です。周囲との信頼関係の構築、スキルアップなど具体的に勤め先に対して、どのように貢献ができるのかを説明できるようにしましょう。

パートやアルバイトの時給は年々上昇しており、最低賃金も毎年更新されています。首都圏での平均賃金は2024年1月には、1,222円となっています。最低賃金や平均賃金、自身の業務量から比較して、どの程度自身の時給と差があるか確認しましょう。

パートの時給アップは従業員だけでなく、企業側にもメリットがあります。ただし、年収の壁など気を付けておきたい点もあるため、必ず自身にどのような影響があるか確認しましょう。

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