主婦年金廃止で年15万円の負担増?!検討の背景や家計への影響

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2023年10月1日に放送された番組にて、武見厚生労働大臣が「主婦(主夫)年金の見直しの必要性」に触れたため、主婦年金が廃止になるのではないかと話題になっています。今回は改めて主婦年金とはどのようなものか?なぜ廃止が検討されているのか?廃止による影響についてもご紹介します。早ければ2025年にも廃止が決まる可能性があるため、今から影響について把握しましょう。

主婦年金とは第3号被保険者の年金

主婦年金とは国民年金の1つである、第3号被保険者の年金を指します。国民年金は満20〜60歳までの全員に加入義務があり、第1号・第2号・第3号に分かれます。第3号は、第2号被保険者に扶養されている配偶者で、原則年収が130万円未満の人が対象です。

つまり、専業主婦(夫)やパートで扶養調整しながら働いている人は、原則第3号に当てはまるでしょう。保険料の自己負担はなく、第2号被保険者の勤務先経由で届出をします。各保険の概要は、以下のとおりです。

第1号被保険者
加入保険:国民年金
対象者:農業者・自営業者・学生・無職の方など
届出方法:住まいの市区町村へ届出
納付方法:納付書による納付など、自分で納める

第2号被保険者
加入保険:国民年金と厚生年金保険
対象者:会社員・公務員の方など
届出方法:勤め先を通じて事業主が届出
納付方法:勤め先を通じて納付

第3号被保険者
加入保険:国民年金
対象者:国内に居住し、第2号被保険者に扶養されている配偶者
届出方法:配偶者の勤め先経由で届出
納付方法:自己負担なし

第3号被保険者は1986年に始まった制度です。以前までは任意で国民年金に加入ができたため、専業主婦は年金に加入していないことも。国民年金に加入していないと、老後の資金として年金が利用できない問題が発生したため、その解消を目的につくられました。

主婦年金廃止の背景3つ

では、なぜ主婦年金は廃止の方向へと向かっているのでしょうか。背景として考えられるのは、現在の時代に合わなくなっている点です。今回は特に考えられる理由を、3つご紹介します。

パートによる働き方の調整

第3号被保険者に該当するのは専業主婦(夫)や、パートで働く人です。特にパートで働いている場合は、扶養の範囲内である年収130万円、もしくは103万円以内に収める方が多いでしょう。いわゆる年収の壁を考慮し、働き控えをする人が多いのが現状です。

しかし、近年では労働人口不足による賃上げなどによって、パートでも年収が上がっています。つまり、年収の壁である103万円や130万円に収めるのは難しくなってきているのです。また、労働時間の調整が入ると、人手不足の問題がより深刻化する可能性も。

企業では、より長い時間や期間を働ける人を募集しているのに対し、労働者側は扶養に影響の出ない範囲で働こうという動きがあります。主婦年金を廃止して主婦(夫)やパートの労働力を十分に活かしたいと考えている点が、廃止へと向かっている背景の1つです。

ライフスタイルの変化

第3号被保険者が制定された1986年から現在までの間で、ライフスタイルは大きく変化しています。専業主婦が多かった時代から、女性の社会進出が進み、夫婦共働き世帯や独身の女性が増えてきました。

そのため、保険料の負担や年金給付に違いが出る点を不公平に感じる人も。実際に厚生労働省が報告した「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会」では、以下のような意見が出ています。

• 共働きや単身世帯・ひとり親世帯などよりも、片働き世帯を優遇している
• 老齢年金や遺族年金について給付と負担の関係が不公平である
• 育児や介護の事情に関係なく、働かない選択をしている人に対しても、同じ保障がされるのは不公平 など

また、育児や介護などの理由から仕事を辞めた際、配偶者がいる場合は2号から3号への移動が可能です。しかし、独身である場合は1号への移動となり、保険料の負担が必要です。ライフスタイルの変化により適した制度とするためにも、第3被保険者制度は廃止にするという動きがあります。

個人事業主の配偶者との格差がある

主婦年金と呼ばれる第3号被保険者は、第2号被保険者である会社員や公務員の配偶者が対象です。つまり、第1号に該当する自営業者や農家などの配偶者は、専業主婦であっても自身で保険に加入する必要があります。第3号被保険者と比較すると、保険料の負担額に差が出てしまい、公平性に欠けます。

さらに、自営業者の配偶者には第3号被保険者のような、社会的なセーフネットの措置がない点も問題とされています。雇用形態の違いによって格差が出てしまう現状も、第3号被保険者制度が見直される背景のひとつです。

主婦年金は2025年から廃止される可能性がある

主婦年金は、早ければ2025年には廃止となる可能性があります。2025年には団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、労働人口不足や社会保障費の膨らみなどの問題が懸念されています。さらに、団塊ジュニア世代は50代になり、定年までは10年を切っている状態です。

