年金をもらいながら働く!注意点や限度額の計算方法

  • ライフプラン・人生設計

人生100年時代では定年期間の延長など、過去と比べて働く期間が長くなっています。定年を迎えた後、年金をもらいながら働きたいと考えている方も多くいるのではないでしょうか。今回は年金を受け取りながら働く場合の注意点について解説します。老後の生活について備えておきたい、年金をもらいながら働きたいと考えている方は、最後までお読みください。

そもそも年金をもらいながら働ける?

かつては定年退職後に年金を受給しながら働き続けることは、一般的ではありませんでした。しかし、平均寿命の延伸やライフスタイルの変化により、近年では定年退職後も働き続ける人が増えています。定年退職後も働き続ける理由は、大きく分けて『自己充実を図るため』『経済的な理由』の2つです。

自己充実を図るために働き続ける人は、元気なうちは働きたい、働くことが楽しいという理由があげられます。また、経済的な理由で働き続ける人は、より豊かに暮らすために収入を増やしたい、年金受給額が十分ではない、貯蓄に余裕がなく今後の資金計画に不安があるといった事情があります。

実際に定年後も働き続ける場合には、注意点があります。それは、一定以上の収入があると年金額が制限されるということです。年金の受給額は年金加入期間や年齢、収入などによって決まります。定年後も働き続けることで収入が増えると、年金額が減る可能性があるということを認識しておきましょう。

働き続けながらも損なく年金を受け取るために、まずは国民年金と厚生年金の受給の仕組みの違いを解説します。

国民年金

通称、国民年金と呼ばれる「老齢基礎年金」は、働きながらでも全額受給することが可能です。
国民年金は、20歳~60歳までの全国民が加入し、毎月定額で納付するものとなっています。国民年金には種類があり、自営業や農業などに従事し直接保険料を納める場合は「第1号被保険者」。会社に勤めている場合は「第2号被保険者」、扶養されている配偶者の場合は「第3号被保険者です。

納めた年金は、原則65歳以から納付月数に応じて受給できる仕組みになっています。もし、何らかの理由で免除していた期間があった場合、その分は支給されないので注意しましょう。

厚生年金

通称、厚生年金と呼ばれる「老齢厚生年金」は、全国民が加入する国民年金とは違い、会社員や公務員として働く人が毎月納付するものです。その分に応じた年金を、国民年金とあわせて受給できるという仕組みです。また、正社員ではなくても、特定の条件を満たすと厚生年金への加入義務が発生します。

これだけ聞くと、厚生年金をもらえる人はお得と感じるかもしれませんが、厚生年金をもらいながら働く場合は注意が必要です。働いて得た収入によって、厚生年金の受給額が一部減額または全額停止されるためです。こちらは、後ほど詳しく解説します。

「働きながらでも国民年金は全額支給されるが、厚生年金は収入によって減額または全額停止される」ということを覚えておいてください。

60~65歳未満の方は高年齢雇用継続給付を確認

60歳~65歳未満の方は、高年齢雇用継続給付を確認する必要があります。高年齢雇用継続給付の概要や、年金との関係について解説していきます。

高年齢雇用継続給付とは

高年齢雇用継続給付とは、60歳~65歳未満の会社員が給付金を受給できる制度です。高年齢雇継続給付を受けるには、以下の条件を満たしている必要があります。

【高年齢雇用継続給付を受ける条件】
1. 60歳以上65歳未満の雇用保険一般被保険者であること
2. 雇用保険の被保険者だった期間が5年以上あること
3. 60歳時点と比較して、その後の賃金が75%未満に低下していること
4. 失業保険による基本手当や再就職手当を受給していないこと

一般被保険者とは「高齢被保険者(65歳以上の被保険者)」「短期雇用特例被保険者」「日雇労働被保険者」以外の、雇用保険の被保険者を指します。また、高年齢雇用継続給付金の支給期間は、「60歳になった月から65歳になった月まで」と決まっています。

高年齢雇用継続給付金と年金との関係を知る

高年齢雇用継続給付金を受け取りながら年金を受給する場合は、年金支給額が減額される可能性があります。減額されるのは、最高で標準報酬月額の6%に当たる金額です。収入が多かった場合は、さらに在職老齢年金による年金支給減額が重なる可能性もあります。

原則、年金の受給は65歳からとなっています。60歳〜65歳で高年齢雇用継続給付金を利用しながら、繰上げて年金支給を受ける場合は、年金受給が停止となる条件に該当しないか確認しましょう。

