墓じまいの流れや金額は?トラブル対策や墓じまい後の永代供養塔などの選択肢も紹介
- ライフプラン・人生設計
- 公開日:2025年12月 3日
ミドルシニア世代では、墓じまいを検討している人が増えてきています。今回は、墓じまいを検討している人の割合や理由、墓じまいの費用相場、墓じまいの流れなどを解説します。墓の管理が難しい、継承者がいないという人は、ぜひ最後までお読みください。
墓じまいを検討している人はどのくらいいる?
墓じまいを検討している人はどのくらいいるのか、どういった理由で墓じまいをしたのかについて見ていきましょう。
「第3回 改葬・墓じまいに関する実態調査(2024年)」の結果では、ユーザーの80%以上が墓じまいを実施した・実施を検討していると回答しました。回答した人の多くは50〜60代となっており、親や親族の葬儀などで墓を今後どのように管理するかの問題に直面して、検討し始める人が多くいます。
墓じまいを検討する理由のTOP3は、以下の通りでした。
①墓が遠方にある:54.2%
②墓の継承者がいない:44.8%
③墓の維持・管理費用がかかる:27.4%
検討している人のほとんどが、管理が難しい環境になったことを理由に挙げています。都市化や少子化が進んでいる影響で、今後も墓じまいをする人は増加していくでしょう。
また、墓じまいを検討したが実施しなかった人の理由についてもご紹介します。
• 解体・離檀料が高すぎた
• 家族や親族の同意を得られなかった
• 手続きが面倒だった
墓の解体の相場は、1平米あたり10〜15万円と言われていますが、解体方法や地域によって値段は異なります。場合によっては相場よりも高額になり、予算を大幅に超えてしまうために、断念する人も多くいます。
墓じまいを検討する人もやめた人も、心理的な理由より墓の管理や解体費用などの物理的な理由が上位にあがっていました。
墓じまいにかかる費用相場
墓じまいにかかる費用相場について、項目ごとに解説いたします。
• 解体・撤去費用:1平米あたり10〜15万円
• 書類の交付費用:数百円〜1,000円ほど
• お布施などのお礼:2〜5万円
• 離檀料:3〜20万円
• ご遺骨のメンテナンス費用:1体2万円〜
• 新規墓所にかかる費用:3万〜250万円
墓じまいから新たな納骨を行うには、数十万〜300万円程度の予算は必要となるでしょう。各項目の詳細は、以下でご紹介いたします。
解体・撤去費用
解体や撤去の際は1平米あたり10〜15万円が相場とされていますが、作業時間・作業人数・墓石の大きさなどによって費用は変動します。大きな墓石の場合は、撤去するのに20万や30万円かかるケースもあります。
書類の交付費用
墓じまいから改葬をするまでには、行政へ書類の提出が必須です。交付される書類の発行には、数百円〜1,000円ほどの手数料が発生します。
お布施などのお礼
墓を閉じる際の閉眼供養や新規墓所での開眼供養では、僧侶にお礼としてお支払いを行います。相場は2〜5万円ですが、地域によって異なるため、相場の額よりも多くなるケースもあるでしょう。同じ地域で墓じまいを経験した人がいたら、先にどのくらいお礼を支払ったか聞いておくと安心です。
離檀料
檀家を離れる場合は離檀料が必要となります。お寺や墓地との関係性、年数などによっても変わりますが、相場は3〜20万円です。ただし、離檀料は明確な基準や法律的な強制力などはないため、場合によっては高額な離檀料を求められるケースもあります。
もし、納得がいかない金額を提示された場合は、直接話し合いを行います。離檀料について不安がある際は、消費生活センターなどに相談しましょう。
ご遺骨のメンテナンス費用
長年、墓に入っていたご遺骨は傷んでいる場合もあるため、洗浄などの作業が必要です。専門の業者に依頼すると、1体2万円〜メンテナンスを行ってもらえます。ご遺骨の数が少なければ少額で済みますが、数が増えるとその分メンテナンスの費用も嵩みます。
