企業が考える! ミドルシニアの活用法|現代のミドルシニア
- 現代社会のミドルシニア
- 公開日:2022年2月 8日
終身雇用制度の見直しや、定年が70歳まで引き上げられるなど、シニア層を取り巻く雇用環境は一変しています。そこで、ミドルシニアの間にキャリアについて考える環境を提供する企業が現在、増えています。今回はそんな企業の取り組みをお伝えして参ります。
企業は今、柔軟性あるシニア雇用が求められている
総務省が発表した2022年1月1日の人口推計によれば、今年新成人を迎えた人口は前年から4万人減って120万人となり、過去最少を更新したのだそうです。
現在でも少子化は進んでいますが、2040年には新成人はおよそ84万人になる見込みだとされ、ますます減少への拍車がかかるとされています。
そんな世界でも稀にみる少子高齢化の進んだ日本では、企業内でも高齢化が着実に進んでいます。
総務省統計によれば、労働力人口のうちおよそ半数が40~60代なのだとか。
2025年には50歳以上の社員が40パーセント%を占めるとも言われていますから、会社を担う人材のほとんどはベテラン層になるのです。
そのため、企業にとってミドルシニアのうちからその有効的な活用や活性化を考えておくことが重要かつ、急務な課題となっています。
データ元:「平成 29 年就業構造基本調査」
なぜ、ミドルシニア層のキャリア形成が大切なのか
高年齢者雇用機会安定法が改正され、昨年(2021年)の4月から企業の70歳までの定年延長や継続雇用制度の導入が努力義務にされました。
それにより、現場ではシニア層を取り巻く、様々な問題が浮き彫りになってきています。
例えば、モチベーションの問題はその一つでしょう。
再雇用では、給与などの待遇の低下はもちろんのこと、後輩が上司となることもありることから社内でうまくコミュニケーションが取れないなど、仕事に対してどのように情熱を注げばよいのか、そのモチベーションを保つのが難しくなってきているというのです。
そこに、老いによっての体力や気力の低下も重なり、多くの働き手が考えていた、60歳の定年まで頑張れば後は余生をゆっくり過ごすといった未来像が描けなくなってしまっていることから、鬱屈した気持ちで仕事に向かうシニア層も少なくありません。
それはシニア層のみならず、その下の世代である、ミドルシニア層にまで広がっているのです。
日本経済はバブル期以降、管理職などのポストも少なくなり、役員などの役職に就ける人材はほんのわずかです。そこで働いている人は、仕事に対して意欲的ではなくなり、リストラされなければよいと保守的な考えをするようになってしまっています。
このように、前のめりになって働かないベテラン層の言動は、組織の士気や生産性の減退に大きく作用すると言われています。若手社員もそんな上司の元で働くことで仕事に対する情熱を失いかねません。
それに、何だかんだでシニア層は若手よりも給料は高いままです。これでは若手社員に示しがつかないどころか、会社の将来を担う人材の流出を招きかねないのです。
どのようにミドルシニア層を活用するのか
企業がそんなミドルシニア層のやる気を引き出し、活用するためにはいくつかのポイントがあります。
1.目的や役割をしっかりと把握させる機会を持つ
会社は、年次の高い社員にはついつい、ベテラン社員なのだからわざわざ口で指導や意見を聞く機会を設けなくても大丈夫だろうと考えてしまいがちです。
しかし、面談などで職務内容を具体的に話し、互いの想いや向かっている方向性をすり合わせていくのは大切なのです。
例えば、知識やノウハウの伝承を後輩社員たちにしてもらいたいだとか、こういう成果を上げて欲しいなど、どの程度会社が求めているのかを伝えることが必要なのだといいます。
そのためには面談や話し合いなどの相互のコミュニケーションを取れる機会が不可欠でしょう。
2.キャリアデザインを再構築する
シニア社員は、年齢や能力の衰えを理由に、可能性を閉ざしている場合もあります。
そのため、ミドルシニアのうちからキャリアデザインの機会を設け、第二の職業人生を設計し直してもらうことが必要になってきます。
3.柔軟な人事異動制度を設ける
自分の希望していない部署で、与えられた業務を毎日淡々と取り組んでいるのではモチベーションも上がりません。
事務が苦手な社員が営業職に移ってみると、水を得た魚のように活躍した、などはよく聞く話です。さらに、自らの経歴や能力を希望部署に売り込む、まるで野球界のような社内FA制度を取り入れている企業も増えてきました。
このように自己申告制の異動制度を設けることで、本人へやる気を起こさせることができるのです。
4.副業や兼業を認める
ベテラン社員になってくるとルーティンワークによって業務をこなすことができてしまうため、仕事に対するモチベーションが下がってしまうのも無理はないでしょう。
そこで、本業以外の副業や兼業を認めることによって、社員の能力を会社が制限しないようにするのも大切な観点になります。
5.リカレント教育を推奨する
社歴が長くなってきた社員は今までの経験がある分、頭でっかちになってしまい、柔軟性のある仕事ができないということが起こり得ます。そこで、おすすめなのがリカレント教育。
リカレント教育とは、就労しながらも学び直しができる教育制度のことです。
例えば、ミドルシニア向けに開講されている大学や専門学校の講座に参加したり、資格取得に向けたスクールに通ったりすることです。
このように、新たな知識を付けてもらうことで、業務のパフォーマンスを上げることや社員の可能性を広げることが期待されています。
まとめ
職場には様々な役割を担う働き手が存在します。その中でこれからの日本の未来を見据えたときに企業側が考えなくてはいけないのは、ミドルシニアからシニアへのキャリア移行を行うための取り組みなのです。
そこが上手くいかないと、会社の運営も難しくなってしまいます。ですから、ミドルシニアのキャリア形成や活用法は、今後企業が成長していく上での必須項目だと言えるのです。