年金をもらいながら働く人のための在職老齢年金とは

「在職老齢年金」とは、年金をもらいながら働く人のための制度です。事前に適用条件を理解しておきましょう。

在職老齢年金が適用される条件

年金の受給対象となる60歳以上の方が、年金をもらいながら働く場合に適用されます。さらに、対象となるのは厚生年金保険への加入が必要な会社員または公務員です。

在職老齢年金が支給停止になる条件

在職老齢年金は、年金と給料・賞与を含めた金額が50万円を超える場合に支給停止となります。以前は60歳〜65歳未満と65歳以上で規定が異なっていましたが、2022年の法改正によって統一されました。影響を受ける年金は厚生年金のみであり、国民年金には影響ありません。厚生年金の支給停止額の計算方法は以下の通りです。

支給停止額=(老齢厚生年金の基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2

また、支給停止期間でも年金額は改定される場合があります。2022年の改正時に同時に施行されたものに、「在職定時改正」があります。65歳以上の在職中の老齢年金受給者は、毎年10月にそれまでに納めた保険料が年金に反映される仕組みです。それにより、もらえる額が改定・増額されます。ただし、在職老齢年金の適用額に変動はないため、受給額が減る可能性があるでしょう。

在職老齢年金に必要な手続き

在職老齢年金は、日本年金機構へ手続きを行う必要があります。支給が可能となる年齢になった際に、自動的に支給されるわけではありません。受給年齢が近づくと送付される年金請求書と、必要書類を年金事務所に提出することで受給できるようになります。

厚生年金保険は、年金の基本月額と給料や賞与によって決められる総報酬月額相当額の合計額によって、年金額の一部または全部が支給停止となります。しかし、給料や賞与に変動があり総報酬月額に変動があった際は、会社が日本年金機構に届け出を行うため、自身での届け出は必要ありません。在職老齢年金の額が変更された際は、本人に連絡が届く仕組みとなっています。

働きながら年金を受け取る際の注意点

年金をもらいながら働いて収入を得ることは可能です。ただし、働きながら年金を受け取る際には、いくつか注意しておくべき点があります。例えば、厚生年金保険の加入対象になる会社員として年金を満額受給したい場合は、会社から支給される給与と年金額を把握して収入を調整することが必要になってきます。

なるべく稼ぎつつ年金を満額受給したい場合には、個人事業主または自営業で働くといった選択肢もあります。年金をもらいながら働くことを考える場合、どのような点に注意をすべきか事前に確認しましょう。

雇用形態に気を付ける

年金を受け取る際は、雇用形態について考える必要があります。
厚生年金額が停止になる可能性があるのは、厚生年金保険に加入している場合のみです。そのため、厚生年金保険への加入義務がない、パートやアルバイトの場合は在職老齢年金の対象外となります。

ただし、特定の条件に当てはまるとパートやアルバイトでも、厚生年金保険の加入義務が発生します。条件は、以下の通りです。

【パート・アルバイトの場合の厚生年金加入条件】
1. 週の所定労働時間が20時間以上
2. 雇用期間が2ヶ月を超えて見込まれる
3. 賃金の月額が88,000円以上
4. 学生ではないこと

また、厚生年金保険の加入対象となる特定適用事業所の要件が、2024年10月から変更となります。現行の従業員数が常時110人から、常時50人超へと改正予定です。要件の変更がある点はもちろん、自身が勤める企業が加入を義務付けられている、特定適用事業所に該当するかどうかも確認しましょう。

個人事業主の場合は、厚生年金保険の加入義務はありません。さらに、週の所定労働時間や収入などによる加入義務もありません。厚生年金も満額もらいたい場合は、個人事業主という働き方も選択肢のひとつです。

60代活躍中の求人を探す

まとめ

働きながらでも年金を受け取る働く方法や、年金の種類についてご紹介しました。そもそも年金には、国民年金と厚生年金があり、条件などによって満額受給できる場合とできない場合があります。さらに60〜65歳の人は、高年齢雇用継続給付金を確認する必要があります。

また、老齢年金が適用される場合と停止される場合があり、老齢年金を受け取るためには雇用形態についても注意する必要があります。知らぬ間に年金の支給が停止していた、減っていたとならないよう、しっかりと条件や種類を確認し老後の生活に備えましょう。

関連記事

高年齢求職者給付金とは?受給方法と支給額について【社労士監修】 所得税・住民税が4万円減税?2024年から始まる定額減税の仕組みやメリット これでわかる、「ねんきん定期便」の見方【社労士監修】

記事をシェアする

あなたにあった働き方を選ぶ