【鼎談】人生100年時代、仕事人生80年時代

  • 100年時代のライフデザイン

立場の違うお三方から、ミドルシニアを取り巻く環境や、これからどのような目線で『人生100年時代、仕事人生80年時代』を捉えていくべきかを鼎談いただきました。

〈話者〉
ライフシフト大学 徳岡 晃一郎先生(右)
人生100年・仕事人生80年を見据え、中高年の学び直しの場、人生を豊かにするための視野拡大の場を提供する。

株式会社うぇるねす 代表取締役会長兼社長 下田 雅美(真ん中)
マンション管理業界の経営力の強化、人材の育成、サービスレベルの向上をサポートし、1000万人を超えるマンション生活者の豊かで快適なコミュニティーの実現に貢献する。また、全国で約2800人に及ぶマンション・サポーターが管理員として活躍中。

株式会社マイナビミドルシニア 代表取締役社長 道上 良司(左)
Mindset for Well-Being ~いくつになっても選択できるそんな明日をつくる~
をミッションステートメントに掲げ、ミドルシニア層に特化した人材サービスを展開する。求人サイト「マイナビミドルシニア」及び、人材紹介事業を中心にミドルシニア層の就業支援を推進している。

「ライフシフト」が世界的に話題に

――「ライフシフト」という言葉が世界的に話題となっています。ライフシフト大学では、まさにこのライフシフトに注目され、"80歳現役時代"と提言されていらっしゃいますが、そのことについてお話をお聞かせください。

徳岡:近年、医療の発達や食品の改善で相対的に男女ともに寿命が伸びています。日本で言えば、女性の最多死亡年齢は90歳を上回っているんですよ。人生100年に確実に近づいているんです。

昔のように60歳定年で会社員人生を終えて、80歳の寿命が来るまであとは"余生をゆっくり過ごせばいい"とはいかなくなってきているんです。
定年後にも30年から40年という長い人生が待っているわけですから、「どうやって有意義に過ごしていくのか」ということを考えなくてはいけなくなっています。

これは社会課題でもありますよね、若い人よりも高齢者の方が人数も多く、しかも元気だったりするわけで、こうしたシニア層が活躍してくれれば国の大きな資産になりうるわけですから。

高齢化の進んだ日本は先進事例として世界的にも注目を浴びています。そういう意味で、若いうちから人生100年なんだから80歳までは現役だという気持ちを持って毎日を過ごしていれば、ピンピンコロリで100歳まで元気で生き抜け、世界のモデルにもなると思うのです。


下田:ピンピンコロリっていえばね、うちの会社にいる2800人の管理員はみんなピンピンコロリを目指しているわけですよ。

道上:ピンピンコロリ、というのは?

下田:病気にならないで、介護も受けないで、寝たきりにもならずに寿命までイキイキと暮らしてきましょうよって。健康的に働いて、人生を全うしようという訳ですよ。私はピンピンコロリを率先している自称会長なんですけども。

道上:なるほどですね。徳岡先生も大学を創立されて三年を迎えられていらっしゃったり、下田会長のように会社としてシニア層の活用をもっと盛り上げていこうとしていたり、お二人とも様々な角度や視点から人生100年時代、80歳現役時代について真剣に取り組まれていることがわかります。

コロナを含む社会的にも大きな環境変化の今こそ、求職者も企業側も従来の固定概念を改め、人生100年時代に対応した意識の変革、変化へのチャレンジにもより、前向きになっていって欲しいなと思いますね。

下田:本当にそう。うちの管理員はもちろん感染対策をした上での話だけど、コロナ禍でも働いている人がほとんどだった。本人よりご家族の方が「こんなときに職場に行かない方がいいんじゃないのか」と心配されていた。
でも実際、コロナ禍で家に引きこもった人よりも働いていた人の方が元気だからね。

徳岡:その通りですね。

道上:御社の管理員さんは本当に溌溂としている方が多いように感じます。特にデジタルとシニア層を上手に結びながら、事業に取り組まれていますよね。

下田:年齢の壁って結局は自分で決めちゃうものだと思います。世間も良くないと思うよ、お年寄りはITに疎いとか勝手に決めちゃうでしょ。
うちの会社ではスマホが必須なんです。もちろん、中にはスマホって聞いただけで説明もろくに聞かずに帰ってしまう人もいますけどね、殆んどの人はすぐに使えるようになる。

要は、その人のやる気次第なんですよ。そこを引き出してあげるのも弊社の役目の一つですね。

シニア世代が社会で活用するために大切なこと

――現代は働き方も様々だと思いますが、株式会社うぇるねすではどういった働き方ができるのでしょうか。

下田:人によってはフルタイムで働きたい人もいるし、ある人は週に二、三日がベストって人もいる。だからうちでは業務委託という働き方もあるし、その人に合った働き方を提供できる仕組みを常に考えています。自分らしい働き方で社会に貢献できるシニアが増えたらいいと思いませんか?

