扶養控除等申告書って?書き方や提出するメリットを解説

  • ちょっと得する知識

年に一度だけ勤務先から提出を求められる扶養控除等申告書。なんとなくは理解しているけど、提出する目的やメリット、時期など、詳しいことは知らないという方も少なくありません。そこで今回は、書き方や間違えてしまった時の修正方法についても合わせて解説していきます。

扶養控除等申告書とは

まずは扶養控除等申告書とはどういったものなのか、理解しましょう。

扶養控除等申告書とは「年末調整に必要な書類」

扶養控除等申告書とは、年末調整の時に勤務先に提出しなければならない書類のひとつです。正式名称は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」といいます。

扶養控除等申告書を提出する目的とメリット

扶養控除等申告書を提出する目的は、「所得税の扶養控除等」を受けることです。

扶養控除申告書を給与の支払者である勤務先に提出することで、扶養家族(配偶者や親族)がいることを申請し、課税の対象となる所得から控除が適用されます。つまり、扶養控除等申告書の提出は、納める税金額を軽減できるメリットがあります。

扶養控除等申告書の提出義務のある人の条件

日本国内で給与の支給を受ける居住者は、源泉控除対象の扶養家族(配偶者や親族)の有無にかかわらず、原則この申告を行う必要があります。申告を行わなければ、年末調整をしてもらうことができず、本来源泉徴収の際に受けられる諸控除も受けることができません。

扶養控除等申告書の提出時期

扶養控除等申告書の提出時期は、その年の最初に給与の支払いを受ける前日までです。中途入社の場合は、入社後最初の給与支払いを受ける前日までが提出期間となります。

提出時から申告書の記載内容に異動があった際には、異動の内容を記載した申告書を異動の日後、最初に給与の支払を受ける日の前日までに提出しましょう。

そのほか、非居住者である親族に係る扶養控除や障害者控除の適用を受けたい場合は「その年最後に給与支払を受ける日の前日」までに、非居住者である身内と生計を一する事実を記載した上で申告書を提出します。

扶養控除等申告書の書き方

ここでは、実際の扶養控除等申告書をもとに書き方をご紹介。令和5年分以降、非居住者である親族に係る扶養控除要件の変更などに伴って項目が追加され、様式が少し変更となりました。記載項目に沿って順番に書き方をお伝えしていきます。

個人情報

まずは、扶養控除等申告書面にある黒く囲われた4ブロックの一番上にある個人情報記入欄です。左側の「所轄税務署長等」「給与の支払者に関する情報」、一番右にある「従たる給与についての扶養控除等申告書の提出」については空欄のままで問題ありません。

記載が必要なのは、本人の個人情報である以下の項目です。
①氏名
②生年月日
③本人の個人番号(マイナンバー)
④本人の住所または居所
⑤世帯主の氏名と続柄、配偶者の有無

「③本人の個人番号(マイナンバー)」については、原則記載する必要がありますが、以下の要件を満たせば省略も可能です。

・本人が給与支払者から合意を得て「給与支払者に提供済みの個人番号と相違ない」旨を余白等に記載した上で、給与支払者が従業員等の個人番号を確認し、確認した旨を扶養控除等申告書に記載すること
・給与支払者が扶養控除等申告書などの一定の税務関係書類の提出を受けて作成された帳簿を備えていること

参照:国税庁「源泉所得税関係に関するFAQ」

源泉控除対象配偶者

妻や夫が源泉控除対象配偶者に該当する場合は、「氏名」や「個人番号」などの項目欄に沿って記入していきましょう。源泉控除対象配偶者に該当する条件は以下3つであり、すべてを満たす必要があります。

・給与所得者本人と配偶者が生計を一していること
・本人の合計所得金額が 900 万円以下であること(給与所得だけの場合は1120万円以下)
・配偶者の所得金額が85万円以下であること(給与所得だけの場合は150万円以下)

令和5年の所得の見積額の欄には、配偶者の2023年(令和5年)1月~12月の所得の見積額を記載してください。

控除対象扶養親族

家族が控除対象扶養親族に該当する場合は、その親族の「氏名」や「生年月日」などの項目欄に沿って記入します。該当するには、以下の扶養親族の条件すべてを満たす必要があります。

・16歳以上であること(令和5年12月31日時点/2008年(平成20年)1月1日以前に生まれた人)
給与所得者とその親族が生計を一にしていること
その親族の所得金額が48万円以下(給与所得だけの場合103万円以下)

その隣の「非居住者である親族」欄については、「16歳以上30歳未満または70歳以上」、「留学」、「障がい者雇用」、「38万円以上の支払」など、その親族の該当するものにチェックを入れましょう。

障がい者、寡婦、寡夫または勤労学生

本人、配偶者、扶養親族のいずれかが障がい者である場合は、一般の障がい者、特別障がい者など、該当する区分にチェックを入れてください。また、寡婦、寡夫、ひとり親、勤労学生に該当する場合も該当項目にチェックを入れます。障害者又は勤労学生の内容の欄には以下を記載しましょう。

■障がい者(特別障がい者)
障害の状態又は交付を受けている手帳などの種類と交付年月日、障害の程度(障害の等級)などの障害者(特別障害者)に該当する事実。

その人が同一生計配偶者又は扶養親族の場合には、併せてその人の氏名、(特別障害者であるときは同居の有無)、マイナンバー(個人番号)、住所又は居所、生年月日、あなたとの続柄及び令和5年中の所得の見積額(これらの事項のうち「源泉控除対象配偶者」欄、「控除対象扶養親族」欄又は「住民税に関する事項」欄に記載している事項については、氏名を除き、記載を省路できます。)

