これでわかる、「ねんきん定期便」の見方【社労士監修】
- ちょっと得する知識
- 公開日:2019年5月30日
思い出した頃に届く「ねんきん定期便」。よく見ないまま処分してしまっている人はいませんか? 「ねんきん定期便」には、老後の生活を考える上で役立つ大切な情報が記載されています。今回は、「ねんきん定期便」の記載内容やチェックポイントをご紹介します。
意外と見ない? 「ねんきん定期便」
「ねんきん定期便」とは、「これまで保険料をどのくらい納めていきたのか」「将来、年金をどのくらい受け取ることができるのか」といった年金に関する情報を定期的にお知らせする通知書のこと。毎年1回、誕生月に日本年金機構から送られてくるので、存在は知っている。でも、しっかり中身に目を通している方は少ないのではないでしょうか。
通常ははがきで届きますが、封書で届く年があったり、年齢によって記載内容が異なったりと、仕組みが少し複雑です。それぞれの年で届く内容をご紹介します。
50歳未満の方<35歳、45歳を除く>
以下の情報が記載された「はがき」が届きます。
・これまでの年金加入期間
・これまでの加入実績に応じた年金額(年額)
・これまでの保険料納付額
・厚生年金保険または国民年金の最近の月別納付状況
50歳以上の方<59歳を除く>
以下の情報が記載された「はがき」が届きます。
・これまでの年金加入期間
・これまでの加入実績に応じた年金額(年額)
・これまでの保険料納付額
・厚生年金保険または国民年金の最近の月別納付状況
・老齢年金の見込額
35歳、45歳の方
以下の情報が記載された用紙と、年金加入記録の確認方法などを記載した「見方ガイド」、「ねんきん定期便」の内容にもれや誤りがあった場合に提出する「年金加入記録回答票」と「返信用封筒」を同封した「封書」が届きます。
・これまでの年金加入期間
・これまでの加入実績に応じた年金額(年額)
・これまでの保険料納付額
・これまでの年金加入履歴
・これまでの厚生年金保険における標準報酬月額などの月別状況(厚生年金保険の加入履歴がある方)
・これまでの国民年金保険料の納付状況(国民年金の加入履歴がある方)
59歳の方
以下の情報が記載された用紙と、年金加入記録の確認方法などを記載した「見方ガイド」、「ねんきん定期便」の内容にもれや誤りがあった場合に提出する「年金加入記録回答票」と「返信用封筒」を同封した「封書」が届きます。
・これまでの年金加入期間
・老齢年金の見込額
・これまでの保険料納付額
・これまでの年金加入履歴
・これまでの厚生年金保険における標準報酬月額などの月別状況(厚生年金保険の加入履歴がある方)
・これまでの国民年金保険料の納付状況(国民年金の加入履歴がある方)
「ねんきん定期便」の見方
次に、「ねんきん定期便」の見方を解説します。
「ねんきん定期便」の見方~おもて面<50歳未満>
(1)「照会番号」......「ねんきん定期便」に記載されている内容について問い合わせるときに必要です。
(2)「これまでの年金加入期間」......これまで、国民年金や厚生年金にどれくらい加入してきたかが記載されています。
※国民年金は、種別の内訳も記載されています。たとえば、配偶者の扶養に入っている人は、「第3号被保険者」の欄に加入期間が記載されています。
※厚生年金は、民間・公務員・私立学校の内訳も記載されています。
(3)「加入実績に応じた年金額(年額)」......年金の見込額が記載されています。これまでに支払った保険料に基づいて計算したものなので、加入期間が短い方であればあるほど、金額が少なくなります。今後も、保険料を支払っていけば、受け取る年間の額が増えていきます。
(4)「保険料納付額(累計額)」......過去に支払った年金保険料の累計が記載されています。
「ねんきん定期便」の見方~おもて面<50歳以上>
(1)(2)の見方は、50歳未満の方と同じです。
(3)「老齢年金の種類と見込額」......年金の支給開始年齢と予想額が記載されています。
(3)-1 65歳以降に受け取る年金の見込額が記載されています。
(3)-2 厚生年金保険の支給開始年齢は65歳と法律で定められていますが、特別支給と言って、以下の条件に該当する方のみ、支給開始年齢が早まります。特別支給に該当する方は、この欄に開始年齢と年金の見込額が記載されています。
・昭和36年4月1日以前に生まれた(男性)。
・昭和41年4月1日以前に生まれた(女性)。
・老齢基礎年金の受給資格期間(10年)がある。
・厚生年金保険等に1年以上加入していた。
・60歳以上。
なお、老齢年金の種類と見込額には、厚生年金基金から支給されている額は含まれていません。実際に年金が支給されるときは、厚生年金基金分も含めた年金が支給されます。
「ねんきん定期便」の見方~うら面
(1)「お客様のアクセスキー」......ねんきんネットにアクセスするための「アクセスキー」が記載されています。
(2)「これまでの保険料納付額」(50歳以上のみ)......これまで支払った年金保険料が記載されています。
(3)「ねんきん定期便」の作成日」......「ねんきん定期便」を作成した年月日が記載されています。
(4)「最近の月別状況」......過去1年間の年金の納付状況がわかります。厚生年金に加入されている方は、標準報酬額も記載されています。
「ねんきん定期便」、最低限抑えるべきポイントは?
