最新!転職動向調査から、50代の転職事情を解説
- 転職・退職ノウハウ
- 公開日:2024年11月22日
転職動向調査2024年版などのデータを基に、最新の50代の転職事情について解説します。同世代の転職事情を踏まえて、ご自身のキャリアを見つめてみましょう。
50代の転職活動事情とは?
総務省統計局の「労働力調査(詳細集計)」によると、2023年の"転職者"は男性151万人(12 万人増)、女性177万人(14万人増)。また、"転職等希望者"は男性 511万人(14万人増)、女性496万人(25万人増)とのことです。前年に比べて34万人増という結果から鑑みても、日本での転職を希望する労働者が増えた年となりました。
さらに、転職者を年齢階級別にみると、「25~34歳」が74万人と最も多く、次いで「35~44歳」が55万人、「45~54歳」が52万人となっています。このことからも、ミドルシニア層、そして50代の転職活動の活発化を窺い知ることができるでしょう。
日本では、終身雇用はもう一般的ではなくなりました。そして定年制度は終わりを迎え、50代は引退前の年代ではなく、企業にとっての即戦力や人手不足を解消する大切な要員となっているのです。そうして、50代を迎えたミドルシニア層を積極的に採用したいと考える企業も年々増えている傾向にあります。
50代の転職理由とは?
マイナビ「転職動向調査2024年版(2023年実績)」によれば、転職活動を始めた理由として最も多かったのは【給与が低かった】となりました。この値は前年度と比較しても同程度となっています。その後に僅差で【職場の人間関係が悪かった】が続きました。
【会社の将来性、安定性に不安があった】は前年から上昇し、2020年以降で最も高い水準となったことからも、各企業の景気の悪化や社会情勢の不安定さを鑑みることができそうです。
さらに、50代の女性で言えば、【職場の人間関係が悪かった】が全体と比べて10pt以上高かったのを考慮すると、職場の人間関係で悩んでいる方が他の年代と比較しても多いことがわかりました。
男性と比べると女性の人間関係はより複雑な面があると言わざるを得ません。子育て・出産、介護といった家庭の問題等、キャリアを積んでいくためには考えなければならないことが山積していることも理由の一つです。
▼データ元
・マイナビ「転職動向調査2024年版(2023年実績)」
・総務省統計局「労働力調査(詳細集計)」
転職活動をする際の相談相手は?
では、転職活動をする方にとって転職活動をする際の相談相手にはどなたが選ばれているのでしょうか。
調査によると、転職活動をする際の相談相手には【家族(配偶者・子ども)】がトップとなりました。さらに、【両親・親族】が続き、【転職エージェント・人材紹介会社】など専門家の力を借りる人も多数を占めました。
また、この相談相手を選んで【参考になった】、【ある程度参考になった】という方も前年と同水準を保っているのを鑑みると、転職活動を成功させるためには、相談相手の存在の大きさも見えてきます。
他にも、転職サービスの中では「転職エージェント・人材紹介会社」が「参考になった」とおよそ7割弱の方が回答をしたところを見ると、転職エージェントや人材紹介会社への転職求人者の信頼度の高さも窺える結果となりました。
転職エージェントでは登録することによって非公開求人を紹介してもらうことができます。そのため、転職求職者にとって自分に見合う求人をスピーディーに見つけやすいことからも、転職エージェントを参考にしたり、相談相手に選んだりする人が多いというわけです。
さらに、転職エージェントを活用することで、興味がある業界の動向や企業についての詳細な情報を得ることもできるため、それらを基に自分の経験やスキル、希望条件などを加味した、適切なアドバイスをもらうこともできます。
50代の転職希望者の場合は、キャリアを重ね、豊富な経験を持っていることが多いため、これまでの自身の情報を整理することが大切になります。その点、転職エージェントを活用すれば、他人の客観的な視点を得ながらご自身のキャリアを見つめ直すことができるため、転職活動を有利に運べるのです。
また、最近では転職の説明会や転職フェアなどのイベントを通し、企業の窓口となる人事担当者に相談できる機会も増えてきました。こういったイベントでは多くの企業がまとまって出展していることから、一度に多くの求人をチェックできるメリットもあります。
転職活動の方法や利用したサービスとは?
