70歳定年時代にミドルシニアがやるべきこととは?定年延長のメリット・デメリットも
- ライフプラン・人生設計
- 公開日:2023年5月15日
2021年時点において、65歳以上の就業者は909万人と過去最高を更新し続けています。2017年にはいわゆる「団塊の世代」が70歳になり始めたことで70代の労働者も増えており、シニア世代が働きやすいよう様々な法律が改正されました。今回はその中でも「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」についてご紹介します。法律のポイントを理解し、自分のライフスタイルにあった働き方を見つけていきましょう。
高年齢者雇用安定法とは
高年齢者雇用安定法とは正式名称を「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」といい、1986年に成立しました。定年の引き上げや、継続雇用制度の導入などを通じて高年齢者の安定した雇用の確保を促進し、就業生活の充実を図ることを基本理念とした法律です。
この法律で、事業主に定年が60歳を下回らないようにする努力義務が課されました。その後、公的年金の支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられることを受け、改正。定年が60歳を下回らないようにする努力義務が、完全に義務化されました。
2000年には65 歳までの雇用確保を努力義務として課すという改正が行われ、努力義務だった65歳までの雇用確保が義務化。その際、企業は下記の選択肢を選ぶことができ、さらなる高年齢者の雇用の確保と促進が図られるようになりました。
①定年を65歳に引き上げること
②希望者に対して65歳までの継続雇用制度の導入
③その他の必要な措置など
2021年4月1日に施行された改正内容
そして、2023年時点における高年齢者雇用安定法は、2021年(令和3年)4月1日に施工されたものが最新版です。現在の定年は65歳となり、さらに対象となる企業には70歳までの雇用確保のため、いずれかの措置(高年齢者就業確保措置)を講ずる努力義務が課せられるようになりました。
改正の趣旨
高年齢者の就労確保を70歳まで引き上げた裏には、急速に進行する少子高齢化と、それに伴う人口減少問題があります。日本の人口は2011年以降減少傾向にあり、2065年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は38%台の水準になると推計されています。
この中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境整備を図ることを目的として、今回の改正がなされました。
70歳までの就業機会の確保(努力義務)とは
70歳までの雇用確保のため、いずれかの措置を講ずる努力義務が企業に課せられました。「措置を講ずる」とは判断を下してその物事を取り計らうことですから、いずれかの措置(高年齢者就業確保措置)を選択し、会社で行うよう努めねばなりません。
今回の改正で努力義務が課された高年齢者就業確保措置は、以下の通りです。
1:70 歳までの定年の引上げ
2:定年制の廃止
3:70 歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
4:70 歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
5:70 歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
ただ、厚生労働省も「今回の改正は、個々の労働者の多様な特性やニーズを踏まえ、70歳までの就業機会の確保について、多様な選択肢を法制度上整え、事業主としていずれかの措置を制度化する努力義務を設けるものであり、70歳までの定年年齢の引上げを義務付けるものではありません。」と述べているため、定年は65歳のままです。
また、70歳以降の雇用確保の選択肢について、厚生労働省は「5つの措置のうち、いずれの措置を講ずるかについては、労使間で十分に協議を行い、高年齢者のニーズに応じた措置を講じていただくことが望ましい」としているため、65歳以降の勤務形態や賃金などについては会社によって異なることは覚えておきましょう。
参考:高年齢者雇用安定法 改正の概要 厚生労働省
努力義務の対象事業主は?
今回努力義務となる対象事業主は、定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主、もしくは65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く)を導入している事業主が対象となります。
努力義務を違反するとどうなる?