徳岡:まさにこれはシニア活用の大きなテーマにもなると思うのです。企業の人事戦略として、これからはシニアをどう活用するのかといったところを考えていかなくてはならないのですが、その柱の一つがフレキシビリティです。

すなわち自由度のある働き方ができることは大切になってくると思うんです。ただ、企業側だけが頑張っても世の中としては上手く回らないですよね。

下田:そう、まず制度自体が可能性を否定している場合もあるよね。例えば、定年って考え方はあまり好きじゃない。自分で成長をそこでストップしていいみたいに言っているようでね。

道上:確かに元気な方は可能な限り働ければいいですよね。これまでは企業内の一部の若い人達からシニアの存在により、自分達の将来のポジションがいつまでも空かないとか、イノベーションの妨げとか、一様に思われていることもあったかと思うんですけど、必ずしも、そうではないんですよね。

シニアが持っているノウハウや知見、ネットワークを若い人にどんどん提供して、競合ではなく共生を目指せる社会にする必要があると考えます。

下田:それでいえば、アメリカやカナダと日本を比べて思ったことがあるんだけれども、海外のマンション事業では建物よりも人がメインになっている。日本では建物ありきのビジネスでしょう? 海外では人の生活に焦点が当たっているから近所の商店や病院に詳しい年齢を重ねた管理人さんが住人に慕われ、尊敬されていることが多い。

だから、やりがいも大きく違うと思いますよ。日本だとそうではないことが多いんじゃないですかね。高齢者を何となく厄介がる風潮があるじゃない。さっきの道上さんの会社組織の話じゃないけど。

道上:求人情報を出していて思うのは、日本だとマンションの管理員さんイコール清掃員さんというイメージ付けがされてしまっていますよね。下田さんのおっしゃるように、管理員さんがマンション生活者を支えてくれているコンシェルジュのような役割だという認識が薄いと思います。

ですから、そういった固定概念を変えていくことも、社会でシニア活用をするには大切なことかもしれませんよね。

80歳現役で働き続けるために

徳岡:あとは個人的な心構えも必要かと思いますね。自分自身もそうなのですが、80歳現役で働き続けるためには、やはり学び直しをしていく必要があると思います。

これを私の大学では"終身知創"と言っていますが、デジタル化の波や時代の変化に追いついていくためにも、ミドルやシニアの間から学びを通して、常に自分はどのように社会と接して世間に貢献できるかということを考える必要がある気がします。

できれば二十代から自分のキャリアを見つめて人生設計を考えておくといいと思いますよ。

下田:徳岡先生のおっしゃるように、学び直しもそうだし、何かに向かって目標を持っておくっていうのは本当に大切だと思います。これもやりたい、あれもやりたいって人はやっぱり元気だと思うから。

だから、人生100年時代じゃなくてもいいと思うんですよ。人生100年通り越し時代でも。要は、自分で壁を決めないで果敢にいろんなことにチャレンジできる人生は精神的にも身体的にも健康ですよねって。

道上:まさに、求職者さんたちは自分たちで壁を決めてしまっている方が多い気がします。新卒で営業しかやったことがないから「こういう仕事は向いていない」と決めつけて職探しをするんですよ。やってみないと自分に合うか合わないかはわからないと思うんです。まずは動いてみるってことが大事かと。

まずはやってみる、まずは登録会に行ってみる、まずはサイトで仕事を探してみる、という風に動けばそこで未来が変わってくると思います。
弊社ではミドルシニアへのサポートのために、様々な取り組みをさせていただいています。「Well-Pass(ウェルパス)」をスタートさせたのもその一環です。

下田:へぇ、どんなものなの?

道上:参加者自身が自由にテーマを設け、今、何に悩んでいるのか、自分はこうして乗り越えた、といったことを互いに共有して、前に進める場の提供ができたらと。

先日、第一回目をやらせていただきましたが発見が多かったです。中には、子育てに悩んでいるママさんが先輩ママから「自分も本当に大変だったけど、後から振り返れば、とっても素敵な時間なのよ」って応援の言葉をかけられて、泣いてしまった方もいらっしゃいました。

徳岡:男性だけでなく、女性も働く時代になったから。そういった取り組みはいいですね。

うございます。

徳岡:これから人生100年時代を考えるにあたっての働き方は、ポートフォリオウォーカーが合っていると思うんですよね。

下田:ポートフォリオウォーカー?

徳岡:自分の時間を様々なことに使いつつ、働くということです。本業だけでなく、副業もして、もちろん子育ても。無理せず、フットワークは軽く、少しずつ稼いでやりたいこともやっていくというような。

下田:いいですね。あとは健康ね。体もそうだけど、心も大事。

徳岡:その通りです。いくら長生きしたところで健康でなかったら意味がないですから。ピンピンコロリで頑張りたいです。

道上:そうですよね。私もまだまだ頑張らないと。

下田:そうだよ。現役100年時代で考えると、ミドルシニアはまだまだ鼻たれ小僧(※若年者という意味)なんだから。
自分で可能性を否定しないで広い視野で考えていかなくては。せっかく一度の人生ですからね。

まとめ

立場の違うお三方からはこれからの日本の未来に期待する思いや、ミドルシニアのうちにシニアの生き方を見つめることの大切さを聞かせていただきました。

そこに共通する思いは目標を持ち、前向きに働くことができる社会の実現を願っている、社会を牽引するリーダーたちの熱い気持ちでした。

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