転職活動にあたり、情報収集はどのように行ったかの回答には【転職サイト】が半数以上の割合を占めてトップとなり、次いで「人材紹介会社」、「職業安定所」となりました。性別に見てみると【転職サイト】の利用率は女性の方が高いことが窺えました。
転職サイトの情報は、運営会社の担当によって集められた情報であり、掲載サイトによっては職場の雰囲気がオフィスの写真やメンバー紹介などから知ることができるため、効率よく転職活動をすることができます。求人情報以外にも、業界のトレンドや動向、転職活動成功者の事例などが掲載されていることも多いため、耳寄り情報を得るのに適しています。
また、転職情報サイトを利用するメリットは、自分のペースで行える点にもあります。例えば、在職中でも介護といった家庭のことをしながらでも、スマートフォンやパソコンを使えば気軽に転職情報を得ることができます。さらに、サイト上では職種や業種、勤務地などの条件を絞り込んで検索できるため、自分が希望する企業を簡単に見つけやすいこともポイントです。
企業が転職サイトに求人を掲載する際には、掲載料が発生している場合が多くあります。そのため、企業側もミスマッチを防ごうと、様々な細やかな情報を掲載してくれます。つまり、採用に積極的な企業が集まっているという訳です。
こうして集められた情報を見るだけでも、企業の特徴やどのような人が働いているかを効率よく知ることができるでしょう。このように、自分のペースで最適な転職活動をするために50代でも転職サイトを利用する人が多いのです。
〈年収・業種・職種・労働時間〉50代での転職前後での変化とは?
転職する前と後でのそれぞれの変化をみていきましょう。
年収の変化
50代では、「年収は変わらない」がもっとも多く32.7%となっており、次いで「年収は上がった」が32.2%となりました。また、「年収は下がった」は26.9%と、「年収は上がった」の値を下回るものの、「答えたくない」8.2%を考慮すると「年収は下がった」割合は高い可能性があるといいます。
転職前の年収でもっとも多いのは「300~349万円」です。また、転職後の年収でもっとも多いのは「250~299万円」と、転職後に年収が減少していることがわかります。調査による年収の平均額をみると、転職前は「533.9万円」、転職後は「526.4万円」と7.5万円の差がありました。
すべての年代のうち50代が唯一、転職後の平均額が転職前よりも少なくなっていることから、50代の転職では必ずしも年収は上がる訳ではないと言えるでしょう。しかし、50代の転職では決して「働くこと=お金」という構図が当てはまらないこともあります。
ミドルシニアになり、転職を考える方にとっては自分の生き方を見つめ直したり、セカンドキャリアをこれまでの道ではなく別の方向に定める方もいたりするため、年収が下がったからといって一概に「希望ではない転職だった」ということはできないのです。
業種の変化
50代は「業種を変えた」が39.8%、「業種を変えなかった」が60.2%と業種を変えなかった人の方が多い結果に。50代の転職者は業種を変えずに転職をしている人が、各年代よりも多い傾向にあることがわかりました。これまでに積み重ねてきたキャリアを活かし、他の会社でキャリアアップや働き方を変化させている方が多い結果だと言えそうです。
また、転職前後の業種分布についてみていくと、転職前・転職後ともに、もっとも多かったのは「医療・福祉・介護」の分野でした。さらに、転職後の増加が大きかったのは「医療・福祉・介護」「金融・保険」となりました。
高齢化した日本の経済や世相に合わせてこういった分野の求人数が増えていることが要因の一つでしょう。一方で、転職後の減少が大きかったのは「IT・通信・インターネット」といった若年層に人気の業種でした。
職種の変化
50代は「職種を変えた」が26.9%、「職種を変えなかった」が73.1%となりました。全体と比較すると、50代は「職種を変えなかった」が10pt近く高いことからも、転職で職種を変えずに働くことを希望した方が多い結果となりました。
転職後の増加が大きかったのは「管理・事務」で、転職後の減少が大きかったのは「販売・フード・アミューズメント」となり、体力や生活スタイルの変化が大きくなる50代での転職は健康や生き方を見つめ直し、自分の働きやすい職種での転職活動をする方が目立ったと言えそうです。
労働時間の変化
50代転職者の労働時間の変化については、「変わらない」がもっとも多く、40.9%となりました。「1日あたりの労働時間が減った」という値は約10pt低い値となっており、50代は転職後も労働時間は変わらない、または増えたという人が多い傾向にあるようです。
50代で転職活動を成功させるポイントとは?