努力義務が果たせていないことに罰則はありません。しかし、努力義務を果たせていない事業主の経営する会社が、70歳までの安定した就業機会の確保が必要と認められたときには、高年齢者雇用安定法に基づき、ハローワーク等の指導・助言の対象となる場合があります。
また、指導などを行ってもなお状況が改善していないと認められるときは、高年齢者雇用確保措置を講ずべきことを勧告、または高年齢者就業確保措置の実施に関する計画の作成を勧告される場合があります。
70歳までの継続雇用制度とは
高年齢者就業確保措置のいずれの措置を講ずるかは企業によります。70歳までの定年の引き上げや定年の廃止、業務委託(フリーランス)に勤務形態を移行するほか、別の事業への編入などがありますが、「継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入」は会社によって勤務形態などが異なるため、気になる方はチェックしてみる方が良いでしょう。
継続雇用制度とは
「継続雇用制度」とは、雇用している高年齢者を、本人が希望すれば定年後も引き続いて雇用する再雇用制度や勤務延長制度などの制度のことです。
この制度の対象者は高年齢者雇用安定法の改正により、2013年度以降は希望者全員が対象となっているため、「継続雇用制度」を導入している会社であれば、今回の改正で70歳まで働けるということになります。前述したように、賃金や勤務形態などは65歳から変わる可能性が高いので、その点は留意しておきましょう。
「特殊関係事業主以外の他社」で継続雇用が可能に
また今回の改正で、65歳以降の場合、「特殊関係事業主以外の他社」で継続雇用する制度も可能になります。「特殊関係事業主」とは自社の①子法人、②親法人、③親法人の子法人、④関連法人、⑤親法人などの自社の関連法人のことを指します。
65歳以降はさらに上記以外の他社での勤務が可能となりますが、シルバー人材センターへの登録や、再就職・ボランティアのマッチングを行う機関への登録などは、高年齢者の就業先が定まらないため、高年齢者就業確保措置を講じたことにはなりませんので、しっかり認識しておきましょう。
一方、無期転換ルールに特例も
無期転換ルールとは、同一の企業との間で、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって無期労働契約に転換されるルールのことです。
しかし、70歳までの継続雇用制度では、適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主(特殊関係事業主を含む)の元では、定年後に引き続いて雇用される期間に無期転換申込はできません。65歳を超えて引き続き雇用する場合にもできないので注意しておきましょう。
参考:高年齢者の雇用 厚生労働省
創業支援等措置とは
「創業支援等措置」とは、以下の措置を指します。
1:70 歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
2:70 歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
業務委託契約とはその名の通りフリーランスとして勤務する場合であり、また社会貢献事業とは不特定かつ多数の者の利益に資することを目的とした事業のことを指します。こちらも会社によってさまざまなので、ぜひ一度チェックしてみましょう。
定年延長のメリット・デメリット
現在定年は65歳となっていますが、2021年の改正で70歳まで働くことが可能となりました。健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間である「健康寿命」は男性72.68歳、女性75.38歳(2019年時点)であるとはいえ、メリット・デメリット双方が存在します。
定年延長のメリット
健康寿命は男女ともに70代でしたが、平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳であり、健康寿命とはそれぞれ約9年、約12年の差があります。
特に高齢期は「フレイル」と言って、病気や老化などで、心身の活力(筋力や認知機能など)を含む生活機能が低下し、将来要介護状態となる危険性が高い状態に陥りがちです。そうならないためにも適度な運動と社会参画を意識的に行うことが重要です。
70歳まで働くことは、心身への良い影響も期待できます。また、経済的にも安定した収入を得られるほか、退職手当の増額の可能性もあるため、経済的にも余裕ある生活が送れることは大きなメリットといえるでしょう。
定年延長のデメリット
いくら健康寿命が70歳とはいえ、既往歴や心身の状態によっては身体に無理を強いることになり、悪影響になりかねません。また、70歳までの措置は努力義務であり、会社によっては勤務形態が選択できないこともあります。身体的なリスクはもちろん、勤務形態によっては給料が下がることもあるので、そちらも充分注意しておきましょう。
参考:平均寿命と健康寿命 厚生労働省
ミドルシニアが長く働くために準備すること
定年延長にはメリット・デメリット双方存在します。しかし、身体を動かし、ある程度社会に参加し続けることは高年齢者にとって非常に大切です。無理なく長く働き続けるために今から準備できることをお伝えしていきます。
働き方を考える
まず、現在働いている企業で再雇用してもらうか、70歳まで定年が引き上げられているもしくは定年のない企業へ再就職するか、働き方を決めておきましょう。それらによって、必要な準備が変わってきます。
再雇用の方が準備は少ないですが、「やりたいこと」を選択するのも一つのプランです。60歳から自分がやりたかった職にチャレンジする人も、今は珍しくありません。ぜひ60歳以降のキャリアプランも前向きに考えてみてください。
必要な知識と経験を身につける
やりたいことや会社がある場合、専門知識や経験、資格などを身につけた方が入職しやすいのは事実です。もちろん専門知識などが必要のない就職先もあるので、自分のライフプランを考えたうえで、諸々の準備を進めていきましょう。
健康面を配慮する
なんといっても身体が資本です。体力面や健康の問題が生じやすくなるため、体力には考慮して勤務先を選びましょう。趣味や余暇に時間を費やすにしても、やはり体力が必要です。
60歳からのライフプランはがむしゃらに働くのではなく、自分のための時間もたっぷりと取るためにも、バランスのとれた生活を送ることを意識しましょう。その点で言えば、長時間の力仕事や負荷の多い仕事は不向きでしょう。
まとめ
今回は「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)についてご紹介した上で、定年延長後の働き方についてもお伝えしてきました。
マイナビミドルシニアでは、定年後でも働きたい方に向けた求人をご用意しています。ぜひご自身のライフプランに合わせ、満足のいく職場を見つけてくだされば幸いです。