【老人扶養親族】親を扶養に入れることで、損せず資産を守ろう!

  • ちょっと得する知識

年を重ねるごとに自分のことだけでなく、親の年齢も気になってくるでしょう。年金問題や老後2000万問題など、日本での老後問題は山積しています。本日は知っていれば損はない、老人扶養親族についてまとめていきます。

親を扶養に入れるとは?

そもそも扶養とは、自力で生きていけない人が家族や親族から援助を受けることをいいます。つまり、親を扶養に入れるということは、「親の生活について経済的に面倒をみる」という意味になります。そんな扶養には大きく分けて2つの種類があります。

① 所得税法上の扶養

所得税法上の扶養とは、所得税法で控除の対象となる親族を養うことです。所得税の納税者が親族を扶養している場合においては、所得の扶養控除を受けることができます。そして扶養される家族のことを「扶養家族」と呼びます。

扶養家族の要件
扶養家族になるためにはいくつのかの条件があります。個別にみていきましょう。

・配偶者以外の親族であること
配偶者以外の親族とは「6親等内の血族」および「3親等内の姻族」のことです。血族とは所得者の家族を指し、姻族とは配偶者の親族のことを言います。両親は1親等に該当するため、親は「扶養家族」になることができます。

・納税者と生計を共にしている
扶養控除の適用においては生計を共にする必要があります。ただし、必ずしも同居が要件になるわけではないことを覚えておきましょう。例えば、両親と別居している場合であっても、生計を一にしていれば扶養親族に該当します。

・年間の合計所得金額が48万円以下である
扶養控除の対象である親族として認められるためには、1年間の合計所得金額を48万円以下である必要があります。

年金を受給する65歳を基準に考えましょう。65歳以上の場合、公的年金等の収入金額の合計が110万円以下の場合の所得金額は0円とみなされ、110万1円~329万9,999円までは110万円の控除が受けられるのです。(※65歳未満は108万円以下が条件にあたる)

つまり、年金収入が158万円(110万円+48万円)であれば扶養控除の適用対象となります。心配な方は、親が年金を受給しているかどうか、また年金の受給がある場合はその金額を事前に確認しておきましょう。

・事業専従者に該当しないこと
個人事業主のうち、青色申告専業者給与を1円でも受け取っている場合は扶養家族とはなりません。例えば、子どもが営んでいる会社のお手伝いであったとしても青色申告事業者専従者給与を受け取ってしまうと、控除の対象からは外れてしまうので注意が必要です。


➁健康保険上の扶養

健康保険上の扶養では、健康保険の扶養制度を受けることができます。つまり、親は自身で保険料を負担せずに、ケガや病気に罹った際にも保険給付を受けられるのです。健康保険上の扶養で扶養される親を「被扶養者」と呼びます。

健康保険上の扶養家族の要件とは?
健康保険上の扶養家族になるにも、いくつかの条件があります。

・生計が同じであり、所得制限を超えていないこと
税法上の条件と同じで、扶養する親と同居する必要はありません。ただし、親の収入金額の制限がありますので注意しましょう。また、収入の金額の制限は同居か別居で異なります。

【同居】年収130万円未満かつ被保険者の年収の半分未満
【別居】年収130万円未満かつ被保険者の仕送り額未満
※親が60歳以上または障害年金受給者の場合は、上限が180万円に上がります。

・年齢が75歳未満である
扶養に入るためには、日本国籍であることや日本国内に住民票があることが必須になってきます。また、扶養に入れる親の年齢は後期高齢者医療保険への加入が義務付けられている75歳未満に定められています。

親を扶養に入れるメリット・デメリットとは?

ここまで扶養条件を見てきました。では、実際に親を扶養に入れた場合は、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。詳しくみていきましょう。

<親を扶養に入れるメリット>

・子どもの税金負担が少なくなる
親を扶養に入れると、扶養控除が適用されます。扶養控除により課税所得を低くすることができるため、所得税や住民税の額も下がります。下記の表の通り、同居していれば所得税は最高で58万円の控除、同居していない場合も最高で48万円の控除を受けることができるのです。

控除対象 所得税控除額 住民税控除額
控除対象扶養親族(23歳以上70歳未満) 38万円 33万円
老人扶養親族(70歳以上) 48万円 38万円
老人扶養親族(70歳以上で同居している) 58万円 45万円 

・親の健康保険料負担を軽減できる
子どもが協会けんぽなどの健康保険に加入している場合、追加で負担をすることなく被扶養者の人数に加えることができ、親にとっては健康保険料を支払う必要がなくなります。

さらに、高額医療費の計算をする場合においては、月々の医療費の額は親子分を合算することができます。高額医療費の適用を受けることができれば、医療費を安く抑えられることも。

ただし、親を社会保険の扶養に入れることができるのは、親が74歳までです。75歳になると、後期高齢者医療保険への加入が義務付けられるため、子どもの健康保険に加入し続けることはできなくなります。

<親を扶養に入れるデメリット>

・医療費の負担が増えてしまう場合がある
親を社会保険の扶養に入れると子供と、親は同一の家計にあるものとみなされます。そのため、高額医療費の計算を行う際には、子どもと親の医療費を合算して計算することができます。