メンテナンス自体は自身でもできるため、費用と手間を考えてから依頼をするか検討してください。細かく粉状にする際は、1万円程度で行ってもらえるでしょう。
新規墓所にかかる費用
改葬先で納骨をする場合、開眼供養や移動のための費用が発生します。合祀墓に納骨をする際は10万円ほど、数年納骨堂に安置した後に合祀墓へ移動するなら30〜50万円、一般墓所へ移動するなら80〜250万円ほどと、納骨の方法によって費用が大幅に変わります。
墓じまいの際には今後の管理や継承者との関係性、予算も考慮したうえで新たな納骨先を決めてください。
実際に墓じまいにかかった費用
実際に墓じまいにいくらかかったのか、気になる人も多いでしょう。
「第3回 改葬・墓じまいに関する実態調査(2024年)」では、31〜70万円の回答が最も多かったです。しかし、人や地域によって費用帯は異なることもわかりました。
• 30万円以下:16.0%
• 31〜70万円:24.2%
• 71〜110万円:19.5%
• 111〜150万円:15.6%
• 151万円:15.2%
相場よりも安くなる人もいれば高くなる人もおり、墓の大きさや納骨先によって、費用は全く異なってくるのがわかります。
墓じまいの流れ
一般的な墓じまいの流れついてご紹介します。墓じまいを検討している人は、事前に流れを確認しておきましょう。
1.親族間で相談・合意を得る
墓じまいを検討し始めたら、後からトラブルになるのを防ぐために、まずは家族や親族と話し合いをしましょう。なぜ墓じまいを考えたのか、墓じまい後のお骨の供養方法などについても、丁寧に説明しましょう。
墓じまいに合意を得られた後は、費用負担やお骨の供養方法なども相談してください。話し合いの前には大体のお骨の数や費用相場、改装後の納骨方法についても調べておくとスムーズに進みます。話し合いで決まった内容は、後々トラブルにならないように覚書などを作っておくと安心です。
2.改葬に必要な書類や手続きの確認
地域によって改葬のために必要な手続きが異なるため、事前に墓がある地域の役所のホームページで、手続き内容などを確認しましょう。書類を取り寄せる必要があったり、申請に時間がかかったりするケースもあるので、墓じまいをすると決まったら、早めに確認してください。
3.墓地の管理者へ改葬したいことを連絡
墓じまいを決めたら、墓地の管理者へ改葬したい旨を連絡し、「埋葬証明書」を発行してもらいます。代々お世話になった寺院墓地の墓じまいをする際は、トラブルを回避するためにも、事情や理由を丁寧に伝えておきましょう。
納得してもらえないと、高額な離檀料を請求されるなどのトラブルとなるケースもあるため、しっかりと経緯などを説明できるように準備しておいてください。
4.新しい納骨先の決定
墓じまい後に納骨する先を決定します。遺骨は勝手に遺棄することを法律で禁じられているため、別の納骨先を選ばなければなりません。永代供養・合祀墓・樹木葬など、さまざまな方法があるので、費用や管理の手間などを比較して決定してください。新しい納骨先を決めたら、受け入れ先の管理者に「受入証明書」を発行してもらう必要があります。
5.墓じまいの依頼先を決定
墓じまいをするために、石材店や専門業者に墓石の解体・撤去を依頼します。寺院や霊園によっては、依頼できる業者が決まっているところもあるため、事前に指定の業者はないか確認しておきましょう。自身で業者を選定する際は、複数から見積もりをとって費用相場やサービス内容を比較します。
6.改葬許可証の取得
墓のある自治体から「改葬許可証」を取得しましょう。墓地がある寺や霊園などから発行された「埋葬証明書」と、受け入れ先の霊園などから発行された「受入証明書」を、現在のお墓がある自治体に「改葬許可申請書」と併せて提出します。
申請書には故人の本籍・住所・火葬の日時と場所などの情報が必要です。事前に情報を集めておくと、スムーズに申請が行えます。書類に問題がなければ「改葬許可証」が発行されます。
7.遺骨の取り出し
