セカンドキャリア形成に役立つリカレント教育って?リスキングとの違いや支援サービス
- 100年時代のライフデザイン
- 公開日:2023年5月18日
最近耳にするリカレント教育やリスキリングといった言葉。どのような違いがあるのか、なぜミドルシニアにリカレント教育がおすすめされるのかといった疑問をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。今回は、リカレント教育のメリットや支援サービス、給付金について解説します。
ミドルシニアが覚えておきたい「リカレント教育」とは
人生100年時代と呼ばれる現代では、働き方が多様化しています。定年退職後やキャリアのステップアップ時などのセカンドキャリア形成のためには、新たな知識やスキルを身につけることが大切。そこで注目されているのが「リカレント教育」なのです。
リカレント教育とは?
リカレント教育とは、義務教育や大学などの学校教育期間終了後に、「働く」と「学ぶ」を繰り返す教育システムのことです。
社会人になってから仕事で求められる能力を磨いたり、新たなスキルを取得したり、各自の必要なタイミングで再び教育を受けるため、別名「社会人の学び直し」とも呼ばれています。
リカレント教育の歴史と注目されるようになった背景
リカレント教育の歴史は古く、スウェーデンの経済学者・ゴスタ・レーン氏が提唱したのちに、同国の文部大臣・オロフ・パルメ氏が1969年のヨーロッパ文相会議で紹介したことがはじまりと言われています。
その後、経済協力開発機構(OECD)が公式採用し、1973年にはリカレント教育の有効性を述べた報告書が公表され、国際的に認知されるようになりました。日本でも注目され、取り入れられるようになったのは、3つの社会的背景が大きく関わっています。
①平均寿命の延伸
平均寿命の延伸によって、人生100年時代へと変化しています。少子化の影響もあり、一人ひとりが生涯現役で元気に暮らすライフスタイルへの変化が求められるようになったのです。
それぞれが生涯現役で活躍するためには、転職や起業など、あらゆるキャリアプランの可能性を考慮しなければなりません。そのために、新たな知識やスキルを取得する必要があるでしょう。
②技術革新の急速な進歩
IoTやロボット、ビッグデータの活用促進など、技術革新が進む現代。それに伴って市場も大きく変化し、若い頃に習得した知識やスキルだけでは通用しなくなってしまう恐れがあります。リカレント教育は、時代に順応し、長期的に活躍できる人材になるための手段のひとつでもあります。
③働き方の多様化
日本では従来、終身雇用がベースになっていましたが、その慣習も少しずつ変化し、転職が当たり前の時代になりつつあります。そのため、それぞれが主体的に自らのキャリアプランと向き合い、自分の市場価値を高めることが求められています。
リカレント教育で何を学ぶ?代表例
リカレント教育で学べる分野は多岐にわたります。その中でも代表的なのが、英語や中国語などの「外国語」、MBAや社会保険士などの「資格系」、プログラミングやITリテラシーなどを学ぶ「IT系」など。その他、観光業や農業のような地域に特化した科目や、介護・福祉など社会的貢献度と需要の高い科目もあります。
何を学んでいくかは自分の求めるスキルや活かしたい仕事によって異なってきます。迷ったら、「仕事にどう役立つか」「将来をどう過ごしたいか」をイメージしてみると、選択しやすくなるかも知れません。
リカレントとリスキングとの違い
リカレントと一緒に耳にすることもあるリスキングという言葉ですが、その大きな違いは、主体や主導が「個人」にあるのか「企業」にあるのかということ。
個人がそれぞれに必要なタイミングで取得したいスキルを学び直すリカレント教育に対し、リスキングは、業務で成果を出し続け、新たな価値を生むために企業が主導で行う学び直しです。
リスキングは主にDXに対応できるように、デジタル技術の学び直しで用いられています。ただし、企業主導といっても強制的なものではなく、あくまで「希望する従業員が個人のキャリアパスを広げるために必要な学習を行う」ことが前提です。
リカレント教育を取り入れる3つのメリット
ミドルシニアがリカレント教育を取り入れるメリットは、大きく3つあります。具体的にどのようなメリットがあるのか紹介していきます。
年収アップが見込める
リカレント教育を取り入れることで知識を増やし、新たなスキルの取得につながるため、長期的な年収アップが期待できます。平成30年度の内閣府「年次経済財政報告」でも、リカレント教育を受けることで、徐々に年収が上がる傾向があると発表されています。
年収に与える効果の推計結果をみると、自己啓発を実施した人と実施しなかった人の年収変化の差額は、1年後には有意な差はみられないが、2年後では約10万円、3年後では約16万円でそれぞれ有意な差がみられている。自己啓発の効果はすぐには年収には現れないが、ある程度のラグを伴いつつ効果が現れると考えられる。
<引用:平成30年度「年次経済財政報告」>
仕事の幅が広がる
在職中の企業でさらに活用に幅が広げることができます。また、これまで一つの仕事で長く活躍していた人も、リカレント教育によって新たなスキルや知識を習得すれば、異業種へのチャレンジも可能です。
専門的なスキルであれば、専門性の高い職業への就業も可能になります。これまで従事したことがなかった職業に就職すれば、新たなやりがいや生きがいにつながる可能性もあります。
新しい仲間と出会える
リカレント教育はオンラインで受講できるものもありますが、多くは対面での学習です。そのため、同じ分野に興味のある受講生やその道の教育者との出会いもメリットです。新しい出会いは刺激になり、自己成長や日々の張り合いにもつながるので、ミドルシニア世代にとっては、大きなメリットになるでしょう。
