還付申告とは?対象者や手続き方法、確定申告との違いを解説
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- 公開日:2023年2月 1日
納め過ぎた所得税の還付を受けるための手続き、「還付申告」をご存じでしょうか?言葉は知っているけど、自分が対象なのか、どうやって手続きするのかがわからない方も多いはず。今回は、還付申告の意味や対象者、手続き方法と合わせて、確定申告・年末調整との違いも解説します。
還付申告とは
還付申告とは、予定納税や源泉徴収で所得税を納め過ぎた場合に、確定申告をすることで還付を受けられる制度のことです。還付申告をしないままでいると、損してしまう可能性があります。
では、確定申告や年末調整との違いは何なのでしょうか?順に解説していきます。
還付申告と確定申告の違い
還付申告と確定申告の違いは、手続きの目的です。還付申告は納め過ぎた税金の還付を目的に手続きを行います。対して確定申告は、申告義務のある人が納税額を申告する手続きのことです。
還付申告には確定申告書を使用するため、手続き自体は確定申告と同じです。しかし、還付と申告という手続きの目的が異なるということを理解しておきましょう。
還付申告と年末調整の違い
年末調整とは、会社が本人の代わりに計算した所得税の過不足を精算する手続きのことです。一方で還付申告は、申告に必要な計算や手続きを本人が行います。つまり、手続きは同じでも、手続きを行う人物が異なるということになります。
基本的に年末調整を受けている給与所得者は還付申告の必要がありませんが、ケースによっては還付申告をする方がいい場合があります。後ほど解説します。
還付申告の対象者
還付申告にはさまざまなパターンの対象者がいます。
予定納税をした個人事業主
予定納税対象者かつ確定申告未実施者で、税金を納め過ぎている個人事業主は還付申告が可能です。
そもそも予定納税とは、確定している前年度の所得額・税額などを基に計算した金額(予定納税基準額)が15万円以上である場合に、所得税・復興特別所得税の一部を事前に納付する制度のことです。
年2回にわけて行われ、予定納税基準額の3分の1の金額を納付する必要があります。では、税金の納め過ぎにはどのようなケースがあるのでしょうか。
たとえば、休業や廃業、業績の悪化などによって所得税額が予定納税で納めた税額より少なくなった場合です。この場合には確定申告の必要がなくなりますが、還付申告で納め過ぎた税額の還付を受けることができます。
医療費控除を受ける給与所得者
企業に勤める会社員(給与所得者)でも還付を受けられるケースがあります。1つ目に、医療費控除を受けている場合です。そもそも医療費控除とは、1年間で高額な医療費を支払った場合に、医療費の一部を所得から控除できる制度です。
10万円以上医療費を支払った際には、還付申告が可能であることが多いです。申告の際に領収書は必要ありませんが、医療費の計算をする必要があります。還付されるまでは領収書を保管することをおすすめします。
雑損控除を受ける給与所得者
2つ目に、雑損控除を受けている場合です。雑損控除とは、災害・盗難・横領によって資産の損害を受けた場合に受けられる所得控除のことです。
被害が大きく、1年間で必要分の還付を受けられなかった場合には、残りの金額を3年間繰り越すことが可能です。ただし、1年に1度還付申告が必要になりますので注意してください。
寄付金控除を受ける給与所得者
特定寄付と呼ばれる寄付を行った場合に受けることができる寄付金控除が適用されれば、還付申告が可能になります。
特定寄付とは、国や地方公共団体に対する寄附金、公益を目的とする事業を行う法人・団体への寄付金などです。ふるさと納税も寄付金控除に当てはまるため、対象となる方は多いのではないでしょうか。詳しくは以下のリンクからチェックしてください。
参考:一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除) 国税庁
住宅ローン控除を受ける給与所得者(初年度に限る)
住宅ローン控除を受ける初年度には、還付申告をすることができます。ただし、還付申告ができるのは初年度のみ。2年目以降は年末調整の対象となるため、注意してください。
住宅ローン控除とは、ローンを使用して住宅を購入した場合や、増築・改築・バリアフリー改修・省エネ改修工事を行った場合に所得税から控除できる制度のことをいいます。控除額の上限は4,000万円で、10年間ローン残高の1%の控除を受けることが可能です。
その他の対象者
退職や提出の遅れにより年末調整を受けなかった方や、年末調整後に成人した子どもの国民年金を払った方は還付申告をすることができます。また、年末調整後に結婚・親との同居をして配偶者控除や扶養控除を受ける場合も、還付申告の対象者となります。
年末調整を行わなかった方は確定申告も必須となりますので、覚えておきましょう。
還付申告の未対象者
還付申告には、2パターンの未対象者がいます。順にみていきましょう。
確定申告の義務者
個人事業主やフリーランス、公的年金受領者、株取引での利益受領者など、確定申告が義務付けられている場合は還付申告を行うことができません。なぜなら、確定申告で控除額が計算されるからです。
ただし、申請漏れや所得税額を多く申告・納付した場合などには、5年以内であれば還付を受けることができます。
還付申告の対象外の所得しかない方
あらかじめ収入から源泉徴収している場合は、納税が完了しているため還付はありません。たとえば、預貯金・一般公社債の利子、抵当証券の利息などが当てはまります。
還付申告の方法について
還付申告の必要書類や手続き方法、対象期間、還付金の振り込み時期を解説します。
還付申告の必要書類
還付申告の必要書類以下の通りです。
・確定申告書
・源泉徴収票
・控除証明書類
・本人確認書類