また、当該同一生計配偶者又は扶養親族が非居住者である場合には、その旨及び令和5年中にその同一生計配偶者又は扶養親族が非居住者である場合には、その旨及び令和5年中にその同一生計配偶者又は扶養親族に送金等をした金額の合計額(送金等をした金額の合計額は、年末調整時に記載します。)

■ 勤労学生
学校名と入学年月日及び令和5年中の所得の種類とその見積額

参照:「令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)」申込書「2 記載についてのご注意」(8)より

他の所得者が控除を受ける扶養親族等

この項目は、多くの人が記載する必要がありません。しかし、扶養控除等申告書を提出する給与所得者本人と、同じ世帯の他の所得者と扶養親族を分けて控除を受けている場合には記載の必要があります。

例えば、共働き家庭で本人が夫の場合、長男は本人の扶養、長女は配偶者の扶養としている場合、①他の所得者が控除を受ける扶養親族(例で言えば長女)の氏名、続柄、生年月日、住所又は居所などの情報を記載します。併せて②控除を受ける他の所得者(例で言えば配偶者)の氏名、続柄、住所又は居所も記載が必要です。

住民税に関する事項

住民税に関する事項は「16歳未満の扶養親族」または「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」がいる場合に記載します。

16歳未満の扶養親族については、所得税法上、令和5年12月31日時点で16歳未満の場合、扶養控除の対象外。ただし、住民税の計算対象になりますので、「氏名」や「個人番号」「給与所得者との続柄」などの項目欄に沿って記入していきましょう。

住所又は居所の欄の隣に「控除対象外国外扶養親族」とありますが、こちらは16歳未満の扶養親族が海外に住んでいる場合、〇印を付けてください。所得の見積額は控除対象扶養親族と同様、16歳未満の親族の2023年(令和5年)1月~12月の所得の見積額を記載します。

退職手当等を有する配偶者・扶養親族については、配偶者の場合、給与所得者と生計を一にしていること、令和5年の退職所得を含めない所得金額の見積額が133万円以下の両方に該当している時のみに記載します。

【その他】添付書類と部数

勤労学生控除や障害者控除などを受ける場合には、扶養控除等申告書に加えて、以下の書類がそれぞれ1部必要になります。

① 勤労学生控除を受ける場合には、勤労学生に該当する旨を証する書類
② 源泉徴収において非居住者である親族に係る扶養控除、障害者控除又は源泉控除対象配偶者の控除の適用を受ける場合には、その親族に係る親族関係書類
③ 年末調整において、非居住者である親族に係る扶養控除又は障害者控除の適用を受ける場合には、その親族に係る送金関係書類

参照:国税庁「[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」

扶養控除等申告書を書き間違えた時の修正方法

万が一の時のために、書き間違えた時の修正方法も知っておくと安心です。

扶養控除等申告書の修正の仕方

扶養控除等申告書は、税金の計算に関わる重要な書類。そのため、日常的な書類と同じ意識で修正テープや修正ペンなどを用いた修正は相応しくありません。

間違えてしまった時には、修正が必要な箇所に二重線を引き、付近に正しい内容を記入します。その後、二重線の上に訂正印を押します。間違えた箇所がたくさんあったり、範囲が大きかったりする場合には、新しい扶養控除等申告書をもらい、書き直した方が良いでしょう。

扶養控除等申告書の訂正期限

扶養控除等申告書などの書類を提出する年末調整は、会社ごとに設定されている期限を過ぎなければ訂正できます。年末調整の最終期限は「翌年の1月31日」ですので、もしも勤務先に提出した扶養控除等申告書に誤りがあったり、変更があったりした場合には速やかに会社に報告し、訂正しましょう。

扶養控除等申告書に関するよくある質問

これまで扶養控除等申告書の目的やメリット、書き方などを紹介してきました。
扶養控除等申告書は普段はなじみのない書類のため、上記で紹介しきれていない事柄に対して疑問を持っている方もいるかも知れません。そんな方のために、扶養控除等申告書に関するよくある質問をQ&A式で紹介します。

Q.扶養控除等申告書の提出はアルバイトやパートでも必要?

A.必要です。扶養控除等申告書は、年末調整に必要になる書類。扶養控除等申告書を提出しなければ年末調整ができないので、本来源泉徴収の際に受けられる諸控除が受けられなくなります。

そのため、源泉控除対象の配偶者や親族などの扶養家族がいるいないにかかわらず、この申告を行う必要があります。

Q.扶養控除等申告書の提出を免除される人はいる?

A.います。扶養控除等申告書を提出する目的は、年末調整ですので、年末調整の必要がない方は扶養控除等申告書の提出も免除されます。年末調整の対象にならない人の条件は以下です。

<年末調整の対象にならない人の条件>
・年末前に退職した人
本人(給与所得者)の扶養控除等申請書が未提出の人
1年間の給与が2,000万円以上の人
災害減免法の規定(※)により、その年の給与に対する所得税または復興特別所得税の源泉徴収について「徴収猶予」や「還付」を受けた人
※災害減免法...災害によって住宅や家財に一定を超える損失を受けた場合、所得税が軽減もしくは免除される制度のこと

Q.扶養控除等申告書についてわからないことがある時はどうする?

A.原則は給与所得者の勤務先(扶養控除等申告書を提出する先)に相談します。しかし、それでもわからない場合には、最寄りの税務署(源泉所得税担当)、住民税に関する事項は、最寄りの市区町村に相談してください。

まとめ

扶養控除等申告書を提出することによって「所得税の扶養控除等」が適用され、納める税金額を軽減できます。ただし、扶養控除等申告書は、年齢や身体の特徴、などによって区分が異なるため、判断や記載の方法が複雑だと感じてしまう人もいるでしょう。

ひとつずつ丁寧に見ていけば、それほど難しくはありませんので、焦らず条件を確認しながら判断し、記入してみてくださいね。

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