「いろいろ記載されているけど、どこを見ればよいかわからない」――。そんな方は、以下の3つだけでも抑えておきましょう。
【加入期間】
加入期間が少ないと、年金の受給資格を失ってしまいます。「ねんきん定期便」が届いたら、「年金を受け取るために必要な資格期間」を満たしているか必ずチェックしましょう。満たしていない方は、あと何か月払えば資格を得られるのかチェックしましょう。
・年金を受け取るために必要な期間......合算して10年
・遺族年金を受け取るために必要な期間......合算して25年
・加給年金や振替加算がつく......厚生年金だけで20年
・長期加入者の特例に該当......1種類の厚生年金だけで44年
【支給開始年齢】
前述の通り、「特別支給の老齢厚生年金」に該当する方は、年金の支給開始年齢が65歳よりも前になります。
【年金額】
「思っていたよりも多い!」「いや、少ない」など、一喜一憂しがちな年金額ですが、「ねんきん定期便」が届いたら必ずチェックしたい項目です。将来、年金をいくらもらえるのか。見込額がわかるだけでも、助かりますよね。
便利!「ねんきんネット」の使い方
調べものや大切な情報はパソコンで管理している、という方も多いのでは。そんな方には「ねんきんネット」の利用がオススメです。ねんきんネットでは、電子版の「ねんきん定期便」を閲覧できるほか、年金記録や年金見込額、日本年金機構から郵送された各種通知書を確認することができます。
なお、はがきや封書で届く「ねんきん定期便」には、アクセスキーは記載されているものの、基礎年金番号は記載されていません。これは、アクセスキーが第三者に悪用されるのを防ぐためです(平成28年度「ねんきん定期便」にはアクセスキー記載がなく、基礎年金番号がされています)。
ねんきん定期便が手元にある場合
「ねんきん定期便」の裏面に記載されているアクセスキーを用意しましょう。そうして、「申請用トップページ」の「ご利用登録(アクセスキーをお持ちの方)」から入りましょう。
アクセスキーや基礎年金番号などの情報を入力すると、ねんきんネットを利用できるようになります。
アクセスキーを持っていない場合は?
アクセスキーの有効期限は3ヶ月のため、期限が切れた場合、使うことができません。そんな場合でもねんきんネットの利用は可能です。
同じように「ご利用登録(アクセスキーをお持ちでない方)」から入り、アクセスキー以外の内容を入力しましょう(基礎年金番号などは必要です)。入力が完了したら、「ユーザーID」が郵送されてくるので、その情報を入力すればねんきんネットを利用することが可能です(郵送されるまで5営業日程度時間を要します)。
「ねんきん定期便」が届かなかったら?
公務員や学校に勤務している人は共済組合に加入しているため、「ねんきん定期便」は届きませんが、それ以外の方は原則として、必ず届きます。誕生月に「ねんきん定期便」が届かなかったら、以下の理由を疑ってみましょう。
【住所が変わった】
「ねんきん定期便」は、登録している住所に送付されます。そのため、引っ越しなどで現住所が変わった人は、住所変更を届け出ましょう。
・国民年金......お住まいの市区町村の国民年金窓口で住所変更手続きを行う。
・厚生年金......勤務している会社に確認して、変更の手続きを依頼する。
【海外に住んでいる】
「ねんきん定期便」は日本在住の方が対象となるため、海外に移住している方には届きません。ただし、日本年金機構のサイトから申し込みをすることで、「ねんきん定期便」が届くようになります。
【上記以外の理由】
「住所が変わったわけでもないし、海外に移住もしていない。それでも「ねんきん定期便」が届かない」という方は、すぐに日本年金機構へ相談しましょう。
まとめ:「ねんきん定期便」から老後のプランを考えよう
将来のライフプランを考えるにあたって、どれくらい年金が受給できるかを把握することは欠かせない情報です。
「夫婦でこれくらい受給できるなら、この歳でリタイアしてもいいなあ」「フルタイムではなく、アルバイトでもやっていけるかな」などの選択肢が生まれるかもしれません。
ぜひ、「ねんきん定期便」の情報を有効に活用して、老後のライフプランづくりに活かしてください。
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