消費税申告の期限は?申告書の書き方や申告し忘れた時の対処法まで紹介
- 独立・起業
- 公開日:2025年12月24日
インボイス制度が始まったことで、これまでは消費税申告の必要がなかった人も、消費税申告の対象者となっている場合が増えています。しかし、消費税の申告期限がいつかわからない、期限を忘れている人もいるでしょう。今回は消費税申告の期限から、必要な書類、書き方、忘れてしまった場合について解説します。インボイスに登録した人、これから課税事業者となる人は、ぜひご一読ください。
個人事業主の消費税申告の期限は原則3月31日まで
個人事業主で、消費税申告の必要がある人の申告期限は、原則課税期間の翌年の3月31日までです。2025年分の消費税申告をする場合は、2026年3月31日までに行う必要があります。
申告の開始は事業年度の終了翌日の、1月1日からとなります。ただし、所得税の確定申告と同時に行われる場合がほとんどのため、2月16日〜3月15日までに2つとも済ませておく、と考えておけば問題ないでしょう。
消費税申告の対象者
そもそも自分が消費税申告の対象者となっているか、わからない人もいるでしょう。消費税申告は、課税事業者となった場合に行う必要があります。反対に、免税事業者となった場合は申告義務はありません。以下では、課税事業者になる人と、免税事業者となる人について解説します。
課税事業者
以下のいずれかの条件を満たしている場合は、課税事業者として消費税の申告が必要です。
■課税事業者の条件
• 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている場合
• 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合
• 適格請求書(インボイス)発行事業者として登録を受けた場合
上記期間の課税売上高が1,000万円未満であっても、インボイス発行事業者となっている場合は、消費税の申告が必要です。個人事業主は事業年度が1月1日〜12月31日と決まっていますが、法人は決算日を自由に設定できるため、日付が異なります。
■個人事業主の基準期間と、特定期間
• 基準期間:前々年の1月1日〜12月31日
• 特定期間:前年の1月1日〜6月30日
■法人の基準期間と、特定期間
• 基準期間:前々年の事業年度
• 特定期間:前年の事業年度開始の日以後6ヶ月間
免税事業者
課税事業者の条件に該当しない人は、自動的に消費税申告の義務がない免税事業者となります。また、事業1年目の場合は、基準期間や特定期間の売上がないため、必然的に免税事業者とされます。ただし、適格請求書の登録を受けた場合は、事業開始1年目であっても、課税事業者として消費税申告が必要です。
消費税申告の計算方法
消費税申告の際、状況によって用いられる計算方法が異なります。自身はどの計算式を利用できるのか、一度ご確認ください。
原則課税方式(一般課税)
消費税の計算は、課税売上高にかかる消費税額から、仕入れや経費で支払った消費税額を引いて求めます。原則課税方式の場合は、以下の式に当てはめて計算します。
• 課税売上高にかかる消費税額ー仕入れなどで支払った消費税額=納付する消費税額
【計算例】課税売上高が700万円、仕入れや経費が200万円、消費税率が10%だった場合
• (700万円×10%)-(200万円×10%)=50万円
⇒納付する消費税額は50万円
正しい金額を計算するためには、売上を"課税取引"と"非課税取引"、仕入れを"課税取引"と"非課税取引"と"不課税取引"へ仕分ける必要があります。さらに、標準税率の10%と、軽減税率の8%とに区分をして計算を行います。
簡易課税方式(簡易課税制度)
簡易課税方式は原則課税方式とは異なり、課税売上高にかかる消費税額に対して業種ごとに決まっている、みなし仕入れ率をかけて求めます。
• 課税売上高にかかる消費税額ー(売上にかかる消費税額×みなし仕入れ率)=納付する消費税額
自身の事業がみなし仕入れ率を、適用できるかどうかは、以下の表をご確認ください。
| 業種 | みなし仕入れ率 | |