「改葬許可証」が発行されると、遺骨の取り出しが可能になります。場合によっては、お墓に残る魂を抜いてもらう「閉眼供養」をお坊さんに依頼する必要があります。墓じまいを伝えた際に、閉眼供養が必要となるのか、費用はどのくらいになるかなどを確認しておきましょう。
8.墓石の撤去と使用権の返還
ご遺骨を取り出したら、業者に墓石の解体・撤去・更地にする工事を行ってもらいます。基礎部分もすべて撤去し、更地にしてから墓地の管理者へと使用権を返還します。遠方にお墓がある場合は、閉眼供養と同日に行うと一度の訪問で返還まで済ませられます。改葬する際は、返還後に改葬先にて開眼供養を行いましょう。
墓じまい後の遺骨の引っ越し先
墓じまいをした後、遺骨を新たな場所へ移動させる必要があります。新たな引っ越し先には、7つの候補があります。
一般墓所
遠方にあった墓から、自宅近くの一般墓所に再納骨をするケースです。別の寺や霊園に引っ越しをするので、今までのようにお墓参りができるほか、個々のスペースを確保できます。ただし、新しく墓を建てると80〜250万円ほどの費用が必要となる点や、今後の管理について考える必要があるなどデメリットも存在します。
永代供養
永代供養は寺院などで遺骨を預かり、永代にわたって供養してもらえるお墓です。永代供養には無峰塔・宝篋印塔・石塔婆・五輪塔・多宝塔などの種類があります。墓を継承できる親族がいなくても供養をしてもらえるので、管理や維持への心配は必要ありません。
手元供養
手元で遺骨を管理したい場合は、綺麗な骨壷への保管やペンダントに入れるなどの手元供養もおすすめです。自宅でお参りができるうえ、いつでも故人を感じられるのはメリットとなります。
しかし、管理している人が亡くなった場合はその後の維持が難しくなるほか、紛失する可能性もあるため、管理についてよく家族で話し合っておく必要があります。
樹木葬
遺骨をシンボルツリーの周辺に埋葬する、樹木葬も選択可能です。一般墓所よりも費用が安くなる可能性があるので、特に少人数の納骨をする際に選ばれます。ただし、一度納骨すると取り出しができなくなる点は注意が必要です。
散骨
細かく砕いた遺骨を海や宇宙に撒く方法で、管理や維持の費用や手間はかかりません。ただし、粉骨にするための費用や、海洋散骨のための船のチャーター代などの費用が別途発生するため、予想よりも費用がかかる可能性があります。
納骨堂や屋内墓苑
納骨堂や屋内墓園など、決められた専用スペースに納骨できる施設を利用する方法もあります。立地の良い場所にあったり、バリアフリーに対応していたりと、高齢者でもお参りしやすい施設が多くあります。ただし、納骨スペースには限りがあるため、遺骨を納める際は粉骨にする必要があります。
合祀墓
合祀墓ははじめから複数の遺骨を一緒に埋葬するお墓で、骨壷から遺骨を取り出して埋葬します。他の納骨方法より費用が安かったり、手入れがいらなかったりと管理しやすいのがメリットです。埋葬場所は基本選べないので、どのあたりに納骨されたかわからないのはデメリットとなります。
墓じまいで起こりやすいトラブル
墓じまいを実施する際には、親族間・離檀料・石材店とのトラブルが起こりやすい傾向にあります。特に費用面では揉めやすく、親族間での費用負担の割合が決まらない、高額な離檀料を請求されたというケースもあります。
トラブルを回避するためには、事前によく話し合いを行い、各所に納得をしてもらってから始めること、覚書などを作成することです。また、離檀料や墓石の解体・撤去の費用が高額すぎると感じたら、消費生活センターなどへ相談もしましょう。
まとめ
墓じまいに必要な費用や墓じまいの流れについて解説いたしました。墓を管理できる人の減少や、遠方でお参りにいけないなどの理由で墓じまいを検討している人は増加しています。
墓じまいには手続きや話し合いなどが必要となるため、実施をするのには時間もお金も必要です。家族や親族が後悔をしない墓じまいの方法がないか、今一度ご検討ください。