個人事業主は要チェック!インボイス負担軽減措置延長で3割特例に変更へ
- 独立・起業
- 公開日:2026年3月17日
インボイス制度が始まった際に、免税事業者から課税事業者になった小規模事業者への経過措置として「2割特例」の制度が導入されています。期間の終了が見えてきましたが、しばらくは「3割特例」として延長が決定されました。今回はインボイス制度の基本から、3割特例への変更内容などを解説します。インボイス制度に登録している、登録をまだ迷っている個人事業主の人は、ぜひご一読ください。
インボイス制度とは
インボイス制度とは2023年10月1日に施行された、消費税納税に関する制度のことです。インボイスとは「適格請求書」のことを指し、インボイス制度は取引があった際に「適格請求書を発行する」制度となります。
仕入額税額控除を受けるためには、適格請求書に登録番号・適用税率・消費税額の3つを記載する必要があります。
対象者
インボイス制度は、個人事業主も対象に含まれています。しかし、個人事業主の場合は全員が対象となるわけではなく、課税事業者に該当していない人は利用しなくても問題ありません。免税事業者でインボイスを利用したい人は、適格請求書に関する届出を行う必要があります。
免税事業者と課税事業者の違い
インボイスでよく出てくる、免税事業者と課税事業者の違いは以下の通りです。
| 区分 | 免税事業者 | 課税事業者 |
|---|---|---|
| 消費税の納税義務 | なし | あり |
| 年間課税売り上げ | 1,000万円以下 | 前々年の課税売上高が1,000万円超 |
| 簡易課税制度の適用 | 不可 | 可能 |
課税事業者になるかどうかは、前々年の課税売上高によって分かれます。免税事業者の場合は、消費税の納税義務はありません。しかし、インボイスに登録してインボイス発行事業者になると、消費税の支払いが発生するようになります。
インボイスの2割の特例
インボイス制度が始まってから、特例措置が用意されています。免税事業者からインボイス発行事業者になった場合は、2割の特例制度が利用できるというものです。
売り上げに係る消費税額から、売り上げ税額の8割を差し引いて納税額を計算できます。一般課税・簡易課税の従来の計算方式と、2割の特例のどちらかかの選択が可能です。
期間
2割の特例制度が適用できる期間は、インボイス制度が始まった2023年10月1日から2026年9月30日までと決まっています。もし、2023年から利用していれば、4回分2割の特例を利用した納税が行えるようになっています。
利用方法
2割の特例制度を利用するために、別途申請書類を提出する必要などはありません。確定申告が行われる、毎年2月16日〜3月15日の時期に確定申告とは別で、消費税の申告を行いますが、その時に2割の特例を使用して申告するだけです。
また、2割の特例を使用したら、翌年も必ず使用しなければならないなどの縛りもなく、事業者の都合に応じて自由に選択ができます。ただし、免税事業者からインボイス発行事業者となっても、以下の条件に該当する際は利用できません。
• 消費税課税期間特例選択届出書の提出によって、課税期間を一月または三月に短縮している課税期間
• 2023年10月1日より前から、消費税課税期間特例選択届出書の提出によって、引き続き課税事業者となる同日を含む課税期間
利用できるかどうかは、消費税課税期間特例選択届出書を提出しているかどうかが、判断基準になります。
設定された背景
2割の特例制度が設定された背景には、インボイス発行事業者となった人の負担を軽減する点や、登録しやすい状況を作ることが考えられます。
免税事業者としてこれまで消費税の納税をしていなかった人が、いきなりインボイス発行事業者として登録したことで、数万円〜数十万円の納税義務が発生すると、生活に影響が出たり払えなくなったりする人が出てきます。
また、インボイスに登録するといきなり納税額が跳ね上がるという、マイナス面が協調されてしまい、登録しない人が増えては意味がありません。少しでも登録のハードルを下げるためにも、暫定的ではありますが特例を設けたと考えられます。
インボイス制度が3割の特例に延長
2026年9月30日で終了する、インボイスの「2割特例」ですが、「3割特例」へと変更されたうえで、延長されることが決定しました。内容を一部変更して延長が決まった点は、個人事業主にとって大きな知らせとなります。
変更内容
内容を変更して延長が決まった「3割特例」ですが、主に以下のような点が変わっています。
• 負担割合が2割から3割
• 2年間の延長
つまり、2026年1月1日〜9月30日分は2割の特例、2026年10月1日〜12月31日分は3割の特例を使って申告や納税が可能です。延長期間は2年のため、2028年9月30日までは3割特例で消費税の申告や納税を行えます。
対象者
3割の特例制度は対象者が変更となっています。現在利用できる2割の特例は、法人も対象者として含まれていましたが、今回決まった3割負担では対象外となっています。
個人事業主の人は、引き続き3割特例を利用できますが、法人の場合は2割特例が終了したらそのまま算出された金額の全額を納税する必要があります。個人事業主には影響がありませんが、今後法人化を検討している場合などは、特例の対象から外れる可能性がある点を知っておいてください。
その他にも変更された点がある
今回、インボイスに関する変更では買い手側に関する内容も変化がありました。インボイス制度が始まってから、免税事業者からの仕入税額控除ができなくなると、一方的に免税事業者へ値引きや取引の中止をする買い手が出ると予想され、対策としての経過措置が設けられています。
現在の措置についてと、改正後の内容は以下の通りです。
現在の措置
• 2026年9月30日まで:8割控除
