60代男性の転職体験談 | 60歳を過ぎても自分の軸を定めれば、希望の仕事はきっと見つかる

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奥様とお二人で暮らす小室さん(仮名)63歳。長年勤めた会社を62歳で退職。60歳を過ぎてからの仕事探しについてお話を伺いました。

大学を卒業後、大手流通会社へ入社。店舗経験を積んだのち、本社の商品開発へ

東京で生まれ育った私。大学卒業までを東京で過ごしました。実家が洋品店を営んでいたこともあり自然とアパレルや小売に興味を抱き、就職活動では流通系や小売店を志向。

百貨店なども受験しましたが、内定をいただいた量販店を展開する大手企業に就職を決めることに。入社後、配属されたのは横須賀のスーパーマーケット。希望していた衣料品の担当となりました。

店舗の仕事は、量販店の基本そのもの。仕入れを行い、売り場を作り、お客様へ接客し、代金をいただく。細かな工夫一つが売上につながることも多く、楽しみながら働いていました。

当時のスーパーマーケットは大量仕入れ・大量販売を事業戦略とし、安売りのスタイルで成長を目指す会社が多い中、自社は衣食住を総合的に販売していく「質販店」を標榜。品質にこだわる姿勢に共感を抱いていました。

そうして店舗を経験した後、入社10年目で希望していた本社商品部のバイヤーへと異動。仕入れのみではなく、プライベートブランド(PB)商品の開発にも携わりました。

最初に開発を担当したのはフォーマルのスーツ。企画からサプライチェーンの構築まで担当し、成果を出すことができました。次に担当したのは子供衣料も結果を出すことができ、その功績もあり商品開発へ異動。

子供衣料を中心としたPB商品の開発を担当するようになった頃には、入社して20年近くが経過していました。

会社が外国資本と提携。自分は経営の合理化を推進する立場に

20年近くこの会社で歩んできたキャリアは、個人的には順調だったと言えるかもしれません。しかし、バブル崩壊後の負債を処理しきれなかったことから、会社の経営状況は芳しくないものでした。

そうして、会社は外資系大手と業務提携。これまでの業務を改革し、合理化を進めるべく、外資のやり方を社内に浸透させていくこととなったのです。

そんな中、会社のこれまでの体制を改革するためのプロジェクトが設けられ、衣食住の各事業から担当者が一名ずつ選ばれることに。すると、私が衣料品の代表として選ばれることになったのです。

プロジェクトで対象となった課題は、チラシなどの販促費の圧縮、什器の設置などを含む商品陳列の変更、仕入れ発注在庫管理を行うシステムの変更など、多岐に渡りました。すべてはこれまでの無駄を省き、合理的に利益を生み出す社内体制を生み出すためのプランでした。

しかし、それだけで黒字を出すことはできませんでした。そうして始まったのが、在籍する一定の年齢の人たちを対象とした希望退職の募集でした。

今後、会社に残った場合の選択肢を提示したうえで、その条件に納得できなければ退職という流れ。希望退職を促す社員リストの作成には私も携わりました。

「指名したうえで首を切る」という露骨なものではないにせよ、気の進む仕事ではありません。「いつか、このリストに自分も掲載される日が来るのでは」という不安もつきまといました。

悶々とした気持ちを抱えながら本社で働くよりも、現場働きの方が充実感を感じた

このプロジェクトは4年ほど続くのですが、自分が在籍したのは最初の1年のみ。「社内を向いて仕事をするよりも、お客様を向いて働く仕事に戻りたい」と希望を出したところ、商品部のマネージャーとして戻ることができました。

しかし、戻った商品部でも、外資のやり方が徹底されていました。売場作りや商品開発を担当したのですが、すべてがこれまでとは異なるアプローチが求められる状況。

ですが、そのやり方を踏襲しても必ずしも売上は上がらないんですよね。これまでのやり方のほうがいいのでは、自分でもそう思うこともありました。しかし、私はマネージャーとして外資のやり方を浸透させていく役割であったため、ジレンマを感じました。

商品部には5年ほど在籍しましたが、このような状況であったためモチベーションは上がりませんでした。「転職をしようか」という考えが頭をもたげることも多くありました。

とはいえ、当時54歳。あと数年経てば定年退職も見えてくる年齢。役職定年のない会社であったため、勤め上げればそれなりの給与が期待できる。悶々としながらも、踏ん切ることができない日々を送っていたとき、「店長に戻らないか」という打診を受けたのです。

