賢く活用しよう!再就職手当の受給条件や手続きまとめ【社労士監修】
- ちょっと得する知識
- 公開日:2019年5月15日
失業保険という制度は知っていても、「再就職手当」のことはよく知らないという人もいるのではないでしょうか。「再就職手当」は、雇用保険に加入しており、一定の条件を満たしていれば、受け取ることができる制度です。受給条件や手続きについてご紹介します。
知らないと損!?再就職手当
再就職手当とは、退職後、早期の再就職を促進するための制度です。再就職が早く決まるほど、支給される額も多くなります。いくらくらい支給されるのか、必要な書類や申請方法などをまとめました。
再就職手当とは?
退職前に雇用保険に加入していた場合、失業後は一定の期間で失業保険を受け取ることができます。しかし、人によっては「せっかく失業保険が支給されるのだから、満額を受け取らなくては」と考える場合もあり、結果として失業期間が長くなってしまうケースも。
このようなケースを防ぎ、早期再就職を促すために設けられたのが「再就職手当」です。この制度は、失業保険(基本手当)を受給している期間中に「安定した職業への就職」が決まった場合に支給されます。
受給するには、下記の8つの条件を満たしていることが必要となります。
- 1. 失業保険受給の手続き後、7日間の待期期間を満了後に、就職または自営業を開始したこと。
- 2. 失業手当(基本手当)の支給残日数が3分の1以上残っていること(就職日の前日まで)。
- 3. 就職した会社が、退職した会社とは関係ないこと(離職した会社と資本金・資金・人事・取引面で密接な関わりがないこと)。
- 4. 自己都合退職により3ヶ月の給付制限がある場合、1ヶ月目はハローワークもしくは人材紹介会社の紹介で就職を決めること
- 5. 再就職先は、1年を超えて勤務することが見込めること。
- 6. 雇用保険の被保険者となっていること。
- 7. 過去3年以内に再就職手当、または常用就職支度手当の支給を受けていないこと。
- 8. 受給資格決定の前から、採用が内定していた会社ではないこと。
受給できる金額について
気になる受給金額ですが、再就職する日までに残った日数をもとに、以下の計算式で算出します。
支給残日数 × 給付率 × 基本手当日額(上限あり※)
支給残日数とは
支給残日数=所定給付日数-就職前日までの支給日数
上記の計算式で算出します。
給付率とは
支給残日数が3分の2以上の人は70%、支給残日数3分の1以上の人は60%となります。
基本手当日額とは
基本手当日額には上限金額が設定されており、上限以上を受給することはできません。なお、59歳以下と60~64歳で金額が異なります。
具体的なシミュレーション
それでは、会社都合で退職した正社員(61歳)の場合で計算してみましょう。
所定給付日数:180日、支給残日数:150日、基本手当日額:4,941円。
「支給残日数 × 給付率 × 基本手当日額(上限あり※)」
150日×70%×4,941円=518,805円
上記の計算式によると、51万8,805円になります。
まとまった額になる再就職手当。非課税なため、確定申告の必要がないことも嬉しいポイントの一つです。
再就職手当をもらうまでの流れ
再就職手当を受給するためには手続きが必要です。手当をもらうまでの流れを説明していきます。
再就職が決まったら、まずはハローワークへ報告しましょう。その後、「受給資格者のしおり」に入っている「採用証明書」を再就職先に記入してもらいましょう。なくしてしまった場合でも、ハローワークで再度取得することも可能です。
そうして、就職日の前日にハローワークで最後の失業認定を受けましょう。必要書類は、採用証明書、失業認定申告書、雇用保険受給資格者証と印鑑です。こうして、「再就職手当支給申請書」が入手できます。
再就職後、就職先にて「再就職手当支給申請書」の事業主欄に記入してもらい、受給者本人が「再就職手当支給申請書」の申請者欄に記入します。
その用紙をハローワークに提出(郵送も可能)すると再就職手当の申請が完了です。
支給が決定されるのはいつ頃?