| 第1種事業 | 卸売業 | 90% |
| 第2種事業 | 小売業など | 80% |
| 第3種事業 | 農業・林業・漁業・鉱業・建設業・製造業・電気業・ガス業・熱供給業・水道業 | 70% |
| 第4種事業 | 飲食店業などほかに該当しない事業 | 60% |
| 第5種事業 | 運輸通信業・金融業・保険業・飲食以外のサービス業 | 50% |
| 第6種事業 | 不動産業 | 40% |
【計算例】小売業で課税売上高が3,000万円だった場合 ※みなし仕入れ率は80%
• (3,000万円×10%)-(3,000万円×10%×80%)=30万円
⇒納付する消費税額は30万円
原則課税方式とは異なり、簡易課税制度では非課税取引を区別する必要はありません。また、簡易課税方式を選択できるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者のみで、事前に税務署へ「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。
2割の特例
インボイス制度が始まったことをきっかけに、2023年10月〜2026年9月までの措置として、2割の特例が設けられています。2割の特例は、以下の計算式で納税額を求められます。
• 課税売上高にかかる消費税額ー(売上にかかる消費税額×80%)=納付する消費税額
2割の特例を受けるには、以下の条件を満たしている必要があります。
■2割の特例の条件
• インボイス発行事業者である
• 免税事業者からインボイス発行事業者になった人
• 資本金が1,000万円未満の新設法人
• 課税期間短縮の適用を受けていない
• 2割特例を適用できない場合に該当しない
もし該当していれば、簡易課税制度よりも納税額を抑えられる可能性もあるため、まずは利用できないか確認しましょう。
消費税申告をする方法
消費税申告をする際に必要な書類や、記入方法、提出から納税までの流れをご紹介します。事前に流れを確認して、スムーズに申告を行いましょう。
必要書類
消費税申告を行う際には、以下の書類を用意しましょう。
■原則課税方式の場合
• 申告書第一表
• 第二表
• 消費税及び地方消費税確定申告書(一般用)
• 付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表
■簡易課税方式の場合
• 申告書第一表
• 第二表
• 消費税及び地方消費税確定申告書(簡易用)
• 付表5 控除対象仕入税額の計算表
■2割特例の場合
• 申告書第一表
• 第二表
• 付表6 税率別消費税額計算表
どの方式を利用するかによって、必要となる書類も異なるため、間違えないように注意しましょう。
書類の作成方法
書類は、作成方法によって提出方法も異なります。
■e-tax
e-taxから提出する場合は、国税庁のHPから確定申告書作成コーナーで作成可能です。ガイドに沿って入力するだけで、簡単に提出までできます。
■会計ソフト
確定申告用の会計ソフトも、ガイドに沿って入力すれば書類が作成されるようになっています。
■手書き
手書きで書類を作成する際は、申告書第一表と第二表、付表に必要な情報を記入します。提出書類は税務署から送付されるものを使用する、または国税庁のHPから印刷しましょう。
提出と納税の方法
消費税申告書は、所得税の確定申告書類と同様に、郵送・窓口・e-taxでの提出が可能です。納税方法は、以下の7つから自身の都合に応じて選べます。
■納税方法
• 振替納税
• ダイレクト納付
• インターネットバンキング
• クレジットカード
• スマホアプリ
• コンビニ納付
• 現金納付
口座振替やインターネットバンキングから支払う場合は、利用前にe-tax開始手続きなどを済ませておく必要があります。また、スマホアプリとコンビニ納付は、納税額が30万円以下の場合にのみ利用できる方法です。
消費税申告を忘れた場合
消費税申告を忘れた場合は、すぐに必要な書類を税務署へ提出しにいきましょう。法定申告期限を過ぎていても、提出は可能です。ただし、申告期限を過ぎているため、ペナルティが発生します。個人事業主で3月31日までに申告をしなかった場合、延滞税もしくは無申告加算税が発生します。