源泉徴収票は、還付申告で提出する必要はないものの、確定申告書を記入する際に必要となります。企業に勤めている場合は基本1月末ごろに発行され、業務委託などの場合は年明けごとに発行されます。ただし、業務委託などの場合には発行義務がないため、発行されない場合は依頼する必要があります。
控除証明書類は、還付申告に必要な書類です。控除証明書類には、源泉徴収票に記載のない保険料や寄付金額が記載されています。
還付申告の手続き
還付申告の基本的な流れを紹介します。
1. 確定申告書を用意する
※還付申告をするための確定申告書は、近くの税務署でもらうことができます。また、国税庁のホームページで書類をダウンロードできるほか、e-Tax(イータックス)のホームページ内でも書類を作成することが可能。手書きで作成した書類またはホームページ上で作成した書類の、どちらでも大丈夫です。
2. 還付申告の必要書類を準備する
3. 確定申告書に所得税を記載する
4. 確定申告書に所得控除額を記入する
5. 税額の計算を行う
6. 確定申告書に税額控除を記入する※必要であれば
7. 確定申告書に還付先を記入する
8. 提出する
なお、還付申告の提出方法は以下の3つです。
・郵送提出
・税務署窓口での提出
・e-Taxでの電子申告
ご自身が1番取り組みやすい方法で提出することをおすすめします。
還付申告の期間や期限
還付申告の期間は対象となる年の翌年から5年間です。5年を過ぎると還付を受けることはできません。還付申告を税務署で行う場合や、還付申告に関する相談をしたい場合には、税務署が込み合う確定申告期間(2/16~3/15)を避けるようにしましょう。
還付金が振り込まれる時期
還付金が振り込まれる時期は、提出方法によって異なります。税務署窓口での提出・郵送での提出の場合は1~2か月程度、e-Taxでの提出の場合は3週間程度で受け取ることができます。
ただし、確定申告期間に還付申告をした場合は多少遅れる場合もありますので、あくまで目安として考えましょう。
また、還付金の受け取り方法はゆうちょ銀行・郵便局での直接受け取り、口座への振り込みの2種類あります。口座は本人名義の口座のみ有効ですので注意が必要です。インターネット専用銀行の場合は振り込みができない場合があります。
還付申告をする際の注意点
確定申告で還付申告をする際の注意点について解説していきます。
還付金の受取り口座について
前章では、還付金の受取り口座は本人名義の口座のみが有効、とお伝えしました。ここでは、振込み口座についてもう少し詳しく解説していきます。
確定申告書に記載した氏名と口座の名義は同じである必要があります。たとえば、結婚などで苗字が変わった場合などは、口座の名義変更をしておく必要があるので覚えておいてください。
また、還付金の振込口座として指定できる金融機関は以下の通りです。
・銀行
・信用金庫
・信用組合
・労働金庫
・農業協同組合の預金口座
・漁業協同組合
ゆうちょ銀行の口座へ還付金の振り込みを希望する場合は、以下のことに注意してください。
・確定申告書に記載するのは、口座の5桁の記号と2~8桁の番号をつなげた「7~13桁の記号番号」のみ
・他の金融機関に振込むときのために使う「店番」と「口座番号」は記載しない
・記号と番号の間に表示される枝番(再発行番号)は記載しない
控除の申告を忘れずにおこなう
確定申告や年末調整の際には、以下のような控除の申告を忘れないようにしましょう。
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・扶養控除
・障害者控除
・寡婦控除
・寡夫控除
・社会保険控除
・生命保険控除
・医療費控除
・雑損控除
・寄附金控除
・住宅ローン控除
たとえば、年間で家族全員分の医療費が10万円以上だった場合は「医療費控除」に該当します。一定の寄附をした場合には「寄附金控除」、住宅ローンを組んで1年目の場合は「住宅ローン控除」など、ご自身が該当するものはないか確認しましょう。
目安の時期を過ぎても還付金が振り込まれない場合
先述したように還付金は、税務署の窓口で提出した場合や郵送の場合は1~2か月程度で振り込まれ、e-Taxで提出した場合は3週間程度で振り込まれます。
ただ、1度提出した申告書に間違いがあり再提出した場合は、還付金が振込まれる時期が遅くなる可能性があります。ちなみに、間違いを訂正して再提出することを「訂正申告」といいます。
また、還付金の金額が多いほど税務署の確認がより慎重になります。いわゆる「不正還付」がないかを、厳重にチェックしているというわけです。そのため、還付金の金額が多いという場合は、不正還付のチェックが厳しくなり振り込みが遅れている、ということも考えられます。
そうはいっても、余程のことがなければ振り込みが遅れることはないでしょう。申告書を提出してから2か月以上経過しても還付金が振り込まれないという場合は、確認するようにしてください。還付金の振り込みが遅れている際の確認方法は、以下の通りです。
▼税務署の窓口または郵送で提出した場合の確認方法
申告書を税務署の窓口で提出した、もしくは郵送で提出した場合は、管轄の税務署(提出した税務署)に電話で問い合わせましょう。
▼e-Taxで提出した場合の確認方法
e-Taxで提出した場合は、e-Tax上で状況の確認をすることができます。ただ、状況の確認は申告日から2週間後でなければできません。e-Tax上で確認した際に、還付金の振り込み処理が進んでいなかった場合には、管轄の税務署に電話で問い合わせましょう。
まとめ
今回は還付申告について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。還付申告をすれば、納め過ぎた所得税の還付を受けることができますが、1年に1度しか行わない不慣れな書類記入のため、戸惑ってしまう方も多いでしょう。
しかし、申告をしなければ損をしてしまうことになります。申告期間には余裕がありますので、今回紹介した方法で手続きをしてみましょう。