業務の棚卸しから採用の第一歩が始まる!| 中高年採用のススメvol.3

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経験を持った中高年者を業務の中で活かすには、採用を行う前に「求める経験」を具体化しなければなりません。しかし、それを洗い出すためには自社業務の洗い出しをどこまでできるかが鍵を握ります。谷所健一郎氏から、中高年採用を成功させるポイントについてお届けする連載3回目。

中高年採用を考えるにあたって行うべきこと

一般論として、中高年者の採用は若年層と比べ倍率も低く、単に「採用する」という点だけを考えれば、そのハードルは比較的低めです。

しかし、当たり前の話ですが、ただ「中高年者を採用する」ことだけを目的にしては意味が有りません。組織を活性化し、経営を推進させることのできる人材の採用ができて、はじめて採用は成功と言えます。

そのためには「どうすれば組織を活性化できるのか」そして「どうすれば経営を推進させることができるのか」を、採用を行う前に明確にしておかなければなりません。そこで有効なのが、「自社業務の棚卸し」です。

新しい採用を行うには上長や経営層の承認を得る必要がありますが、そのための材料となるのが棚卸しに基づく業務割り振りなのです。

自社業務の棚卸しから採用の成功が始まる

ここでいう「自社業務の棚卸し」とは、経営コンサルタントを入れるなどの大規模な業務改善ではありません。まずは「どこに、どんな人材が足りないのか」を把握するための糸口を探す作業と捉えてください。

一つの参考となるのが、2017年に中小企業庁が発表した人手不足に対する事例集です。
「中小企業・小規模事業者の 人手不足対応事例集」
この中では「取り組み前」「取組み後」を紹介しており、具体的な課題とどのように解決したかがイメージできます。

この事例を参考にしながら、自社の人手不足の原因がどこにあるのかを追求。そうすれば「人の頭数はそれなりに充足しているが、労働時間が短いこと」にあるのか。「人の頭数も足りないし、労働時間も法的な限界まで達している」ことにあるのか。はたまた、「実労働をする人手は充足しているのに、マネジメント人材がいないため組織が上手く稼働していない」ことにあるのか。大まかな把握をすることが可能です。

例えば、飲食業、宿泊業などで「そもそも現場でサービスを実践する人材がいない」ということであれば、パート人材を入れることで対応する。もしくは、それぞれの生産性を上げるためにマネジメントができる人材を入れる。または、一人ひとりをハイパフォーマーにするために研修を実施するなど、様々な解決策が検討できます。

そこでさらに「こういうスキル・経験を持った人」であれば解決できるという人材像をイメージし、それが中高年層でも代替できるというイメージを持つことができれば棚卸しの第一弾は完了です。

洗い出したタスクに、具体性と締切を設定する

今度は、先程の棚卸しでイメージしたことを、言語化していきましょう。漠然とした印象による採用は失敗に直結します。採用する人材に任せるべき明確なミッションを洗い出し、さらに、締め切りなどの具体的な設定を行いましょう。

例えば、「介護施設で人手が足りない」というのであれば、
A:日中または夜間の現場での人手(頭数)が足りない
B:頭数は足りているけれど事務作業などが多いため現場が回っていない
上記のように人手が足りない要因を掘り下げます。

Aが原因であれば足りていないシフトを充足させられる人材を入れれば解決します。
Bが原因であれば現状の「事務作業の負担を軽減させるノウハウ」を持った人材を入れれば解決に繋がります。

Bの場合、「事務作業の負担を軽減させるノウハウ」という漠然としたところから更に掘り下げ、「入居者へのサービスを実践している時間」と「デスクワークの時間」を計測。一人あたりの作業生産性を図るなどすれば、どれくらい事務作業の負荷を軽減させれば「人手不足の解消」につながるかを数値化することも可能です。

ここまでを自社で整理するのは荷が重い、と考えるのであれば、自社で整理だけは行い、改善方法については応募してきた中高年人材に手法から提案してもらう、というのも一つの手です。その場合、結果を求める締切については面談時などで提示しておくことが重要です。明確な締切の提示を行うことで、応募者にとっても何をすべきかの具体的なイメージができるため、面談の中でさらに詳細な内容について詰めていくことも可能となります。

経営層、または人事部から現場への働きがけが成功の秘訣

採用ニーズの発信源は大きく2つ。それは「現場からのボトムアップ要望型」と、「経営的に必要とするトップダウン型」です。注意しなければならないのは、現場から吸い上げる場合の多くは「若い人が欲しい」という要望が必ず上がってくることです。特に若年層である必要がないにもかかわらず、「教育しやすい」「若いメンバーが多いのですぐに溶け込める」などの理由から、こうした要望が上がることは珍しくありません。

そのため、中高年採用を始める場合、まずは経営者(または人事部)から現場に、「助っ人外国人」としてどんな役割を任せる予定かということを具体的に周知しておくことが効果的です。計画を主導しているのが人事部であっても、経営者を説得・根回しすることで最終的な通達を経営層から発信してもらうことが肝です。

とはいえ、導入において現場からの反発が生まれる場合もあるため、例えば以下のような施策も合わせて検討しておくと効果的です。

・半年間は人件費・採用費を本部で持つ
・配属後、一週間は本部にて研修を行う
・半年に一度の振り返り研修を本部で継続的に行う

このような施策を織り交ぜながら、現場から「使えない」という声が出ないような根回しをすることで、まず中高年者を現場に落としこむことが重要です。

ホテルのベッドメイクや外食、コンビニでは、もうこれらの取組みを進めている企業も多く存在するうえ、「人との距離が近い仕事には中高年が向く」ことは多くの人が実感として持っているはずです。販売や営業などでも、商材によっては中高年の方が説得力を持つものも多くあります。

人生経験をうまく活用することを考え、適材適所の役割を与えていきましょう。

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