定年後の健康保険の選び方|メリットや注意点を解説

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日本は欧米諸国とは異なり、国民皆保険制度です。そのため、退職後も健康保険に加入する必要があります。本日は、定年後の健康保険の選び方についてまとめていきます。

定年退職後の健康保険の選択肢とは?

定年退職を迎えるにあたり、どの健康保険制度に切り替えようかと悩まれている方も多いのではないでしょうか。

日本は国民皆保険制度を採用しているため、年齢にかかわらず健康保険に加入をしなければなりません。つまり、定年退職後から75歳を迎えて後期高齢者医療制度が始まるまでは、何かしらの方法で健康保険に加入し直す必要があるのです。

健康保険制度は選ぶ加入先によって条件や制度が異なるため、自身で最善な保険を選ぶ必要があります。ここでは順にどのような選択肢があるのか、それぞれのメリットデメリットについてみていきましょう。

1.健康保険の任意継続

定年や労働時間の短縮により健康保険の資格がなくなった際に、一定条件のもと継続して加入するというもの。これを健康保険の任意継続といい、申請後2年間は継続することができます。

<メリット>
・これまで通りの保険内容で加入できる
・扶養家族も保険に加入できる

<デメリット>
・保険料が全額個人負担となる(退職前の2倍程度)
・2年という縛りがある(いつまでもは加入できない)
・保険料の滞納をすると加入資格を失ってしまう

2.特例退職被保険への加入

特例退職被保険とは、75歳で後期高齢者医療制度に加入するまでの期間、在職中と同程度の保険給付を受けられる制度です。勤務先がこの制度に対応していれば加入することができます。

<メリット>
・在職中と同様の内容でサービスを利用できる
・75歳になるまでの利用が可能
・扶養家族も保険に加入できる

<デメリット>
・保険料が全額個人負担となる(退職前の2倍程度)
・保険料の滞納をすると加入資格を失ってしまう
・健保加入期間が通算20年以上や40歳以降10年以上という条件がある
・そもそも特例退職被保険者制度を利用できる健康保険組合が少ない

3.国民健康保険へ切り替える

国民健康保険は特定の加入条件がないため、定年退職後に誰でも加入することができます。なお、退職日の翌日から14日以内に手続きをしなければなりません。申請は住所がある市区町村で行います。

<メリット>
・誰でも加入することができる
・所得に応じた保険料(所得がなければ割安になる)
・自治体の健康診断などを活用できる

<デメリット>
・扶養家族の保険料が発生する
・定年後1年目の保険料が割高(前年の所得をもとに計算されるため、会社員時代の年収が高い場合保険料も高額となる)
・人間ドックの無償受診や付加給付がない

4.家族の扶養に入る

子世代と同居していれば、定年退職後に子どもの扶養に入るという選択肢もあります。別居している場合でも、子どもに扶養されている事実を証明できれば加入可能です。しかし、被扶養者になれる条件は加入先により異なるため、確認が必要です。

<メリット>
・子どもの負担額が変わることなく加入できる
・扶養控除額が増えるため、家族の節税対策になる

<デメリット>
・アルバイトや自営業などで年収が一定額を超えないようにしなければならない

データ元:厚生労働省「我が国の医療保険について」

健康保険の選択に迷ってしまったら・・・

定年退職後に加入する健康保険について4つの選択肢をみてきました。何を選べば良いか迷う場合は、何を優先したいのか、ご自身の選ぶポイントを絞って検討してみることをおすすめします。

・保険料の安さ

保険料の負担を抑えるなら、家族の扶養に入ることがおすすめです。扶養に入れば、保険料はかかりません。扶養に入れない場合は、健康保険任意継続制度と国民健康保険の保険料を算出し、どちらが安いか比較検討して考えてみましょう。

・給付内容などサービスを重視する

将来、病気になってしまうことで医療費が高額になる不安がある場合は、特例退職被保険者制度を検討しましょう。なぜなら、この制度は給付内容が手厚いからです。また、74歳まで加入できるのも嬉しい点です。

・専門家に相談する

自分で判断できない場合は、専門家に相談するのも一つの手です。その際は、直近の「ねんきん定期便」が参考になるので専門家の元へ持参するようにしましょう。相談先は、社会保険の知見があるファイナンシャルプランナー、社会保険労務士などの資格を持った専門家が適切です。

定年退職後の健康保険選びの注意点

退職後、健康保険を選ぶ際には注意する点があります。

・手続きは忘れずに

健康保険は退職後に自動で切り替わるわけではないため、ご自身で手続をしなければなりません。手続きをしないと健康保険に未加入となってしまい、病院で治療を受けた際の医療費が全額自己負担となってしまいます。

健康保険の任意継続制度は退職から20日以内、特例退職被保険者制度は加入する健康保険によって決まられた期限に手続きをしなければ加入できません。手続きは早めに行うようにしましょう。

・保険料が高額になってしまう可能性がある

国民健康保険に移行すれば、保険料は前年の所得から計算されます。退職後の初年度の保険料は、現役時代の所得をもとに計算されるため高額になりやすいです。

特例退職被保険者制度は加入する健康保険によって異なります。収入が年金だけの場合は、国民健康保険の方が保険料の負担が低くなることも。事前に保険料を比較してみましょう。

・70歳以上での医療費の自己負担を気にかけておく

医療費の自己負担については70歳になると2割、75歳になると1割であると思われている方も多いかもしれません。しかし、70歳以上の方でも年収約370万円〜程度の所得がある場合は、医療費の自己負担が3割になってしまいます。予め頭の片隅に置いておいておくようにしましょう。

人生100年時代で選択肢の広がる、保険制度

これまで定年退職後の健康保険選びについてみてきました。今の日本社会はシニア人材の活用が積極的に行われていますので、再就職という選択肢もあるでしょう。その場合は、再就職先の社会保険に加入することができます。

正社員として現役時代のようにバリバリと働くことに抵抗がある方も、次のような条件を満たせば正社員でなくとも社会保険に加入することができます。

・週の所定労働時間が20時間以上
2カ月以上の雇用が見込まれる
・月額賃金が88,000円以上
・学生でない
・雇用元の企業の従業員が101人以上
※2024年10月以降:雇用元の企業の従業員が51人以上

定年退職後も働きたいと考える人が増加傾向にある昨今、健康保険への加入をきっかけに新たなキャリアプランを検討してみるのも良いでしょう。

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まとめ

退職後の健康保険についてまとめてきました。健康は医療と切っても離れない関係にあります。今後健康で過ごすためにもサービスや加入条件などを比較検討し、今から健康保険について考えておけば、定年退職後に焦らずに済むでしょう。

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