これまで、調査に基づいて50代の転職事情についてまとめてきました。
では、50代の転職活動を成功させるためにはどのようなポイントを意識しておけばいいのでしょうか。
Will-Can-Mustを考える
転職活動を成功させるためにはご自身の「Will-Can-Must」を整理させておく必要があります。「Will-Can-Must」とは仕事において「したいこと=Will」「できること=Can」「すべきこと=Must」をキャリアについてそれぞれ考えるフレームワークのことです。
自分が本当にやりたい仕事や働き方を軸に、どのような強みやスキルを活かせるのか、そして目標達成のために必要なことは何なのかを考えることで、転職活動を成功させるポイントを抑えることができるでしょう。
年収だけを考えない
50代はこれまでの経験や多くのスキルがあるため、転職活動でも年収に反映したいと考える人は少なくないでしょう。しかしながら、転職活動で年収にこだわりすぎると内定を獲得するチャンスを減らしてしまいます。
転職活動では、自分がやりたいと思える仕事なのか、生活スタイルに合っているかといった点を大切にすることで、内定を得られるチャンスを増やすことができます。
見切り発車な転職活動はしない
50代の転職では、計画性を持つことが大切になります。50代の転職活動は若い年代よりも時間がかかる傾向にあるため、内定が決まっていないのに退職をして転職活動をすると焦りから満足のいく内定を得られない場合も考えられます。
そこで、退職届を提出するのは転職活動がある程度軌道に乗ってからにしましょう。転職を始めた段階ですぐに転職スカウトや転職サービスに登録しておくのも◎。職務経歴書などを登録しておくとオファーやご自身にあった職種を紹介してもらえるため、必要な情報だけを選別することができるでしょう。
このように、余裕を持った転職活動をすることで、ご自身の目標とする内定獲得の確率を上げることができるでしょう。
未経験の分野に積極的にチャレンジする
50代の転職を成功させるためには未経験分野にも挑戦することも重要です。過去の経験にこだわりすぎると、応募できる職種の数が減ってしまう恐れがあります。
人手不足の業界では過去の経験より、人柄を評価する企業も増えています。例えば、運送業界は人材不足の会社が多いため、50代の未経験者でも積極的に採用している会社が少なくありません。未経験だからと尻込みせずに積極的にチャレンジする姿勢が大切になるでしょう。
正社員以外でも検討してみる
転職活動がうまくいかない時には正社員だけではなく、非正規社員への転職も視野に入れることをおすすめします。これまでの日本の風潮から、パートや派遣社員は働き方が不安定だと思われている方も少なくありません。
しかし、最近では派遣元企業と無期雇用契約を締結することで終身雇用を保証してもらえる場合もあります。流動的で様々な働き方があることを知っておけば、スムーズな内定獲得に繋がりやすくなります。
まとめ
人生100年時代の折り返し地点ともいえる50代。老後のことも見据え、お金を得ることだけではなく、仕事を通じた生きがいを見つけたいと思う人も増える年代でしょう。転職求職者が増えている結果からも、50歳になったタイミングでこれからのキャリアのことや人生について、改めて考え直す方が多いのかもしれませんね。