支給が決定されるのは、支給申請書を提出してから約1カ月後です。支給が決定されれば「就業促進手当支給決定通知書」が届きます。何かしらの理由で支給が不可となった場合は「不支給通知」が届きます。
繁忙期では通知書が届くまで、1ヶ月以上かかる場合もあるようなので、最短でも1ヶ月とみておいたほうがいいでしょう。
申請後、支給日は「就業促進手当支給決定通知書」という封書が届いてからおよそ1週間以内。失業手当で指定している口座に振込みとなります。
再就職手当の申請期限は、再就職した日の翌日から1カ月以内です。しかし、期間を過ぎてしまっても、再就職した日の翌日から2年を経過する日までであれば申請が可能です。
給付上の注意点
早期に再就職先が見つかれば、支給額も高くなる再就職手当。しかし、条件によっては受給できないこともあります。
再就職手当がもらえない場合
受給するためには、前項で解説した8つの条件を満たしていることが必要となります。まず、大前提となっているのは「雇用保険」に加入していること。
正社員であっても、手続の不備などによって雇用保険未加入である場合もあるので、事前に確認しておきたいところです。
反対に、アルバイトやパート・派遣社員・契約社員という雇用形態で働いていた場合は、もらえないのではと考える人もいるかもしれませんが、雇用保険に加入していれば支給されます。給与明細等で雇用保険料が支払われているか確認するとよいでしょう。
再就職手当がもらえないケースで多いのは?
再就職手当がもらえないケースでもっとも多いのは「支給残日数の不足」です。
再就職手当の支給条件は「所定給付日数の3分の1以上」ですが、自己都合で退職した場合は所定給付日数は90日~150日。
90日の場合だと、再就職が決定したときに所定給付日数が3分の1残っていても、支払残日数が30日になるため、支給条件には満たないのです。
1日でも支払残日数が足りていないと、条件を満たしていないので支給はされません。そのため、再就職先で記入してもらう書類の入社日に間違いはないか(条件を満たしているかどうか)確認をしておくと安心ですね。
その他の支給されないケース
また、雇用形態や期間が支給条件を満たしていない場合も支給されません。例えば、派遣社員で更新の予定のない1年以下の有期雇用契約では、再就職手当をもらうことはできません。
ただし、更新の予定があれば支給の対象となるため、再就職先への確認が必要となります。
再就職手当の金額はまとまったものになるため、ぜひ受給したいと多くの人は考えるでしょう。しかし、支払残日数が足りないからと再就職日の虚偽報告をすることは、不正受給となります。絶対にやめましょう。
失業保険の待機期間中に内定した場合はもらえる?
これまでは、失業保険をもらっている人を対象に説明してきましたが、中には失業保険の待機期間中に再就職先が内定した人もいるかもしれません。その場合は支給されるのでしょうか。
待機中に内定した場合でも、「採用日」が最初の7日間を過ぎていれば、再就職手当をもらえる可能性が高くなります。ここで言う採用日とは、内定した日ではなく、再就職先に初めて出勤した日のことを指します。
再就職手当は、個人事業主になった場合も受給できる?
退職後、個人事業主(フリーランス)となった場合でも、再就職手当を受給することができます。ただし、待機期間後から1ヶ月ほどの間はハローワーク仲介による再就職先以外で再就職(起業)しても再就職手当を受け取ることができません。
再就職とみなされるのは、個人事業主の開業届を税務署に提出した日からとなります。
まとめ:再就職先での書類の申請はお早めに!
退職した人の早期の再就職を促す再雇用手当。でも、受給にはさまざまな条件を満たしている必要もあり、申請するためには再就職先に書類への記入をしてもらわなければなりません。
申請期限も入社から1ヶ月以内と早いため、再就職後はできるだけ早く動くことが必要となります。再就職先での仕事や環境に慣れるまで大変かもしれませんが、まとまった額になるだけに、忘れずに申請したいものですね。
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