延滞税
延滞税は、法定納付期限の翌日から納付が完了する日までの日数に応じて課税されていく税金です。課税割合は、納付までの期間によって異なります。
■延滞税の課税割合
• 納期限の翌日から2ヶ月を経過するまで:原則年7.3%
• 納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以後:原則年14.6%
無申告加算税
申告を忘れていた場合は、無申告加算税が適用されます。税務署から調査の事前通知が届いているか、金額によって課税の割合は異なります。
■無申告加算税の課税割合
• 納付税額が50万円未満:10%
• 納付税額のうち50万円をこえる部分:15%
• 納付税額のうち300万円をこえる部分:25%
• 税務署からの事前通知前に自主的に申告した場合:5%
参照元:国税庁 確定申告を忘れたとき
なお、期限後申告が法定申告期限から1か月以内に自主的に行われている場合は、無申告加算税は発生しません。
消費税申告をする際の注意点
消費税申告を行う際は、以下の3つのポイントを事前に知っておきましょう。
所得税の確定申告とは別になる
毎年2月16日〜3月15日までに行われる所得税の確定申告の書類を提出すれば、完了と思っている人もいるかもしれません。消費税の申告は所得税の確定申告とは異なるため、確定申告期間に所得税と消費税のそれぞれの申告を行う必要があります。
例年通り所得税のみで消費税の申告を忘れていると、延滞税などが発生する可能性もあるでしょう。忘れずに所得税と消費税の2つの税金について、確定申告を行いましょう。
中間申告が必要な場合がある
消費税申告で算出された消費税額によっては、中間申告が必要となる場合があります。対象となるのは、直課税期間の確定消費税額が48万円を超えた人です。個人事業主で中間納税を行う場合は、以下の期間で中間申告を行います。
■中間申告の期間
• 1月〜3月分:5月末日
• 4月〜11月分:中間申告対象期間の末日の翌日から2ヶ月以内
中間申告の納付金額を計算するには、予定申告方式と仮決算方式の2種類があります。
■予定申告方式
前事業年度の法人税額等の半分を、半期経過後から2ヶ月以内に納税する方法です。
■仮決算方式
事業年度開始から、半年間をひとつの事業年度と考えて中間決算を行い、その内容に基づいて申告を行う方法です。
仮決算方式の方が予定申告方式よりも手間はかかりますが、資金繰りが楽になる可能性があるでしょう。この2つの方式は毎年自身で選べるため、その時の都合に応じて楽な方を選択しましょう。
引き落としで納税するなら残高に注意
納税方法を口座引き落としにした場合は、残高が十分に口座に準備されているか注意しましょう。確定申告の際に振替納税を選択すると、口座引き落としとなり、期限がきた際に自動で納税ができます。
ただし、申告から引き落としまでは時間が空くため、期限と金額に気をつけていないと、残高不足で納税できないとなる場合があります。残高不足に気づけず、引き落としができなければ、延滞税などがかかる可能性もあるでしょう。せっかく申告したのに、納税できなかったとならないよう、口座の残高には十分注意をしましょう。
まとめ
消費税申告の期限や、申告を忘れた際の対処法についてご紹介しました。個人事業主の場合、消費税申告は毎年1月1日〜3月31日までです。所得税の確定申告が、毎年2月16日〜3月15日までですので、同じ期間に行えば申告漏れは防げるでしょう。
申告書類はパソコンを使用して作成すれば、特に専門知識がない人でもすぐに作成できます。国税庁の確定申告コーナーや、確定申告用の会計ソフトを活用して、作成から提出まで行いましょう。もし申告を忘れた場合は、すぐに近くの税務署へ書類を提出する必要があります。
法定申告期限を過ぎている場合は、延滞税や無申告加算税などのペナルティが、納付までの期限や金額に応じて発生します。インボイス制度に登録した際や、課税売上高が1,000万円を超えた場合は、消費税の申告が必要となることを忘れないようにしましょう。