第3号被保険者が45万人減少──"扶養"のあり方とこれからの働き方
- 働き方を選ぶ
- 公開日:2026年2月 6日
2024年、厚生年金の加入者が大幅に増える一方、第3号被保険者は45万人減少しました。背景には、社会保険の適用拡大や共働き世帯の増加といった社会変化があります。“年収の壁”や不公平感など課題が指摘される中、扶養から外れることで税負担の変化や年金額の増加など生活に影響も生じます。国民年金制度が転換点を迎えるなか、自分に合った働き方を見直す重要性が高まっています。
国民年金と「第3号被保険者」の基本
国民年金が日本国内に居住する20歳以上60歳未満の人が加入する公的年金。
この国民年金の保険料を40年間継続して支払うことで、年額約82万円を受け取ることができます。加入者の種類は、以下の3つに分かれています。
自営業者や大学生などの学生である「第1号被保険者」、会社員や公務員が該当する「第2号被保険者」第2号被保険者に扶養されている配偶者の方を指し、原則年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の方が該当し、いわゆる専業主婦や主夫が多く含まれているのが「第3号被保険者」です。
「第3号被保険者」の保険料は第2号被保険者全体で負担するため、自身で国民年金保険料を納付することなく、将来基礎年金を受給する権利を得られる仕組みとなっています。
「第3号被保険者」の対象となる人とは?
第3号被保険者の要件は、下記の通りです。
・厚生年金保険の被保険者(第2号被保険者)に扶養されている配偶者であること
・年齢が20歳以上60歳未満であること
・収入が一定以下(年間130万円未満)であること
一般的に専業主婦(主夫)の方が加入する制度で、第1号被保険者である自営業者の配偶者は第3号被保険者ではありません。あくまで、第3号被保険者になるには第2号被保険者の配偶者であることが要件です。
データ元:日本年金機構「た行 第3号被保険者」
第3号被保険者は、45万人減少
2024年において、公的年金の加入者数は約6,760万人となっており、前年度より12万人ほど増えました。また、厚生年金の加入者数はおよそ4,750万人となり、これは76万人も増え過去最多を記録しました。
そして、第3号被保険者と言われる、いわゆる扶養されている配偶者の数は約640万人ととなり、前年度と比べると45万人も減りました。
ここからわかることは、厚生年金の加入者が増える一方で、扶養される人は大きく減っているということです。厚生年金の加入者が76万人増えていることからも、扶養を外れて働く人が大幅に増えたことが窺えるでしょう。
第3号被保険者が減少した要因とは?
第3被保険者が大幅に減少した背景には、2024年10月からスタートした「社会保険の適用拡大」が起因となっているとされています。
ひと昔前には専業主婦の方が多い家庭が多かったのに対し、時代と共に「共働き世帯」が増加しました。そして、1990年代にはその比率は逆転したといいます。2023年には共働き世帯が約1,300万世帯に対して、専業主婦世帯は約500万世帯まで減少したのです。
「第3号被保険者」は以前から廃止論が上がっていますが、その動きが加速したのがまさに近年実施された「社会保険の適用拡大」です。従業員51人以上の企業で働くパートやアルバイトも、条件を満たせば厚生年金に加入することとなり、「第3被保険者」の立場も大きく変化することになりました。
実際、この時には短時間労働者が厚生年金に加入する事業所の数も前年度から約1.6倍に増加したといいますから、扶養の範囲内で働いていた人たちが多く厚生年金へと移行したことがわかります。
同時に、「週20時間働けば、社会保険に加入すること」が義務付けられるようになり、企業規模の要件も2035年までに10年間をかけて段階的に人数が引き下げられていく予定となりました。
2035年10月には「従業員数10人以下の企業」で週20時間働くのであれば、全員が社会保険に加入することが求められるため、企業規模の違いは事実上撤廃に。また、月収8.8万円以上、つまり「106万円の壁」は2026年10月に撤廃される方向となりました。
そして、原則として年収130万円を超えると、配偶者の扶養を外れるため、勤務条件にかかわらず社会保険への加入が必要です。扶養から外れると、何らかの保険・年金に加入しなければいけなくなります。これを「130万円の壁」と言います。
「106万円の壁」は撤廃される一方で「130万円の壁」は残りますが、「130万円の壁」も2026年4月からは緩和される見込みです。ただし、労働契約で定められた収入を基準に扶養認定されるため、一時的な残業によって収入が増えても、契約上の年収が130万未満であれば扶養が外れることはありません。