• 2029年9月30日まで:5割控除
• 2029年10月1日以降:控除なし
改正後
• 2026年9月30日まで:8割控除
• 2028年9月30日まで:7割控除
• 2029年9月30日まで:5割控除
• 2031年9月30日まで:3割控除
• 2031年10月1日以降:控除なし
控除に関する終了期間が、2年後ろ倒しになることが決定しました。
簡易課税制度の利用も検討する
延長が決定しましたが、個人事業主向けの特例制度はいつか終了すると考えられています。特例が終了した時に少しでも税額負担を抑えたいなら、簡易課税制度の利用を検討してください。
簡易課税制度とは、中小企業の納税事務負担を考慮して、売り上げに係る消費税額を基礎として、仕入れに係る消費税額を算出できる制度です。利用するには、所轄の税務署に「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出します。
なお、対象者は前々年の課税売上高が5,000万円以下の場合です。簡易課税制度を適用する時の事業区分と、みなし仕入れ率は以下の通りです。
| 事業区分 | みなし仕入れ率 |
|---|---|
| 第1種事業(卸売業) | 90% |
| 第2種事業(小売業・農業・林業・漁業) | 80% |
| 第3種事業(製造業・建設業) | 70% |
| 第4種事業(飲食業・その他事業) | 60% |
| 第5種事業(サービス業) | 50% |
| 第6種事業(不動産業) | 40% |
割合は業種によって異なりますが、条件に該当している場合は引き続き控除を利用できます。なお、簡易課税制度は2割特例や3割特例の、どちらかを選択して利用できます。
今のうちから制度利用の申請をしておき、簡易課税制度と特例の得になる方を選んで申請できるので、早いうちから検討しておいて損はありません。
個人事業主がインボイス制度に登録するメリット
改めて、個人事業主がインボイスに登録するメリットを紹介します。インボイス登録や、インボイスをやめるか悩んでいる人は、ぜひご確認ください。
取引の機会が増える
個人事業主がインボイスに登録するメリットは、取引の機会が増えることです。インボイス制度が開始されてから、新たに取引を行う際の判断材料として、適格事業者として登録しているかという点が、多くの企業で追加されています。
もし、個人事業主側が登録をしていないと、企業側は追加の税負担や事務対応を行う必要があるためです。インボイス登録をしていれば、していない人よりも新しい仕事の機会は増えるでしょう。
既存の取引先との関係が維持しやすい
インボイスへの登録は新規の取引先だけではなく、既存の取引先との関係にも影響します。もし、登録をしていないと取引先へ追加の税負担や事務対応を求める必要があり、場合によっては契約内容の見直しなどが行われるきっかけになる可能性も。
しかし、登録していれば、今まで通りに良好な関係を続けやすくなります。法人や課税事業者がメインの取引相手の場合は、インボイスへ登録しておいた方が今後も取引を続けられるでしょう。
電子化による業務効率化
インボイス制度ではデータによる、電子インボイスの送付・保管が認められています。日本国内で様式が統一されているため、異なるシステム間で送付をしても、自動算出がしやすくなり、管理や保管がしやすくなるのがメリットです。
請求書を紙へ印刷・郵送する手間もなくなるので、結果として業務効率化にもつながります。
個人事業主がインボイス制度に登録するデメリット
個人事業主がインボイスに登録すると、デメリットも存在します。以下では、主なデメリットを3つ紹介します。
支払いが増える
これまで、課税売上高が1,000万円以下の場合は、免税事業者として消費税の支払いは不要でした。しかし、インボイス登録を行うと課税売上高の金額に関係なく、消費税の支払いが必要となります。
インボイスの登録によって仕事を受けやすくなっても、税負担は増えるので支払額がマイナスと感じる人も多いでしょう。2割や3割の特例はあっても、支払額自体は増える点は、デメリットといえます。
新たな知識が必要になる
これまでは所得税や住民税などの知識が必要でしたが、さらに消費税に関する知識も必要です。届出書の種類・管理方法・請求書の取り扱い方などが、これまでと変わる人が増えています。
また、確定申告だけでも手間がかかっている場合、消費税の申告は通常業務に影響するほどの手間となる可能性があります。税理士への記帳や申告の依頼をする場合、ネックなのは自分に合った税理士探しにかかる費用や時間です。新たな手間や時間がかかる点は、インボイス登録のデメリットとなります。
費用がかかる
インボイス制度の登録によって、インボイスに対応した会計システムなどを新たに導入する必要が出てきます。システム導入によって、事務的な手間は解消されますが、選定するための費用や時間などが増えるのはデメリットです。
費用は経費として計上できますが、出費となること自体に変わりはなく、躊躇する人も多いでしょう。業務に関する直接的な部分とは別に、慎重な判断を求められる機会が増えるのはデメリットとなります。
まとめ
インボイス制度や3割特例への変更について紹介しました。2023年10月から始まったインボイス制度では、免税事業者からインボイス発行事業者となった人に向けて、「2割特例」を設けていました。
2026年9月30日で終了予定でしたが、2026年10月1日以降は、個人事業主のみを対象に「3割特例」が2028年9月30日まで延長される予定です。
インボイス制度は消費税の支払い負担が発生しますが、取引先との良好な関係を続けるためには大事な制度です。まだインボイス登録をしていない人や、登録をやめるか悩んでいる人は、今回の記事を参考にぜひ今後の方針を検討してみてください。