21世紀の新たな終の棲家?日本版「CCRC」とはどんなもの?
- ライフプラン・人生設計
- 公開日:2017年11月 6日
アメリカで生まれた「CCRC」という言葉をご存知でしょうか。高齢者が健康なうちに入居し、それ以降の人生を過ごすことが可能な生活共同体のことです。徐々に日本でも浸透しつつある、「アクティブシニアタウン」ともいえるこの生活スタイル。日本における特徴をご紹介していきます。
「CCRC」とはどのようなもの?
「CCRC」とは「Continuing Care Retirement Community」の略で、直訳すると「継続的なケア付きの高齢者たちの共同体」のことです。
仕事をリタイアしたシニア層が健康なときから入居し、介護が必要になっても一貫して支援サービスが受けられることを保証しているコミュニティーのことを指しています。
アメリカにおける「CCRC」
「CCRC」とはアメリカ発祥のものであり、1970年代から増加し始めました。アメリカでは、現在2000箇所の施設が存在し、約75万人が生活していると言われています。
施設によっての設備は、自分の好みを反映できるインテリアを取り揃えた住居、生活に必要なものが揃っている商業施設や図書館が併設されているなど多種多様。ボーリング場やゴルフ場などのレジャー施設が併設されている施設も多く存在しています。もちろん、医療・介護面は充実しており、要介護や認知症になったときの医療・介護面でのサポートだけでなく、要介護状態にならないための予防医療、健康指導の実践を行われています。
ここまで聞くと夢のような施設に聞こえますが、入居するには高額な投資が必要です。
それもそのはず、アメリカは皆保険制度がないため、老後の生活も、医療費も自己責任が原則。そのため、リタイア後の暮らし向きについても健康なうちに計画を立てる必要性が日本よりも高い、という事情が垣間見えます。
実際には、高齢者の3%しか入居していないといわれており、実質的には富裕層向けのサービスといえるでしょう。
日本における「CCRC」の形
アメリカよりも更に高齢化が進む日本においても「CCRC」は注目を集めています。特に、東京圏は今後急速に高齢化が進むため、その対応策としての日本版「CCRC」構想が進んでいます。
日本版「CCRC」は、「東京圏をはじめとする高齢者が、自らの希望に応じて地方に移り住み、地域社会において健康でアクティブな生活を送るとともに、医療介護が必要な時には継続的なケアを受けることができるような地域づくり」を目指すものとし、①高齢者の希望の実現 ②地方へのひとの流れの推進 ③東京圏の高齢化問題への対応 の3つが目的として掲げられています。
日本版で特徴的であるのは、「人を地方へ」の流れを取り入れていることです。これは東京都に住む50代60代男女の多くが「地方への移住予定、または移住を検討したい」と回答している事情がある背景があること。それに加えて、行政としても日常生活のコストが大幅に安い地方への移住を推進させる狙いがあるためです。
受け入れる地域としても、人が増えることにより医療・介護サービスの需要だけでなく、小売・外食・流通などの需要も高まるため、地域の経済が活性化することが期待されています。
しかし、住み慣れた東京から地方に移ることに対して抵抗を感じる方も多いため、近年では徐々に東京近郊の施設も増えてきています。
老人ホームや介護施設との違いは?
日本版「CCRC」構想では、入居する高齢者像の考え方において、これまでの高齢者向け施設・住宅とは大きく異なっています。
第一点は、従来の高齢者施設等は、要介護状態になってからの入所・入居が一般的ですが、日本版「CCRC」構想では、高齢者は健康な段階から入居を行い、できる限り健康寿命を伸ばすことを基本としています。
第二点は、従来の施設等では、サービスの受け手として「受け身的な存在」であった高齢者が、日本版「CCRC」構想では、地域の仕事や社会活動、生涯学習などの活動に積極的に参加する「主体的な存在」として位置付けられています。
第三点は、従来の施設等は、高齢者だけで居住しており、地域社会や子どもや若者などとの交流は限られています。しかし、日本版「CCRC」構想では、高齢者が地域社会に溶け込み、地元住民や子ども・若者などの多世代と交流・共働する「オープン型」の居住が基本とされています。
費用はどれくらいかかるもの?
費用は老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅と同様に、「入居にかかる一時金」と、「月額利用料」のそれぞれが発生します。比較のために従来の介護施設に入る場合の目安金額と一緒にまとめました。
※「特別養護老人ホーム」はコストが非常に安くなっていますが、原則「要介護度3」以上の人でなければ入所できず、特に都心部では競争率が高いため入居待ちが多く発生しています。そのため、コストだけで検討するのではなく、自身にあった諸事情を含めて検討していく必要があります。
「CCRC」における入居にかかる一時金は、施設のグレードにより大きく異なりますが、1千万から数千万円が相場の模様です。都市部と地方の施設でも大きく異なっています。
月額利用料については、「一般的な退職者(厚生年金の標準的な年金額21.8 万円の高齢者夫婦世帯)が入居できる費用モデルを基本としつつ、富裕層も想定した多様なバリエーションも可能とする」とあるため、アメリカのような富裕層を対象としたサービスではありません。そのため、一般的な世帯収入でも入居が可能な施設が多いようです。
まとめ
「CCRC」の既存の介護施設などと大きく異なるポイントは、地域の住民と関わりながら働けたり、社会活動や生涯学習に積極的に関与できること。いつまでも刺激を感じながら暮らしていくことで、健康寿命を保ちながら長く生活していけることがメリットといえるでしょう。
既存の施設の多くは地方に存在していますが、近年では首都圏近くの施設も増えてきているため、これまでのコミュニティと接点を持ちながら緩やかに新たな環境に慣れていくことも可能になってきています。
施設のグレード・サービスによって入居にかかる一時金なども大きく変わってきますので、どのような地域で暮らしたいのか、そこにかかるコストはどれくらいで収めたいのかなど、希望の条件をあらかじめ検討したうえで、様々な情報を収集していくことが、理想の終の棲家を見つけるポイントになるでしょう。