久しぶりに戻った現場は新鮮でした。お客様の顔を見て、売れ筋を確認し、従業員のモチベーションを上げる。久しぶりに働いている充実感を味わうことができましたね。結局、定年となる60歳まで現場で店長を担当しました。

そうして、60歳となり定年退職。退職後は再雇用の契約社員として、再度本部へ所属。すると、担当することになったのはなんと、再び合理化を推進するプロジェクトチームでした。

合理化のプロジェクトをやり遂げた後、退職することを選択

行ったのは、採算を見極めたうえでの店舗継続の判断。さらに人員計画の見直し。残す人、そうではない人のリストアップを行ったうえで店舗へ趣いて、面談を実施。今後の選択肢を説明していきました。

リストに入っている面談相手には知り合いも多く、言いにくい場合もありました。自分も店舗で働いていたので、突然伝えられる側の気持ちもわかる。気は進まないながらも、2年間かけて合理化プロジェクトをやり遂げました。

プロジェクトが終わったときは62歳。再雇用は65歳までだったので、希望すればまだ会社に残ることはできました。でも、ここが潮時かな、と感じたんです。

待遇は再雇用でしたが、収入は現役時代の7割程度。さらにボーナスも支給されるため、経済的には会社に残る方が断然得であることはわかっていました。

妻にも相談したところ、経済的には残った方がいいと思うけど、やりたいことがあるならば好きにしていいよ、と。取り立ててやりたいことは思い浮かびませんでしたが、やりきった感はありました。

そうして、62歳で退職を選んだのです。

希望の軸を設定し、仕事探し。結果的に、ほぼ希望の求人に出会うことができた

退職して2ヶ月ほどはのんびり過ごしました。ですが、長年働き続けてきた自分のリズムがある。朝起きても一日の目的がない日が続くと、体に緊張感がなくなるんですよね。これはまずい、と思って仕事を探すことにしました。

退職の際に会社が仕事探しをするときに、と紹介してくれた産業安定雇用センターに訪問し、カウンセラーと話したところ「まずは可能性を限定せずに、希望を伺いますよ」とのことだったので、商品開発の仕事、他では小売などのこれまでの経験を活かせる仕事を希望しました。

ですが、やはり商品開発の仕事はなかったですね。小売も店頭での接客しか見つからなかったことから、シニアに向けた仕事は多くあるけれど、職種は限定されていることを改めて認識しました。

そうして気を取り直し、ビルやマンションの管理人の仕事を中心に応募することにしたのです。仕事探しの条件としては

① 社会保険に加入できる
② 70歳まで勤められる
③ 残業がなく、通勤時間の短いところ
④ 突発的な休みも可能なところ

という4つの軸で仕事を探しました。④については両親の介護を考えてのことでした。

上記の条件で仕事探しを開始。全部で応募した会社は6社。そのうち面接に進んだところは3社ありましたが、給与は良いが時間拘束が長いなどで、なかなか希望に見合う仕事は見つからず。そうして仕事が決まったのは5ヶ月目のこと。ビルの管理会社に入社が決まりました。

週5勤務で9‐17時。自宅からもほど近いため、ほぼ希望通りの条件でした。

まとめ:どこかで一度時間を取って、自身のキャリアを棚卸しすることの重要性を実感

私の場合、65歳まで在籍できるところを3年前倒しで退職を決めましたが、それができたのは二人の子供がすでに社会人として独立しているから。教育費がかかる状況であれば、まだ会社に残る選択をしていたかもしれません。

とはいえ、会社にしがみつくことを決めたとしても、予期せぬ人員整理などが起こる可能性だってあります。そうしたリスクを考えると、きっと50歳くらいの時点で今後の人生について真剣に考えて、それに対する準備をするべきだったな、と思っています。

転職をするしないは別として、自分の棚卸しをしておくことは非常に重要です。働きながら時間を確保することは難しいものですが、2週間でも1ヶ月でも棚卸し用の時間を取れれば、その後のキャリアに対するアプローチが変わるのではないでしょうか。

今の仕事は自分のペースで行えるため不満はありません。お客様を見ながら仕事ができることにも満足を覚えています。

しかし、商品開発の仕事ができるのであれば就きたい気持ちがあります。待っていてもそのチャンスは訪れないので、積極的に周りに声をかけ、自分でチャンスを掴めるようにしていきたいです。

※年齢は2019年6月取材当時のものです

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