データ元:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」、独立行政法人 労働政策研究・研修機構「専業主婦世帯と共働き世帯 1980〜2024年」
「第3被保険者」の見直しに日本の社会情勢の変化がある
専業主婦世帯を念頭に考えられた「第3号被保険者」。社会保険適用拡大の背景には、日本社会の変容があります。
不公平感がある
第3号被保険者の保険料は第2号被保険者の負担となるため、保険料を納付していない期間も納付済期間とみなされることになり、原則65歳から年金を受給できます。
つまり、20歳から60歳まで40年間第3号被保険者だった人は、自己負担なく月68,000円ほどの年金を受け取れることになるのです。共働きの世帯や第3号被保険者がいない単身者などからは以前から不満の声が上がっていたのです。
「年収の壁」で人手不足に陥る
現在、人手不足が深刻化する中で、第3号被保険者は「年収130万円未満」の配偶者が対象です。そのため、要件を満たすためにパートやアルバイトで働いても敢えて「130万円の壁」を超えないように仕事をする方がほとんどです。
しかし、これでは人手不足の解消に繋がらないことからも、第3号被保険者への見直しによって人手不足を軽減しようという動きが加速したのです。
女性の社会進出を阻害していた
第3号被保険者制度は、昭和61年4月に開始されました。そのため、根本的に専業主婦(主夫)を前提とした制度は令和の時代に合っていません。また、第3被保険者があることによって女性の社会進出が進まないといった声も聞かれています。
扶養から外れると、何が起こるのか
45万人も減少したと言われる、「第3号被保険者」。扶養から外れることで、起こり得ることとはどのようなことでしょうか。
扶養者の税金負担が発生する
扶養者は、勤め先で年末調整をするときに「配偶者を扶養している」ため、配偶者控除によって所得税や住民税が軽くなっています。しかし、配偶者が扶養を外れた場合には配偶者控除が受けられないため、税金負担が重くなることが考えられます。
人手不足解消の糸口になる
「106万円の壁」がなくなることで、人手不足の解消に繋がるだろうとの期待する声も寄せられています。専業主婦たちが働き出したり、これまで働き控えをしていたパートやアルバイトの方がより積極的に就労したりすることで、労働力不足の緩和に繋がるだろうと見られているのです。
年金額を増やせる
被用者年金に加入し、第2号被保険者となった場合は、元々第3号被保険者だった方の年金が2階建てとなります。受け取れる年金額が増えたり、傷病手当金や出産手当金が受け取れたりできるようになります。
「年収130万円の壁」とは別に、第3被保険者から外れる場合とは?
「年収130万円の壁」を超えると第3号被保険者から外れることは、これまでにも述べてきました。では、この「年収130万円の壁」以外に第3被保険者の対象から外れる場合にはどのような時が考えられるのでしょうか。
第2号被保険者である配偶者が厚生年金等の加入者でなくなった場合
第2号被保険者だった配偶者が亡くなった場合、それまで第3号被保険者だった専業主婦(主夫)の方は、第1号被保険者に変わります。
第2号被保険者だった配偶者が会社を退職した場合
第3号被保険者だった専業主婦(主夫)の方は、第1号被保険者に変わります。
第2号被保険者である配偶者が65歳に到達(誕生日の前日)した場合
第2号被保険者である配偶者が65歳に達した時点で、第3号被保険者だった専業主婦(主夫)の方は、第1号被保険者に変わります。
配偶者と離婚した場合
第3号被保険者だった方が離婚し、正社員として就職した場合には、厚生年金に加入することとなり、勤務先ではご自身が第2号被保険者になります。なお、無職またはパートやアルバイトなどで働く場合は、第1号被保険者となります。
住民票を海外に移した場合
第3号被保険者の条件には、「主に日本国内に居住していること」があります。そのため、配偶者と共に海外に転居し、住民票を海外に移した場合、第3号被保険者の資格を喪失します。海外在住中に年金を積み立てたい場合は、任意加入被保険者として国民年金に加入し、保険料を納める必要があります。
第1号被保険者に変わった後は、60歳になるまで毎月国民年金保険料の納付義務があることに注意しておいてください。
まとめ
将来、廃止される可能性もある「第3号被保険者」。国民年金制度は、時代に合わせてどのように変化していくのか注目が集まっています。今後も政府の動向を見ながら、ご自分に合った働き方を模索していきましょう。