このこと自体はメリットですが、子供と親の家計が同一になることで、高額医療費適用後の自己負担限度額が大きくなってしまうことも。原因は、所得区分が親だけでなく、子どもと親を合算した金額となるためです。

これまでは35,000円程度で済んでいた医療費の自己負担額が、倍以上になるなんてことも考えられます。医療費の負担が大きく、高額医療費の制度を毎月利用しているような方は、そのデメリットをよく考えておく必要があります。

・生計を一にすることで負担が増えることがある
親を社会保険の扶養に入れることで、健康保険料の負担は軽減されます。しかし一方で、親が65歳以上になると親は介護保険料を負担しなければなりません。介護保険料の金額は世帯収入の額によって決まります。

親を扶養に入れ、かつ同世帯で暮らしているような場合には保険料の支払いが高額になってしまうため、注意が必要です。子の収入によっても異なりますが、介護保険料の金額が扶養に入らなかった場合と比べて、倍以上に増えてしまうケースも。その点を踏まえて親の扶養を考えましょう。

・社会保険に加入した方がいい場合がある
親が働いている場合は、勤め先から健康保険に加入した方が良い場合があります。2022年10月からは、パート・アルバイトで働く方の社会保険の加入が義務になりました。これにより、病床手当といった手当てが充実するなどのメリットがあります。親が扶養に入る場合は、そのような手当は受けられないため、デメリットといえるでしょう。

さらに、親を社会保険の扶養に入れて一緒に暮らしていると、介護サービスの利用料も増えてしまいます。このようなことも考えられるため、それぞれの家庭の事情に応じて扶養を比較検討しなければなりません。

※データ元:一般社団法人公的保険アドバイザー協会「75歳以上の親を扶養に入れられる?」

親を扶養に入れるためには、どのような手続きを踏めばいい?

税金の扶養に入れる場合は、子どもが勤務先の年末調整を受ける際に、扶養控除等申告書に親の氏名や所得金額などを記載します。

一方、健康保険上の扶養に入れる手続きは、子ども側が勤め先に「被扶養者届」を提出します。健康保険上の扶養となるタイミングで、勤め先の担当者に書類を提出しましょう。なお、被扶養者届と共に住民票など続柄が確認できる書類や収入要件が確認できる書類が必要になりますので、一緒に用意しておくようにしてください。

親を扶養に入れる場合の注意点とは?

親の扶養を考える上でいくつか注意点もあります。

・親が75歳以上になると健康保険の扶養には入れない
75歳以上の親は、健康保険上の扶養に入れることができません。これは、75歳以上になると「後期高齢者医療保険制度」に加入することになるためです。今まで子どもの扶養になっていた親が75歳になった場合も、扶養を外れることになります。

・税金と社会保険の扶養の手続きは別に行う
親を税金の扶養に入れるのと、社会保険の扶養に入れるのは、それぞれ別の手続きが必要です。税金の扶養に入れる場合は、子供が勤務先の年末調整を受ける際に、扶養控除等申告書に親の氏名や所得金額などを記載します。

一方、社会保険の扶養に入れる場合は、まず勤務先にその旨を申し出て、勤務先から協会けんぽなどへの手続きを行います。いずれかの手続きだけで、税金と社会保険の双方の扶養に入ることはできません。忘れないようにそれぞれの手続きを行うようにしましょう。

・どちらかだけを選ぶこともある
親を扶養に入れる場合、税金だけ、あるいは社会保険だけ扶養に入れることもできます。親を扶養に入れる条件がそれぞれ異なるため、いずれか一方しか扶養に入れないケースもあるでしょう。

負担の観点から税金だけ扶養に入れ、社会保険は扶養に入れないということが多く見受けられます。このように、いずれか一方だけ扶養に入れることもできるのです。

・親に所得がある場合には注意する
親を扶養に入れる際は、所得や年齢に注意しましょう。60歳を超えて年金所得がある場合、税法上は所得控除の計算をする必要があります。(※健康保険と上限金額が異なります)

・子どもが自営業やフリーランスの場合
自営業やフリーランスとして仕事をし、国民健康保険へ加入している場合は、そもそも「扶養」という制度がないことを覚えておきましょう。

・他の親族(兄弟姉妹など)の扶養に親が入ってないか
1人の被扶養者につき1人の納税者のみに扶養控除は適用されるため、すでに他の兄弟の扶養に親が入っていないかを確認しておきましょう。

・親が住民税非課税世帯であるか
別居している親が住民税非課税世帯に該当する場合には、既に健康保険料や国民年金保険料などの減免を受けている可能性があります。その場合、子どもの扶養に入ることでかえって負担が増えてしまうこともありますので、親が住民税非課税世帯であるかを予め知っておく必要があります。

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まとめ

いかがでしたでしょうか。物価高の今、親を扶養に入れることは自身の資産を守るという観点からもメリットが多いです。さらに同居することで子育てに協力してもらい、子供世代の共働きが叶う場合もあるでしょう。

また、日本ではすでに超高齢社会に突入し、多死社会になっています。扶養をきっかけに子世代、親世代で綿密な連絡が取れると互いに安心して健やかに暮らすことができるかもしれません。

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