リカレント教育が受けられる場所
リカレント教育を受けられる場所は主に3つあります。順に解説していきましょう。
大学などの教育機関
現在多くの大学では、社会人の学び直しを支援する社会人向け講座が開設されています。語学力アップや資格を取得したりなど、学習成果によって再就職支援を実施している教育機関もあります。大学や専門学校によっては年間数百もの講座を開設されていることも。
また、職業能力開発短期大学校や職業能力開発大学校は、全国24か所開校されています。学校教育法に定められる教育施設ではありませんが、さまざまな知識を身につけることが可能です。
職業訓練
公的職業訓練(ハロートレーニング)とは、働きたい人であれば誰でも利用できる職業訓練です。ハローワークで求職申込をしており、雇用保険を受給している方が対象の「公共職業訓練」と、ハローワークで求職申込をしている方を対象とする「求職者支援訓練」の2種類があり、原則無料で受講できます。
公共職業訓練ではものづくりや専門知識を習得でき、求職者支援訓練では社会人としての基礎知識や基本的なパソコンスキルを学べます。
民間の専門スクール
民間の教育機関などが開校するスクール・オンラインスクールではや経営や法律、語学、プログラミングスキルなど専門技術を習得できます。キャリアアップ・チェンジに有効的な講座が多いことが特徴です。カルチャースクール(カルチャーセンター・文化教室)や専修学校、専門学校などさまざまな場所で教育を受けられます。
利用したい!リカレント教育の支援サービスや給付金
リカレント教育を受ける際には、主に2つの支援サービスと、2つの給付金を受け取ることができます。では、順に解説していきましょう。
キャリアコンサルティング
在職中の方に向けて、キャリアコンサルティングを行うサービスがあります。キャリア支援のプロと話す中で、リカレント教育への疑問や不安点を無料で相談できます。ただ、キャリア形成サポートセンターでは職業紹介は行っていませんので注意してください。
自分の中で考えるだけでなく、対話することで自分自身のこだわりや価値観に気づけるというメリットがあり、「セカンドキャリアではどんな仕事がしたいのか」「今後どのようなスキルを身につけるべきか」が明確になり、キャリアビジョンの形成に役立ちます。
キャリア形成サポートセンターは全国に拠点を持っているため、対面での相談が可能です。WEB面談にも対応しているので、ご自身の希望に合わせて選択してください。また、平日だけでなく土曜日・日曜日の相談も可能。平日に時間が取れない方も安心です。
キャリアイベント・フェア
ミドルシニア向けのキャリアイベント・フェアが定期的に開催されています。キャリアイベント・フェアでは、キャリアアドバイザーと1対1で相談できるブースが設定されていることも。仕事の選び方などさまざまな悩みを解決してくれることが特徴です。
また、イベント参加企業・団体の担当者と話すこともできます。インターネット上ではわかりづらいミドルシニア向けの働き方や仕事内容、企業の魅力、採用情報などを直接聞くことが可能です。就職以外に、開業や副業の説明を行う団体もいます。
さらに、ライフプランやキャリアビジョン形成に役立つセミナーや著名人の講演の実施があることも。今後の生き方を考えるきっかけにもなるため、現在働く予定がない方も参加してみてもいいかもしれません。
教育訓練給付金
教育訓練給付金とは、厚生労働大臣の指定を受けた講座を修了した方に受講費用が支給される給付金のことです。年間で最大40万円を受け取ることができます。教育訓練給付金を受け取るには、受給要件を満たす必要があるため受給要件は以下サイトで確認しましょう。
対象講座は約14,000個。専門的な知識を学ぶ「専門実践教育訓練」、再就職やキャリア形成を早期に行うために受講する「特定一般教育訓練」、資格取得や大学院修了のための「一般教育訓練」が教育訓練給付金の対象です。
看護師や歯科衛生士、行政書士、土木施工管理技士をはじめ、TOEICや簿記、自動車免許なども含まれ、再就職やキャリアチェンジに役立つ講座が多くあります。お住まい地域のハローワークで手続きができますので、活用してみましょう。
参考:厚生労働省「教育訓練給付制度のご案内」
高等職業訓練促進給付金
高等職業訓練促進給付金は、資格取得を目指すひとり親の方の生活費を支援するために給付されます。看護師や保育士、介護福祉士、調理師、シスコシステムズ認定資格などさまざまな資格が対象です。
支給対象となるのは以下の条件にあてはまるひとり親の方です。
①児童扶養手当を受給している
②1と同じような所得水準である
③養成機関で6か月以上の訓練を行っている
④資格取得を目指している
支給対象の方は、訓練期間中は月額10万円、訓練修了後には5万円が支給されます。住民税課税世帯は月額75,000円、修了後は25,000円となります。高等職業訓練促進給付金に関する不明点や申し込みは、お住まいの都道府県や市区町村で相談できますよ。
参考:厚生労働省「高等職業訓練促進給付金のご案内」
まとめ
義務教育や大学などの学校教育期間終了後に、「働く」と「学ぶ」を繰り返すリカレント教育は、セカンドキャリア形成に役立つことがわかりました。働きながら新たな知識やスキルを身につけるのは簡単だとは言えません。
しかし、働き方が多様化する現代では、「将来どのように過ごしていきたいか」というセカンドキャリアを考えることが大切です。支援サービスや給付金も充実していますので、ぜひ今回お伝えしたことを活かして充実したセカンドキャリアを歩んでほしいと思います。