今後の労働力不足や現役世代の負担増を解消するためにも、より幅広い層から社会保障費を徴収する必要があります。そのタイミングとして、2025年が第3号被保険者制度の廃止の目安となる可能性があります。

主婦年金が廃止された場合の影響

第3号被保険者制度が実際に廃止された場合、どのような影響があるのか気になる方は多いでしょう。今後、第3号被保険者制度が廃止されると、年金だけでの生活はより厳しくなると予想できます。そのため、現在の定年である60歳以降でも働ける状態をつくる、老後の資金を年金とは別に用意する必要があります。

主婦年金が廃止となった場合の負担額

実際に主婦年金が廃止となった場合の負担額は以下のとおりです。

パートで働く人の負担額試算
パートの年収が100万円で、第3号被保険者の年齢が45歳の場合は、年間で15万円以上の負担が必要となる可能性があります。

• 厚生年金保険料:年間96,624円
• 健康保険料:年間62,400円
• 雇用保険料:年間6,000円
年間合計額:165,024円
※健康保険料は2023年の東京都の場合で計算

専業主婦の負担額試算
専業主婦(夫)で上記の例と同様に、45歳の第3号被保険者の場合は年間で30万円近く負担が増える見込みです。

国民健康保険料:年間74,700円(中野区の場合・2023年度時点)
国民年金保険料:年間198,240円
• 年間合計額:272,940円

収入に対して、保険料などによる負担が増えるため、場合によっては生活が苦しくなる可能性もあります。国民健康保険は、家族構成や年齢、収入などによって金額が変わります。実際にどの程度の支払いが必要となるのか、事前に計算して確認しましょう。

主婦年金に関わる年収の壁とは?

主婦年金には「年収の壁」が大きく影響しています。年収によって、支払うべき保険料が大きく変わってくるため、以下で確認しましょう。

年収 年収の壁を超えた際の影響
103万円   給与所得者は所得税の支払い義務が発生する
106万円 一定条件を満たす場合に、厚生年金と健康保険への加入が必須となる
130万円 厚生年金と健康保険への加入が必須となる
150万円 配偶者特別控除が38万円から減る
201万円 配偶者特別控除が完全に0となる

現状の制度で保険料を支払いたくない場合は、年収103万円以下にする必要があります。また、106万円を超えた際に厚生年金と健康保険への加入が必要となるのは、以下の条件を満たしている場合です。

• 週の所定労働時間が20時間以上
• 雇用期間が継続して2ヶ月以上
• 賃金が月額88,000円以上
• 学生ではない
• 従業員が101人以上
※従業員数については2024年10月以降には、50人以上の企業に適用される予定です。

130万円の壁を超えた際は会社の規模に関わらず、年収が130万円を超えた時点で厚生年金と健康保険への加入義務が発生します。130万円を超えた場合の保険の加入先は、パート・アルバイト先の企業によって異なります。

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主婦年金の廃止は賛否両論

主婦年金は、育児や介護などで働けない人の社会的なセーフネットの役割もあり、現在も加入している人が多い制度です。

しかし、加入している人の中には、自主的に働かないことを選ぶ人もいるため、廃止した方がいいという意見があるのも事実です。そのほか、加入者の99%は女性であるため、女性の社会進出に影響を与えている、女性の就業地位向上の妨げとなっているなどの意見もあります。

上記のように第3号被保険者制度の廃止には、賛否が分かれているのが現状です。制度がどのように変わっていくのか、また、廃止となった場合には不公平感がない・事情があって働けない人を助ける年金制度が出てくるかどうかも大事な点となっていくでしょう。

まとめ

主婦年金とも呼ばれる第3号被保険者制度は、廃止が検討されています。第3号被保険者制度は、1986年に専業主婦の無年金問題を解消する目的で導入されましたが、時代が進むにつれ現在の生活に合わない制度となっているのが問題です。

また、自営業者の配偶者には適用されない点や、働いている女性との保険料の差が出るなど、不公平性も問題となっています。しかし、事情があって働けない人の救済措置ともなるため、不公平性をいかに無くすかが課題です。

今後、労働人口不足や社会保障費の増加による問題が出てくるとされており、早ければ2025年で主婦年金は廃止される可能性も。主婦年金が廃止されると、国民年金だけでも年間で20万円の負担が増加します。そのほか、健康保険料も支払いが必要となるため、さらに負担額は増えるでしょう。

制度ができあがった時よりも働き方が変わり、労働人口が不足している現在では、主婦年金は時代に合わない制度となってきています。今後、より時代にあった形への変化が起きるのは、間違いないと考えておく必要があります。主婦年金の廃止がより具体的になった際に慌てずに済むよう、今のうちからどのような影響があるのかしっかりと理解しましょう。

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